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女優のためにラストをドラマチックに改変?これはこれでよい。でも、やはり原作の方が上。

「あの頃映画 「秋津温泉」[DVD]」岡田茉莉子/長門裕之 藤原審爾『秋津温泉 (集英社文庫)』(カバー・関野準一郎)

太平洋戦争中、生きる気力を無くした青年・河本周作(長門裕之)は死に場所を求めてふらりと秋津温泉にくる。結核に冒されている河本は、温泉で倒れたところを、温泉宿の女将の娘・新子(岡田茉莉子)の介護によって元気を取り戻す。そして、終戦。玉音放送を聞いて涙する純粋な新子に心打たれた河本は、やがて生きる力をとり戻していく。互いに心惹かれる二人だったが、女将が河本を追い出してしまったために、河本は街に戻る。
数年後、秋津に再び現れた河本だが、酒に溺れて女にだらしない、堕落してしまった河本に、新子は苛立ちを覚える。そこで、河本が結婚したことを知った新子は、苦しい河本への思いを捨てきれないまま、河本を送り出す。その後、東京に行くことになった河本は再び秋津を訪れる。一途なまでに河本を思う新子、そして、優柔不断でだらしない河本は再び都会へ。さらに四たび秋津を訪れる河本、そのときには旅館を廃業した新子だったが、河本は新子との肉体の情欲にだけ溺れる。新子は、河本に一緒に死んでくれと言う―。

1962(昭和37)年公開の吉田喜重(1933-2022/89歳没)監督作で、岡田茉莉子が「映画出演百本記念作品」として自らプロデュースし、初めて吉田喜重とコンビを組んで作り上げた作品(1962年キネマ旬報ベストテン第10位)。岡田茉莉子はこの映画の後で引退しようと考えたが、吉田喜重に「あなたは青春を映画に全て捧げて、もったいないかと思いませんか」と言われて引き留められたとのこと。そして、翌1963年に二人は結婚しています。
映画は、温泉宿の娘・新子(岡田茉莉子)と宿泊客の青年・河本周作(長門裕之)との戦後17年、時代に流されてゆく男と、変わらぬ真情を抱きつつ裏切られる女の姿を描いており、原作小説のモデルとなった岡山の奥津温泉でのロケ、雪や桜などの風光美と、岡田茉莉子演じる女性の切なさ哀しさが重なり合う佳作です(岡田茉莉子は第17回「毎日映画コンクール女優主演賞」受賞)。
『秋津温泉 (1949年)』
原作『秋津温泉』は、藤原審爾(1921-1984/63歳没)が戦争中21歳の時に岡山での執筆を始め、戦災で吉備津に移り、戦後倉敷市で書き上げ、1947(昭和22)年12月に『人間小説集 別冊』1集として鎌倉文庫から刊行されて1947年上半期・第21回「直木賞」候補となり(授賞に至らなかったのは、川端康成系の"純文学"と受け止められたためのようだ)、1948年9月に講談社より刊行、さらに加筆版が 1949(昭和24)年12月に新潮社より刊行されています。
原作は全5章。第1章「花風月雲」は、辺鄙な山奥にある静かな秋津の街に、17歳の〈私〉が未亡人である伯母に連れられてやって来るところから始まり、宿である秋鹿園で湯治客同士の交流があって、そこで直子という同じ年の女性と知り合って、〈私〉にとってはその直子さんの振る舞いは忘れられないものとなる―。
