「●野村 芳太郎 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3286】 野村 芳太郎 「事件」
「●橋本 忍 脚本作品」の インデックッスへ 「●芥川 也寸志 音楽作品」の インデックッスへ 「●岩下 志麻 出演作品」の インデックッスへ「●小川 眞由美 出演作品」の インデックッスへ 「●芦田 伸介 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●ま 松本 清張」の インデックッスへ ○あの頃映画 松竹DVDコレクション
"恐怖の子ども"は主人公の幻想。許される範囲内での「映像のウソ」。

「<あの頃映画> 影の車 [DVD]」
「松本清張傑作映画ベスト10 10 影の車 (小学館DVD BOOK)」藤剛/岩下志麻/小川真由美

浜島幸雄(加藤剛)はある日、幼馴染の小磯泰子(岩下志麻)の呼びかけに振り返る。それは、平凡な男の生涯を根底からゆさぶる運命の声だった。浜島は旅行案内所に勤続12年の係長で、妻の啓子(小川真由美)は万事に社交好きで
陽気だ。毎日が会社と団地の往復、生活も仕事も単調で味気ない浜島は、泰子に会って同じバスに乗っただけで軽い興奮があった。二度目に泰子に会った時、勧められるままに泰子の家を訪ねる。4年前に夫に死なれた泰子は6歳の健一(岡本久人)と二人暮し。保険の集金と勧誘での慎ましい生活だ。健一は父親が無いためか、孤独癖のある無口な子供だった。夢多き思春期の共通の追憶に話が弾み、浜島の泰子への傾斜は急だった。やがて、狭い泰子の家では、健一の眼が浜島には苦痛になった。だが、自然
の成り行きで二人は結ばれる。初夜のように白無垢の長襦袢で浜島を迎える泰子がいた。浜島は健一を手なづけようと心を砕くが、その都度失敗する。浜島にも幼い日に夫を失った母(岩崎加根子)と伯父(滝田裕介)との間に立たされた忘れ得ぬ記憶があったため、健一の反感がこたえた。そして、健一が自分を殺そうとしている幻想に悩まされ始めた。一度は妻と別れて泰子と結婚しようと決心しながら、健一のことを考えると、また泰子を諦らめようかと思い迷った。一方、空閨を癒やされた泰子は、啓子への後ろめたさも、浜島を見る健一の白い目にも心を向けず、ひたすら愛欲の歓びに溺れた。紅葉のころ、浜島苦心のドライブ旅行も小さな健一の本能的な反発を食う。浜島は再び幻影の虜になった。宿命というには、余りにも似かよった浜島自身の幼年期の体験。あの時のように俺は健一に殺される。泰子は浜島のノイローゼを満ちたりた笑いで一蹴した。しかし、恐るべき運命の符合は、悪魔の悪戯か、結末が逆になった―。
野村芳太郎監督、橋本忍脚本の1970年公開作で、原作は、松本清張の「婦人公論」1961(昭和36)年1月号から8月号まで連載され、同年8月、中央公論社より単行本が刊行された連作短編集『影の車』の内の1つ「潜在光景」。ただし、この"潜在光景"というタイトルに符合する結末が最後になってみないと分からないためか、それとも逆にネタバレ的なタイトルとも言えるせいか、短編集のタイトルが映画化作品のタイトルになっています。
加藤剛が主人公の不倫する男を演じていますが、彼が岩下志麻演じる不倫相手の子どもに対して抱く恐怖はおそらく幻想であり、それは、今自分は不倫をしているという罪の意識と、かつて幼い自分が母の不倫相手に対して殺意を抱いたという原体験からくるものでしょう。子どもの所作の一つひとつが自分を批判しているように見え、仕舞いには凶器でもって自分を殺害しようとしているように見えてきます。
映像的にも、子どもの顔に影が差すように撮ったり、持っている道具がこれから凶行に及ぶための凶器に見えるように撮ったりしています。見方によっては、ヒッチコックがサスペンス映画において"禁じ手"とした「映像のウソ」であるとも言えますが、ここは、"恐怖の子ども"は加藤剛演じる主人公の心象を映像化したものであることが明らかであり、許される範囲内での「映像のウソ」ではないかと思いました。

因みに、これまで3度テレビドラマ化されていて、2001年の「松本清張特別企画・影の車」(TBS)(風間杜夫・原田美枝子・浅田美代子版)を観ましたが、これも悪くなかったです。この作品の場合、主人公の男性は真面目そうな人間であればあるほど良く、それは罪の意識が浮き彫りにされるためで、風間杜夫もその要件を満たしていましたが、加藤剛はそれ以上で、まさにピッタリでした。
・1971年「影の車」(フジテレビ)日色ともゑ・園井啓介・岡本久人・橋爪功
・1988年「松本清張サスペンス・潜在光景」(関テレ・フジテレビ) 水谷豊・大谷直子
・2001年「松本清張特別企画・影の車」(TBS)風間杜夫・原田美枝子・浅田美代子

「影の車」●英題:THE SHADOW WITHIN●制作年:1970年●監督:野村芳太郎●製作:三嶋与四治●脚本:橋本忍●撮影:川又昂●音楽:芥川也寸志●時間:98 分●出演:加藤剛/岩下志麻/小川真由美/岩崎加根子/滝田裕介/近藤洋介/岡本久人/小山梓/芦田伸介/稲葉義男/長谷川哲夫●公開:1970/06●配給:松竹●最初に観た場所:池袋・新文芸坐(25-03-13)(評価:★★★★)


