「●ウォン・カーウァイ(王家衛)監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2624】 ウォン・カーウァイ 「恋する惑星」
「●「香港電影金像奨 最優秀作品賞」受賞作」の インデックッスへ 「●レスリー・チャン(張國榮) 出演作品」の インデックッスへ 「●マギー・チャン(張曼玉) 出演作品」の インデックッスへ 「●トニー・レオン(梁朝偉) 出演作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ
ウォン・カーウァイ監督がそのスタイルを確立した作品。且つ、主要出演者が全員トップスターになった作品。


「欲望の翼【字幕版】 [VHS]」「欲望の翼 [DVD]
」
サッカー競技場の売り子スー・リーチェン(マギー・チャン(張曼玉))は、ある日突然遊び人風の客ヨディ(レスリー・チャン(張國榮))に交際を迫られ断るが、1分間だけ時計を見ているように言われる。1960年4月16日午後3時。やがてスーはヨデ
ィを愛し始める。ヨディはナイトクラブを経営する養母(レベッカ・パン(藩迪華))と暮らしていたが、彼女が部屋に連れ込んだ男を叩き出し、男から取り返した養母のイヤリングの片方を、居合わせたクラブ
のダンサー、ミミ(カリーナ・ラウ(劉嘉玲))にやる。翌朝、ヨディと一夜を過ごしたミミが部屋を出ると、昨夜彼女と部屋で出会い、一目惚れしたヨディ
の親友サブ(ジャッキー・チュン(張学友))が階段で待っていた。一方、ミミの存在を知って放心状態で夜の町を彷徨うスーを、巡回中
の若い警官タイド(アンディ・ラウ(劉徳華))が見つけ、心配し彼女を慰める。彼はスーに恋心を抱き、巡回路の公衆電話に電話するように言うが、彼女からの電話は無かった。養母から恋人とのアメリカ移住を告げられたヨディは、実の
母親の住むフィリピンへと旅立つ。残されて悲しむミミのために、サブはヨディに貰った車を売り、彼の後を追うようにとその金を渡す。ヨディが初めて訪ねた母親はフィリピン貴族の娘で、不義の息子である彼とは会おうとしなかった。自暴自棄になった
ヨディは酔いつぶれ、船乗りに介抱されるが、その船乗りはかつてスーを慰めた元警官タイドだった。ヨディは偽造パスポートで渡米しようとしてギャングを殺してしまい、2人は南へと向かう列車に逃げ込むが、車中でヨディがギャングの報復で撃たれ、息を引き取る。その頃ミミはマニラに降り立ち、香港では誰もいない公衆電話のベルが夜に街角に響いていた。そして九龍のアパートの一室では、ギャンブラー(トニー・レオン(梁朝偉))が身支度を整えていた―。
ウォン・カーウァイ(王家衛)監督の監督デビュー作「いますぐ抱きしめたい」('88年)に続く監督第2作の1990年香港映画で、第10回香港電影金像奨で最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞(レスリー・チャン)、第28回金馬奨で最優秀監督賞を受賞した作品。同監督の浮遊感と疾走感の入り混じる語り口と映像美独特のスタイルが確立された原点と言われている作品ですが、2005年以降日本での上映権が消失していて、その間DVDが再リリーズされたりはしていますが、スクリーンでの上映は今回が13年ぶりでした。
レスリー・チャン/カリーナ・ラウ
最後にいきなりトニー・レオンが出て来るのは、続編を想定していたためということですが、当時"アイドルスター"だった主要出演者6人が全員"トップスター"になってしまったため予算的に再結集不可能ということで、続編を作ることができなかったとのこと。後に作られた「花様年華」('00年)、「2046」('04年)に役名や設定が一部受け継がれており、この両作品が実質的な続編とされていますが、話そのものは繋がっていません。個人的には、この作品の雰囲気を色濃く継承しているのは、ゲイ・ムービーですが、「ブエノスアイレス」('97年)であるように思います。
