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うつ病の原因、症状も多様だが、抜け方は人それぞれ。でも、共通項も。


『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』['17年]
自身もうつ病を患い、快復した経験をもつ漫画家が、同じ"うつトンネルを抜けた"経験者たちにインタビューを重ねた、それを漫画にしたものです。以前に細川貂々氏の『ツレがうつになりまして。』('06年/幻冬舎)を読みましたが、あっちは配偶者がうつ病になったのに対し、こっちは本人です(自身のこと描いているという点で、系譜としては、昨年['19年]10月に亡くなった吾妻ひでお氏の『失踪日記』('05年/イーストプレス)、『アル中病棟―失踪日記2』('13年/イーストプレス)や、統合失調症の漫画家・卯月妙子氏の『人間仮免中』('12年/イースト・プレス) に近いか)。

最初に著者自身の「うつ」体験が紹介されており、サラリーマンと漫画家との二足の草鞋で忙しく働いていた著者は、転職を契機ににうつ病に罹ってしまい、医者の「貴方のうつ病は一生もの」との言葉に不信感を抱き、勝手に服薬をやめたり、医者を転々としたりしてますます悪化したとのこと、トンネル脱出のきっかけは、コンビニで見つけた文庫本で、うつ病に罹った精神科医が書いたエッセイだったとのことです。著者は再発と回復を繰り返しながらも、自分の場合は気温の変化が引き金でうつ病になることに気づき、「うつはそのうち完全に治る」と実感するに至りますが、ここまではいわば序章で、以下、著者が会って聞いた、さまざまな人の「うつヌケ」体験談が続きます。
登場するのは大槻ケンヂ、宮内悠介、佐々木忠、まついなつき(今年['20年]1月に脳梗塞で亡くなったなあ)、内田樹、一色伸幸といった有名人から、OL、編集者、教師と多様な顔ぶれで、こういう人もうつ病になったことがあるのだなあと思わされるし、また、うつ病の症状は人によって様々であり、そこから抜ける契機も人によって様々だなあと改めて思わされました。一方で、個々の「うつヌケ」体験をより大きな括りとして捉えると、そこに共通項も見えてくるように思いました。
著者は後にインタビューで「漫画のもつ抽象化や擬人化の効果を今回は最大限に使いました。うつヌケした時って本当にモノクロの世界がぱーっと色を取り戻すような感覚なんです」と述べています。
漫画の特性が活かされて、わかりやすい「うつヌケ」の体験談集になっているっように思われ、本書はベストセラーとなり、一昨年['18年]にはココリコ・田中直樹主演でHulu配信のネットドラマにもなりました。
本書に関するAmazon.comのレビューなどを見ても高い評価のものが多いですが、ベストセラーの常で、だんだん批判的なレビューも増えてきて、最後は星3つくらいになってしまう...(ただし、本書は、自分がチェックした時点では星4つをキープしていた)。
批判の1つに、症例が自分に当て嵌まるものがないので役に立たないというのがありましたが、思うにこれは、本書に出てくるいろいろな人たちの症例の多様さからすると、うつ病の症状はそもそも一人一人に固有のものであって、全く同じものは無いという前提に立ち、その中で、何らかの敷衍化することで、自分に応用が可能なものを見出していくしかないのではないかという気がします。これは"考え方"の問題で、先に述べた、「うつヌケ」体験をより大きな括りとして捉えるというのも同じです。
また、有名人が多く紹介されていることから事前に予想された批判ですが、彼らはもともとアーティストや作家としての特殊な能力を持っている人たちで、その才能があったからこそうつ抜け出来たのであって、そういう才能がない凡人たる自分には参考にならないというものです。自分などは、第一線で活躍している人もかつてうつ病だった時があった、或いは、今もうつと付き合いながら創作活動や社会生活を送っていると思えば、" 元気の素"になりそうな気もするのですが、逆の捉え方をされることもあるのだなあと思いました。これは"考え方"の問題というより"気持ち"の問題であるように思われ、当事者の気持ちにまでは踏み込めないので、これ以上のコメントは差し控えます。