松本清張ほか著/日本推理作家協会編『種族同盟―現代ミステリー傑作選1〈策謀・黒いユーモア編〉』(カッパ・ノベルス 1969.01)

この1979年版の小川真由美演じる被告は、映画版と同じく旅館の女中(渡り仲居)で(千鶴子、つまり原作で殺害される女性と同じ名前になっている)、彼女の色香に目をつけた客の議員秘書に犯され、彼を崖から渓流に突き落として死なせてしまいます。警察に捕まって尋問されますが、本人に殺意がなかったこともあってか無実を訴え、資力がないので国選弁護人をつけることになりますが、その案件引き受けた弁護士が、高橋幸治演じる矢野弁護士で(原作は一人称で語られるため、弁護士の名は出てこず、この「矢野」という名は映画と同じ名前)、その助手の金沢碧が演じる由基子は(これは原作でもそのことが示唆されているが)彼の愛人ということになっています(男女の入れ替えをはじめ、全体の設定としては原作より映画「黒い奔流」にずっと近い)。
小説家の阿刀田高はその著書『松本清張あらかると』(1997年/中央公論社)で「種族同盟」のドラマの脚色を賞賛していて、少し長くなりますが引用します。
「〈種族同盟〉のテレビ化は、実にみごとなものであった。もちろん小説を映像化して絶讃を受けた映画やテレビ・ドラマは他にもたくさんあるだろう。どちらかと言えば、テレビより映画のほうによい作品が多いような気がするけれど、テレビ化だって捨てたものじゃない。名品を次々に思い出すことができる。だが、私がここでことさらに〈種族同盟〉を挙げるのは、作品の筋が原作から大きく変更されたにもかかわらず、見どころのある物語をあらたに創っていたからである。しかもその変更の理由が(これはあくまで私の推測ではあるけれど)―テレビ的だなあ―と思いたくなるような、けっして本質的ではないものなのに、ドラマ化された結果は本質的な条件をクリアーしていた。ありていに
言えば「小説をテレビ化するとき、テレビ局の側にもいろいろ事情はあるでしょう。しかし変更するなら、このくらい、熟慮して変えてください」と、あらまほしき例として挙げたくなるのが、この〈種族同盟〉のテレビ・ドラマ化であった。(中略)〈種族同盟〉のドラマ化は、原作のエンドマークの先にたっぷりと新しいものをつけたして違和感のないものとした。付加するならば、このくらいうまく繋げてほしい。主人公を男から女へ変えるなら、ここまで工夫してほしい。小説〈種族同盟〉と、テレビ・ドラマ化された映像と、どちらがよいかは、むつかしい問題ではあるけれど、私としては、「小説のほうは凄味があるけれど、陰鬱だからなあ。テレビのほうがある種の女のあわれさがよく出ていて、ここちはいいね」と言いたくなってしまう。いずれにせよテレビドラマ〈種族同盟〉は、原作を大きく変えて、しかも充分に成功した珍しい例、と、私は特筆大書したいのである。」
ただ、この"イノセント"を実際に演じるのは相当に難しいはずであり、それをリアリティをもって演じ切った小川真由美ってすごいなあと思いました。同じ「土曜ワイド劇場」枠で同年4月放映の「
最初の方で小川真由美演じる千鶴子と議員秘書の絡みがあって、しかも千鶴子がたまたまゆっくり走っていたトラックに飛び乗るシーンがあるので(これが意図せず時間トリックとなって彼女の無罪につながるのだが)、原作と違って言わば倒叙ミステリーになっています。その分、ミステリとしての意外性は削がれていることになりますが、ドラマはあくまでも千鶴子が主人公である作りなので、あまり気になりませんでした。
高橋幸治(1935年生まれ)も悪くなかったです(映画で弁護士を演じた山崎努(1936年生まれ)と似た感じか)。NHKの大河ドラマ「
金沢碧は、事務所の助手・岡橋由基子役でしたが、原作や映画において弁護士を追いつめる元被告に代わって、由基子が弁護士を恐喝する役回りでした。ダーティな部分を全部引き受けた感じで、最後にドジを踏ん

「松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人事件」(土曜ワイド劇場)●演出:井上昭●脚本:吉田剛●音楽:津島利章●原作:松本清張●出演:小川真由美/高橋幸治/金沢碧/下条アトム(下條アトム)/加藤嘉/朝加真由美/中村竹弥/川合伸旺/進藤準/小島三児●放映:1979/05/26(全1回)●放送局:テレビ朝日(評価:★★★★☆)