マギー・チャン/レスリー・チャン
脚本もウォン・カーウァイで、フィリピンでヨディとタイドが偶然出会い、「1960年4月16日午後3時」というキーワードで同じ女性(スー)を介した経験があることに互いに気づくところなどは面白かったです。ヨディを巡るスー(マギー・チャン)とミミ(カリーナ・ラウ)のバトルの激しさもなかなかのものでした。こうして男性同士が偶然出会ったり、女性同士が最悪の状況で鉢合わせするのに、男女は行き違ってばかりいる感じだったなあ。
マギー・チャン/カリーナ・ラウ
ウォン・カーウァイの作風を愉しむと共に、後のスター俳優たちの若き日の演技が楽しめる作品でもあると思います(レスリー・チャンは2003年に自殺。一方、カリーナ・ラウは2008年にトニー・レオンと結婚した)。レスリー・チャンは、同じ破滅型の人間を演じた後の「ブエノスアイレス」に匹敵するか、その上を行く演技で、彼が演じるヨディは、警官から船乗りに転じたタイドが言うように"カス人間"なのでが、それでも女性たちが惚れる―彼の演技はそのことに説得力を持たせているように思いました(演技力と言うより演技センスがいいという感じ)。
トニー・レオン(梁朝偉)・アンディ・ラウ(劉徳華)2005年来日(「インファナルアフェア3 終極無間」のプロモーション)/ジャッキー・チュン(張學友)2008年来日(コンサート)

「Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下」2023年7月10日

(●2023年7月10日、「Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下」(2022年12月4日閉館した「渋谷TOEI」のあった渋谷東映プラザ7F・9Fに、Bunkamuraの再開発に伴って2023年4月10日より長期休館に入った「Bunkamuraル・シネマ」が移転して2023年6月16日「Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下」としてオープン)の杮落とし特集「マギー・チャン レトロスペクティブ」で再見した。マギー・チャン出演作9作が組まれた特集だが、チラシの表紙にはこの「欲望の翼」での彼女が使われている。
この映画のラストで、トニー・レオン演じるカジノディーラーが、天井の狭い部屋の中で身支度をしている様子
だけ描かれ、映画が唐突に終わるのはなぜかについては諸説あるようだ。元々はトニー・レオン演じるディーラーが主要なキャラクターとして考えられていて、実際、ウォン・カーウァイは当時、香港で最も危ないエリアと言われた九龍城砦
のアパートで何か月も撮影をしたため、トニー・レオンの実質的な降板によってカットされたフィルムは多かったようだ。その一部はYouTubeにアップされていて、トニー・レオン演じるディーラーの部屋にマギー・チャン演じるスーが会いに階段を登って行く場面や、狭い室内で二人が会話をする場面などがある。
また、1990年4月、主要キャストであるカリーナ・ラウが、黒社会が出資する映画に強制的に出演させられそうになり、彼女が断固として拒絶したところ、報復として拉致されるという事件が起きた。この事件は彼女にとって大きなトラウマとなったが、この時、毅然と対応をしたのが当時カリーナと恋人の関係にあったトニー・レオンであり、後になってカリーナは、彼が自分を守るためにウォン・カーウァイのこの映画を降板したと告白している。一時期、自殺まで考えたというカリーナの精神的な支えとなるた
