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面白かったが重厚さはさほどなかった。映画化でますます浅くなった感じがした『人間の証明』。


『人間の証明』['76年/角川書店]/['77年/角川文庫]/['83年/講談社文庫]/['97年/カッパ・ノベルズ]『新装版 人間の証明 (角川文庫)』['04年]『人間の証明 (カッパ・ノベルス) 』['04年]『人間の証明 (角川文庫)』['15年]「人間の証明 角川映画 THE BEST [DVD]」「人間の証明 角川映画 THE BEST [Blu-ray]」

東京・赤坂にある「東京ロイヤルホテル」のエレベーター内で、胸部を刺されたまま乗り込んできた黒人青年ジョニー・ヘイワードが死亡した。麹町署の棟居弘一良刑事らは、ジョニーを清水谷公園から東京ロイヤルホテルまで乗せたタクシー運転手の証言から、車中で彼が「ストウハ」という謎の言葉を発していたことを突き止める。さらに羽田空港から彼が滞在していた「東京ビジネスマンホテル」まで乗せた別のタクシーの車内からは、ジョニーが忘れたと思われる恐ろしく古びた『西條八十詩集』が発見された。一方、バーに勤めていたとある女性が行方不明になる。夫の小山田は独自に捜索をし、妻・文枝の浮気相手である新見を突き止めるが文枝の居場所は分からなかった。文枝はこの時点で轢死しており、犯人は政治家郡陽平とその妻の家庭問題評論家・八杉恭子の息子・郡恭平だった。恭平は車の運転中、スピンを起こし文枝をはねてしまったのだ。発覚を怖れた恭平は同棲相手の路子と共に遺体を東京都西多摩郡の山林へ隠す。その後路子の勧めで身を隠すため、路子を伴ってニューヨークへ渡った。棟居刑事は「ストウハ」がストローハット(麦わら帽子)を意味すると推理した。また、事件現場であるホテルの回転ラウンジの照明が遠目には麦わら帽子のように見えるため、ジョニーがそれを見て現場に向かったのだと解釈した。また、タクシーから発見された詩集の中の一編の詩が「麦わら帽子と霧積(きりづみ)という地名」を題材としていたことと、ジョニーがニューヨークを去る際に残した「キスミー」という言葉から、捜査陣は群馬県の霧積温泉を割り出した。棟居らが現地に向かうと、ジョニーの情報を知っているであろう中山種という老婆がダムの堰堤から転落死していた。群馬県警は転落による事故と考えていたが棟居らは殺人事件と主張する。棟居らは中山種の本籍のある富山県八尾町へ向かう。そして捜査の中で、八杉が八尾出身であることを偶然発見する。更にアメリカ側からの捜査により、ハーレムに住むジョニーの父親が資産家アダムズの車に飛び込み示談金を得て、ジョニーの渡航費を捻出したことがわかる。父親はその後死亡した。新見によるひき逃げ事件の捜査も進み、現場に残されていた熊のぬいぐるみの所持者が恭平であること、ぬいぐるみに付着していた血液が文枝のものであることが明らかになると、新見は単身ニューヨークへ飛び、恭平からひき逃げと死体遺棄を白状させた。同じ頃、文枝の遺体がハイカーの大学生アベックに山中で発見され、その現場に恭平のコンタクトケースが落ちていたことで、犯人は恭平と断定された。新見から、恭平と路子の身柄が警察へ引き渡された。八杉とジョニーは生き別れた母子だった。ジョニーの父親は八杉と恋人同士であったが、当時は米国軍人と正式な結婚をすることが出来ず、親子3人で霧積温泉へ旅行した後、父親は二歳になるジョニーを連れて米国へ帰国し、日本に残された八杉は勧められるままに郡と見合結婚をした。ジョニーの存在が世間に知れ渡り、過去に黒人と関係を持っていた事実が露見することを恐れた恭子は自分に会いに来日したジョニーを殺害し、事情を知っている中山種も殺していた―。
作者が、1975年に父を引き継ぎ角川書店社長に就任した角川春樹から、「作家の証明書になるような作品を書いてもらいたい」と依頼されて書いた作品で、1975年に旧「野性時代」(角川書店)で連載されました。1976年・第3回「角川小説賞」受賞作。
映画監督の押井守氏が対談で、「『人間の証明』というのは松本清張みたいな話じゃん。『ゼロの焦点』とかあの辺の話だよね。戦後に暗い過去があって混血児を生んだ女が、いまはセレブになってるんだけどその息子が会いに来て、結局殺しちゃいましたというさ。これってまるっきり松本清張だよ」と言っていましたが、まさにそうだと思いました(「ストウハ」がストローハット(麦わら帽子)を意味したというところなどは、『砂の器』の「亀田」が「亀嵩」だったというのを想起させる)。
テンポよく読めて面白く、様々な伏線もちゃんと繋がっていて、文庫の解説で横溝正史が評価し、帯で宮部みゆき氏が推薦しているのも分かります。ただ、松本清張作品ほどの重厚さは感じられなかったでしょうか。戦後の闇市で強姦されかけていた恭子を助けた棟居の父は、米軍兵士たちに袋叩きにあって命を落としていますが、その米軍兵の一人がケン・シュフタン刑事だったというのも、あまりに偶然が過ぎて、ご都合主義的な気がしました(一方で、ケン・シュフタン刑事が混血だったと最後に出てくるが、途中どこにもその説明が無かったのが不可解)。
1977年、角川春樹事務所製作の第2弾として映画化され、八杉恭子を演じた岡田茉莉子は、角川春樹と作者で直接を出演依頼し、松田優作、ジョージ・ケネディらが日本映画で初めて本格的なニューヨークロケをしたとのこと。映画は途中までは原作に比較的近いですが、原作では棟居とケン・シュフタンの刑事同士接触はなく、棟居(松田優作)がアメリカに行ってケン・シュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)に会う辺りから急激に原作を外れてしまいます。作者自身は「映像化にOKを出した時点で、嫁に出すようなもの。好きに料理してくれ、という考えです」と言い、原作にはない米国ロケでアクションを繰り広げた松田優作にも感謝していたそうですが...。
それにしても原作から外れすぎ、と言うか、いろいろ付け加えすぎて、ますます浅くなった感じ。八杉恭子の息子・恭平(岩城滉一)は 、ヘイワード殺しの犯人を追っていたはずのニューヨーク市警ケン・シュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)に射殺されるし、息子の死の知らせを受けた八杉恭子は、授賞式の舞台で「あの子は私の生きがいです。 あの子は私の麦わら帽子だったんです。 私はすでに一つの麦わら帽子を失っています。 だからもう一つの麦わら帽子を失いたくなかったんです」という、黒人の息子より恭平の方が大事だったみたいな演説をぶって、最後は霧積まで行って『ゼロの焦点』よろしく自殺するし―。
莫大な宣伝費をかけたメディアミックス戦略の効果で映画はヒットし、実際、観た人の中には感動したという人も少なくなかったようですが、映画評論家からは酷評されました(第51回「キネマ旬報ベスト・テン」では第50位、読者選出では第8位)。「山本寛斎のファッションショーが延々と長すぎる」「松田優作が、テレビドラマのジーパン刑事そのままで何とも異様」等々。小森和子は雑誌の映画評で「日米合作としては違和感のない出来上がり。ただすべてが唐突な筋立て」と述べたように、滅多に悪く批判しない映画評論家までが映画作品としての密度の希薄さを指摘し、特に大黒東洋士と白井佳夫の批判がキツ過ぎ、この二人は角川関連の試写会をボイコットされたそうです。出演した鶴田浩二も映画誌で、「製作に12億かけて宣伝に14億かけるなんて武士の商法じゃない。本来、宣伝費は製作費の1割5分か2割でしょう。これは外道の商法です」と角川商法を批判しました。
批判の多さに原作者の森村誠一自身が激怒し、「作品中のリアリティと現実を混同したり、輪舞形式をとった設定をご都合主義と評したりするのは筋違いの批評...映画評論家は悪口書いて、金をもらっている気楽な稼業。マスコミ寄生人間の失業対策事業で、マスコミのダニ」などと映画評論家を猛烈に批判したとのことです。
いずれにせよ、メディアミックス戦略等で映画業界に1つ革新をもたらしたのは事実だと思いますが、そうしたビジネス上の功績と併せて、角川映画ってこんなものだという質的評価は、良くも悪くも映画「人間の証明」で定まってしまったように思います。



