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父親に連れられて映画館で観た2本立て。谷啓の「ぴょん跳ね」と三船の「不動」。谷啓の「しばたき」と石原慎太郎の「しばたき」。
松森 健 監督・谷 啓 主演(酒井和歌子 共演)「空想天国 [DVD]」['68年]/石原慎太郎『スパルタ教育
』['69年]
山水建設設計部勤務の田丸圭太郎(谷啓)は母・久子(京塚昌子)との母ひとり子ひとりの暮らし。溺愛する「ガマラ」人形を見ていると、いつの間にかガマラが巨大化して動き出し、その背中に乗って空を飛ぶ白日夢を見るほどの空想家だった。空想の中ではいつも大活躍するが、現実の仕事は失敗ばかりで、同じ設計部の二枚目・前野(宝田
明)にいつも先を越され、いいところがない。その挙句、守衛に格下げされ、更には機密書類を盗まれために産業スパイの疑いを掛けられてしまう―。

昨年('10年)9月に亡くなった谷啓(1932-2010/享年78、自宅階段から転落して脳挫傷により急逝。認知症を患っていた)の主演映画で、12月の「銀座シネパトス」での追悼上映ラインナップにもあった作品ですが、ほぼ同時期に日本映画専門チャンネルでも放映されました。クレージー・キャッツ(故人はハナ肇、植木等、安田伸、石橋エータロー、そして谷啓。存命は2011年4月現在、犬塚弘、桜井センリの2人)らが総出演するシリーズ映画は、60年代を中心に撮られたものだけで25,6本ありますが、一方で、こうした谷啓主演の番外編的な映画も何本かあったのだなあと。アメリカのボードビリアンであるダニー・ケイの映画「虹を掴む男」('47年)を下敷きにしているとのことで、ダニー・ケイから芸名をとった谷啓の意向がかなり反映されているのではないかと思われます。
誘拐された宏子(酒井和歌子)を前野(宝田明)が救出に行くが失敗、田丸(谷啓)ともども囚われの身に。

監督は「これが青春だ!」('66年/東宝)の松森健で、共演はその「これが青春だ!」にも出演していた酒井和歌子。ガマラという着ぐるみっぽい怪獣が出てきて主人公の空想の手助けをしますが、その空想の中で出てくる理想の女性役が酒井和歌子で、それが現実世界では、産業スパイの一味に誘拐された守衛長の娘であり、最後は、主人公が彼女を救出し、2人は結ばれるというノホホンとしたコメディです。守衛長の娘が社長令嬢と間違えられて誘拐されるというのは、同じ東宝映画の、常務の運転手の息子が常務の息子と間違えられて誘拐されるという黒澤明の「天国と地獄」('63年/東宝)のパロディであり、「天国と地獄」で誘拐される子どもの父親の運転手を演じた佐田豊が、この映画では酒井和歌子演じる娘の父親の守衛長を演じています(社長令嬢役は「ウルトラセブン」の"幻のアンヌ隊員役"と言われる豊浦美子)。
この映画、公開時は三船敏郎主演の「連合艦隊司令長官 山本五十六」('68年/東宝)との2本立て併映で、実は2本とも中学生の時に父親に連れられて映画館で観た映画です。父にすれば「山本五十六」が主目的で「空想天国」の方はオマケという感じだったのでしょう。ちょっと結びつかない組み合わせだけど(同じ東宝映画で、酒井和歌子は両方の作品に出ている)、当時のサラリーマンは、「山本五十六」で男の生き方を学び、谷啓のコメディで息抜きしたのでしょうか。
「空想天国」のはラストシーンは明治記念館でのロケシーンで、庭池の飛び石を谷啓と酒井和歌子の2人がぴょんぴょん飛び跳ねるところで終わるのに対し、「連合艦隊司令長官 山本五十六」のラストは、三船敏郎演じる山本五十六が視察移動中の戦闘機の機中で敵の機銃を受けてもじっと動かない(実はすでに1発の銃弾が命中し、墜落前に絶命していることになっている)―対照的なエンディングで、どちらも鮮明に記憶に焼き付いています。
1968(昭和43)年8月1日 公開(「空想天国」「連合艦隊司令長官 山本五十六」2本立て(千代田劇場))「キネマ写真館」より
谷啓には、高速まばたき(所謂「しばたき」)の癖がありましたが、同じ癖の持ち主に石原慎太郎氏がいます。
早稲田大学で心理学を教えていた相場均先生が、石原慎太郎・裕次郎の兄弟を比較して、兄貴の慎太郎の「しばたき」の癖は、芸術家的繊細さの1つの現れであり(このことは、名トロンボーン奏者でもあった谷啓にも通じるかも)、兄の慎太郎よりは弟の裕次郎の方が精神的には図太いとしていましたが、「しばたき」が繊細さの現れであるとすれば、谷啓は、そのことによって他人を緊張させないように、自らをほんわかした、或いはトボケた雰囲気で包むように常に努めていて(時にサービス過剰に映ることもあったが)、一方、慎太郎氏は、そのことを周囲に悟られないように、努めて自分を豪胆に見せようとしている印象も受けます。