めの決意であり、彼は二人で俳優を辞めることも提案したという。ウォン・カーウァイ自身、当時、香港映画界を取り巻く状況に嫌気をさし、黒社会の資金に依存しない映画作りを模索していた。「ここではないどこかへ」―それはトニー・レオンやウォン・カーウァイが痛切に願ったことであり、トニー・レオンの降板と入れ替えにこの映画の主人公となったレスリー・チャンに委ねられることになったのかもしれない。一方、レスリー・チャン演じる、実の母親に面会を拒絶されてフィリピンのジャングル沿いの道を歩くヨディの姿に被るロス・インディオス・タバハラスの「Always in My Heart」の曲には切ない情感があるが、この映画のヨディ像が、母親が事業に忙しく祖母の家に預けられ乳母に育てられたレスリー・チャンの実人生に重なるという人もいる。確かにそうした見方も成り立つかもしれない。)
カリーナ・ラウ/トニー・レオン夫妻
張國榮(レスリー・チャン)/張曼玉(マギー・チャン)/劉嘉玲(カリーナ・ラウ)/劉徳華(アンディ・ラウ)

Los Indios Trabajaras "Always in my heart"
「欲望の翼」●原題:阿飛正傳/DAYS OF BEING WILD●制作年:1990年●制作国:香
港●監督・脚本:ウォン・カーウァイ(王家衛)●撮影:クリストファー・ドイル●音楽:ロス・インディオス・タバハラス/ザビア・クガート●時間:97分●出演:レスリー・チャン(張國榮)/マギー・チャン(張曼玉)/カリーナ
・ラウ(劉嘉玲)/アンディ・ラウ(劉徳華)/ジャッキー・チュン(張学友)/レベッカ・パン(藩迪華)/トニー・レオン(梁朝偉)●日本公開:1992/03●配給:プレノン・アッシュ●最初に観た場所:渋谷・Bunkamura ル・シネマ2(18-03-15)●2回目:渋谷・Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(23-07-10)(評価:★★★★)
Xavier Cugat "Perfidia"




香港から地球の裏側に当たるアルゼンチンを
旅するウィン(レスリー・チャン)とファイ(トニー・レオン)のゲイのカップルは、それが「やり直す」ための旅行にもかかわらず、イグアスの滝へ行く途中で道に迷って荒野のハイウェイで喧嘩別れしてしまう。一人になったファイは旅費不足を補うためブエノスアイレスのタンゴバーでドアマンとして
働くが、そこへ白
人男性とともにウィンが客として現れる。以降ウィンは何度もファイに復縁を迫りその度ファイは突き放すが、嫉妬した男性愛人にケガを負わされたウィンがアパートに転がり込んで来たため、やむなく介護する。ウィン
との生活にファイは安らかな幸せを感じるが、ケガの癒えたウィンはファイの留守に出歩くようになり、ファイは独占欲からウィンのパスポートを隠す。一方、ファイは転職した中華料理店の同僚で台湾からの旅行者のチャン(チャン・チェン)と親しくなり、そんなファイのもとからウィンは去っていく。旅行資金が貯まったチャンは南米最南端の岬へ旅立ち、チャンの出発後、ファイは稼ぎのいい食肉工場に転職、旅費が貯まりイグアスの滝へと旅立つ。香港への帰途、ファイは台北のチャンの実家が営む屋台を訪れる―。
ウォン・カーウァイ(王家衛)監督の1997年の香港映画で、同年の
撮影は難航したようで、トニー・レオン(梁朝偉)は「同性愛者役はできない」と一旦出演を辞退したものの、「亡父の恋人をアルゼンチンに探しに行く息子の物語」に書き改めた新企画を示されて了承、ところが現地に着いてみるとストーリーは大きく変更されていました(監督に騙された?)。男同士でのラブシーンにはかなり抵抗があり、撮影後に呆然としてしていたそうです。
また、相方役のレスリー・チャン(張國榮)は、映画俳優と人気歌手の掛け持ちで、撮影当時コンサートツアーの予定があり、遅延を重ねた撮影の途中でやむを得ず香港へ帰国してしまい、収拾のつかなくなったストーリーを完結させるために、兵役直前で休業に入る予定だった台湾出身のチャン・チェン(張震)と、香港出身の歌手シャーリー・クワン(關淑怡)が招集されましたが、チャン・チェンが中華料理店でのファイの後輩にあたるチャンの役でかなり重要な役どころで出ているのに対し、シャーリー・クワンの出演シーンは本編
では1カットも使われていません。チャン・チェンはカンフー俳優でもあり、兵役からの復帰後、アン・リー監督の「
