「●く アガサ・クリスティ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1939】 クリスティ 『殺人は容易だ』
「○海外サスペンス・読み物 【発表・刊行順】」の インデックッスへ 「●あ行外国映画の監督」の インデックッスへ「●ローレン・バコール 出演作品」の インデックッスへ「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●日本のTVドラマ (90年代~)」の インデックッスへ(「死との約束」(野村萬斎主演))
映画「死海殺人事件」の原作。映画は?だが、原作は本格推理として楽しめる。


ハヤカワ・ミステリ(1957)/『死との約束 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-33)』/映画タイアップカバー/『死との約束 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
』/「MGM HollyWood Classics 死海殺人事件 [DVD]
」
ポアロは中東エルサレムで休暇を過ごすが、同じく同地を訪れていたのが、世界的に有名な精神科医のテオドール・ジェラール博士、イギリスの国会議員ウエストホルム卿夫人、新米女医サラ・キング、米国人のボイントン一家らだった。ボイントン夫人は、長男のレノックスとその妻ネイディーン、次男のレイモンド、長女のキャロル、次女のジネブラの5人を従えていた。夫人はかつて刑務所で女看守として働き、偶然に大金持ちのボイントン氏と結婚し、夫が亡くなって未亡人となったが、我儘で個性が強く家族全員を拘束していた。子供達の意見や要求は殆ど無視され、いつまで経っても子供としか扱われない。ある日ジェラール博士、サラ、ウエストホルム卿夫人とその取り巻きのアマベル・ピアス、ネイディーン・ボイントンの友人のジェファーソン・コープらはペトラ遺跡の観光ツアーに参加するが、ペトラに着くとボイントン一家もそこにいた。翌日の昼食時、ボイントン夫人は子供たちに自由に散歩することを許すが、これは彼女にしては希有なことだった。ボイントンの子供たちとサラたちの一行は思い思いに遺跡に向かい、崖の上からの景色を堪能して各々帰路に着くが、ジェラール博士だけはマラリアを発病し先にキャンプに帰っていた。ボイントン夫人は暑さの中で、外に出した椅子に座って身動き一つしなかったが、やがて夕食時に夫人が現れないので召使が呼びに行くと、夫人は亡くなっていた。新米医師サラの見立てでは死亡時刻は発見の1時間以上前で、夫人の手首には注射針の跡があった。さらにジェラール博士の注射器がなくなっており、多量のジギタリスも消えていた―。

1938年に刊行されたアガサ・クリスティのエルキュール・ポアロ・シリーズの第16作で(原題:Appointment with Death)、前年発表のポワロシリーズ『ナイルに死す』(原題:Death on the Nile)と同じく中東を舞台にした本格派推理小説です。前々年発表の『メソポタミヤの殺人』も中東・イラクが舞台でした。因みにクリスティは最初の夫アーチボルド・クリスティ大尉(彼は薬剤師の助手として勤務していたため、クリスティは彼から毒薬の知識を得たという)に裏切られて傷心旅行で訪れたメソポタミヤで14歳年下の考古学者マックス・マローワンと知り合って、彼と1930年に再婚、その後に続く"中東モノ"は、おそらく考古学者である夫の研究調査に随伴した経験が素地になっていると考えられます(但し、この作品には『メソポタミヤの殺人』のような考古学的モチーフは出てこない)。
英初版Collins 1938年
『ナイルに死す』はジョン・ギラーミン監督の映画「ナイル殺人事件」('78年/英)の原作として知られていますが、この作品が マイケル・ウィナー監督(「狼よさらば」「ロサンゼルス」)の映画「死海殺人事件」('88年/米)の原作であることはあまり知られていないかもしれません。そもそもエルサレムという異国の地を舞台にしながらも原作がやや地味ですが、ポワロが関係者一人一人に事情聴取していってロジックで犯人を突き止める過程は『オリエント急行の殺人』などにも通じるものがあり、本格推理としてはよく出来ていて、結構楽しめるように思います。
映画「死海殺人事件」チラシ
映画「死海殺人事件」は、「ナイル殺人事件」やガイ・ハミルトン監督の「地中海殺人事件」('82年/英、原作はポアロ・シリーズ『白昼の悪魔』)に続いてピーター・ユスティノフがエルキュール・ポワロを
演じていますが(共演者に「オリエント急行殺人事件」('74年)のローレン・バコールがいるが、「オリエント急行殺人事件」でポワロを演じたのはアルバート・フィニーだった)、ピーター・ユスティノフにとっては最後のポワロ役でした。また彼は、「地中海殺人事件」と「死海殺人事件」の間にTVドラマのミニシリーズで「名探偵ポワロ/エッジウェア卿殺人事件」('85年/英)など3本でポワロを演じています(「エッジウェア卿殺人事件」では'89年からTⅤ版「名探偵ポアロ」でポワロを演じることになるデヴィッド・スーシェがジャップ警部を演じている)。

