「●ほ アンソニー・ホロヴィッツ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●ま ロス・マクドナルド」【680】 ロス・マクドナルド 『ウィチャリー家の女』
「●「週刊文春ミステリー ベスト10」(第1位)」の インデックッスへ 「●「このミステリーがすごい!」(第1位)」の インデックッスへ「●「本格ミステリ・ベスト10」(第1位)」の インデックッスへ 「○海外サスペンス・読み物 【発表・刊行順】」の インデックッスへ
年末ミステリランキング4年連続3冠。『カササギ殺人事件』に続き「1作品で2度美味しい」。



『ヨルガオ殺人事件 上 (創元推理文庫)』『ヨルガオ殺人事件 下 (創元推理文庫) 』
アラン・コンウェイ作『カササギ殺人事件』にまつわる事件に巻き込まれてから2年。出版業界を離れたスーザン・ライランドはギリシャに移り住み、恋人のアンドレアスと共にホテルを営んでいた。しかし、経営はギリギリで心の余裕もなく、イギリスに戻ることを考えていた。ある日、イギリスで高級ホテルを経営しているトレハーン夫妻がスーザンのもとを訪れ、失踪した娘のセシリーの捜索を依頼される。なんと、ホテルで8年前に起きた殺人事件の真相がアティカス・ピュントシリーズ3作目の『愚行の代償』に隠されているのだという。スーザンは事件の関係者たちに話を聞いてまわり、アランの作品を読み返すことになる。果たして、8年前の真相とスーザンの失踪の関係は、そして作品に隠された真相とは一体何なのか―。
「このミステリーがすごい!」(宝島社)2022年版海外篇・第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」(週刊文春2021年12月9日号)海外部門・第1位、「2022本格ミステリ・ベスト10」(原書房)第1位を獲得し、『カササギ殺人事件』『メインテーマは殺人』『その裁きは死』による3年連続での年末ミステリランキング3冠を更新し、〈4年連続3冠〉となりました。ただし、「ミステリが読みたい!2022年版」(ハヤカワ・ミステリマガジン2022年1月号)だけ第2位だったため、〈4年連続4冠〉は成らなりませんでした(1位は『自由研究には向かない殺人』(ホリー・ジャクソン))。
2020年8月原著刊行。『カササギ殺人事件』の続編(事件はまったく異なる事件)であり、主人公は同じスーザン・ライランド。編集者を辞め、ロンドンからパートナー・アンドレアスと共にクレタ島に移りホテルを経営しています。『カササギ殺人事件』と同じく「現実編」と「小説編」から成りますが、文庫上巻が「小説編」で下巻が「現実編」だった『カササギ殺人事件』に対して、こちらは、「現実編」の真ん中に、文庫の上下を繋ぐような形で「小説編」である『愚行の代償』が入っており、このまさに「入れ子」構造となっている『愚行の代償』だけで1つの推理小説として緊迫感を持って読めます。
まあ、『カササギ殺人事件』に続いて「1作品で2度美味しい」という感じでしょうか。敢えて惜しかった点を指摘すれば、『愚行の代償』(「小説編」)の謎解きが本編(「現実編」)の謎解きと直接的にはリンクしていなかったことでしょうか。文庫下巻で本編の登場人物一覧と、小説編の登場人物一覧の両方に指を挟んで、見比べながら読んだ割には、正直やや拍子抜けさせられた印象もあります。
でも、上下巻で一気に読ませる力量はさすが。分量はあっても無駄がないと言うか、これは作者ならではという感じ。ただ、「現実編」「小説編」共かなり登場人物が多いので、ややマニアックになっている印象はありました(「現実編」の登場人物がかなり『カササギ殺人事件』から引き継がれている分、緩和されている面もあるが)。
最後の方では、主人公が結構いきなり誰が犯人か閃いたようで、思わずそこでいったん本を置いて、居住まいを正し(笑)一呼吸置いてから読み進みました。随所にアガサ・クリスティへのオマージュが見られるのも楽しかったですが、犯人に至る伏線が記号として織り込まれていたことは、謎解きがああってから分かりました(プロットではなく記号だった)。
『カササギ殺人事件』とどちらが上かと言うと、「現実編」に対し「小説編」が「入れ子」構造となっている分、『カササギ殺人事件』より洗練されていた(加点要素)とも言えるし、でも、「小説編」の現実の事件の解決ポイントがプロット的なものではなかったことへの物足りなさ(減点要素)もあるし、まあ、いい勝負という感じでしょうか。何れにせよ、そこいらの並みの推理小説よりはずっと面白いので「◎」です。