作者は、『人間の証明』の発表翌年に『野性の証明』を発表、東北の寒村で大量虐殺事件が起き、その生き残りの少女と、訓練中、偶然虐殺現場に遭遇した自衛の二人を主人公に、東北地方のある都市を舞台にした巨大な陰謀を描いた作品でした。こちらも発表翌年に高倉健、薬師丸ひろ子主演で映画化されましたが、大掛かりな分、多分に大味な映画になっていました。結局、高倉健演じる自衛隊の特殊部隊の隊員(味沢岳史)がある集落でたまたま正当防衛的に住民を殺してしまい、いろいろな経緯があって、薬師丸ひろ子演じる集落の生き残りの少女を守りながら、三國連太郎演じる日本のある地方を牛耳ってるボスと戦うというわけのわからない話である上に、映画では誰もが簡単に人を殺し、味沢もまたその例外ではなく、ラストも原作の味沢が細菌に侵されて狂人になってしまうというものではなく、異なる結末になっていました。まあ、とことん駄作にしてしまった感じ。結局は高倉健のカッコ良さも空回りしていて、お金をかけてこうした映画を撮る監督(どちらかと言うと製作者?)の気が知れないです。

「人間の証明」●英題:PROOF OF THE MAN●制作年:1977年●監督:佐藤純彌●製作:角川春樹/吉田達/サイモン・ツェー●脚本:松山善三●撮影:姫田真佐久●音楽:大野雄二(主題歌:ジョー山中「人間の証明のテーマ」)●原作:森村誠一●時間:133分●出演:岡田茉莉子/松田優作/ジョージ・ケネディ/ハナ肇/鶴田浩二/三船敏郎/ジョー山中/岩城滉一
/高沢順子/夏八木勲/范文雀/長門裕之/地井武男/鈴木瑞穂/峰岸徹/ブロデリック・クロフォード/和田浩治/田村順子/鈴木ヒロミツ/シェリー/竹下景子/北林谷栄/大滝秀治/佐藤蛾次郎/伴淳
三郎/近藤宏/室田日出男/小林稔侍(ノンクレジット)/西川峰子(仁支川峰子)/小川宏/露木茂/坂口良子/リック・ジェイソン/ジャネット八田/小川宏/露木茂/三上彩子/姫田真佐久/今野雄二/E・H・エリック/深作欣二/角川春樹/森村誠一●公開:1977/12●配給:東映(評価:★★★)
坂口良子(おでん屋の女将)/大滝秀治(おでん屋の客A)・佐藤蛾次郎(おでん屋の客B)


森村誠一(ロイヤルホテル チーフ・フロントマネージャー)/ジャネット八田(ハーレムで写真屋を営む女性・三島雪子...写真提供:吉田ルイ子)/深作欣二(渋江警部補)・長門裕之(なおみ(范文雀)の夫・小山田武夫)


「野性の証明」●制作年:1978年●監督:佐藤純彌●製作:角川春樹/坂上順/遠藤雅也●脚本:高田宏治●撮影:姫田真佐久●音楽:大野雄二(主題歌:町田
義人「戦士の休息」)●原作:森村誠一●時間:143分●出演:高倉健/薬師丸ひろ子/中野良子/夏木勲 /三國連太郎(特別出演)/成田三樹夫/舘ひろし/田
村高廣/松方弘樹/リチャード・アンダーソン/鈴木瑞穂/丹波哲郎/大滝秀治/角川春樹/ジョー山中/ハナ肇/中丸忠雄/渡辺文雄/北村和夫/山本圭/梅宮辰夫/成田三樹夫/寺田農/金子信雄/北林谷栄/絵沢萠子/田中邦衛/殿山泰司/寺田
農/芦田伸介(特別出演)/角川春樹
/ジョー山中●公開:1978/10●配給:日本へラルド映画=東映(評価:★★)
田中邦衛(八戸市のバーのマスター)/殿山泰司(八戸市のおでん屋台の主人)