原作では、ボイントン夫人は虐待に近いような子供達の扱いぶりで、しかも太った醜い女性として描かれていますが、映画では専制的ではあるものの、原作までは酷くないといった感じでしょうか。それでも、殺害された彼女は皆から嫌われていたわけで、遺産相続も絡んでいて(それが目眩ましにもなっているのだが)、登場人物全員が容疑者候補であるのは原作と同様です(殺人事件があって禁足令が出ているけれど、旅行自体は皆続けるのだろうなあ)。『オリエント急行の殺人』と同様、ポワロの聴き取りに対して誰かが(場合によっては複数が)虚偽を述べているわけであって、ある種"叙述トリック的であるわけですが、これを映像化するのは難しかったかもしれません。

実際、映画を観ると、容疑者達の陳述が真実であろうと虚偽であろうと、その陳述に沿った映像化がされているため、途中からある程度そのことを含み置いて観ていないと、無かったことを映像化するのは《掟破り》ではないか(フランソワ・トリュフォーなどはアルフレッド ヒッチコックへのインタビュー『映画術』でそう言っている)ということになります。まあ、原作でも映画でも、初めてで犯人が判ればなかなかのものだと思いますが、映画を観て改めて新米医師であるサラの死亡推定時刻の見立ては正しかったのだなあと再確認しました。ピーター・ユスティノフがポワロを演じてきた映画は、この作品で英国から米国のB級映画会社に製作が移った
ものの(この会社は後に倒産する)、ユスティノフの演技自体は悪くないし(「ナイル殺人事件」「地中海殺人事件」に続いてこの映画も"旅行もの"であるため違和感が無い)、ローレン・バコールのキツイ顔もいいけれど
(初めて観た時はさすがに老けたなあと思ったが、彼女が亡くなったのは2014年でこの作品の26年後89歳で亡くなっている)、やはり、「起きなかったことを映像化している」点がちょっと引っ掛かりました(他に何かいい手があるわけではないが)。デヴィッド・スーシェ版「名探偵ポワロ(第61話)/死との約束」('09年/英)ではその辺りはどう描かれていたでしょうか。
「名探偵ポワロ(第61話)/死との約束」 (09年/英) (2010/09 NHK‐BS2) ★★★☆

●2021年ドラマ化 【感想】フジテレビの「脚本・三谷幸喜×原作・アガサ・クリスティー×主演・野村萬斎」のSPドラマ・シリーズ第3弾「死との約束」としてドラマ化(第1弾は「オリエント急行殺人事件」(2015年)、第2弾は「黒井戸殺し」(2018年))。前2作と同じく、野村萬斎演じる名探偵・勝呂武尊(すぐろ・た
ける)が事件解決に臨む。ストーリーは概ね原作通りで、原作に対するリスペクトが感じられる。ただし、時代設定を昭和30年に置き換え、舞台を"巡礼の道"として世界遺産にも登録されている熊野古道および和歌山県天狗村にある「黒門ホテル」にしているため、作品の雰囲気はかなり違ったも
のとなっている。熊野本宮大社は本物の現地ロケ、熊野古道ツアーのスタート地点「発心門王子」には浜松市にある「方広寺」が使われ(2018年に行った。参道が長い山道になっている)、黒門ホテルの外観
の概観は「蒲郡クラシックホテル」が使われたが、内観はセット撮影であるとのこと。全体に三谷幸喜らしいコメディタッチで、殺害される金持ちの未亡人(松坂慶子)さえもユーモラスでどこか憎めない(松坂慶子はコメディ専門になったのか?)。映画でローレンン・バコールが演じた女性代議士(鈴木京香)が、勝呂と旧知であるというのはドラマのオリジナル。でも、プロットは原作をそのまま活かしていることもあって愉しめた。
Appointment with Death (1988)