その慎太郎氏は、'69年に『スパルタ教育―強い子どもに育てる本』(カッパ・ホームズ)を著していて、その中には「ヌード画を隠すな」「いじめっ子に育てよ」「子どもに酒を禁じるな」「子どもの不良性の芽をつむな」とかいろいろ激しいフレーズがありますけれど、これで「強い子ども」が育つのかなあ。実際に育った3人の息子達は、そんな図太い感じはしないけど、この偽悪的とも思えるポーズは、弟の裕次郎を意識したのではないかと(実際、裕次郎主演で映画化されている―と言っても、元が小説ではないので、脚本は書き下ろしだが)。
この本、当時はベストセラーになりましたが、「本を、読んで良いものと悪いものに分けるな」とか、今主張している漫画規制の強化などとは言っていることが真逆のようにも思えるフレーズもあり(マンガは本ではないということか)、今読むと突っ込みどころ満載と言えるかも(昔は結構この人の小説も読んだのだが、その後ずっとあまり読む気がしない)。
「空想天国」●制作年:1968年●監督:松森健●製作:渡辺晋●脚本:田波靖男●撮影:西垣六郎●音楽:萩原哲晶●時間:84分●出演:谷啓/京塚昌子/奈加英夫/酒井和歌子/宝田明/北あけみ/藤岡琢也/佐田豊/藤
木悠/権藤幸彦/田中浩/木村博人/西岡慶子/中川さかゆ/矢野陽子/矢野間啓治/沢村いき雄/藤田まこと/頭師孝雄/中山豊/ハナ肇/桜井センリ/田崎潤/荒木保夫/ハンス・ホルネフ/小松政夫/豊浦美子/田辺和佳子●日本公開:1968/08●配給:東宝(評価:★★★)●併映:「連合艦隊司令長官 山本五十六」(丸山誠治)

酒井和歌子・司葉子 in「連合艦隊司令長官 山本五十六」(1968/08 東宝)ロビーカード

「連合艦隊司令長官 山本五十六」●制作年:1968年●監督:丸山誠治●特技監督:円谷英二●製作:田中友幸●脚本:須崎勝彌/丸山誠治●撮影:山田一夫●音楽:佐藤勝●時間:128分●出演:山本五十六(連合艦隊司令長官):三船敏郎/辰巳柳太郎/荒木保夫/堤康久/佐田豊/若宮忠三郎/豊浦美子/中谷一郎/伊吹徹/黒部進/黒沢年男/八世松本幸四郎/平田昭彦/土屋嘉男/藤木悠/佐原健二/田島義文/坂本晴哉/今福正雄/柳
永二郎/北龍二/向井淳一郎/岡部正/稲葉義男/太田博之/佐藤允/安部徹/久保明/加山雄三/宮口精二/藤田進/伊藤久哉/桐野洋雄/草川直也/森雅之/小鹿敦/岡豊/堺左千夫/緒方燐作/西条康彦/阿知波信介/酒井和歌子/司葉子/清水元/田村亮/渋谷英男/村上冬樹/池田秀一/加東大介/石
山健二郎/佐々木孝丸/清水将夫/宇留木康二/江原達怡/船戸順/(ナレーター)仲代達矢●日本公開:1968/08●配給:東宝(評価:★★★)●併映:「空想天国」(松森健)
「連合艦隊司令長官 山本五十六 [東宝DVD名作セレクション]」
森 雅之(内閣総理大臣・近衛文麿)

平田昭彦(渡辺戦務参謀)

リメイク版(2011年12月23日公開) 「聯合艦隊司令長官 山本五十六-太平洋戦争70年目の真実-」(東映)監督:成島出/主演:役所広司


森山高校に赴任してきた由木(夏木陽介)は型破りの熱血漢。授業では教科書を使わず、職員室では歯に衣着せぬ物言いで教師たちを驚かせる。生徒からの人気はうなぎ上りで、女生徒達は次々と由木に熱を上げる始末。そんな中、部員の成績悪化で廃部寸前のラグビー部を救うため、由木は奮闘するのだが―。(「シネマヴェーラ渋谷」2009年再映時のチラシより)