『人間の証明』... 【1977年3月文庫化[角川文庫]/1977年3月新書化[カッパ・ノベルズ(『長編推理小説 人間の証明』)]/1983年再文庫化[講談社文庫]/1997年再文庫化[ハルキ文庫]/2004年再文庫化[角川文庫(『新装版 人間の証明』) ]/2004年再新書化[カッパ・ノベルズ(『長編推理小説 人間の証明』)]/2015年再文庫化[角川文庫(2004年角川文庫版に「永遠のマフラー」を併録)]】

2025.6.5 蓼科親湯温泉にて


『野生の証明』... 【1978年3月文庫化[角川文庫]/1978年3月新書化[カッパ・ノベルズ(『長編推理小説 野生の証明』)]/2004年再文庫化[角川文庫(『新装版 野生の証明』) ]/2015年再文庫化[角川文庫(2004年角川文庫版に「深海の隠れ家」を併録)]】
森村 誠一(1933年1月2日 - 2023年7月24日/90歳没)


吉田ルイ子(1934年または1938年7月10日 - 2024年5月31日/89歳没)2024年5月31日、老衰のため都内の介護施設で死去。89歳。




慶長15年、天下統一を図る家康(萬屋錦之介)は、大坂城の豊臣秀頼(小倉一郎)一党を討つための準備を進めている。一方、真田昌幸(片岡千恵蔵)・幸村(松方弘樹)父子も九度山で戦いの決意を固めていたが、昌幸は家康の間者に殺害され、幸村の妻・綾(萩尾みどり)は自刃を遂げる。幸村は穴山小助(火野正平)のみ残して他の家臣を上田城へ帰し、家康側についた兄・信幸(梅宮辰夫)と決別、亡父の遺志を継ぎ、家康の首をとる決心をする。家康の送った服部半蔵(曽根晴美)に殺された戸沢白雲斎(浜村純)の残した人名帖から、猿飛佐助(あおい輝彦)、霧隠才蔵(寺田農)、海野
六郎(ガッツ石松)、望月六郎(野口貴史)、筧十蔵(森田健作)、由利鎌之助(岩尾正隆)、根津甚八(岡本富士太)、三好伊三入道(真田広之)、三好清海入道(秋野暢子)などの草の者を集める。フランキー砲試射を見に来る家康を暗殺するために幸村と十勇士は出発するが、計画を見抜いた家康配下の半蔵の忍者部隊に幸村は片目を射抜かれる。家康は幸村達を豊臣が雇っ
た牢人と決めつけ、豊臣氏に叛逆の意図ありと口実を作り、徳川連合軍40万を大坂へ向けて進撃、1614年10月大坂冬の陣が始まる。報償金目当ての者、ひと旗上げようとする者が大坂に集まり、幸村と十勇士も大坂へ向かう。大坂城では徳川を迎え打つ軍議が開かれ
、籠城を主張する豊臣譜代衆と、野戦を主張する幸村達牢人衆が対立するが、淀君(高峰三枝子)の一言で籠城と決定、幸村は鉄壁の出城「真田丸」を作る。幸村は、小助に天竺渡来の麻薬を持たせ遊女たちと共に前田軍に送り込んで前田軍を骨抜きにし、翌日の合戦で真田軍が圧勝する。家康は和議の交渉を進め、フランキー砲の偶発に驚愕した淀君も和議に応じてしまうが、和議が済むと家康は大坂城の堀を埋めつくし、裸同然の無防備な城に一変させてしまう。そして、1615年4月大坂夏の陣が始まる―。
1979(昭和54)年公開の中島貞夫監督による東映"何でもあり"時代劇。冒頭、いきなり夜空から巨大隕石が落下してくる場面があり(「妖星ゴラス」('62年/東宝)かと思った
けれど、映画会社が違ったか)。この星に乗ってやってきたのがどうやら猿飛佐助だったらしく、最後は独りまた宇宙へ帰っていきます。超能力が使えるならばそれをもっと使えばいいのに、刀や徒手空拳で東映時代劇の殺陣の流儀に沿って闘っているというのもおかしいし、と思ったら、「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」と思い出したように九字を切る(とても宇宙から来たとは思えない)―という具合に、突っ込みどころは多く、穿った見方をすれば、そうした突っ込みどころを愉しむ映画なのかもしれません。
その外にも、真田昌幸(片岡千恵蔵)が、家康の間者が放った猫にひっかかれて死んでしまったり(猫の爪に毒が塗ってあった)、三好清海入道が朝鮮から連れてこられた姫君で切支丹のジュリアおたあ(秋野暢子)の変名であって、しかも
テレパシスト能力を有し、人の心を読み取ることが出来るという設定になっいていたり(三好清海入道の弟・三好伊三入道役は真田広之)、幸村が敵に片目を射抜かれて途中から"独眼竜政宗"みたいに眼帯をしていたり、加藤
清正(丹波哲郎)が大阪城内の座敷牢みたいなところでトラを飼っていたり...。幸村が十勇士だけ引き連れて徳川の大軍と戦っているのも非現実的ですが、極めつけはラストで、幸村が家康との一騎打ちの末その首を刎ね、家康の首が空高くぶっ飛びます(公開当時は「家康の首が50メートル飛ぶ!」という宣伝がなされていた)。
こうした荒唐無稽な内容でありながらも、ベースはNHK大河ドラマ「真田丸」などでもお馴染みの展開であり(ある意味、ラストの家康の死を除いては、後の「
の昌幸、萬屋錦之介の家康、高峰三枝子の淀君と、配役が超豪華です(思えば、片岡千恵蔵が「
難点の1つは、その十勇士達の個性がそれほど活かされておらず、真田の郷にいる時でも訓練行動の時から同じようなユニフォームで動き回っていて、何だかレインジャー部隊にしか見えない点でしょうか。正直、後でスチール写真で誰が誰だったか確認した次第(「将軍家光の乱心 激突」のように千葉真一こそ出ていないが、JACの面々は出ているみたい)。ただ動き回っているだけで、あまり演技させてもらっていない俳優達が可哀そうです。強いて言えば、三好清海入道を女性にしたことで、秋野暢子にドラマ部分を担わせた印象もありますが、これもちょっと弱かったか。別に難点は1つではなく、他に難点はと言われれば幾つでもありますが、むしろ突っ込みどころがあり過ぎてコメントし辛いという、超豪華「B級」時代劇、といった感じの作品でした。
「真田幸村の謀略」●制作年:1989年●監督:中島貞夫●特撮監督:矢島信男●脚本:笠原和夫/松本功/田中陽造/中島貞夫●撮影:赤塚滋●音楽:佐藤勝●時間:148分●出演:松方弘樹/寺田農/あおい輝彦/ガッツ石松/野口貴史/森田健作/火野正平/岩尾正隆/岡本富士太/真田広之/秋野暢子/片岡千恵蔵/梅宮辰夫/萩尾みどり/北村英三/村居京之輔/和田昌也/橘麻紀/谷川みゆき/浜村純/丹阿弥谷津子/小泉美由記/木村英/岡麻美/田中みき/市川好朗/志茂山高也/勝野賢三/タンクロウ/萬屋錦之介/小坂和之/進藤盛裕/茂山千五郎/金子信雄/香川良介/小林昭二/林彰太郎/江波杏子/川浪公次郎/壬生新太郎/曽根晴美/笹本清三/春田純一/福本清三/大矢敬典/木谷邦臣/平河正雄/奔田陵/志賀勝/丸平峰子/小峰隆司/池田謙治/司裕介/畑中伶一/山田良樹/藤沢徹夫/平沢彰/唐沢民賢/波多野博/阿波地大輔/宮城幸生/大城泰/秋山勝俊/高並功/泉好太郎/五十嵐義弘/小倉一郎/高峰三枝子/上月左知子/桜町弘子/松村康世/富永佳代子/星野美恵子/森愛/戸浦六
宏/梅津栄/野口元夫/白井滋郎/疋田泰盛/土橋勇/成田三樹夫/遠藤征慈/宮内洋/丘路千/中村錦司/丹波哲郎●公開:1979/09●配給:東映(評価:★★☆)
中島貞夫(なかじま・さだお)映画監督。2023年6月11日死去(88歳没)