「死海殺人事件」●原題:APPOINTMENT WITH DEATH●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督・製作:マイケル・ウィナー●脚本:アンソニー・シェーファー/ピー
ター・バックマン/マイケル・ウィナー●撮影:デヴィッド・ガーフィンケル●音楽:ピノ・ドナッジオ●原作:アガサ・クリスティ「死との約束」●時間:103分●出演:ピーター・ユスティノフ/ローレン・バコール/キャリー・フィッシャー/ジョン・ギールグッド/パイパー・ローリー/ヘイリー・ミルズ/ジェニー・シーグローヴ/デビッド・ソウル/アンバー・ベゼール/マ
イケル・グレイブ/ニコラス・ゲスト/ジョン・ターレスキー/マイク・サーン●日本公開:1988/05●配給:日本ヘラルド映画(評価★★★)
David SOUL- Appointment with death (1988)

「死との約束」●脚本:三谷幸喜●演出:城宝秀則●音楽:住友紀人●原作:アガサ・クリスティ●時間:160分●出演:野村萬斎/松坂慶子/山本耕史/シルビア・グラブ/市原隼人/堀田真由/原菜乃華/比嘉愛未/坪倉由幸(我が家)/長野里美/阿南健治/鈴木京香●放映:2018/03(全1回)●放送局:フジテレビ
『死との約束 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-33)』/映画タイアップカバー

【1957年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(高橋豊:訳)/1978年文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(高橋豊:訳)]/2004年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(高橋豊:訳)]】



1948年の作品。1939年にブロードウェイで上演されたマックスウェル・アンダーソンの戯曲「キー・ラーゴ」を、ジョン・ヒューストンとリチャード・ブルックスが映画用に脚色したもので、
それでいてスカッとしたカタルシスがあるのは、最初の内は"男気"をなかなか見せないフランクが、徐々にその本分を発揮し、最後に...というプロセスから結末までの描き方の上手さによるものでしょう。
とりわけ、その演技が光るのはエドワード・G・ロビンソンで、その強面の悪役ぶりは、ボガートの好演をも喰ってしまっているほどです。
エドワード・G・ロビンソン(1893-1973/享年79)という人は8カ国語を操るインテリだったそうで、そのリベラルな思想のため40年代後半はハリウッドでも冷遇され、この作品でも"後輩スター"であるハンフリー・ボガートの脇に回ることになりましたが、仕事と割り切って出演を承諾、ボガートの方もロビンソンに対し"先輩スター"として接し、他のスタッフもこれに倣うよう命じたという逸話があります。

「キー・ラーゴ」●原題:KEY LARGO●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ヒューストン●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:リチャード・ブルックス/ジョン・ヒューストン●撮影:カール・フロイント●音楽:マックス・スタイナー●原作戯曲:マックスウェル・アンダーソン「キー・ラーゴ」●時間:138分●出演:ハンフリー・ボガート/エドワード・G・ロビンソン/ローレン・バコール/ライオネル・バリモア/クレア・トレヴァー/ジョン・リッジリー/モンテ・ブルー/トーマス・ゴメス●日本公開:1951/11●配給:セントラル●最初に観た場所:吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50(85-12-21)(評価:★★★★)

吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50 1951年~「ムサシノ映画劇場」、1984年3月~「吉祥寺バウスシアター」(現・シアター1/218席)と「ジャヴ50」(現・シアター2/50席)の2館体制でリニューアルオープン。2000年4月29日~シアター3を新設し3館体制に。 2014(平成26)年5月31日閉館。