宝石王・岩瀬庄兵衛(柳生博)に黒蜥蜴から「あなたの一番大切なものを頂戴にあがる」という予告状が届く。相談を受けた明智(天知茂)と波越警部(荒井注)が岩瀬と娘の早苗(加山麗子)とホテルロビーで話していると、ドイツ帰りで岩瀬の顧客の緑川夫人(小川真由美)がやって来る。岩瀬は、明智たちが大切なものとは何か尋ねると、「エジプトの星」というダイヤを見せる。黒蜥蜴が指定した夜、明智は浪越警部と共に黒蜥蜴の出現を待ち受けるが、警部はシャワーを浴びると睡魔が襲ってきて岩瀬と共にベッドで寝てしまう。緑川夫人と早苗は隣の部屋に戻り、明智が独りトランプをしながら寝ずの番をすることに。
そこへ再び緑川夫人が現れ、明智に、明智と黒蜥蜴どちらが勝つかという賭けを持ち掛け、明智は探偵稼業を賭けることに。緑川夫人は自分の全財産、身も心も賭けると言う。緑川夫人が隣の部屋で物音がすると言い、明智と早苗の部屋を見に行くが、早苗はベッドに寝ているらしく、夫人の問いかけにも「眠い」と応える。安心した二人は、部屋に戻る。犯行予告の深夜12時までポーカーをする明智と緑川夫人。しかし、何事もなく12時を過ぎる。緑川夫人は、明智たちが黒蜥蜴の目的の品をとり間違えてはいないかと言い、岩瀬に宝石よりもっと大切なものはないかと尋ね、それが早苗であることがわかると一同は慌てて部屋を飛び出す。早苗の部屋に行くと、彼女は先ほど同じくベッドで寝ていたが、明智がその髪を掴むと、マネキンの頭部だった。波越警部はホテルをチェックアウトした不審者
を洗い、山川教授が量子力学の論文を書いていて大量の原稿を部屋に持ち込み、大きなトランクを下げてホテルを出たという情報を得る。部屋には大量の原稿が残されていて、山川教授に扮していた雨宮(清水章吾)という男が、トランクに早苗を詰めてホテルを出たのだ。宿泊者名簿を見た時から雨宮に目を付けていた明智は、助手の文代(五十嵐めぐみ)と小林(柏原貴)に雨宮の車をつけさせていることを話し、再び緑川夫人とポーカーをする。文代と小林は雨宮からトランクを奪い、中を開けると下着姿で猿轡で手足を縛られた早苗が出てくる。明智はこの報告を受け波越たちに伝えると、早苗が救出されたが雨宮が逃げたことで、緑川夫人は「どうやらこの勝負引き分けのようでしたね」と言うが、明智は「この勝負は僕が勝ちました」と言う―。
原作では、緑川夫人こそが「黒蜥蜴」であることを、最初の3分の1くらいのところで指摘してしまいますが、ドラマも(この回からシリーズがレギュラーで2時間枠となった)、正味90分くらいの内の最初の30分で、同じく明智が当人の目の前で指摘します。でも、その前に緑川夫人が明智をさんざん挑発しているので、明智もかなり何となく気がついていた印象がドラマではありました。前半部の明智と緑川夫人の心理合戦がなかなか面白く、ポーカー
をやる明智と緑川夫人とで、最初のうちは緑川夫人が圧勝し、やがてそれに呼応するように早苗が誘拐されたことが明らかになりますが、その後、実は、山川教授に扮してホテルを抜け出た雨宮に、明智の助手・文代と小林の尾行がついていることを明智から知らされるや、今度は緑川夫人のツキが落ちたかのように明智に負け続けます。原作でも二人はトランプゲームをしますが、勝負の形勢推移はドラマのオリジナルであり、上手いと思いました。
因みに、黒蜥蜴による最初の誘拐の試みの際に、早苗が「眠い」と言ったのは実は緑川夫人の腹話術で、原作通り(原作の方がいっぱい喋っている)。二度目の誘拐の試みの際に、長椅子を用いるのも原作通りですが、緑川夫人が顔パックしたり風呂に入ったりして早苗になりすますのはドラマのオリジナルです(「浴室要員」が小川真由美とは!)。
小川真由美の演技も良かったかと思います(この人、岩下志麻と「
映画化作品の前二作は何れも三島由紀夫の戯曲を原作とした「三島戯曲の映画化」であり(深作欣二版の方は三島由紀夫自身が特別出演していることでも知られる)、ドラマの方が原作に近いかと思います。ただし、三島は戯曲化するにあたり、「女賊黒蜥蜴と明智小五郎との恋愛を前景に押し出して、劇の主軸」にしたとのことですが、ドラマ版もその影響を受けている面があるように思いました。ただし、「美女」が明智の腕に抱かれて死ぬというのは、このシリーズの定石でもあります。
早苗役の加山麗子の入浴シーンもありますが、躰だけの部分は吹き替えのように見えます。トランクから助け出される場面も、実は原作では全裸なのですが、ドラマでは下着姿です。でも、後半、黒蜥蜴に囚われてからは、吹き替え無しでほとんど全裸に近かったです(原作では完全に全裸なのだが、まあ、頑張っている方だろう)。


清水章吾が、山川教授に扮した黒蜥蜴の部下・雨宮(黒蜥蜴の指示で"獲物"を剥製にするために水槽に沈める係だが、逆に明智に早苗の替わりに水槽に沈められてしまう。この回の明智は結構シビア)を演じていますが、かつてチワワ犬とともに出演した「アイフル」のCMで一躍ブレイクしましたが、昨年['19年]末、仕事も家族関係もうまくいかず自殺未遂したとの報道があり心配です(この人、2010年に脳梗塞となり保険会社のCMや
舞台を降板するなどした際も、ストレスでうつ状態となり1度目の自殺未遂している)。

第6話、第7話で本名の「詫摩繁春」名義で出演していた宅麻伸が、ここでは黒蜥蜴に囚われ、水槽に沈められて、はく製にされてしまう役でした。当時、宅麻伸は、キャバレーのボーイをしながらデビューを目指していた時期で、キャバレーの店主が天知茂に紹介して天知の事務所に預かりとなっていたそうです(「明智事務所」ならぬ「天知事務所」か)。