第2章「春夢深浅」では、3年ぶりに秋鹿園にやってきた〈私〉は肺カタルになり帰郷。再び秋鹿園で療養するが、そこで旅館の娘・お新さんから「戦争が始まったのよ!」と知らされ、秋鹿園が軍医の宿舎として徴用されることになり、お新さんが送別会を催してくれて、その夜、酔ったお新さんに〈私〉は頬を寄せる―。
第3章「流水行雲」では、〈私〉は5年ぶりに秋津を訪れるが、その時には"木綿のような、苦労するに向く"女・晴枝と同棲し。1歳の子もあり、秋鹿園を新装して、"熟れた美しさ"をもつ女将となった新子と再会、ある夜は浴室で"切迫した時間のなかで、私は燃えだしそうな体をもてあます"ことになり、お新さんの燃える情愛の中に入って」いくも、秋津の気配が醸す自然空間の巨大な時間の中で、情愛の虚しさ、自然から逃れられない人間の虚しさを覚える―。
第4章「煩悩去来」では、8年後、小説家になった私が、子供を連れた直子さんと再会、一方。お新さんとの5年の歳月の間に揺れた情愛も、結局、妻子ある身では、そのどちらとも一緒に暮らすことは叶わぬ夢であり、それdふぇもまだ〈私〉は"煩悩の深み"から抜け出せず、愛欲の念を抑えることなく神を怖れぬ冒涜の上に生きようとするが、最後には愛欲苦からくる罪の深さを認識する―。
第5章「密夜夢幻」では、お新さんが青洞寺の息子と結婚するのを祝福せねば秋津に向かうと。踊りの稽古をしていたお新さんは湯殿に案内してくれ、〈私〉の服を畳む。お新さんは「あなたが亡くなったからといって、あたしも死ねるかしら?」と、話の主の幻のように言い、その夜〈私〉はお新さんの純白の裸身を抱く―(原作あらすじは新潮文庫の小松伸六(1914-2006)の解説のに拠った)。
映画は、原作の第1章が丸々描かれていないので、主人公の河本が死に場所を求めて秋津温泉に行くというのがやや唐突な印象がありますが、その後のお新さんとの関係は、ほぼ原作に沿ったものになっているように思いました(河本が敗戦時に秋津にいて、その際のお新さんの涙を流す様子を見たというのは映画のオリジナルだが)。
映画は、岡田茉莉子演じるお新さんを美しく撮っていますが、原作の方はもう少し肉感的なところもあるような印象。それにしても、自分を裏切って妻子持ちになりながらも愛欲断ち切れず秋津にやってくる長門裕之演じる"ダメ男"の河本 (当初、配役を芥川比呂志でクランクイン、途中で芥川が病気で降板し、急きょ長門裕之を代役に立てて撮り直したとのことだが、長門裕之に向いている役だと思う)をなぜお新さんは諦め切れないのか。成瀬巳喜男監督(原作:林 芙美子)の「浮雲」(1955年/東宝)で森雅之演じる"ダメ男"を諦め切れない、高峰秀子演じる女性を想起しました(森雅之演じる"ダメ男"の虚無と、長門裕之演じる"ダメ男"の虚無は似ているが、前者の方が深かったか)。
最も原作と違っているのはラストで、最後、河本と別れたあとに、思いつめた新子は手首を剃刀で切ります。それが、桜吹雪の中で抒情的に描かれていますが、原作では、寺の次男との結婚を控えた新子が「あたしはこれでいいのよ、これで倖せだわ」と話すところで終わっており、手首を切る場面はありません。脚本も吉田喜重なので、吉田喜重がこの作品のプロデュースした岡田茉莉子のために、ドラマチックな、悲劇的で美しい結末を用意したことは間違いないですが、映画としては、これはこれでよいとも思います。佳作であると思います。でも、やっぱり原作の方が上でしょうか。