三代将軍・徳川家光(京本政樹)の後継である竹千代(茂山逸平)は、乳母の矢島局(加納みゆき)と共に渓谷の湯屋で保養中、老中阿部重次(松方弘樹)の命を受けた伊庭庄左衛門(千葉真一)が指揮する根来忍者集団に襲撃されるが、堀田正盛(丹波哲郎)が雇った石河刑部(緒形拳)とその配下である多賀谷
六兵衛(長門裕之)・砥部左平次(織田裕二)・祖父江伊織(浅利俊博)・郡伝右衛門(荒井紀人)・土門源三郎(成瀬正孝)・猪子甚五右衛門(胡堅強(フー・チェンチアン))らに助けられ、堀田家に保護される。竹千代が狙われたのは、精神に異常をきたしていた家光の「竹千代は自分に似ていないから」という一存だけのためだった。竹千代は父・家光と対決することを決し、石河刑部たちは家光への怒りとそれに立ち向かう竹千代に意気を感じ、彼を護衛して江戸城へ向かう。その行く手を阻もうと伊庭庄左衛門が指揮する大軍が立ちはだかる―。
1989(平成元)年1月14日公開の中島貞夫と松田寛夫の脚本を降旗康男が監督した作品ですが、アクション監督を務めた千葉真一色の濃い作品です。徳川家光の後継を巡って阿部重次(松方弘樹)と堀田正盛(丹波哲郎)が対立、竹千代を護らんと堀田正盛が雇った石河刑部(緒形拳)ら7人の浪人たちが、阿部重次の命を受けた伊庭庄左衛門(千葉真一)の追撃をかわして竹千代を無事江戸に送り届けられるかという単純な構図で、ストーリーよりもアクションを楽しむ映画でしょうか(史実では、阿部重次、堀田正盛とも徳川家光のもとで老中を務め、家光が死去した際に両名とも殉死しており、映画の序盤で堀田正盛が斬死してしまうという展開そのものが最初から史実無視か)。
全編を通じて千葉真一率いるJAC(ジャパンアクションクラブ)の"顔見世興行" ならぬ"アクション見世興行"みたいな感じで、敵味方とも無駄なアクションも多く、「
られると飽きてきてしまい、やはりアクションだけでいい映画は作れないなあと。皆、躰を張って演っているのはよく分かるのですが、ロープシーンはブルーシートを使って撮影しているのが丸わかりだったし、終盤の長門裕之演じる六兵衛が人馬もろとも火だるまになりながら敵陣に突っ込む場面も、最初はスタントだったのが、途中から人も馬も人形になっている(車輪付き)のが分かってしまうといった具合でした。
クライマックスの緒形拳と千葉真一の1対1の対決シーンも、いつの間にか家の屋根の上に登ったりぴょんぴょん飛び跳ねてばかりで、これが
JAC流の殺陣なのでしょうか。緒形拳の方は殆ど足元や背中しか映らないので、スタントであることがすぐに判ってしまいます。松方弘樹が黒幕の役で自身は全然殺陣をやらなかったけれど、どちらかと言うと、松方弘樹 vs. 千葉真一の殺陣を見たかった気がします(でも、それだと完全に正統本格派とJACとの"他流試合"になってしまうのでマズイんだろうなあ)。
京本政樹が演じる徳川家光はホントにひどいご乱心ぶりで(他の時代劇映画ではマキノ正博監督の「
「将軍家光の乱心 激突」●制作年:1989年●監督:降旗康男●アクション監督:千葉真一●原作脚本:中島貞夫/松田寛夫●撮影:北坂清●音楽:佐藤勝(主題歌:THE ALFEE 「FAITH OF LOVE」)●時間:117分●出演:緒形拳/加納みゆき/二宮さよ子/真矢武(JAC)/織田裕二/浅利俊博(JAC)/荒井紀人/成瀬正孝 /丹波哲郎/長門裕之/胡堅強(フーチェンチアン)/茂山逸平/京本政樹/松方弘樹/千葉真一/福本清三/林彰太郎/有川正治/川浪公次郎/宮城幸生/笹木俊志/木谷邦臣/志茂山高也/小峰隆司/平河正雄/司裕介/小船秋夫/石井洋充/入江武俊/丘祐子/森松豊文/久米朗子/桃山舞子/陳国安/王松平●公開:1989/01●配給:東映(評価:★★☆) 