・米)などに出演し、近年ではウォン・カーウァイ監督、トニー・レオン主演の武術映画「
こうしたことも含め、全編を貫いているのは、人間は孤独であり、その辛さに耐えられるかという問いかけではないでしょうかか。舞台が地球の裏側だけに、そのことが一層ひしひしと感じられます。そうした中で、一人では生きることが出来ないのがウィン
で、次第に破滅に向かって行くタイプかも(ラストの方では、男性の愛人を仮想ファイに見立てていた)。一方で意外と逞しいのが中華料理店の後輩のチャンで、先輩の代わりに南米最南端の岬へ行って悩みを捨ててきてあげるからとファイにテープレコーダー
を渡しますが、ファイはテープレコーダーを握りしめるも言葉はなく、涙を流すしかありませんでした。それまで何となく距離を置いてこの映画を観ていたつもりが、このシーンではこちらも
泣けました。ファイが仕事に打ち込んできたのは、ウィンとの別離の痛みを忘れるためというのもあったのではないでしょうか(でも忘れられないでいる)。というわけで、チャンは約束通りしっかり南米最南端のエクレルール灯台まで行き('97年1月)、そのファイが"自らの悩みを吹き込んだ"カセットを聴くも、そこにはファイの言葉は無く、泣き声のようなものしか聴こえませんでした。
一方のファイも最後には、貯めた金で中古車を買って旅の目的地だったイグアスの滝へ行っており、そこでウィンの不在を再認識しながらも彼との過去を封印したような感じで、更に帰国時には台北に寄って('97年2月。テレビでは鄧小平死去のニュースが伝えられている。この辺りは物語が撮影とリアルタイムになっているようだ)、チャンの実家が営む屋台を訪れ、チャンの写真を一枚盗むことで、「もし会おうと思えば、どこでだって会うことができる」と確信します。こうした行為は何れも自らの過去を整理するための(同時に未来へ向けての再生のための)儀式のように思えました。
そう言えば、「
「ブエノスアイレス」●原題:春光乍洩/HAPPY TOGETHER●制作年:1997年●制作国:香港●監督・製作・脚本:ウォン・カーウァイ(王家衛)●撮影:クリストファー・ドイル(杜可風)●音楽:ダニー・チョンほか●時間:96分●出演:レスリー・チャン(張國榮)/トニー・レオン(梁朝偉)/チャン・チェン(張震)/グレゴリー・デイトン/スー・ピンラン(蕭炳林)●日本公開:1997/09●配給:プレノンアッシュ●最初に観た場所:渋谷・Bunkamura ル・シネマ(18-02-17)(評価:★★★★☆)


重慶マンションの無国籍地帯の雑踏で、刑事223号・モウ(金城武)は金髪サングラスの女性(ブリジット・リン)とすれ違う。その金髪女性
はドラッグ・ディーラーで、密入国インド人に麻薬を運ばせる仕事をしていた。空港へ向かった女はそこにインド人の姿が無く、裏切られたことを知る。命を狙われた女は、偶然入ったバーでモウと出会い、ホテルへ。恋人にふられていたモウは次に出会った女性に恋をすると決めていたのだが、女は疲れ果てホテルに着くや爆睡してしまう。翌朝はモウの誕生日で、ポケベルに既に姿を消した女からのバースディコールがあった。女は裏切ったインド人を射殺し、金髪とサングラスを脱ぎ捨て去っていく。モウはファーストフード店〈ミッドナイト・エクスプレス〉で新入りの娘フェイ(フェイ・ウォン)とす
れ違う。その店の常連客の警官663号(店主は633と呼ぶが、認識番号は663)(トニー・レオン)はCA(スチュワーデス)の恋人(チャウ・カーリン)と別れたばかりだった。元彼女のCAは店の主人に663号への手紙を封筒で託すが、主人はこっそり開封して手紙を読んでしまう。フェイも手紙を読むと、封筒には部屋鍵が入っていた。店に来た663号が封筒を受け取らないため、フェイは、その鍵