「江戸川乱歩 美女シリーズ(第8話)/悪魔のような美女」●制作年:1979年●監督:井上梅次●プロデューサー:佐々木孟●脚本:ジェームス三木●音楽:鏑木創●原作:江戸川乱歩「黒蜥蜴」●時間:90 分●出演:天知茂/五十嵐めぐみ/柏原貴/荒井注/小川真由美/加山麗子/清水正吾/大前均/北町嘉郎/託磨繁春(宅麻伸)/羽生昭彦/水木涼子/工藤和彦/加島潤/岡本忠幸/鈴木謙一/市東昭秀/篠原靖夫/沖秀一/加藤真琴/マリー・オーマレイ/ウィリー・ドーシイ●放送局:テレビ朝日●放送日:1979/04/14(評価:★★★★)




榎津巌(緒形拳)は、専売公社の集金係2名(殿山泰司ほか)を殺害し、詐欺を繰り返しながら逃走を続ける。実家は病身の母・かよ(ミヤコ蝶々)と敬虔なクリスチャンの父・鎮雄(三國連太郎)が経営する旅館で、榎津の妻・加津子(倍賞美津子)や子も一緒に暮らしているが、榎津は妻・加津子と父・鎮雄の関係を疑っている。警察が榎津を全国指名手配にする中、榎津は裁判
所で被告人の母親(菅井きん)に近づき、弁護士を装って保釈金詐欺を働き、更に、仕事の依頼と称して老弁護士(加藤嘉)に近づいて殺害し、金品を奪って逃げ続ける。浜松の旅館「貸席あさの」に京都帝大教授を装っ
て投宿し、宿の女将ハル(小川真由美)と懇ろになる。ある日、ハルは映画館のニュースで榎津の正体を知るが、榎津を匿い続ける。しかし、榎津はハルとハルの母親・ひさ乃(清川虹子)を殺害し、質屋(河原崎長一郎)を旅館に呼んで2人の所持品を売り払う。榎津を以前客に取ったことのあるステッキガール(根岸とし江)が、榎津が指名手配の犯人であることに気づき、警察に通報する。榎津は逮捕され、死刑を宣告される。面会に来た父親の鎮雄は、榎津が教会から破門されたこと、自らも責任を取って脱会したことを伝える。処刑後、榎津の遺骨を抱いた妻の加津子と鎮雄は、山頂から空に向かって散骨する―。
昨年['15年]10月に78歳で亡くなった佐木隆三(1937-2015)の直木賞受賞作を今村昌平(1926-2006)監督が映画化した1979年公開作で、
その年のキネマ旬報ベスト・テン第1位作品。「第22回ブルーリボン賞」の作品賞、「第3回日本アカデミー賞」の最優秀作品賞も受賞し、演技面では、体当たり演技の小川真由美が日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を受賞。小川真由美は「第4回報知映画賞」やキネマ旬報の賞も受賞し、三國連太郎も報知映画賞や「第22回ブルーリボン賞」など3つの賞を受賞。同じく体当たり演技の倍賞美津子も
ブルーリボン賞を受賞しているのに、主役の緒形拳(1937-2008)が何も受賞していないというのがやや不思議な気がします。主人公の多面的なキャラクターを巧みに演じ分けていたのは流石だと思ったのですが、緒形拳は前年の「
画では、敬虔なクリスチャンで通っている父親との確執を、榎津との幼少期のエピソードなども交えながら描き、更には、榎津の妻・加津子と父・鎮雄の関係を前面に押し出すことで、犯行の背後に父親との関係に起因する何かを示唆しているように思われました。それは、終盤の榎津と父親との拘置所
での対面シーンにも表れており、ここでも両者は和解し切れず、結局、父親が息子と内面的に和解したのは、ラストの散骨のシーンであったように思います。榎津の父親への感情は、ファーザー・コンプレックスと言えなくもないですが、加津子の方がむしろ義父・鎮雄をファザコンに近い感情で崇めていて、一方の榎津の父親に対する反発は、父親のその偽善性に対するものではなかったかと思われます(幼児期のエピソードに父親に裏切られたと取れるものがある)。何れにせよ、父・鎮雄と妻・加津子の関係も含め、この辺りは全て"今村昌平オリジナル"です。
同じくこの作品で原作以上に大きなウェイトを占めるハルの家族の描き方も、ハルの情夫で旅館のオーナーでもある男(北村和夫)とのどろどろした関係が前面に出ていて、それを苦々しく思う母親と、そこに榎津も絡んできて、もうぐちゃぐちゃという感じ。この辺りも全て映画のオリジナルで、ハルの母親が殺人事件で15年服役し、出所してそう年月も経っておらず、今は競艇に明け暮れる日々を送っているという設定もオリジナルです。更に原作との大きな違いは、榎津とハル
が映画を観に映画館へ入ったところ(映画は「ヨーロッパの解放」第三部「大包囲撃滅作戦」('71年/松竹配給))、その前に映像ニュースで榎津の指名手配が流れてハルが榎津の正体を知ってしまうことで、榎津に惚れていたハルは榎津を匿い続けますが、原作では母娘は榎津の正体を知らないまま殺害されてしまい、従って、ハルの母親が榎津を競艇に誘って、当てた金を榎津に渡して自分たちの前から消えてくれるよう頼むといった場面も、榎津が人気の無い畦道かどこかを歩きながらハルの背後からマフラーで絞殺しようして彼女に気づかれ、いったんは諌められてしまうのも映画のオリジナルです。
原作者の佐木隆三が、ハルの宿でクレームをつけて帰ってしまう泊り客としてカメオ出演しています。佐木隆三はこの映画公開の前年['78年]、銀座の路上で交差点に赤信号停止しているタクシーに乗ろうとしたところ、タクシー乗り場から乗るように言われたことに逆上し、タクシーのボンネットに乗り上げて暴れてフロントガラスを破壊して警察に逮捕されていますが、クレーマーっぽい役柄はその事件の自虐パロディだったのかも。
「復讐するは我にあり」●制作年:1979年●監督:今村昌平●製作:井上和男●脚本:馬場当/池端俊策●撮影:姫田真佐久●音楽:池辺晋一郎●原作:佐木隆三●時間:140分●出演:緒形拳/三國連太郎/ミヤコ蝶々/倍賞美津子/小川真由美/
清川虹子/殿山泰司/垂水悟郎/絵沢萠子/白川和子/フランキー堺/北村和夫/火野正平/根岸とし江(根岸李江)/河原崎長一郎/菅井きん/石堂淑郎/加藤嘉/佐木隆三●公開:
1979/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):新宿ピカデリー(緒形拳追悼特集)(08-11-23)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-01-17)(評価:★★★★☆)