吉祥寺バウスシアター内




コミックであるせいか、読んでいる間ずっとクリスティの原作『オリエント急行の殺人』でなく、シドニー・ルメット監督の映画「オリエント急行殺人事件」('74年/
英・米)の方が頭に浮かんでいました(原作を読んだ時はあまり雪のシーンをイメージしなかった?)。アルバート・フィニー(1936-2019)がポワロを演じたほか(アカデミー主演男優賞にノミネートされたが、彼のポアロ役はこの一作きりで、以後、アガサ・クリスティ原作の映画化は「
ルグッド、ショーン・コネリー(かつらを外して出
演し始めた最も最初の頃の作品ではないか)、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ウェンディ・ヒラー、ローレン・バコール、イングリッド・バーグマン、マイケル・ヨーク、ジャクリーン・ビセット、ジャン=ピエール・カッセル等々が出演したオールスターキャスト映画でしたが、神経質で少しエキセントリックなところがある中年のスウェーデン人宣教師を演じたイングリッド・バーグマンが印象的でした(実はそのキャラクター自体が"演技"だった!)。イングリッド・バーグマンは事件の中心人物的な公爵夫人役を打診されたけれども、この地味な宣教師役を強く希望したそうで、その演技でアカデミー助演女優賞を獲得しています。
(●2017年にケネス・ブラナー監督・主演のリメイク作品「オリエント急行殺人事件」('17年/米)が作られた。Amazon.comのレビューなどを見ても評価が割れているが、本国でも賛否両論だったようだ。映画批評集サイトのRotten Tomatoesのサイト側によ
る批評家の見解の要約は「映画史の古典となった1974年版に何一つ新しいものを付け足せていないとしても、スタイリッシュなセットとオールスターキャストのお陰で、『オリエント急行殺人事件』は脱線せずに済んでいる」となっている。個人的感想も概ね
そんな感じだが、セットは悪くないけれど、列車が雪中を行くシーンなどにCGを使った分、新作の方が軽い感じがした。旧作にも原作にもないポワロのアクションシーンなどもあったりしたが、最も異なるのは終盤であり、ポワロが事件にどう片を付けるか悩む部分が強調されていて、ラストの謎解きもダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模した構図の中でケネス・ブラナーの演劇的な芝居が続く重いものとなっている。旧作は、監督である
シドニー・ルメットが、「スフレのような陽気な映画」を目指したとのことで、ポワロの事件解決後、ラストにカーテンコールの意味合いで、乗客たちがワインで乾杯を行うシーンを入れたりしているので、今回のケネス・ブラナー版、その部分は敢えて反対方向を目指したのかもしれない。ただ、もやっとした終わり方でややケネス・ブラナー監督の意図がやや伝わりにくいものだった気もする。)
「オリエント急行殺人事件」●原題:MURDER ON THE ORIENT EXPRESS●制作年:1974年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:ポール・デーン●撮影:ジェフリー・アンスワース●音楽:リチャード・ロドニー・ベネット●原作:アガサ・ク
リスティ「オリエント急行の殺人」●時間:128分●出演:アルバート・フィニー/リチャード・ウィドマーク/アンソニー・パーキンス/ジョン・ギールグッド/ショーン・コネ
リー/ヴァネッサ・レッドグレーヴ/ウェンディ・ヒラー/ローレン・バコール/イングリッド・バーグマン/マイケル・ヨーク/ジャクリーン・ビセット/ジャン=ピエール・カッセル/レイチェル・ロバーツ/コリン・ブレイクリー/デニス・クイリー/ジョージ・クールリス/マーティン・バルサム●日本公開:1975/05●配給:パラマウント=CIC(評価:★★★☆)






「オリエント急行殺人事件」●原題:MURDER ON THE ORIENT EXPRESS●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:リドリー・スコット/マーク・ゴードン/サイモン・キンバーグ/ケネス・ブラナー/ジュディ・ホフランド/マイケル・シェイファー●脚本:マイケル・グリーン●撮影:ハリス・ザンバーラウコス●音楽:リパトリック・ドイル●原作:アガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」●時間:114分●出演:ケネス・ブラナー/ペネロペ・クルス/ウィレム・デフォー/ジュディ・デンチ/ジョニー・デップ/ジョシュ・ギャッド/デレク・ジャコビ/レスリー・オドム・Jr
/ミシェル・ファイファー/デイジー・リドリー/トム・ベイトマン/オリヴィア・コールマン/ルーシー・ボイントン/マーワン・ケンザリ/マヌエル・ガルシア=ルルフォ/セルゲイ・ポルーニン/ミランダ・レーゾン●日本公開:2017/12●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)

カリブ海にある仏領マルチニック群島のある島で観光用チャーター・ボートの船長をしているハリー(ハンフリー・ボガート)は、ホテル歌手のマリー(ローレン・バコール)に彼女がアメリカへ帰るための金を渡すため、レジスタンスのリーダーを逃がす仕事を請け負うが、ハリーが密航を幇助したと考えた島の警察が彼の仲間を拉致して拷問したことを知り、怒りを爆発させる―。
アーネスト・ヘミングウェイが1937年に発表した小説『持つことと持たざること(To Have & Have Not)』が原作で(脚本は、同じくノーベル賞作家のウィリアム・フォークナー)、ヘミングウェイは1926年発表の『日はまた昇る』以降、より正確には1927年刊行の『男だけの世界』から、その短編集のタイトル通りマチズムの傾向を強めていますが、この作品もその例に漏れるものではなく、一方で、この『持つことと持たざること』というタイトルは主に「貧富の差」のことを言っており、彼の作品に社会的傾向が最も見られた時期のものでもあります。
原作の舞台はキーウエストやキューバになっており、それが仏領マルチニックに変えられたとしても、第2次世界大戦(ビシー政権下)の話なので仏領の島にドイツ傀儡政府の手先がいてもおかしくないのですが(この映画の制作年は1944年)、原作の社会的色合いは後退し、ハンフリー・ボガートの男気、乃至は、ローレン・バコールとのロマンスが前面に出ています。
この映画での共演を機に2人は結婚し、その結婚生活はボギーの死まで続きますが、考えてみれば、雑誌のカバーガールからスカウトされたローレン・バコールは、この作品がメジャー作品初出演だった(公開示のポスターでは下隅に小さく名前があるだけ)―それにしては、スクリーン上の彼女は貫禄充分と言うか、25歳年上のボギーと堂々と渡り合っているように見えました。
しかし、1979年に刊行された自伝『ローレン・バコール/私一人』('84年/文芸春秋)の中では、撮影の時にはいつもがちがちに緊張しまくっていていたことを告白しています。