五代将軍綱吉治下、江戸市内に立てられた高札の「賄賂は厳禁のこと」の項が墨黒々と消され、犯人とおぼしき浪人・堀田隼人(大友柳太朗)が目明し金助(田中春男)に追われるが、堀部安兵衛(東千代之介)に救われる。赤穂五万石の当主・浅野内匠頭(大川橋蔵)は、勅使饗応役を命ぜらるが、作法指南役の吉良上野介(月形龍之介)は、内匠頭が賄賂
を贈らないため事毎に意地の悪い仕打ちをする。勅使登城当日、度重なる屈辱に耐えかね、松の廊下で上野介に刃傷に及ぶ。内匠頭は命により即日切腹、浅野家は改易に。赤穂城代・大石内蔵助(片岡千恵蔵)のかつての親友で、上野介の長子・綱憲(里見浩太朗)を当主とする上杉家の家老・千坂兵部(市川右太衛門)は、上野介お構いなしとの片手落ちの幕府の処断に心痛する。兵部は清水一角(近衛十四郎)に命じ、腕ききの浪人者を集め、上野介の身辺を守らせ、隼人も附人の一人となる。兵部は妹の仙(丘さとみ)に内蔵助らの動静をさぐることを命じ、隼人も赤穂に赴く。内蔵助は、同志に仇討ちの意志を
伝えて城を明け渡すと、京都山科に居を構えて祇園一力で遊蕩の日々を送り、妻子とも離別する。世の誹りの中、兵部だけは内蔵助の心中を知る。内蔵助は立花左近を名乗って東下りするが、三島の宿で本物の立花左近(大河内傳次郎)と鉢合わせになり、左近の情ある計らいで事無きを得る。内蔵助は討入り前に瑶泉院(大川恵子)を訪れ、言外に今生の別れを告げると、元禄14年12月14日雪の中、本所松坂町の吉良邸に討入る―。
松田定次監督による1961年の東映創立10周年記念作品。東映は同監督の1956年製作の東映創立5周年記念作品「赤穂浪士 天の巻・地の巻」、1959年製作の"東映発展感謝記念"「忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻」に続くオールスター・キャストの忠臣蔵映画であり、「赤穗浪士 天の巻・地の巻」などと同じく、大佛次郎(1897-1973/享年75)の、昭和初期に「東京日日新聞」に連載、1928年改造社より刊行の小説『
たのに対し、こちらは小国英雄の脚本。「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時は大石内蔵助を市川右太衛門が、浅野内匠頭を東千代之介が、立花左近を片岡千恵蔵、堀部安兵衛を堀雄二が演じていたのに対し、こちらは大石内蔵助を3年前の「忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻」の時と同じく片岡千恵蔵が(片岡千恵蔵は「
の人物を、「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時に続いて
演じています(この役は過去に大河内傳次郎や片岡千恵蔵も演じている)。因みに吉良上野介も、「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時に続いて月形龍之介が演じています。
豪華俳優陣がそれぞれに相応しい役を演じているという印象を受け、オーソドックスに作られたものの中では完成度はまずまず高いのではないでしょうか。まあ、大友柳太朗が演じる堀田隼人は完全に架空の人物であるし、千坂兵部(実在)も赤穂事件の2年前(1700年)に既に没していたことが後に判明しているため、"オーソドックス"というのはあくまでも大佛次郎の小説『赤穗浪士』をベースとして考えた場合ということになり、マキノ正博/池田富保監督の「
この大佛次郎原作・松田定次監督版の場合、やはり何と言っても大友柳太朗が演じる堀田隼人の存在が特徴的で、「賄賂は厳禁のこと」と書かれた立札に落書きし(この話は原作には無い)、賄賂を受け取っている吉良上野介を揶揄することで、浅野内匠頭の吉良上野介への怒りを単なる"私憤"の域に止めず"公憤"の域にまで引き上げ、観客が浅野内匠頭に同情しやすい状況を作り出す役割を果たしているように思います。でも、結局隼人自身は、浪士たちに共感を覚えながらも自らを浪士たちに同化しきれないことを悟って、スパイ同士の関係から恋仲になった仙の下へ戻って行きます。映画からは隼人が自らが抱える虚無を克服できなかったことが窺えますが、原作では後日譚として隼人と仙は心中したとなっています(原作では仙は兵部の妹でも何でもない非血縁者)。
あとは目立ったのは、浅野内匠頭のことを心配していた中村錦之助(萬屋錦之介)演じる脇坂淡路守。吉良上野介ごときで命を落とすのは惜しいと内匠頭に辛抱を説き、浅野家臣には上野介への付け届をもう少し配慮しろとの実践的アドバイスをしています(この人の言うことを聞いていれば赤穂事件は起きなかった?但しこの話も原作には無い)。しかし、遂に刃傷事件が起きてしまって悔しがり、松の廊下を搬送される吉良にわざと(?)ぶつかって「我が家の紋所を不浄の血でけがすとはなにごとぞ!無礼者!」と言って吉良上野介を扇子でしたたか打ち据えます(この話も原作には無い)。でもこれはまあ立花左近の"勧進帳"(大石東下り)と併せて定番と言えば
定番です。むしろ、市川右太衛門演じる上杉家の家老・千坂兵部
後半の目立ちぶりが顕著だったかも。千坂兵部は内蔵助と旧知の関係になっていて(原作には無い設定)、なぜか内蔵助が立花左近と鉢合わせになった三島の宿にまで出没し、内蔵助と目と目だけの"会話"。最後は、父親の危機に馳せ参じようとする上野介の長子・綱憲(里見浩太朗)を上杉家のためだと言って(世間は皆、赤穂浪士側を支持していますとの殆ど観客向けのような説明の仕方がスゴイけれど)命を張って押しとどめます(原作では赤穂浪士討ち入りの時点で千坂兵部は国元に戻されているため、この場面も無い)。
松方弘樹(1942年生まれ、デビュー2作目で当時18歳)が大石内蔵助の息子・大石主税役で出ていて、討ち入り前に元服しますが(実在の大石主税は当時15歳ぐらいか)、討ち入った先に近衛十四郎(松方弘樹の実父)が演じる二刀流の剣豪・清水一角がいるという取り合わせが興味深いです(清水一角は歌舞伎で使われた名前で、本名は清水一学(実在))。"親子出演"で、親子を敵味方にしてしまったのだなあ。近衛十四郎の剣戟がちらっと見られるのはいいです(松方弘樹の方はまだ、ただ出ているだけ程度の存在か)。
く、後に吉良上野介も演じるがここでは忠義の家臣)も良かったです。オールスター映画ですが、ストーリーは概ね定番です(但し、改めて振り返ると、大佛次郎の原作と比べても細部においては「無い無い尽くし」であるため、「(原作をベースに考えれば)オーソドックス」の"オーソドックス"には?マークがつくが)。そうした意味では、個々の役者を楽しむ映画かもしれません。長谷川一夫主演の「
「赤穂浪士」●制作年:1961年●監督:松田定次●製作:大川博●脚本:小国英雄●撮影:川崎新太郎●音楽:富永三郎●原作:大佛次郎「赤穂浪士」●時間:150分●出演:片岡千恵蔵/中村錦之助(萬屋錦之介)/東千代之介/大川橋蔵/丘さとみ/桜町弘子/三原有美子/藤田佳子/花園ひろみ/大川恵子/中村賀津雄(中村嘉葎雄)/松方弘樹/里見浩太郎/柳永二郎/宇佐美淳也/堺駿二/田中春男/多々良純/尾上鯉之助/徳大寺伸/香川良介/小柴幹治/片岡栄二郎/堀正夫/高松錦之助/有馬宏治/楠本健二/月形哲之介/瀬川路三郎/団徳麿/小田部通麿/潮路章/有川正治/南方英二(後のチャンバラトリオ)/遠山金次郎/尾上華丈/大前均/中村錦司/赤木春恵/上代悠司/国一太
郎/水野浩/中村時之介/北龍二/明石潮/清川荘司/吉田義夫/星十郎/沢村宗之助/戸上城太郎/阿部九洲男/加賀邦男/長谷川裕見子/花柳小菊/青山京子/千原しのぶ/木暮実千代/大
河内傳次郎/近衛十四郎/山形勲/薄田研二/進藤英太郎/大友柳太朗/月形龍之介/市川右太衛門●公開:1961/03●配給:東映(評価:★★★☆)