入門書でありながら、所々で著者の"持ち味"が出るのが面白かったですが、






(●2011年、佐々部清(1958-2020/62歳没)監督により宮﨑あおい、堺雅人主演で映画化された。タイトルは同じ「ツレがうつになりまして。」だが、原作は「その後のツレがうつになりまして。」「イグアナの嫁」からもエピソードをとっている。宮﨑あおい、堺雅人とも、TV版の藤原紀香、原田泰造より演技は上手い。宮﨑あおいはNHK大河ドラマ「篤姫」('08年)で主人公の篤姫を演じており(放送開始時の年齢22歳1か月は、大河ドラマ
の主演としては歴代最年少)、堺雅人はTBS「
「ツレがうつになりまして。」●制作年:2011年●監督:佐々部清●脚本:青島武●撮影:浜田毅●音楽:加羽沢美濃(主題歌:矢沢洋子「アマノジャク」)●時間:121分●出演:宮﨑あおい/堺雅人/吹越満/津田寛治/犬塚弘/田村三郎/中野裕太/梅沢富美男/田山涼成/吉田羊/大杉漣/余貴美子●公開:2011/10●配給:東映●最初に観た場所:丸の内TOEI1(11-11-03)(評価:★★★☆)
余貴美子/大杉漣(ハルさん(宮﨑あおい)の実家・栗田家(栗田理髪店)の両親)







元・気象キャスターの倉嶋厚氏も「うつ」に罹患経験者の1人として紹介されていますが、発症したのが妻が癌で亡くなった73歳の時で、この人のように伴侶の死が発症の契機となることも、やはり多いのかも(倉嶋氏のうつ病の発症と闘病の記録は、自著『やまない雨はない―妻の死、うつ病、それから...』('02年/文藝春秋)に詳しい)。
キャスト

うつ病の中に「メランコリー親和型うつ病」という種類があり、これは、律儀、几帳面、生真面目、小心な、所謂、テレンバッハが提唱したところの「メランコリー親和型性格」の人が、概ね40歳以降、近親者との別離、昇進、転居、身内の病気などを契機に発症するものですが、職場での昇進などを契機に責任範囲が広がると、全てを完璧にやろうと無理を重ね、結果としてうつ病に至る、といったケースは、よく見聞きするところです。



有吉佐和子が亡くなる2カ月前に「笑っていいとも」の「テレフォンショッキング」に出演し、ハイテンションで喋りまくって番組ジャックしたのは有名ですが(橋本治氏によると番組側からの提案だったそうだが)、当時、本書にあるような箍(たが)が外れたような空想小説を大真面目に書いていたとは...。中島らもの父親が、プールを作ると言って庭をいきなり掘り始めたことがあったというのも、ぶっ飛んでいる感じで、彼の躁うつは、遺伝的なものだったのでしょうか。
著者によれば、躁の世界は光があっても影のない世界、騒がしく休むことを知らない世界で、最近では老年期にさしかかった途端にこうした状態を呈する人が増えているとのこと、タイプとしてある特定の妄想に囚われるものや、所謂「躁状態」になるものがあり、後者で言えば、(名前は伏せているが)黒川紀章が都知事選に立候補し、着ぐるみを着て選挙活動をした例を挙げていて、その人の経歴にそぐわないような俗悪・キッチュな振る舞いが見られるのも、躁の特徴だと(個人的に気になるのは、有吉佐和子、黒川紀章とも、テレビ出演、都知事選後の参院選立候補の、それぞれ2カ月後に亡くなっていること。躁状態が続くと、生のエネルギー調整が出来なくなるのではないか)。
岩波 明 氏(精神科医/略歴下記)