で663号の部屋に密かに入り込み、毎日少しずつ模様替えをしていく。663号はある日そのフェイと部屋の入口で鉢合わせする。次にファーストフード店で会った時にデートに誘う633号だったが、彼女は待ち合わせ場所に来なかった。店の主人が渡しに来たフェイからの手紙を663号は一旦屑籠に捨てるが、拾って読み返すと手書きの航空券で日付は1年後の今日だった。1年後、フェイはCAとなってかつての店の前に現れる。シャッターを押し上げると、中にいたのは、改装開店を控えたその店の新たな店主になっていた663号だった―。
ウォン・カーウァイ(王家衛)監督の1994年の香港映画で、第14回香港電影金像奨で最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞(トニー・レオン)を受賞、日本でもミニシアターでの上映から始まってヒットした作品です。原題は「重慶森林」で、香港の九龍、尖沙咀にある「世界最大の雑居ビル」とも言われる重慶大厦(重慶マンション)を舞台に、すれ違う男女の物語をスタイリッシュ且つポップに描いた青春恋愛映画となっています。
最初、金城武演じる刑事223号・モウが金髪サングラスの女性(ブリジット・リン)とすれ違った際に、「その時彼女との距離は0.5ミリ。57時間後、僕は彼女に恋をした」というセリフが流れ、次に、ファーストフード店の娘フェイ(フェイ・ウォン)とすれ違う場面を介して警官663号(トニー・レオン)の話に移る際に、今度は「その時彼女との距離は0.1ミリ。6時間後、彼女は別の男に恋をした」と流れます。なかなかお洒落だなあと。おそらく、想定されていた第3話も刑事または警官の話で、そこにに切り替わる時も、そうした手法が用意されていたのでしょう。
第1話と第2話でどちらが好きか人によって好みは分かれると思います。第1話で、広東語、北京語、英語、日本語を巧みに使い分けていた台湾出身の金城武(日本人の父と台湾人の母との間に生まれ、沖縄県出身の祖父を持つ)は、香港に仕事で訪れた際、ホテルのロビーで偶然居合わせたウォン・カーウァイ監督に見初められ、この映画への出演が決まったとのことですが、映画が日本でもヒットしたため、日本でも人気が出ました。外国映画に出て外国語を話しているわけですが(独白は北京語か。台湾の若者は福建語より北京語を好んで使うようだ)日本人っぽくて、その辺りの"等身大"的感覚がいいのかも。このエピソードは、許可無しのゲリラ的手法で尖沙咀の街中を撮っていて、香港の都会の裏側に潜入したようなシズル感があって良かったです(第1話のカメラ担当は自身が映画監督でもあるアンドリュー・ラウ(劉偉強))。第1話は、男女がすれ違ってもうおそらく会うことはないだろうという(会ったら会ったで殺し屋と刑事なのだからかなりまずいことになるのだが)けっして明るい話ではないですが、最後に、金髪女からバースディコールがあったのが、主人公の救いになっているように思いました。
ただ、個人的には、トニー・レオン(梁朝偉)(こちらもまだ当時日本ではそれほど有名ではなく、この作品によって知名度と人気が出た)が主演の第2話の方が、40分の予定が60分に延びた分(?)ストーリー的には作
り込まれていたように思います。中国出身の香港の歌手フェイ・ウォン(王菲)演じるファーストフード店の娘も良くて、やっていることは押しかけ女房風で、今の基準で言えばストーカー行為なのですが、むしろ一途さが健気で可愛らしく思われる不思議な魅力があります。彼女はこの作品の演技でストックホルム国際映画祭・最優秀主演女優賞を受賞しています。個人的にはフランス映画の「
トニー・レオン演じる663号が、自分の部屋が少しずつ様変わりしているのを、恋人と別れたショックによる幻覚のせいだと