川越市で印刷屋を営む竹下宗吉(緒形拳)は、妻・お梅(岩下志麻)に隠れ、鳥料理屋の女中・菊代(小川真由美)を妾として囲い、7年間に3人の隠し子を作
った。やがて火事と大印刷店攻勢で宗吉の商売は凋落し、手当を貰えなくなった菊代が、利一(6歳)、良子(4歳)庄二(1歳半)を連れて宗吉の家に怒鳴り込む。菊代はお梅と口論した挙句、3人を宗吉に押しつけて蒸発し、お梅が子供達と宗吉に当り散らす
地獄の日々が始まる。末の庄二が栄養失調で衰弱し、医者に行ったある日、寝ている庄二の顔の上にシートが故意か偶然か被さって庄二は死ぬ。宗吉はお梅の仕業と思いながらも口に出せず、逆に、「あんたも一つ気が楽になったね」と言われる。その夜、夫婦は久しぶりに燃え、共通の罪悪感に昂ぶる。お梅
は残りの子供も〈処分〉することを宗吉に迫り、宗吉は良子を東京タワーに連れて行って置き去り
にし、一人エレベーターを降りる。更に長男・利一を毒殺しようとするものの果たせず、何日か後、新幹線こだま号に利一を乗せ、北陸海岸に連れて行く。能登半島に辿り着き、日本海を臨む岸壁で、宗吉は利一を海に落す。翌朝、沖の船が絶壁の途中に引掛っている利一を発見し、かすり傷程度で
助け出す。警察の調べに利一は父親と遊びに来て眠っているうちに落ちたと言い張り、名前、住所、親のことや身許の手掛かりになることは一切言わない。しかし警察は、事故ではなく利一は突き落とした誰かを庇っていると判断し、利一の持っていた石版印刷に使用する石材のかけら(利一はこれを石蹴り遊びに使っていた)から宗吉が殺人未遂容疑で警察に拘束される。そして、移送されてきた宗吉が警察で利一と対面する―。
まず、前半部分しか出てきませんが、小川真由美の3人の子供を連れての
押しかけぶりが良く、岩下志麻との競演は見所であり、更に中盤の見せ場は、岩下志麻演じるお梅の児童虐待ぶりの凄まじさでしょうか(子役たちは撮影の休憩時間中も岩下志麻に寄りつかなかったという)。
それらに比べると、2人の女の間でおろおろしている宗吉を演じた緒形拳はやや影が薄いようにも見えましたが、これはこれで、あまりやりすぎると喜
劇になってしまうし、あまり抑え過ぎると面白くないし、意外と加減の難しい役どころだったのではないでしょうか(緒形拳はこの演技で、「第2回日本アカデミー賞」「第3回報知映画賞」「第21回ブルーリボン賞」の主演男優賞を"3冠"受賞した)。
その他にも、印刷所の工員(原作でもいることになっているが人物造型は描かれていない)を蟹江敬三(1944-2014)が好演していたし(お梅が赤ん坊の口に米を突っ込んで虐待するのを「よせよ」と遠巻きに言うだけで何もできない夫・宗吉に代わって毅然と赤ん坊を取り上げ、「しっかりしろよ!旦那の子だろ!」と言うという、いい人のキャラだった)、子役の演技も、賛否ありますが、個人的には悪くなかったと思います(子役の演技力というより監督の演出力の成果だろう)。
要する地方にあるS市という原作の設定から埼玉県の川越市に改変され、宗吉が菊代を囲った家は、原作ではS市から1時間ばかり汽車で行く町ということで、映画では同じ埼玉県の男衾(おぶすま)駅付近となっています。
宗吉が良子を置き去りにするのは原作では東京タワーではなく銀座のデパートの屋上のミニ動物園、利一を毒殺しようとして上野動物園で食
べさせるのはアンパンではなく最中(もなか)、利一を旅に連れて行ったのは北陸ではなく原作では西伊豆です。映画では西伊豆を北陸に変え(米原まで新幹線で行く)、能登金剛までやって来て、そこで利一を崖から放ってしまう―。能登金剛は「ゼロの焦点」('61年/松竹)のラストシーンの舞台でもあります(こちらは原作通り)。これら細かい改変点はありますが、概ね原作に忠実に作られているように思われ、こうした作り方は個人的には割合と好きな方です。
原作と一番異なる点はラストで、原作が、利一が頑なに黙秘を続けるも、持っていた石材で宗吉の犯行の足が付くことを示唆して終わるのに対し、映画では、宗吉が殺人未遂容疑で逮捕され、利一と面会を果たす場面が加えられていることです。そこでも利一は、「坊やのお父さんだね?」 との警官の問いに、「知らないおじさんだよ!」と否定し、宗吉はそんな利一にすがりつき、後悔と罪悪感で号泣する―。利一は何故黙秘を続けたのかという疑問を更に発展させて、利一は宗吉を庇ったのか見捨てたのかという究極の問いを観る者に投げかけている訳で、この持って行き方は悪くないように思いました。答えはそう難しくないと思いますが(脚本の井手雅人は「父親を拒否した」を意図したが、野村芳太郎監督が「父親を庇った」ととれる演出に変えたと言われている)、観る者にちょっとだけ考えさせるこの終わり方が余韻となっており、「砂の器」の加藤剛が延々とピアノ曲「宿命」を奏でる(やや大仰な)エンディングより上だったかもしれません。一面において原作を超えていると思うのも、この分かりやすい問題提起とでも言うか、まさにこの点にあります(因みに、原作にはモデルとなった実際の事件があって、犯人の男は在獄中に発狂死したという凄まじいエピソードがある)。
(●2025年に池袋・新文芸坐で15年ぶりに再見(映画館で観るのは4回目)。父・宗吉は息子・利一を連れて東尋坊に行き、ただしそこでは決心がつかず、能登半島まで行って「福浦」の旅館に泊まり、今度はバスでその先の「関野鼻」のバス停で降り、ヤセの断崖に辿り着いたのだったことを思い出した。ラストで利一少年は父親を「拒否した」のか、或いは「庇った」のかという議論が、映画を何度か観直した人の間でもあるようだが、やはり「庇った」説をとりたい。
因みに、竹中宗吉が3人の子供と訪れる「川越ピープルランド」という遊園地は、川越の蓮馨寺境内にあった遊園地であることを、'25年3月刊の『砂の器 映画の魔性―監督野村芳太郎と松本清張映
画』刊行記念トークショーで登壇した著者の映画評論家の樋口尚文氏が、現地を取材し自ら撮った写真で説明してくれた。ただし、今は、更地になっていて、その痕跡も無い。また、冒頭シーンで小川真由美が子ども3人らと入ったラーメンを食べるシーンは、川越のラーメン屋「勝山」がロケ地だが、こちらは「
過去に1度だけテレビドラマ化されていて、'02年10月15日に日本テレビ系列で「火曜サスペンス劇場('81年~'95年)1000回突破記念作品」として「松本清張スペシャル・鬼畜」のタイトルで放送されています(監督は「
ぎて、映画の岩下志麻ほどの凄味もやつれ感も無かったように思います。映画では岩下志麻演じるお梅が赤ん坊の口に米を突っ込んで虐待するところが、ドラマでは食事が美味しくないと言う子どもに腹を立てた黒木瞳演じる春江が玉子焼きを取り上げて捨てるぐらいで(テレビコードのせいもあるか)、後の方で保夫が長男を連れて行った上野動物園そばの不忍池で、長男に妻が毒を入れたおにぎりを無理やり食べさせようとするシーンなどがあり(前述の通り原作は最中(もなか)、映画はアンパン)、黒木瞳がやるはずの汚れ役の一部をビートたけしが肩代わりしている印象もありました。全体として、夫婦を突き放すのではなく、寄り添うような感じだったでしょうか。