2021(令和3)年下半期・第166回「直木賞」、2021(令和3)年度・第12回「山田風太郎賞」受賞作。① 2021(令和3)年度「週刊文春ミステリー ベスト10(週刊文春2021年12月9日号)」(国内部門)第1位、② 2022(令和4)年「このミステリーがすごい!(宝島社)」(国内編)第1位、③「2022本格ミステリ・ベスト10(原書房)」国内ランキング第1位、④ 2022年「ミステリが読みたい!(ハヤカワミステリマガジン2022年1月号)」(国内編)第1位の、国内小説では初の「年末ミステリランキング4冠」達成。2022年・第19回「本屋大賞」第9位。そして先月['22年5月]、2022年・第22回「本格ミステリ大賞」も受賞(もろもろ併せて「9冠」になるとのこと(下記《読書MEMO》参照))。
作者のこれまでの警察物や海外ものとはがらっと変わった時代物で、しかも荒木村重という戦国武将の中では数奇な生涯を送った人物を取り上げたのも良かったと思います(NHKの大河ドラマでは、'14年の岡田准一主演の「軍師官兵衛」で、田中哲司の演じた荒木村重が印象深い)。
因みに、主要登場人物の一人、荒木村重の妻・千代保(荒木だし。村重の妻だが、正室か側室かは不明だそうだ)は「絶世の美女」と称されたそうですが(大河ドラマでは村重に隠れて囚われた官兵衛の世話をしていた)、有岡城落城後に捕えられるも城主の妻として潔くすべてを受け入れ、京の六条河原で一族の者とともに処刑されています。一方、荒木村重の方は、だし等一族が処刑されたことを知ると「信長に殺されず生き続けることで信長に勝つ」ことを誓って尼崎城から姿を消したとのこと。そうした村重の信長の逆を行くという思いは、この作品でも示唆されているように思われます。


「軍師官兵衛」●脚本:前川洋一●演出:田中健二ほか●プロデューサー:中村高志●時代考証:小和田哲男●音楽:菅野祐悟子●出演:岡田准一/(以下五十音順)東幹久/生田斗真/伊吹吾郎/伊武雅刀/宇梶剛士/内田有紀/江口洋介/大谷直子/大橋吾郎/忍成修吾/片岡鶴太郎/勝野洋/金子ノブアキ/上條恒彦/桐谷美玲/黒木瞳/近藤芳正/塩見三省/柴田恭兵/春風亭小朝/陣内孝則/高岡早紀/高橋一生/高畑充希/竹中直人/田中圭/田中哲司/谷原章介/塚本高史/鶴見辰吾/寺尾聰/永井大/中谷美紀/二階堂ふみ/濱田岳/速水もこみち/吹越満/別所哲也/堀内正美/眞島秀和/益岡徹/松坂桃李/的場浩司/村田雄浩/山路和弘/横内正/竜雷太(ナレーター)藤村志保 → 広瀬修子●放映:2014/01~12(全50回)●放送局:NHK



実直さが評判の離婚弁護士リチャード・プライスが殺害された。未開封のワインボトルで殴打され、砕けたボトルで喉を刺されていたのだが、これは裁判の相手方が彼に対して口走った脅し文句に似た方法だっ
た。プライスは一千万ポンドの財産をめぐる離婚訴訟を受け持っていて、その相手はアキラ・アンノという有名な小説家であり、彼女は多くの人がいるレストランで、プライスにワインのボトルでぶん殴ってやると脅しともとれる言葉を言い放っていたのだ。現場の壁には謎の数字"182"がペンキで乱暴に描かれていて、、被害者は殺される直前に奇妙な言葉を残していた。私ことアンソニー・ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンによって、この奇妙な事件の捜査に引き摺り込まれていく―。
ミステリーベスト10」(週刊文春2020年12月10日号)第1位、「2021本格ミステリ・ベスト10」(原書房)第1位、「ミステリが読みたい!」(ハヤカワ・ミステリマガジン2021年1月号)第1位を獲得し、3年連続ミステリランキング全制覇、つまり3年連続での4冠を達成しています。