勝手に思い込んで(?)変に納得してしまったりしているなど、男の鈍感さがユーモラスに描かれていました(元々石鹸や濡れタオルに感情移入して話しかける癖がある変わった男なのだが)。ラストで、フェイが663号の元恋人の職業であったCAになっていて、663号がかつてフェイが働いていた店の店主になっているといった作りなど、ある種ファンタジー乃至寓話的な作りになっているように思いましたが、個人的にはそこに嵌りました(「恋する惑星」という邦題も悪くない)。フェイの好みの曲ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」など、音楽の使われ方が映画にしっくりマッチしたものになっていて、フェイ・ウォン自身が歌うエンディング曲「夢中人」も良かったです(フェイ・ウォンは、「広東語のアルバム累計売り上げ」世界一としてギネスブックで認定されている)。

「恋する惑星」●原題:重慶森林/CHUNGKING EXPRESS●制作年:1994年●制作国:香港●監督・脚本:ウォン・カーウァイ(王家衛)●製作:ジェフ・ラウ(劉鎭偉)●撮影:(第1話)アンドリュー・ラウ(劉偉強)/(第2話)クリストファー・ドイル/●音楽:フランキー・チェン(陳動奇)/ロエル・A・ガルシア/マイケル・ガラッソ●時間:110分●出演:トニー・レオン(梁朝偉)/フェイ・ウォン(王菲)/金城武/ブリジット・リン(林青霞)/チャウ・カーリン(周嘉玲)/バレリー・チョウ●日本公開:1995/07●配給:アスミック・エース(評価:★★★★☆)



も、宝森ととも佛山を訪れていた宝森の娘の宮若梅(ゴン・ルオメイ)(チャン・ツィイー(章子怡))が
異を唱え、葉問に試合を申し込む。葉問は若梅と試合い、試合いを通じて二人は心を通わせて、若梅は葉問を認める。若梅は父と共に東北に帰り、葉問と若梅は手紙を交し合うようになる。やがて準備の整った葉問は東北を訪れようとした時、日中戦争が勃発する―。
2013年のウォン・カーウァイ(王家衛)監督映画で、2014年・第38回香港国際映画祭「
原題は「一代宗師」。香港の武術家でブルース・リーの師匠でもあった葉問(よう もん、イップ・マン、1893-1972)がモデルで、この葉問をモデルにした映画には、ウィルソン・イップ監督、ドニー・イェン主演のイップ・マ
ン・シリーズ3作(「イップ・マン 序章」('08年/香港)、「イップ・マン 葉問」(10年/香港)、「イップ・マン 継承」('15年/香港))やハーマン・ヤオ監督、デニス・トー主演の「イップ・マン 誕生」('08年/香港)、同じくハーマン・ヤオ監督でアンソニー・ウォン主演の「イップ・マン 最終章」('13年/香港)などもあります(「イップ・マン 葉問」のエピローグで少年・李小龍(後のブルース・リー)が葉問を訪ねる場面がある)。
「
カンフー・アクションもありますが、しっとりとした美しい映像が続き、米雑誌「TIME」が発表した「2013年の映画ベスト10」では5位と高評価されたように、ウォン・カーウァイらしい映像美学が前面に出ています(1936年当時の娼館"金楼"のセットなどは凝っていた)。但し、欲を言えば、ストーリーの方をもう少し上手く作って欲しかったように思います。
主要な役どころでは、ルオメイの父の敵役の馬三(マーサン)を演じたマックス・チャン(張晋)はカンフー俳優で(ウィルソン・イップ監督の「イップ・マン 継承
」('15年/香港)にも出演している)、一線天(カミソリ)を演じたチャン・チェン(張震)は、台湾出身ですが(ウォン・カーウァイ監督の「
しかし、結局は作品としてのテーマが、ルオメイの復讐劇だったのか、彼女の技の継承の問題だったのか、彼女のイップ・マンに対する恋心だったのか、あまりに沢山盛り込み過ぎて、やや焦点がぼけてしまった感じです。説明不足な所は説明不足で、チャン・チェン演じる一線天(カミソリ)などは、本筋の話とどう絡むのかが分かりにくかったです(日本に協力し満洲国奉天の協和会長となった敵役のマーサンに対して、中国国民党の特務機関所属の暗殺者として最前線にいたカミソリという対比か。最後は理髪店の店主になったようだが、床屋業の傍ら技を後世に伝えた?)。
トニー・レオン演じるイップ・マンは、カンフーの技比べの場面でもいつも余裕の表情で、チャン・ツィイー演じるルオメイの十数年ぶりの