「秋津温泉」●制作年:1962年●監督・脚本:吉田喜重●製作:白井昌夫●撮影:成島東一郎●音楽:林光●原作:藤原審爾●時間:112分●出演:岡田茉莉子/長門裕之/山村聡/宇野重吉/東野英治郎/小夜福子/日高澄子/吉田輝雄/芳村真理/桜むつ子/高橋とよ/清川虹子/殿山泰司/中村雅子/神山繁/小池朝雄/名古屋章/
下元勉/西村晃/草薙幸二郎/田口計/鶴丸睦彦/穂積隆信/辻伊万里/千之赫子/吉川満子/夏川かほる●公開:1962/06●配給:松竹●最初に観た場所(再見):神保町シアター(21-11-12)(評価:★★★★)
吉田輝雄(新聞記者)

宇野重吉(松宮謙吉)・山村聡(三上)・長門裕之(河本周作)・芳村真理(陽子)



【1962年文庫化[角川文庫]/1978年再文庫化[集英社文庫]】





やはり、今の怪物(こっちがフランケンシュタインと呼ばれるようになった)のイメージを作ったのは、ボリス





また、作者メアリーを軸に、シェリーとバイロンの関係を描いた「幻の城/バイロンとシェリー」('88年/スペイン・英)という映画もありました(メアリーをリジー・マキナニー、バイロンをヒュー・グラント、その恋人クレアをエリザベス・ハーレイが演じている。ヒュー・グラントとエリザベス・ハーレイはこの共演がロマンスのきっかけとなり13年間にわたって交際したが、結局別れた)。途中までは『フランケンシュタイン』誕生のエピソードが描かれていますが、途中から、彼女の想像が生み出した怪物が一人歩きし始め、彼女の周囲の人々が次々死ぬ度に姿を現すことになり、シェリーはヨットの遭難で水死し、時を経ずしてバイロンもギリシア独立戦争に身を投じようとして死んだ後、メアリーは、北極の海で怪物(怪人)と訣別する―という、メアリーがビクター・フランケンシュタインに置き換わったようなゴチック・ホラーっぽい作りになっていました(「伝記映画」と呼ぶには飛躍しすぎ)。
エリザベス・ハーレイと元恋人のヒュー・グラント
メアリーの伝記映画としては、サウジアラビア初の女性監督で「
「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1931年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:アーサー・エジソン●音楽:バーンハルド・カウン●原作:メアリー・シェリー
●時間:71分●出演:コリン・クライヴ/ボリス・カーロフ/メイ・クラーク/
エドワード・ヴァン・スローン/ドワイト・フライ/ジョン・ポールズ/フレデリック・カー/ライオネル・ベルモア●日本公開:1932/04●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★☆)●併映:「フランケンシュタインの花嫁」(ジェイムズ・ホエール)


「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1994年●制作国:イギリス・日本・アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:
「幻の城/バイロンとシェリー」●原題:ROWING WITH THE WIND(REMANDO AL VIENTO)●制作年:1988年●制作国:スペイン・イギリス●監督・脚本:ゴンザ




1932年(昭和7年)、新婚早々の灯台守・有沢四郎(佐田啓二)と妻・有沢きよ子(高峰秀子)は、四郎の勤務先の観音埼灯台で暮らし始める。北海道の石狩灯台で雪野・光太郎の2人の子を授
かり、九州の五島列島の先の女島灯台では夫婦別居も経験する。その後、弾崎灯台で日米開戦を迎え、戦争で多くの同僚を失うなど苦しい時期もあったが、後輩の野津(田村高広)と野津の妻・真砂子(伊藤弘子)に励まされながら勤務を続ける。また、空襲を逃れて東京
から疎開してきた一家と親しくなるなど、新たな出会いもあった。戦後、男木島灯台勤務の時、息子の光太郎(中村賀津雄)が不良とのケンカで刺殺される。が、そうした悲しみを乗り越えた先には喜びも待っていた。御前埼灯台の台長として赴任する途中、戦時中に知り合った疎開一家の長男・進吾(仲谷昇)と娘の雪野(有沢正子)との結婚話がまとまったのだ。御前埼灯台から四郎ときよ子の2人は灯台の灯をともして、新婚の雪野と進吾がエジプトのカイロに向かうために乗り込んだ船を見守る。遠ざかる船を見ながら、四郎ときよ子は「娘を立派に育てあげて本当によかった。灯台職員を続けていて本当によかった」と、感慨深く涙ぐむのだった―。
木下惠介(1912-1998/享年86)監督の1957(昭和32)年公開作で、同年「キネマ旬報 ベスト・テン」で第3位。若山彰の歌唱による同名主題歌の「喜びも悲しみも幾歳月」も大ヒットし、後世でも過去の著名なヒット曲としてしばしば紹介されています(山藤章二の 『
石狩灯台の映画記念碑
佐渡島・弾埼灯台の映画記念像
日本最初の洋式灯台は1869(明治2年)年2月11日に点灯した神奈川県・三浦半島の観音埼灯台で、着工した1868(明治元)年11月1日が灯台記念日になっています(物語で夫婦が最初に赴任する灯台)。海の安全を守る重要な役割を果たす灯台ですが、戦争中は敵の攻撃目標となり、犠牲となった灯台守もいたことが、この映画の中でも語られています。
たとえ平和時であっても、仕事は単調で、狭い空間で一家の生活は終始し、気晴らしの機会もない単調な毎日で、夏休みも休日もないというのは、今の刺激に慣れた現代人から見れば想像を絶することかも。因みに、長崎県・五島市の男女群島の女島にある女島灯台(物語で夫婦が5番目に赴任する灯台)が最後の有人灯台でしたが、2006(平成18)年12月5日に無人化され、国内の灯台守は消滅しています。
主人公らの半生を描いているため、四郎が静岡県・御前崎の御前埼灯台に再赴任した時には「灯台長」になっていて(要するに偉くなっていて)、早逝した佐田啓二のちょび髭を生やした中年の管理職の役が見られるのが珍しいかも。佐田啓二(1926-1964/37歳没)って、大滝秀治(1925-2012//享年87)が生まれた年の次の年に生まれているのですねえ。長生きしていたらどんな老人になっていただろうかと、想像を逞しくしました。因みに、小津安二郎の後期の監督作の常連であり、「

