【3684】 ○ デイヴィッド・リンチ 「マルホランド・ドライブ」 (01年/米・仏) (2002/02 コムストック) ★★★★ (○ デイヴィッド・リンチ 「ブルーベルベット」 (86年/米) (1987/05 松竹富士クラシック) ★★★★☆)

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映画の構造自体がテーマのように思った。細部で人によって解釈が異なってくる?

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マルホランド・ドライブ」[Prime Video]/「マルホランド・ドライブ 4Kリストア版 [DVD]」ナオミ・ワッツ/ローラ・ハリング
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ブルーベルベット (特別編) オリジナル無修正版 [DVD]
マルホランド・ドライブ01.jpg 夜のマルホランド・ドライブ道路で自動車事故が起こる。事故現場から一人生き延びた黒髪の女性(ローラ・ハリング)は、助けを求めにハリウッドまで辿り着く。女性が偶然潜り込んだ家は、有名な女優の家だった。女優の姪である女優志望のベティ(ナオミ・ワッツ)に見つかった黒髪の女性は、部屋に貼られていた女優リタ・ヘイワースのポスターを見て、反射的に「リタ」と名乗った。彼女はベティに自分が事故で記憶喪失になっていると打ち明ける。リタのバッグには大金と青い鍵。ベティはリタの失った記憶を取り戻すことに協力する―。
 
マルホランド・ドライブ02.jpg デイヴィッド・リンチ監督による2001年の映画で、もともとは「ツイン・ピークス」('90年~'91年、全30話)のようなTVドラマシリーズとして構想されたものが、ドラマ化の話がボツになってお蔵入りしていた脚本を映画化したようです。そうした経緯で作られた作品ですが、2001年・第54回「カンヌ国際映画祭 」で「監督賞」を受賞し、「全米映画批評家協会賞 作品賞」「ニューヨーク映画批評家協会賞 作品賞」なども受賞、さらに、英BBCが選んだ「21世紀 最高の映画100本」でベストワンに選ばれています(2000年から2016年までの作品がノミネート)。

マルホランド・ドライブ03.jpg デイヴィッド・リンチ監督は本作品により「ハリウッドのダークサイドを描きたい」と述べており、この映画は同じくハリウッドを舞台にした1950年の映画「サンセット大通り」('50年/米)へのオマージュであるそうです。ただ、それは一つのモチーフかもしれまぜんが、この映画は、構造自体が「人間の意識」の曖昧さを表象するテーマのように思いました。

 終盤で、それまでベティと名乗っていたナオミ・ワッツがダイアンという人物になり、リタであったはずのローラ・ハリングがカミーラになって、ストーリーが直線的に繋がらなくなります。現実のシーン、回想のシーン、空想のシーン、夢のシーンのどれがどれか判らなくなってくるため、観ている側は自分の頭の中でもう一度振り返って、それが「現実のシーン」なのか、誰かの「回想・空想・夢」なのか、整理してみる必要に迫られます。そうした意味では、「エターナル・サンシャイン」 ('04年/米)などとちょっと似ている面があるようにも思いました(この映画も、BBCが選んだ「21世紀 最高の映画100本」で第6位にランクインしている)。

マルホランド・ドライブ リー.jpg ただし、作品の雰囲気は「ツイン・ピークス」や同じくデイヴィッド・リンチ監督の「ブルーベルベット」('86年/米)などに近く、「ツイン・ピークス」の小人役のマイケル・J・アンダーソンをはじめ、他のリンチ監督作に出ていた俳優も出てました。一方で、"タップの女王"と呼ばれた「踊る大紐育」('49年/米)のマドンナ、アン・ミラーが、夢と現実世界の二役(役名はともにココ)で出ていたりもします(そう言えば、リー・グラント(「刑事コロンボ(第2話)/死者の身代金」」('71年/米))も出ている。当時75歳。現時点で['26年1月]で存命中。100歳である)。

 どうやら、映画の前3分の2以上を占める「ベティ&リタ」の世界は「夢」で、「ダイアン&カミーラ」の世界が「現実」のようですが、前半部分が誰の夢かというと、ダイアンのこうあって欲しかったという「夢」の世界ということのようです。最初にリタに感情移入してしまったため、そう思い当たるのに時間がかかりました。ただ、それで全部分かったかというと、では、ベットの上にあったリタ=カミーラと思われる死体からベティ=ダイアンが抜け出してくるイメージなどはどう解すればよいのか、まだまだすっきりしない部分が残りました。

 デイヴィッド・リンチ監督自身、結末を決めないで脚本を書き始めたと言っているくらいですから、正解があるのかどうかも不明(「ツイン・ピークス」の結末についても同じことが言える)。細部で人によって解釈が異なってくるところがこの映画の妙味であり、監督自身、それを楽しんでいるのかもしれません。