告白を聴く時も穏やかな表情で、いくら抑制の効いた演技といっても、ちょっと現実ありえない?(好きな俳優なのでまあいいか)。チャン・ツィイーは、アン・リー(李安)監督 の「
男女が運命的に出会いその思いが行き違うのは、「花様年華」に似ているように思いますが、戦争に最も翻弄されたのは、韓国の人気女優・ソン・ヘギョ(宋慧敎)が演じた、先に東北に行って結局あとから来るはずだったイップ・マンと離れ離れになった妻の張永成(チャン・ヨンチェン)のようにも思えます。




「グランド・マスター」●原題:一代宗師/THE GRANDMASTER●制作年:2013年●制作国:香港・中国●監督:ウォン・カーウァイ(王家衛)●製作:ウォン・カーウァイ/ジャッキー・パン・イーワン●脚本:ゾウ・ジンジ/シュー・ハオフォン/ウォン・カーウァイ●撮影:フィリップ・ル・スール●音楽:梅林茂/ナタニエル・
メカリー●時間:123分●出演:トニー・レオン(梁朝偉)/チャン・ツィイー(章子怡)/チャン・チェン(張震)/マックス・チャン(張晋)/ワン・チンシアン(王
慶祥)/ソン・ヘギョ(宋慧敎)/チャオ・ベンシャン(趙本山)/ユエン・ウーピン(袁和平)(アクション指導も)●日本公開:2013/05●配給:ギャガ(評価:★★★)



![花様年華 [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E8%8A%B1%E6%A7%98%E5%B9%B4%E8%8F%AF%20%5BDVD%5D.jpg)


1962年の香港。新聞社の編集者であるチャウ(トニー・レオン〈梁朝偉〉)が夫妻でアパートに引っ越してきた日、隣の部屋にもチャン夫人(マギー・チャン〈張曼玉〉)が夫と引っ越してくる。チャン夫人は商社で社長秘書として働いている。チャウの妻とチャン夫人の夫は仕事のせいであまり家におらず、二人はそれぞれの部屋に一人でいることが多かったが、大家のスーエン夫人(レベッカ・パン)の仲立ちもあり二人は親しくなる。ある日、一緒に昼食を取った際、それぞれの配偶者の日本土産の話などから、お互いの配偶者同士が浮気しているらしいと察する。隣同士の部屋に住む孤独な男と女―。チャウは夫人により接近するため、本の好きな彼女に自らの小説執筆の手伝いを依頼する。夫人がスリッパのままチャンの部屋にやって来たある日、偶然にアパートの住民ら
が徹夜マージャンをすることになり、自分の部屋に戻るに戻れなくなった夫人は、一夜をチャンの部屋で過ごすも機会を窺い、自分のスリッパを置き足に合わないチャウ夫人のヒール靴を履いて、さも外出先から自宅に帰ってきたかのようにチャンの部屋を出て行く。更に二人は、チャウが小説を書くために借りたホテルの部屋で何度か逢引するが、チャウが夫人が夫を問い詰めることを想定した練習台になったりするものの、二人は自分たちの配偶者のように簡単に不倫関係を結ぶことは出来ないでいる。チャウは、シンガポールでの仕事に誘われて現地へ行くことにするが、その際に夫人を誘うも彼女は一緒には来ない。しかし、1963年のある日、彼女は突然シンガポールのチャウの部屋を訪ねる。チャウは無言の電話を受け、自分の部屋の灰皿に夫人のタバコの吸い殻を見つけるが、夫人とは会えなかった。時は流れ1966年、子どもを連れたチャン夫人が香港のかつてのアパートにスーエン夫人を訪ね、アメリカに移住するというスーエン夫人からかつて住んだ部屋を借り受ける。一方のチャンもその後アパートを訪れ、新しい管理人に、隣は「お母さんと息子」が住んでいると聞く。それが誰であるかを確認することなく、その後彼は取材でアンコールワットを訪問し、古跡の壁の穴に過去の秘密を封印する―。
ウォン・カーウァイ(王家衛)監督の2000年作品で、同監督の「
一方で、観ていて大きな謎の部分もありましたが、それは後にネットなどでいろんな人の分析を読んで、ナルホドなあと思ったりもし、また、そうした中でも見方が分かれていたりして、どっちの解釈が正しいのか、それは"正解"があるのか、それとも元々が観客に解釈を委ねている作品なのか―などと考えてみる上で"面白い"作品であると思います。以下、個人的解釈―。