売れっ子作家のアンソニー・ホロヴィッツは、知り合いで元刑事のダニエル・ホーソーンから今捜査している事件をもとにホーソーン自身の本を書いてほしいと依頼される。事件とは、自分の葬儀を手配したダイアナ・クーパーが、その6時間後に殺害され、死の直前に「損傷の子に会った、怖い」というメールを息子のダミアンに送っていたというものだ。ダイアナは、かつて、道に飛び出してきた幼い少年ティモシーを事故で死なせ、その兄弟ジェレミーに重い障害を負わせていた。ダミアンは、10年前の交通事故のことを聞かれて激怒。ダイアナがハンドルを握らなくなったこと、住み慣れた家を売り転居したことなどを挙げ、まるで自分が被害者だという顔をして話す。ホーソーンは仕事でスティーヴン・スピルバーグと打ち合わせ中のアンソニーを強引に連れ出し、無理やりダイアナの葬儀に出席させる。その葬儀で、埋葬の際に柩を下ろした瞬間、ティモシーお気に入りの童謡が流れ出し、取り乱したダミアンは顔色を変え一人帰ってしまうが、やがて自宅で惨殺死体で発見される。アンソニーとホーソーンは、葬儀屋のロバート・コーンウォリスを訪ね、ティモシーの父親アランから葬儀の日程の確認の電話があったという情報を得る。勝手に執筆を始めたことを著作権エージェントのヒルダに責められたアンソニーだったが、秘密裡にアランを訪ねるために出かけてく―。
2017年8月刊行の原著タイトルは"The Word Is Murder"。作者の『

1955年7月、サマセット州にあるパイ屋敷の家政婦の葬儀が、しめやかに執りおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけて転落したのか、或いは? 彼女の死は、小さな村の人間関係に少しずつひびを入れていく。燃やされた肖像画、屋敷への空巣、謎の訪問者、そして第二の無惨な死が。病を得て、余命幾許もない名探偵アティカス・ピュントの推理は―(上巻・アラン・コンウェイ作『カササギ殺人事件』)。
(翌'19年に発表された「本屋大賞」の翻訳小説部門でも第1位。'19年4月発表の第10回「翻訳ミステリー大賞」も同読者賞と併せて受賞。これらを含めると「7冠」になるとのこと)。年末ミステリランキングはこれまで('20年まで)に『二流小説家』(デイヴィッド・ゴードン)と『




2018年「本屋大賞」の第1位が『かがみの孤城』(651.0点)、第2位が『盤上の向日葵』(283.5点)、第3位が『屍人荘の殺人』(255.0点)です。因みに、「週刊文春ミステリーベスト10」(2017年)では、『屍人荘の殺人』が第1位、『盤上の向日葵』が第2位、『かがみの孤城』が第10位、別冊宝島の「このミステリーがすごい!」では『屍人荘の殺人』が第1位、『かがみの孤城』が第8位、『盤上の向日葵』が第9位となっています。『屍人荘の殺人』は、第27回「鮎川哲也賞」受賞作で、探偵小説研究会の推理小説のランキング(以前は東京創元社主催だった)「本格ミステリ・ベスト10」(2018年)でも第1位であり、東野圭吾『

埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。それから四か月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ―。(『盤上の向日葵』)
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け、部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった―。(『屍人荘の殺人』)
先にも紹介した通り、「週刊文春ミステリー ベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」の"ミステリランキング3冠"作(加えて「本格ミステリ大賞」も受賞)ですが、殺人事件が起きた山荘がクローズド・サークルを形成する要因として、山荘の周辺がテロにより突如発生した大量のゾンビで覆われるというシュールな設定に、ちょっとついて行けなかった感じでしょうか。謎解きの部分だけ見ればまずまずで、本格ミステリで周辺状況がやや現実離れしたものであることは往々にしてあることであり、むしろ周辺の環境は"ラノベ"的な感覚で読まれ、ユニークだとして評価されているのかなあ。個人的には、ゾンビたちが、所謂ゾンビ映画に出てくるような典型的なゾンビの特質を有し、登場人物たちもそのことを最初から分かっていて、何らそのことに疑いを抱いていないという、そうした"お約束ごと"が最後まで引っ掛かりました。
(●『屍人荘の殺人』は2019年に木村ひさし監督、神木隆之介主演で映画化された。原作でゾンビたちが大勢出てくるところで肌に合わなかったが、後で考えれば、まあ、あれは推理物語の背景または道具に過ぎなかったのかと。映画はもう最初からそういうものだと思って観
ているので、そうした枠組み自体にはそれほど抵抗は無かった。その分ストーリーに集中できたせいか、原作でまあまあと思えた謎解きは、映画の方が分かりよくて、原作が多くの賞に輝いたのも多少腑に落ちた(原作の評価★★☆に対し、映画は取り敢えず星1つプラス)。但し、ゾンビについては、エキストラでボランティアを大勢使ったせいか、ひどくド素人な演技で、そのド素人演技のゾンビが原作よりも早々と出てくるので白けた(星半分マイナス。その結果、★★★という評価に)。)
「屍人荘の殺人」●制作年:2019年●監督:木村ひさし●製作:臼井真之介●脚本:蒔田光治●撮影:葛西誉仁●音楽:Tangerine House●原作:今村昌弘『屍人荘の殺人』●時間:119分●出演:神木隆之介/浜辺美波/葉山奨之/矢本悠馬/佐久間由衣/山田杏奈/大関れいか/福本莉子/塚地武雅/ふせえり/池田鉄洋/古川雄輝/柄本時生/中村倫也●公開:2019/12●配給
:東宝●最初に観た場所:新宿ピカデリー(19-12-16)(評価:★★★)●併映(同日上映):「

アニメ映画「かがみの孤城」('22年/松竹)監督:原恵一
●2019年ドラマ化(「盤上の向日葵」) 【感想】 2019年9月にNHK-BSプレミアムにおいてテレビドラマ化(全4回)。主演はNHK連続ドラマ初主演となる千葉雄大。原作で埼玉県警の新米刑事でかつて棋士を目指し奨励会に所属していた佐野が男性(佐野直也)であるのに対し、ドラマ
では蓮佛美沙子演じる女性(佐野直子)に変更されている。ただし、最近はNHKドラマでも原作から大きく改変されているケースが多いが、これは比較的原作に沿って
丁寧に作られているのではないか。原作通り諏訪温泉の片倉館でロケしたりしていたし(ここは映画「テルマエ・ロマエⅡ」('14年/東宝)でも使われた)。主人公の幼い頃の将棋の師・唐沢光一朗を柄本明が好演(子役も良かった)。竹中直人の東明重慶はややイメージが違ったか。「竜昇戦」の挑戦相手・壬生芳樹が羽生善治っぽいのは原作も同じ。加藤一二三は原作には無いドラマ用ゲスト出演か。
「盤上の向日葵」●演出:本田隆一●脚本:黒岩勉●音楽:佐久間奏(主題歌:鈴木雅之「ポラリス」(作詞・作曲:アンジェラ・アキ))●原作:柚月裕子●出演:千葉雄大/大江優成/
『かがみの孤城』...【2021年文庫化[ポプラ社文庫](上・下)】








「
原作にない雪山登山シーンとかあって面喰いましたが、数学教師「石上」役の堤真一(本来は二枚目であってはならないのだが)と「靖子」役の松雪泰子は、どちらもベテランらしい手堅い演技で(堤真一は第33回「報知映画賞」最優秀主演男優賞を受賞、松雪泰子も好演と言っていいかも)、その分、映画化作品にありがちなことですが、ミステリよりも人情ものの要素が強くなっているように思いました(一方で、富樫の死体は一体どうやって始末したのかとか、プロット面での突っ込みどころが出てきてしまう)。

ワークを反復させることで分かり易くなっていますが、浮浪者に対する「石上」の排他的・優越的な考え方(愛する人のためなら浮浪者1人の命なんぞ...という)などは映画では必ずしも充分に説明されてはおらず、そのあたり、親切なのか不親切なのかよく分からない作りでした。
リリー・フランキーが草野球の監督役で出演しているのは、福山雅治と「仕事を超えた盟友」のような関係であるためでしょうか(リリー・フランキーは子供の頃から大の読売ジャイアンツのファンで、草野球チーム「ヤング・ジャイアンツ」を主宰しており、映画でも読売ジャイアンツっぽいユニフォームのチームを率いている)。リリー・フランキーはここではカメオ出演のような感じですが、同年公開の橋口亮輔監督の「ぐるりのこと。」('08年/ビターズ・エンド)で初主演を果たしています。(●さらに、5年後の是枝裕和監督の「






.jpg)