江戸築地明石町の伊三郎(高山徳右衛門)一家は、真の任侠道に生きることを信条としていた。一方、任侠道の裏を行く新興の但馬屋の仁右衛門(荒木忍)は、悪徳商人の丸谷惣平(大国一広)と組んで明石町の長屋を立ち退かせ、そこに歓楽街を作って、伊三郎一家を蹴落そうとしていた。伊三郎一家の三ン下の政吉(片岡千恵蔵)は、長屋で母おかね(二葉かほる)と二人暮しで、隣家の浪人小磯文之進(長浜藤夫)の娘お雪(琴糸路)とは相思の仲だった。政吉の兄貴分の弥吉(原聖三郎)が但馬屋一家の企みを知り、密かに但馬屋一家へ掛け合いに行くが、やがて水死体となって大川に浮かぶ。憤怒した政吉は単身但馬屋に乗り込むが、子供扱いされ追い返される。悔しさを伊三郎に訴える政吉を、親分は「何も恥じるこたねえ。おめいにはまだ貫禄が足りねいのだ」と諭し、「修行して立派な男になって帰って来い」と励まし旅に出す。そして3年、世は明治となり、但馬屋一家は官権溜池の御前(大井正夫)を黒幕に勢力を広げていた。御前は芸妓雪松に懸想し、仁右衛門が口説き役に廻ったが雪松はうんと言わない。雪松こそ病に伏す父のため芸妓になったお雪だった。そんな折政吉が旅から帰って来て、強引に立ち退き工作を進める但馬屋一家の横暴を知った政吉は但馬屋一家に乗り込むが、そこに大親分鮫洲の卯之助(小川隆)の仲裁が入り、事は納ったかにみえた。しかし、但馬屋一家は卯之助を謀って仲裁を無効にし、大挙して伊三郎一家を襲撃、親分にもケガを負わせる。今まさにお雪と祝儀を挙げたばかりの政吉は、これを知って単身但馬屋一家へ乗り込み、遂に仁右衛門を叩き斬る。そんな政吉に旅に出ることを勧める親分に対し、政吉は新時代に生きる人間になりたいと言い自首しに行く―。
太平洋戦争が始まってちょうど丸1年経った頃の1942(昭和17)年12月11日公開の八尋不二のオリジナル脚本、森一生監督作で、1962(昭和37)年に同じく八尋不二のオリジナル脚本、森一生監督により勝新太郎、小山明子主演でリメイクされています。
例えば、上記シリーズの中で最も早く作られたマキノ雅弘監督の「日本侠客伝」('64年/東映)も、深川木場の材木を運び出す運送業者の木場政組と親興の沖山運送の対立が背景にあって、新興やくざの非道に対して、昔気質の一家がじっと忍耐した末に斬り込みに行くというストーリーはよく似ているし、旅に出ていた片岡千恵蔵・政吉が戻って来て一家の危機を救うという構図は、出征先から戻って来た高倉健・長吉が一家を救うのと同じです(この映画でも高倉健は最後着物をはだけて上半身裸になるが、長吉は軍人上がりで躰に入れ墨はない)。
一方、「日本侠客伝」における狭い意味での"侠客"は、中村錦之助演じる一家の"客人"清治でしょう(当初は中村錦之助が主演予定だったが、中村錦之助のスケジュールがつかず、高倉健を主演にした脚本に変更された)。清治は、世話になった親分への義理のために覚悟して死地へ向かいますが、その女・三
田佳子演じるお咲には彼が何を考えているか分かっていて、こちらもそれを制止することなく最後の杯を交わして男を送り出します。一方の高倉健・長吉は、清治の遺体を見て意を決し、まさかそんなことになるとは思ってもいない恋仲の富司純子・お文には黙って何も告げず、敵方へ斬り込みに向かいます。ここでの富司純子は、「緋牡丹博徒」(シリーズ1968-1972、全8作)が始まる前の"お穣さん"的な役柄ですから、「三代の盃」で琴糸路・お雪に対応する役は(お雪も武家の娘でお嬢さんではあるが)、その精神性においては富司純子のお文よりむしろ三田佳子のお咲であるとも言えます。
「三代の盃」の片岡千恵蔵は、三ン下の頃は江戸時代で髷であるのが、旅から戻って来た時は明治で散切りですが、三ン下の頃からすでに貫禄が隠し切れず、やや窮屈そうな演技でしょうか(「
尚、片岡千恵蔵版で政吉が旅に出てからの年月の経過を表すために、旅芸人一座が街道を行くシーンとその一座の久保幸江(1924-2010/享年86)の歌が流れますが、久保幸江のデビューは1948年であり、これは戦後に久保幸江を特別出演させてフィルムを改修したものだそうです。やはり、そうしたシーンで入れて時間的経過を表す間を持たせないと、場面が切り替わって髷から散切りになっただけでいきなりすぐに迫力が増すというのは、当時としても観ていてやや唐突な印象があったのではないかという気がします。
「三代の盃(花嫁一本刀)」●制作年:1942年●監督:森一生●脚本:八尋不二●撮影:松村禎三●音楽:西梧郎●時間:67分●出演:片岡千恵蔵/琴糸路/高山徳右衛門/林寛/荒木忍/近松里子/長浜藤夫/原聖四郎/小川隆/大井正夫/香
住佐代子/二葉かほる/梅村蓉子/ 仁札功太郎/岬弦太郎/川崎猛夫/石川秀道/大国一公/水野浩/横山文彦 /久保幸江●公開:1942/12●配給:大映(京都撮影所)(評価:★★★☆)
「日本侠客伝」●制作年:1964年●監督:マキノ雅弘●脚本:笠原和夫/
野上龍雄/村尾昭●撮影:三木滋人●音楽:斎藤一郎●時間:98分●出演:中村錦之助(萬屋錦之介)/高倉健/大木実/松方弘樹/田村高廣/長門裕之/藤間紫/富司純子/南田洋子/三田佳子/伊井友三郎/ミヤコ蝶々/津川雅彦/島田
景一郎/五十嵐義弘/南都雄二/徳大寺伸/加藤浩/佐々木松之丞/島田秀雄/堀広太郎/那須伸太朗/大城泰/安部徹/天津敏/品川隆二/国一太郎/佐藤晟也/大井潤/月形哲之介/大前均/楠本健二/有馬宏治/内田朝雄●公開:1964/08●配給:東映(評価:★★★☆) 