「鬼畜」●制作年:1978年●監督:野村芳太郎●製作:野村芳太郎/野村芳樹●脚本:井手雅人●撮影:川又昂●音楽:



「松本清張スペシャル・鬼畜」●監督:田中登●企画:酒井浩至●脚本:佐伯俊道●音楽:大谷和夫(エンディング:安全地帯「出逢い」)●原作:松本清張●時間:141分(放送分)●出演:ビートたけし/黒木瞳/室井滋/片岡涼/佐藤愛美/諸岡真尋/小野武彦/奥村公延/石倉三郎/日野陽仁/渡辺哲/波乃久里子/斉藤暁/大林丈史/津田三七子/井田國彦/斎藤歩/酒井敏也/水田啓太郎/斉藤実紀●放映:2002/10/15(全1回)●放送局:日本テレビ

【感想】脚本・竹山洋(「
を超えるのは難しいと思って観ているが、演出はまずまず手堅かったように思う。映画では、終盤で子どもが父親を庇ったのか拒絶したのか解釈が分かれるような作りだが、このドラマでは婦警が「この子は親を庇っている」と言ってしまっている。ラストは原作と異なり、妻に贖罪させたような感じで、男の方は刑務所に入り、刑期を終えて出てきて墓参り。モデルとなった人物は獄中で狂死したことを思うと、やや甘い。妻に贖罪させたことも含め、テレビ的な改変であったように思う。しかし、ネットでいちばん話題になっていたのは、なぜこれをクリスマスイブに放映するのか謎であるということだった(笑)。
「ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜」●監督:和泉聖治●プロデューサー:五十嵐文郎●脚本:竹山洋●音楽:吉川清之●原作:松本清張●時間:138分(放送分)●出演:玉木宏/常盤貴子/木村多江/余貴美子/南岐佐(菊代の長男で7歳)/稲谷実恩(菊代の長女で4歳)/今中陸人(菊代の次男で2歳)/前田亜季/近藤芳正/羽場裕一/片桐竜次/河西健司/萩原悠/嘉門洋子/平泉成/柳葉敏郎/橋爪功●放映:2017/12/24(全1回)●放送局:テレビ朝日