一説では、チャン夫人はスリッパを取りにシンガポールに行ったという見方もあるようですが、それは、後でチャウが部屋から無くなったものがあるとメイドに訴える、その"無くなったもの"とはスリッパであり、それは、例のマージャンの夜に夫人がチャウの部屋に置いてきたスリッパだったという。彼女がスリッパを"回収"するカットは実際にあり(スリッパが件(くだん)のものであったことそのものはまず間違いないだろう)、チャウにシンガポールでの仕事を紹介した人物がかつてのアパートの同居人でもあったことから、その人物がスリッパを見れば、どうして夫人のスリッパがここにあるのかと訝しがる、そのことを夫人は恐れたのか。仮にそうであるとしても、チャウが例のスリッパをシンガポールに持って行っていることを夫人は事前に知る由もなく、やはりここは、自分がチャウと付き合っていた「痕跡を消す」ためにスリッパを"回収"したのではなく(また、そのためにシンガポールまで行ったわけでもなく)、わざとタバコの吸い殻を残したのと同じように、チャウに想いを伝えに来たが踏み切れず、来たという「痕跡を残す」ためにスリッパを持ち帰ったと見るべきではないでしょうか。
あり、チャウの妻(声のみで姿は画面には一度も出てこない)が電話で相手に対し(相手は不倫相手のチャン夫人の夫のようだが、こちらも声のみで姿は画面には一度も出てこない)、「話さないとダメよ」と言って泣いていることから(この部分も声のみ)、不倫相手に離婚を迫ったもののチャン夫人の夫が離婚を渋っているらしいことが窺え、更に、チャン夫人の夫が日本に出張中にチャン夫人の誕生日にラジオに歌のリクエストしていることで(その曲名が「花様的年華」)、これを聴いたチャン夫人が夫と和解し、結局は夫と別れなかったと解されるというもの。でも、そうだとしたら、どうしてわざわざチャウとの思い出が色濃く残るかつてのアパートに舞い戻ってくるのかが理解し難い気がします(この時、指輪はどうなっていた? 1962年時点では最後まで外さなかったようだが)。
では、チャン夫人が連れている子どもはチャウの子なのか。だとしたら、二人はそれまでどうしても越えられなかった一線を最後に越えたことになりますが、それは何時だったのか。おそらく、夫人の夫への問い質し練習の延長としてやった、チャウとの別れの場面のロールプレイング(相手は夫を想定しているのかチャウを想定しているのか微妙)の後、夫人が泣き崩れ「今日は帰りたくない」というあの辺りでしょうか(2度目のタクシー内の場面)。その後、チャウがシンガポールに行っている間に妊娠・出産し、シンガポールにはそのことをチャウに伝えるためにも行ったとすれば、目的は果たさなかったものの行った動機としても説明がつくのではないでしょうか。
るという意味は大きい)、一方、おそらくは隣の部屋にチャン夫人が戻って来ているのを知らないままにアンコールワットに行ったチャウは、そこまで割り切って"思い出"に生きられないからこそ(男女の生理的違いと言っていいのでは)、遺跡の壁の穴に口づけをするという行為を以って意識的に"思い出"を封印しようとしたのではないか―と考えます。


「花様年華」●原題:花様年華/IN THE MOOD FOR LOVE●制作年:2000年●制作国:香港●監督・製作・脚本:ウォン・カーウァイ(王家衛)●撮影:クリストファー・ドイル/リー・ピンビン(李屏賓)●音楽:マイケル・ガラッソ/梅林茂●時間:98分●出演:トニー・レオン(梁朝偉)/マギー・チャン(張曼玉)/レベッカ・パン(藩迪華)/ライ・チン(雷震)/スー・ピンラン(蕭炳林)●日本公開:2001/03●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷・Bunkamura ル・シネマ1(01-04-25)(評価:★★★★★)