広能昌三(菅原文太)は復員後、遊び人の群れに身を投じていたが、山守組々長・山守義雄(金子信雄)はその度胸と気風の良さに感心し、広能を身内にする。まだ小勢力だった山守組は、土居組との抗争に全力を注ぐ。その土居組を破門された若頭・若杉(梅宮辰夫)が山守組に加入し、若杉による土居(名和宏)殺害計画が進む―。 

「仁義なき戦い 広島死闘篇「('73年)、「仁義なき戦い 代理戦争」('73年) 、「仁義なき戦い 頂上作戦('74年)、「仁義なき戦い 完結篇」('74年)も続けて観ましたが、広能の他にも、松方弘樹演じる板井や梅宮辰夫演じる若杉などサブヒーロー的な登場人物がいることはいますが、彼らは皆、この第1作の中で死んでしまいます。
シリーズの後の方になると、死んだ人物の役を演じた俳優がまた別の役で出てくるので、観ていて妙な感じがします。第1作における梅宮辰夫の「若杉」などは結構キーパーソンだったのですが、第3作「仁義なき戦い 代理戦争」と第4作と「仁義なき戦い 頂上
作戦」には「明石組幹部 岩井信一」の役で出演しています。この役を演じるのに際して眉毛を剃り落としましたが、これは、岩井のモデルで
ある三代目山口組若頭の山本健一に眉毛がなかったためで、眉のない父の顔を見た娘の梅宮アンナ(1972年生まれ)は、怖くて泣いたそうです。でも、このシリーズの演技で最も飛躍した俳優の一人が彼、梅宮辰夫であり、異なった役を演じ切ったこともその要因としてあったのでは。違った役と言えば、第3作に第1作と別の役で出てくるのは渡瀬恒彦も然り。しかも、ストーリー的には、この第3作が第1作の続編となっているのでややこしいです。松方弘樹は第4作「頂上作作戦」で別の役で登場、第5作「完結篇」でさらに別の役で出てきます。
松方弘樹 in「仁義なき戦い」(坂井鉄也・射殺される)/「仁義なき戦い頂上作戦」(藤田正一(射殺される)/「仁義なき戦い完結編」(市岡輝吉・射殺される)
準主役級でさえそうですから、主に殺され役である川谷拓三などは第1作から第5作まで全部異なる役で登場しており、一方で、小林旭は第3作から第5作まで、山城新伍は第2作から第5作まで同じ役で出ていたりもします。流れとしては、誰か特定の個人の生き様を追うというよりは、次第に"群像活劇"の色合いを濃くしていくという感じでしょうか(広能が結構長く刑務所に入っている期間があって、必ずしも毎回は表舞台に出てはこないということもある)。