ブルーベルベットv.jpgブルーベルベット03.jpg よく、「マルホランド・ドライブ」と「ブルーベルベット」とどちらが傑作か、或いはどちらを先に観るべきかといった議論がありますが、80年代に「ブルーベルベット」をビデオで観てしまいました。田舎町の裏側に潜むグロテスクかつミステリアスな人間たち(久ブルーベルベット01.jpg々に映画界復帰のデニス・ホッパーが演じるサディストの麻ブルーベルベット09.jpg薬密売人はとりわけ異常な雰囲気)の織り成す人間模様は、「ツイン・ピクース」につながるデイヴィッド・リンチ監督ならではの世界でしたが、TVドラマ版「ツイン・ピクース」を観ると、「ブルーベルベット」は「ツイン・ピクース」への助走だったような気もします(その間にカイル・マクラクランの演技が熟成した)。一方、「マルホランド・ドライブ」はきらびやか夢の街ハリウッドが舞台ですが、一見すると思い遣りがあったり真っ当にに見える人間関係の裏に深い闇が隠れているというテーマ乃至モチーフは共通します。また、描き方として、夢(理想)と現実を曖昧に混在させている点は同じですが、「マルホランド・ドライブ」は、主人公が現実の悲劇的な状況を理想化された夢の物語に投影するという心理的な境界線の上にドラマの大部分が成り立っていて、そのことを観客に予め知らしめないことで観客まで意図的に混沌に巻き込んでおり(推理小説風に言えば"叙述トリック"とでも言うか)、その意味では「ブルーベルベット」からまた進化を遂げているように思いました(主人公の夢を追体験するという点では、先に挙げた「エターナル・サンシャイン」と似ている)。「ブルーベルベット」の評価★★★☆、「ツイン・ピークス」の評価★★★★☆(全30話をリアルタイムで観た衝撃は大きい)に対し、「マルホランド・ドライブ」は★★★★としました。


英BBC Culture企画「21世紀の偉大な映画ベスト100」上位20位(2000年から2016年までの作品がノミネート)
 1.「マルホランド・ドライブ」('01/デビッド・リンチ)
 2.「花様年華」('00/ウォン・カーウァイ)
 3.「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」('07/ポール・トーマス・アンダーソン)
 4.「千と千尋の神隠し」('01/宮崎駿)
 5.「6才のボクが、大人になるまで。」('14/リチャード・リンクレイター)
 6.「エターナル・サンシャイン」('04/ミシェル・ゴンドリー)
 7.「ツリー・オブ・ライフ」('11/テレンス・マリック)
 8.「ヤンヤン 夏の想い出」('00/エドワード・ヤン)
 9.「別離」('11/アスガー・ファルハディ)
 10.「ノーカントリー」('07/ジョエル&イーサン・コーエン)
 11.「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」('13/ジョエル&イーサン・コーエン)
 12.「ゾディアック」('07/デビッド・フィンチャー)
 13.「トゥモロー・ワールド」(''06/アルフォンソ・キュアロン)
 14.「アクト・オブ・キリング」('12/ジョシュア・オッペンハイマー)
 15.「4ヶ月、3週と2日」('07)クリスティアン・ムンジウ
 16.「ホーリー・モーターズ」('12/レオス・カラックス)
 17.「パンズ・ラビリンス」('06/ギレルモ・デル・トロ)
 18.「白いリボン」('09/ミヒャエル・ハネケ)
 19.「マッドマックス 怒りのデス・ロード」('15/ジョージ・ミラー)
 20.「脳内ニューヨーク」('08/チャーリー・カウフマン)

マルホランド・ドライブ リンチ.jpg「マルホランド・ドライブ」●原題:MULHOLLAND DRIVE●制作年:2001年●制作国:アメリカ・フランス●監督・脚本:デイヴィッド・リンチ●製作:ニール・エデルスタイン/ジョイス・エライアソン/トニー・クランツ/マイケル・ポレール/アラン・サルド/メアリー・スウィーニー●撮影:ピーター・デミング●音楽:アンジェロ・バダラメンティ●時間:145分●出演:ナオミ・ワッツ/ローラ・ハリング/ジャスティン・セロー/アン・ミラー/ダン・ヘダヤ/ジェームズ・カレン/ャド・エヴェレット/リチャード・グリーン/ブレント・ブリスコー/ロバート・フォスター/マイケル・J・アンダーソン/リー・グラント●日本公開:2002/02●配給:コムストック●最初に観た場所:新宿ピカデリー(24-10-03)(評価:★★★★)

ローラ・ハリング/デイヴィッド・リンチ監督/ナオミ・ワッツ
     
ブルーベルベットbr.jpgブルーベルベット07.jpgブルーベルベット02.jpg「ブルーベルベット」●原題:BLUE VELVET●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デイヴィッド・リンチ●製作:フレッド・カルーソ●撮影:フレデリック・エルムス●音楽:アンジェロ・バダラメンティ●時間:121分●出演:カイル・マクラクラン/イザベラ・ロッセリーニ/デニス・ホッパーローラ・ダーン/ジョージ・ディッカーソン/ディーン・ストックウェル/ホープ・ラング●日本公開:1987/05●配給:松竹富士クラシック(評価:★★★☆)

デニス・ホッパーin「スピード」('94年/米)/ローラ・ダーンin「ジュラシック・パーク」('93年/米)
「スピード」ホッパー2.jpg ジュラシック・パーク」('93年).jpg
 

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