「月刊コミックビーム」の2007(平成19)年7月号から翌年の1月号にかけて連載された作品に加筆修正したもの。「エスプ長井勝一漫画美術館主催事業」として、「江戸川乱歩×丸尾末広の世界 パノラマ島綺譚」展が今年(2011年)3月に宮城県塩竈市の「ふれあいエスプ塩竈」(生涯学習センター内)で開催されており(長井勝一氏は「月刊漫画ガロ」の初代編集長)、3月12日に丸尾氏のトークショーが予定されていましたが、前日に東日本大震災があり中止になっています。主催者側は残念だったと思いますが、原画が無事だったことが主催者側にとってもファンにとっても救いだったでしょうか。
個人的には、昔、春陽堂の春陽文庫で読んだのが初読でしたが、ラストの"花火"にはやや唖然とさせられた印象があります。原作者自身でさえ"絵空事"のキライがあると捉えているものを、漫画として視覚的に再現した丸尾末広の果敢な挑戦はそれ自体評価に値し、また、その出来栄えもなかなかのものではないかと思われました。
但し、本当に描きたかったのは、後半のパノラマ島の描写だったのでしょう。海中にある「上下左右とも海底を見通すことのできる、ガラス張りのトンネル」などは、実際に最近の水族館などでは見られるようになっていますが、その島で行われていることは、一般的観念から見れば大いに猟奇変態的なものです。

たことがあり(タイトルは「天国と地獄の美女」)、正月(1月2日)に3時間の拡大版(正味142分)で放映されています。明智小五郎役は天知茂、パノラマ島を造成する人見広介役は伊東四朗で(山林王・菰田源三郎と二役)、菰田千代
子(源三郎の妻)役が叶和貴子(当時25歳)、その他に小池朝雄、宮下順子、水野久美らがゲスト出演しています。パノラマ島
自体は再現し切れていないというのがもっぱらの評価で、実際観てみると、特撮も駆使しているものの、ジャングルとか火山とかの造型が妙に手作り感に溢れています(特撮と言うより"遠近法"?)。ただ、逆にこの温泉地の地獄巡り乃至"秘宝館"的キッチュ感が後にカルト的な話題になり、シリーズの中で最高傑作に推す人もいます(叶和貴子は第21話「白い素肌の美女」(原作『盲獣』(実質的には『一寸法師』)('83年)、北大路欣也版第3話「赤い乗馬服の美女」(原作『何者』)('87年)でも"美女役"を務めた)。
「江戸川乱歩 美女シリーズ(第17話)/天国と地獄の美女」●制作年:1982年●監督:井上梅次●プロデューサ:佐々木
孟/植野晃弘/稲垣健司●脚本:
「江戸川乱歩 美女シリーズ(天知茂版)」●監督:井上梅次(第1作-第19作)/村川透/長谷和夫/貞永方久/永野靖忠●プロデューサー:佐々木孟●脚本:宮川一郎/井上梅次/長谷川公之/ジェームス三木/櫻井康裕/成沢昌茂/吉田剛/篠崎好/江連卓/池田雄一/山下六合雄●撮影:平瀬静雄●音楽:鏑木創●原作:江戸川乱歩●出演:天知茂/五十嵐めぐみ(第1作-第19作)/高見知佳(第20作-第23作)/藤吉久美子(第24作・第25作)/大和田獏(第1作)/柏原貴(第6作-第19作)/小野田真之(第20作-第25作)/稲垣昭三(第1作)/北町嘉朗(第1作・第4作-第9作)/宮口二郎(第2作・第3作)/荒井注(第2作-第25作)●放映:1977/08~1985/08(天知茂版25回)【1986/07~1990/04(北大路欣也版6回)、1992/07~1994/01(西郷輝彦版2回)】●放送局:テレビ朝日

1 1977年8月20日 氷柱の美女 『吸血鬼』 三ツ矢歌子 12.6%
11 1980年4月12日 桜の国の美女 『黄金仮面II』 古手川祐子 15.9%
21 1983年4月16日 白い素肌の美女 『盲獣』(『一寸法師』) 叶和貴子 13.3%
ジェームズ三木 脚本家、作家、演出家、元歌手。
「善人の条件」●制作年:1989年●監督・脚本・原作:ジェームス三木●撮影:坂本典隆●音楽:羽田健太郎●時間:123分●出演:津川雅彦/すまけい/小林稔侍/橋爪功/井上順/イッセー尾形/山下規介/森三平太/浪越徳治郎/柳生博/松村達雄/丹波哲郎/小川真由美/桜田淳子/山岡久乃/野際陽子/汀夏子/守谷佳央理/野村昭子/小竹伊津子/鷲尾真知子/松金よね子/浅利香津代/泉ピン子/黒柳徹子●公開:1989/05●配給:松竹(評価:★★★)
「