自殺したヘミングウェイが晩年うつ病でひどい被害妄想を呈していたとは知らなかったし、近親者にうつ病が多くいて、彼の父も拳銃自殺しているほか、弟妹もそれぞれ自殺し、孫娘のマーゴ・ヘミングウェイ(映画「リップスティック」に主演)までも薬物死(自殺だったとされてる)しているなど、強いうつ病気質の家系だったことを本書で知りましたが、うつ病を「心のかぜ」などというのは、臨床を知らない人のたわごとだと著者は述べています。
因みに、冒頭で取り上げられているマーゴ・ヘミングウェイが主演した映画「リップスティック」は、レイプ被害に遭った女性モデル(マーゴ・ヘミングウェイ)が犯人の男を訴えるも敗訴し、やがて今度は妹(マリエル・ヘミングウェイ)も同じ男レイプされるという事件が起きたために、自分と妹の復讐のためにそのレイプ犯を射殺し、裁判で今度は彼女の方が無罪になるというもの。
あまり演技力を要しないようなB級映画でしたが(マーゴ・ヘミングウェイが演じている主人公は、うつ気味というよりはむしろ神経症気味)、大柄でアグレッシブな印象のマーゴ・ヘミングウェイを襲うレイプ犯を演じていたのが、ヤサ男の音楽教師ということで(「狼たちの午後」('75年/米)で同性愛男性を演じてアカデミー助演男優賞にノミネートされたクリス・サランドンが演じてている)、このキャラクター造型は、今風のストーカーのイメージを先取りしていたように思います。
マーゴ・ヘミングウェイは、この後、B級映画「キラーフィッシュ」(別題「謎の人喰い魚群」または「恐怖の人食い魚群」、'78年/伊・ブラジル)とかにも出ていますが(劇場未公開、'07年にテレビ放映)、B級映画専門で終わった女優だったなあ。
「リップスティック」●原題:LIPSTICK●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ラモント・ジョンソン●製作:フレディ・フィールズ●脚本:デヴィッド・レイフィール●撮影:ビル・バトラー●音楽:ミッシェル・ポルナレフ●時間:89分●出演:マーゴ・ヘミングウェイ/クリス・サランドン/アン・バンクロフト/ペリー・キング/マリエル・ヘミングウェイ/ロビン・ガンメル/ジョン・ベネット・ペリー●日本公開:1976/09●配給:東宝東和●最初に観た場所:高田馬場パール座 (77-12-16) (評価:★★)●併映:「わが青春のフロレンス」(マウロ・ポロニーニ)
貝谷久宣 (かいや ひさのり)赤坂クリニック理事長(略歴下記)
著者は、パニック障害をはじめ不安障害を専門とする精神科医で、パニック障害の治療で知られるクリニックの理事長を務めるなど、社会不安障害の研究・治療の第一人者ですが、その著者が書いた「非定型うつ病」(かつて「神経症性うつ病」と呼ばれたタイプ)の本です。
但し、掲げられている13の症例の読み解きは、自分にはかなり難しく思え、それぞれ共通項も多いものの、症候の現れ方や治り方が多様で、他の病気や人格障害と重なる症状もあり、実際、医者に境界性人格障害などの診断を下されることもあるというのは、ありそうなことだなあと(こうなると、患者にすればもう、クリニックの選び方にかかってきて、そこで誤ると、症状を増幅しかねないということか)。


野村 総一郎 氏(防衛医科大学教授) NHK教育テレビ「福祉ネットワーク」 '05.05.28 放映 「ETVワイド-"うつに負けないで"」より
「うつ病」の入門書であり、「うつ病」を「うつ病性障害」、「双極性障害(躁うつ病)」、「気分変調症」の3タイプに分け、代表的症状をわかり易く解説していますが、この内「うつ病性障害」が「大うつ病」と訳されているのに対し、このタイプを「うつ病」と呼び、いろいろなタイプを総括した呼び名を「気分障害」とした方が良いのでは、といった著者なりの考えも随所に織り込まれています。







35歳のときにうつ病を発症したという人が書いたビジネスマン(ビジネスパーソン)のためのメンタルケアについての本で、自分がうつ病になっているだけに、うつにならないようにするにはどうすれば良いか、それ以上悪化させないようにするにはそうすればよいか、治った後に再発を防ぐにはどうすれば良いかが、ビジネスマンの視点に立って具体的に書かれています。



小杉氏は本書で、本当のうつ病(内因性うつ病)は人口の0.3%に過ぎず、今ビジネスの世界で起きているのは「心因性うつ状態」と「適応障害」であるとし、「心因性うつ状態」は死別体験や社会的立場の危機などで生じるが、「適応障害」は特定の人物や状況に遭遇した時だけ生じると言っています。
小杉正太郎 氏 (心理学者/略歴下記)
川上 真史 氏 (ワトソン・ワイアット)