活)として映画化されています。そのため、東宝映画の方は「青春とはなんだ
」という既に日活で使われたタイトルではなく、「これが青春だ!」になったものと思われます。映画脚本はドラマのメインライターだった須崎勝弥、映画では石原慎太郎は"脚本監修"となっています(ドラマの方も好評のため延長となった第3クール第27話からは原作を離れたオリジナル・ストーリーになり、石原慎太郎は"脚本監修"となっている)。 『

り」というのが時代を感じさせ(まるでイヴ・ロベールの「わんぱく戦争」('61年/仏)か)、結局最後は由木が間に入って両校のラグビー試合で決着をつけさせることにしたというのが、話が旨く出来過ぎているような気もしますが...(因みにTVドラマ「青春とはなんだ」の最終回もラグビー対決で、日テレ入社3年目の徳光和夫アナ(当時26歳)が実況中継をしている)。

無理やりスナック勤めをさせられている相手高校の女生徒・香代を酒井和歌子が演じていて、実年齢も17歳と初々しく、この映画の第2弾とも言える松森健監督、夏木陽介主演の「でっかい太陽」('67年/東宝)でも、同じように相手高校の女子高生役で出ています(こちらも、
今度はラグビー試合ではなく"サッカー"対決で決着を図るという、競技種目を変えただけの鉄壁のワンパターン)。因みに酒井和歌子は、テレビ版では「青春とはなんだ」の 第13話「危険な年輪」の1話のみにやはり女子高生役で登場、6年後の村野武範主演の「飛び出せ!青春」(1972年2月-1973年2月)では教師役で準主演としてレギュラー出演しています。

「これが青春だ!」は布施明の歌うテーマソングもヒットしましたが、正月映画として公開された当時の併映が「
尚、この映画に出ていた野村美子役の豊浦美子(同じ松森健監督の「
「これが青春だ!」(映画)●制作年:1966年●監督:松森健●製作:森田信●脚本:須崎勝弥●脚本監修:石原慎太郎●撮影:西垣六郎●音楽:いずみたく
●主題歌「若い明日」歌:布施明(作詞:岩谷時子/作曲・編曲:いずみたく)●時間:92分●出演:夏木陽介/藤山陽子/団令子/佐藤允/黒沢年男/三木のり平/藤木悠/十朱久雄/田中春男/南都雄二/早崎文司/豊浦美子/岡田可愛/土田早苗/酒井和歌子/矢野間啓治/木村豊




太
郎(第27話以降は脚本監修)●出演:夏木陽介/藤山陽子/藤岡琢也/三遊亭金馬/名古屋章/加東大介/久保菜穂子/平田昭彦/十朱久雄/有島一郎/三井弘次/寺田農/豊浦美子/土田早苗/岡田可愛/矢野間啓治/木村豊幸/杉本哲章/藤木悠/十朱久雄/田崎潤/藤原釜足/寺田農●放映:1965/10~1966/11(全41回)●放送局:日本テレビ














「お葬式」('84年/ATG)で映画界に旋風を巻き起こした伊丹十三監督でしたが、個人的には続く第2作「

趣旨のことを後に述べていますが、確かに、鬼沢さえも黒幕に操られている駒の1つに過ぎなかったという展開は重いけれども、ラストは前作の方がスッキリしていて個人的には「1」の方がカタルシス効果が高かったかなあ。監督自身は、高い娯楽性と巨悪の存在を一般に知らしめることとの両方を目指したのでしょう。




「県庁の星」●制作年:2006年●監督:西谷弘●製作:島谷能成/
亀山千広/永田芳男/安永義郎/細野義朗/亀井修朗●脚本:佐藤信介●撮影:山本英夫●音楽:松谷卓●原作:桂望実「県庁の星」●時間:131分●出演:織田裕二/柴咲コウ/佐々木蔵之介/和田聰宏/紺野まひる/奥貫薫/井川比佐志/益岡徹/矢島健一/山口紗弥加/ベンガル/酒井和歌子/石坂浩二●公開:2006/02●配給:東宝(評価:★★★)