この作品は何度かテレビドラマ化ざれ、佐藤慶('67年/テレビ朝日系/全26回)、田宮二郎('78年/フジテレビ系/全31回)、村上弘明(90年/テレビ朝日系/全2回)などが主役の財前五郎を演じています。更に最近では、'03年にフジテレビ系で唐沢寿明主演のもの(全21回)がありましたが、断トツの視聴率だったのは記憶に新しいところ(唐沢寿明版の最終回の視聴率32.1%で、'78年の田宮二郎版の最終回31.4%を上回る数字だった)。
しかしながら個人的には、やっぱりテレビ版よりは、原作を読む前に観た山本薩夫(1910-1983)監督による映画化作品(田宮二郎主演)が鮮烈な印象として残っており、また観たいと思っていたら、'04年にニュープリント版が銀座シネパトス(東銀座・三原橋の地下にあるこの映画館は、しばしば昔の貴重な作品を上映する。2013年3月31日閉館)で公開されたため、約20年ぶりに劇場で観ることができました。これも全て今回の唐沢寿明版のヒットのお蔭でしょうか。

田宮二郎(1935-1978/享年43)は、31歳の時にこの小説と巡り会って主人公・財前五郎に惚れ込み、作者の山崎豊子氏に懇願してその役を得たとのこと。その演技が原作者に認められ、それがテレビでも財前医師を演じることに繋がっていますが、テレビドラマの方も好評を博し、撮影終盤の頃、ドラマでの愛人役の太地喜和子(1943‐1992/享年48)との対談が週刊誌に掲載されていた記憶があります。それがまさか、ヘミングウェイと同じ方法でライフル自殺するとは思わなかった...。クイズ番組「タイム・ショック」の司会とかもやっていたのに(司会者は自殺しないなどという法則はないのだが)。
していたそうです。それが終盤に入ってうつ状態になり、リハーサル中に泣き出すこともあったりしたのを、周囲が励ましながら撮影を進めたそうで、彼が自殺したのはテレビドラマの全収録が終わった日でした(実現が困難な事業に多額の投資をし、借金に追われて「俺はマフィアに命を狙われている」とか、あり得ない妄想を抱くようになっていた)。当時週刊誌で見た大地喜和子とのにこやかな対談は、実際に行われたものなのだろうか。


文庫の方は、当初は正(上下2巻)・続に分かれていましたが、'93年の改定で「続」も含め『白い巨塔』として全3巻になり、更に'02年の改定で全5巻になっています(「続」という概念がある時期から消されているともとれる)。最近のテレビドラマもそれに準拠し、財前が亡くなるところまで撮り切っていますが、文庫で読むときは、もともとは今ある全5巻のうち、第3巻までで終わる話だったことを意識してみるのも良いのではないでしょうか。

は、権力に憧れる気持ちと真実を追究し正義を全うしようという気持ちが入り混じっているような"普通の人"も多く出てきて、この辺りがこの小説の充実したリアリティに繋がっていると思います。 

「白い巨塔」(映画)●制作年:1966年●製作:永田雅一(大映)●監督:山本薩夫●脚本:橋本忍●音楽:池野成●原作:山崎豊子●時間:150分●出演:田宮二郎
/東野英治郎/小沢栄太郎/小川真由美/岸輝子/加藤嘉/田村高廣/船越英ニ/滝沢修/藤村志保/下条正巳/石山健二郎/加藤武/里見明凡太朗/鈴木瑞穂/清水将夫/下條正巳/須賀不二男/早川雄三/高原駿雄/杉田康/夏木章/潮万太郎/北原義郎/長谷川待子/瀧
花久子/平井岐代子/村田扶実子/竹村洋介/小山内淳/伊東光一/南方伸夫/河原侃二/山根圭一郎/浜世津子/白井玲子/天池仁美/岡崎夏子/赤沢未知子/福原真理子●劇場公開:1966/10●配給:大映●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山本薩夫監督追悼特集) (83-12-05)●2回目:銀座シネパトス (04-05-02) (評価★★★★)





月1日「銀座東映」跡地に「銀座名画座」開館、1988(昭和63)年7月1日「銀座地球座」→「銀座シネパトス1」、「銀座名画座」→「銀座シネパトス2」「銀座シネパトス3」に改装。2013(平成25)年3月31日閉館













●2019年再ドラマ化【感想】'78年の田宮二郎版の全31回、'03年の唐沢寿明版の全21回に対して今回の岡田准一版は全5回とドラマ版としては短く、盛り上がる間もなくあっという間に終わってしまった感じで、岡田准一は大役を演じ切れてない印象を持った。最終回の視聴率が15.2%というのはそう悪い数字ではないが、この原作ならば本来はもっと高い数字になって然るべきで、やはり内容的に...。田宮二郎版の31.4%、唐沢寿明版の32.1%と比べると平凡な数字に終わったのもむべなるかなと。
哉/小円真●音楽/兼松衆●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:岡田准一/松山ケンイチ/寺尾聰/小林薫/松重豊/岸部一徳/沢尻エリカ/椎名桔平/夏帆/飯豊まりえ/斎藤工/向井康

二/岸本加世子/柳葉敏郎/満島真之介/八嶋智人/山崎育三郎/高島礼子/市川実日子/美村里江/市毛良枝/小林稔侍●放映:2019/05/22-26(全5回)●放送局:テレビ朝日