菅原文太は、'60(昭和35)年の正月映画「女奴隷船」(新東宝)に26歳で主演しています。この作品は舟崎淳の「お唐さん」を基にした和風海洋アドベンチャー(?)で、これ、昭和20年初頭の時代設定なのですが(「仁義なき戦い」と大差ない)、日本女性を上海まで運んでセリにかけて売り飛ばす「お唐さん船」というものがストーリー背景となっています。
善玉主人公が菅原文太で(この頃は何となく的場浩司と似ている)、悪役は丹波哲郎(この人は昔からこんな感じだったんだなあと)、女優陣は新東宝のセクシー看板女優・三原葉子に、この映画を撮った小野田嘉幹監督と結婚することになる三ツ矢歌子など。
菅原文太は丹波哲郎とのアクション対決を演じたりしましたが、う~ん、スゴイ「B級」の冒険アクション&お色気映画。ダサいセットが微笑ましく、但し、東映風のミニチュア特撮を駆使したりしている努力は買えます。音楽は、東大文学部卒心理学科卒で作曲家になった渡辺宙明(1925-font color=red>2022/96歳没)です。
丹波哲郎の海賊の統領役はあまりに漫画チックで笑
えますが(洋画の影響?)、これでも作品全体としては新東宝作品群の中では相対的にみてゴージャスな方
と言ってよく(この作品は'60年の新東宝のお正月映画であり、新東宝は翌'61年に倒産する)、三原葉子の
ベリーダンスもどきの踊り(これも洋画の影響?)が見ることができるなど、「珍品」的意味合いで星1個オマケという感じ

(●映画評論家の春日太一氏が「週刊文春」2023年6月22日号「春日太一の木曜邦画劇場」で「女奴隷船」を取り上げ、「まるで漫画『ワンピース』からそのまま飛び出してきたような個性的
なキャラクターたちが、所狭しと暴れまくる。」と評していた。そう言えば、その「ONE PIECE」の劇場版の「FILMシリーズ」の第4作「ONE PIECE FILM RED(フィルム・レッド)」('22年/東映)を昨年['22年]観たが、メインヒロインは"世界の歌姫"ウタで、歌唱部分はAdoが担当。歌唱力はあると思ったが、ウタのキャラクターが「世界中の苦しんでいる人々を自分の歌で幸せにしよう」と考えるのは結構だけど、"独善"が目立つように思え、子どもと観に行ったということもあり、少し気になった。東映が配給した映画で初の興収200億円突破の映画となったそうで、興行的には成功を収めたが、個人的には△評価。)

「仁義なき戦い 〈シリーズ第1作〉」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干
晃一●時間:99分●出演:菅原文太/松方弘樹/田中邦衛/金子信雄/梅宮辰夫/成田三樹夫/渡瀬恒彦/曽根晴美/川地民夫/田中邦衛/名和宏/内田朝雄/伊吹吾郎/川谷拓三/中村英子/木村俊恵/渚まゆみ/内田朝雄/三上真一郎/高野真二/高宮敬二/林彰太郎/中村錦司/野口貴史/大前均/志賀勝/岩尾正隆●公開:1973/01●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)●併映:「仁義なき戦い 広島死闘篇」/「仁義なき戦い 代理戦争」/「仁義なき戦い 頂上作戦」/「仁義なき戦い 完結篇」(何れも深作欣二) 


「仁義なき戦い 広島死闘篇」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:100分●出演:菅原文太/前田吟/松本泰郎/司裕介/金子信雄/木村俊恵/名和宏/成田三樹夫/北大路欣也/山城新伍/宇崎尚韶/笹木俊志/木谷

邦臣/小池朝雄/堀正夫/遠藤辰雄/国一太郎/川谷拓三/藤沢徹夫/白川浩二郎/千葉真一/大木晤郎/室田日出男/八名信夫/志賀勝/広瀬義宣/北川俊夫/加藤嘉/中村錦司/梶芽衣子●公開:1973/04●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)
前田吟(広能組若衆・島田幸一)/千葉真一(大友組組長・大友勝利)/加藤嘉(大友連合会々長・大友長次)


戦争」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:102分●出演:菅原文太
/小林旭/渡瀬恒彦/山城新伍/池玲子/金子信雄/木村俊恵/成田三樹夫/加藤武/山本麟一/川谷拓三/北村英三/汐路章/内田朝雄/遠藤辰雄/室田
日出男/大前均/野口貴史/曽根晴美
/名和宏/丹波哲郎/梅
宮辰夫/田中邦衛●公開:1973/09●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)

「仁義なき戦い 頂上作戦」●制作年:1974年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:101分●出演:菅原文太/梅宮辰夫/黒沢年男/田中邦
衛/小林旭/松方弘樹/堀越光恵/木村俊恵/中原早苗/渚まゆみ
/金子信雄/小池朝雄/山城新伍/加藤武/夏八
木勲/遠藤太津朗/内田朝雄/長谷川明男/小倉一郎/葵三津子/城恵美/八名信夫/汐路章/室田日出男/鈴木瑞穂/野口貴史/小林稔侍/岡部正純/高月忠/白川浩二郎/有川正治●公開:1974/01●配給:東映
●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★
★☆)

「仁義なき戦い 完結篇」●制作年:1974年●監督:深作欣二●脚本:高田宏治●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:98分●出演:菅原文太/伊吹吾郎/野口貴史/寺田誠/桜木健一/松方弘樹/唐沢民賢/白川浩三郎/小林旭/北大路欣也/西田良/曽根晴美/成瀬正孝/宍戸錠/山田吾一/誠直也/織本順吉/高並功/八名信夫/山城新伍/木谷邦臣/田中邦衛/国一太郎/川谷拓三/金子
信雄/岩尾正隆/鈴木康弘/天津敏/内田朝雄/野川由美子/藤浩子/中原早苗/橘麻紀/賀川雪絵●公開:1974/06●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)

「女奴隷船」●制作年:1960年●監督:小野田嘉幹●製作:大蔵貢●脚本:田辺虎男●撮影:山中晋●音楽:渡辺宙明●原作:舟崎淳「お唐さん」●時間:83分●出演:菅原文太/三原葉子/三ツ矢歌子/丹波


「ONE PIECE FILM RED」●制作年:2022年●監督:谷口悟朗●脚本:黒岩勉●音楽:中田ヤスタカ(主題歌:Ado「新時代」(オープニングテーマ・劇中歌)/Ado「風のゆくえ」(エンディングテーマ・劇中歌)●原作:尾田栄一郎●時間:115分●出演(声):田中真弓/中井和哉/岡村明美/山口勝平/平田広明/大谷育江/山口由里子/矢尾一樹/チョー/宝亀克寿/名塚佳織/Ado/津田健次郎/池田秀一●公開:2022/08●配給:東映●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸(22-08-15)(評価:★★☆)