「脱出」●原題:TO HAVE AND HAVE NOT●制作年:1944年●制作国:アメリカ●監督・製作:ハワード・ホークス●脚本:ウィリアム・フォークナー●撮影:シド・ヒコックス●音楽:フランツ・ワックスマン●原作:アーネスト・ヘミングウェイ●時間:101分●出演:ハンフリー・ボガート/ローレン・バコール/ウォルター・ブレナン/マルセル・ダリオ/ドロレス・モラン/ホーギー・カーマイケル/ダン・セイモア/シェルドン・レナード●日本公開:1947/11●配給:セントラル●最初に観た場所:三百人劇場 (89-03-14)●2回目:歌舞伎町ーア2 (89-04-08) (評価:★★★★)


![動く標的【字幕版】 [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E5%8B%95%E3%81%8F%E6%A8%99%E7%9A%84%E3%80%90%E5%AD%97%E5%B9%95%E7%89%88%E3%80%91%20%5BVHS%5D.jpg)




1961年に発表されたロス・マクドナルド(1915‐1983)の作品(原題:The Wycherly Woman)。ロス・マクドナルドは村上春樹も愛読したハードボイルド作家で、その主人公リュウ・アーチャーの名を借りて「村上龍」というペンネームにするつもりが"先約"があって諦めたとか(これってホントなの?ネタなの? 群像新人賞を受賞した際の授賞式のスピーチで述べていから、おそらくネタだろう。丸谷才一が、そのスピーチを評して「大物だと思った」と言っていたように思う)。

ロス・マクドナルドの小説に私立探偵リュウ・アーチャーが初めて登場したのは1949年発表の『動く標的』で、続編の『魔のプール』(1950年)と併せて 1958(昭和33)年に東京創元社の世界推理小説全集に第52巻、第53巻として納められています。これ以降、ロス・マクドナルドは19作品もの長編作品(リュー・アーチャー・シリーズ)を継続的に発表しました。『動く標的』は―


.jpg)
ャーではなく、"リュウ・ハーパー"と改名されています(ポール・ニューマンが「ハスラー」「ハッド」のヒット以来、Hで始まるタイトルにこだわったためだという)。「動く標的」の映画の方は、ロス・マクドナルドの原作にほぼ忠実に作られていますが、雰囲気的にやや軽い感じでしょうか。映画的はこれはこれで面白いとは思うし、「
が)。「動く標的」「新・動く標的」とも、かつてビデオが出ていましたが、絶版となり、その後現時点[2007年]でDVD化されていません(ポール・ニューマン主演ながらB級映画の扱いにされている?)。(その後2011年に「動く標的」がDVD化された。)(更にその後2016年に「新・動く標的」がDVD化された。)![動く標的 [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E5%8B%95%E3%81%8F%E6%A8%99%E7%9A%84%20%5BDVD%5D.jpg)
・ニューマン/ローレン・バコール/ジュリー・ハリス/ジャネット・リー/パメラ・ティフィン/ロバート・ワグナー/シェリー・ウィンタース/ロバート・ウェバー●日本公開:1966/07●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)



1939年発表の『大いなる眠り』(The Big Sleep/'56年・東京創元社)は、レイモンド・チャンドラー(1888‐1959)のハードボイルド小説の中では『さらば愛しき女よ』(Farewell, My Lovely '40年発表/56年・早川書房)、『長いお別れ』(The Long Goodbye '54年発表/'58年・早川書房)と並んで最も人気が高いのではないでしょうか。



原作『大いなる眠り』の中で、大富豪の娘がフィリップ・マーロウに言う「貴方って随分背が高いのね」が、映画のローレン・バコールのセリフでは「貴方って随分背が低いのね」にアレンジされていて、ハンフリー・ボガートの答えは原作のフィリップ・マーロウと同じく「それがどうした」となっています。