「スーパーの女」●制作年:1996年●監督・脚本:伊丹十三●製作:伊丹プロダクション●撮影:前田米造/浜田毅/柳島克巳/高瀬比呂志●音楽:本多俊之●原作:安土敏「小説スーパーマーケット」●時間:127分●出演:宮本信子/津川雅彦/三宅裕司/小堺一機/伊東四朗/金田龍之介/矢野宣/六平直政/高橋長英/あき竹城/松本明子/山田純世/柳沢慎吾/金萬福/伊集院光●公開:1996/06●配給:東宝(評価:★★★★)
「お葬式」●制作年:1984年●監督・脚本:伊丹十三●製作:岡田裕/玉置泰●撮
影:前田米造●音楽:湯浅譲二●時間:124分●出演:山
崎努/宮本信子/菅井きん/財津一郎/大滝秀治/江戸家猫八/奥村公廷/藤原釜足/高瀬春奈/友里千賀子/尾藤イサオ/岸部一徳/笠智衆/津川雅彦/佐野浅/小林薫/長江英和/井上陽水●公開:1984/11●配給:ATG●最初に観た場所:池袋日勝文化 (85-11-04)(評価:★★★☆)●併映「逆噴射家族」(石井聰互)




「マルサの女」●制作年:1987年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:前田米造●音楽:本多俊之●時間:127分●出演:宮本信子/山崎努/津川雅彦/大地康雄/桜金造/志水
季
里子/松居一代/室田日出男/ギリヤーク尼ヶ崎/柳谷寛/杉山とく子/佐藤B作/絵沢萠
子/山下大介/橋爪功/伊東四朗/小沢栄太郎/大滝秀治/芦田伸介/小林桂樹/岡田茉莉子/渡辺まちこ/山下容里枝/小坂一也/打田親五/まる秀也/ベンガル/竹内正太郎/清久光彦/汐路章/上田耕一●公開:1987/02●配給:東宝





徹他/マッハ文朱/加藤善博/浅利香津代/村井のりこ/岡本麗/矢野宣/笠智衆/上田耕一/中村竹弥/小松方正●公開:1988/01●配給:東宝●最初に観た場所:新宿シネパトス (88-03-12)(評価:★★★☆)●併映「マルサの女」(伊丹十三)
古さを感じさせない。政財界にわたっての丹念な取材の跡が窺える。




万俵財閥の当主で阪神銀行頭取の万俵大介の野望を軸に、それに翻弄される一族の姿を金融業界の内幕に絡めて描いた作品で、'73(昭和48)年の発表ですが、「金融再編」に伴う「銀行の合併問題」がモチーフになっているため、あまり古さを感じさせません。

同じ山崎豊子原作の映画化作品「
佐分利信であり、その佐分利信が演じる万俵大介と仲代達矢が演じる鉄平の"暗い血"にまつわる確執に重きが置かれていたような感じもしました。また、鉄平の最期が、大介の女婿を演じた田宮二郎の実人生での自殺方法と同じだったことに思い当たりますが、鉄平役は実は田宮二郎がやりたかった役だったそうです。
どうしても、こういう複雑なストーリーの話が映画化されると、情緒的な方向に重きがいってしまったりセンセーショナルな部分が強調されるのは仕方がありませんが(大介の「妻妾同衾」シーンなども当時話題になった)、それなりの力作でした。"いい人"がとにかく苛められる(相手方銀行の頭取の二谷英明とか)点で「白い巨塔」に共通するものを改めて感じたのと、農家の預金獲得のために、ワイシャツ姿で終日稲刈りまでする銀行員なども描いていて「銀行員って意外と泥臭いなあ」と思わされたりもしました。

も担当)/嵯峨善兵/荒木道子/小夜福子/中村哲/武内亨/梅野泰靖/浜田寅彦/花布辰男/下川辰平/伊東光一/田武謙三/若宮大祐/青木富夫/五藤雅博/生井健夫/白井鋭/夏木章/笠井一彦/守田比呂也/
鳥居功靖/堺美紀子/横田楊子/川口節子/森三平太/千田隼生/金親保雄/南治/麻里とも恵/木島一郎/坂巻祥子/隅田一男/久遠利三/鈴木昭生/記平佳枝/東静子/加納桂●劇場公開:1974/01●配給:東宝●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山本薩夫監督追悼特集) (84-01-08) (評価★★★☆) 京マチ子(万俵大介の愛人・高須相子)


阪重工社長・安田太左衛門)/小沢栄太郎(永田大蔵大臣)/仲代達矢(阪神特殊鋼専務・万俵鉄平)/加藤嘉(阪神特殊鋼常務・銭高)

[左奥から時計回りに]月丘夢路(万俵大介の妻・万俵寧子)/香川京子(長女・美馬一子)/京マチ子(家庭教師・高須相子)/山本陽子(長男鉄平の妻・万俵早苗)/中山麻理(次男銀平の妻)/酒井和歌子(次女・万俵二子)