「喜びも悲しみも幾歳月」●制作年:1957年●監督・原作・脚本:木下惠介●撮影:楠田浩之●音楽:木下忠司●時間:160分●出演:佐田啓二/高峰秀子/有沢正子/中村賀津雄/田村高広/伊藤弘子/北竜二/仲谷昇/夏川静江/桂木洋子/小林十九二/坂本武/三井弘次/井川邦子/岡田和子/桜むつ子/明石潮/夏川大二郎/磯野秋雄●公開:1957/10●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-07-27)(評価:★★★★)



『昭和よ、』は、82歳になった著者が、今思うことを、一人語り調文体で綴ったエッセイ集で、これまでの著者のエッセイ集同様、世相・文化・芸術・社会ち幅広く論じています。
最後、2018年12月4日に駅名が発表された「高輪ゲートウェイ駅」のネーミングにケチをつけていますが、これって駅名撤回を求める署名運動にまで発展したのではなかったかなあ。別に年寄りが独りよがりで変なことを言っている(笑)のではないということの証しでしょう。
2018 〈平成30年〉7月2日に81歳で亡くなった落語家の桂歌丸を取り上げ、落語家気質というもの考察し、2018〈平成30〉年8月15日に53歳で亡くなった漫画家のさくらももこを取り上げ、「サザエさん」の長谷川町子と対比させているなど、ただ、人が亡くなって哀悼や惜別の意を表するだけでなく、そこでまた一つ考察しており、こういう人ってボケないのだろなあ。
同学年の和田誠を自分と対比させ、「和田と山藤」として一つ高い視点から論じた上で、最後に「和田さん百歳になったら一度対談しましょう」とエールを送っていますが、その和田誠も2019〈令和元〉年10月7日に83歳で亡くなっているのが寂しいです。
もう一冊、『山藤章二の四行大学』の方は、同様に著者の感じること、思うこと、喜びや怒りが、全て4行のエッセイとして書かれているのものです。
山藤章二(やまふじ・しょうじ)2024年9ガツ30日、老衰で死去。87歳。イラストレーター。有名人の似顔絵や、ブラックなユーモアで世相をあぶり出す作品で人気を集めた。



本書解説の編集者・烏兎沼佳代氏によれば、向田邦子はもともと原作がある作品の脚色を嫌った脚本家で、実際に脚色した作品も少なく、原作となるこの「駅路」を手にした時は、すでに「だいこんの花」「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」で人気脚本家になっていて、それがなぜ敢えてこの作品を脚色したのか、推論できる理由はあるとのことです。
小塚夫妻役は石坂浩二と十朱幸代で、この辺りは改変がありませんが、役所広司演じる刑事が、彼も写真が趣味(所謂SLの"撮り鉄")という風になっていて、役所広司は向田邦子が脚本に仕掛けたコミカルな件(くだり)も卒なく演じており、上手いなあと。
ただ、やはり圧巻は女優で、福村慶子を演じた深津絵里は、さすがに情感たっぷりで上
手かったです。加えて、福村よし子を演じているのが木村多江で、彼女が演じることで同じ福村慶子の従姉であっても、福村よし子の位置づけが、観る者にシンパシーを引き起こすよう改変されているように思いました。
1977年のNHK版では、刑事の聞き込み先である福村慶子の下宿先の「小松便利堂」の主人で、隠居した恍惚老人の役で原作者・松本清張自身が出演しているのですが(この老人、ボケているけれども福村慶子に"男"(=貞一)がいたことだけは見抜いている)、この2009年のフジテレビ版では、松本清張が演じたこの役を唐十郎が演じており、今思うと、2009年版も結構豪勢な配役だったと言えるかもしれません。
「松本清張生誕100年記念作品・駅路」●演出・脚色:杉田成道●脚本:向田邦子●脚色:矢島正雄●プロデュース:喜多麗子●音楽:佐藤準●原作:松本清張●出演:



この内、「テレビ東京開局50周年特別企画」として制作された2014年の米倉涼子版を観ま
した(「水曜ミステリー9」の時間帯での放送だが、本作は「水曜ミステリー9」枠外で放送された)。米倉涼子が演じるヒロイン・伊佐子が「4人の男性を翻弄する」とのことで、そっか、4人とは沢田信弘(橋爪功)、弁護士・佐伯義雄(高嶋政伸)、食品会社副社長・塩月芳彦(宅麻伸)、伊佐子の不倫相手(石井寛二)のことかと改めて確認した次第です。
米倉涼子といえば、松本清張原作のドラマ3部作「黒革の手帖」「松本清張 けものみち」「松本清張 わるいやつら」(いずれもテレビ朝日系)で悪女役を演じ、女優として大きな飛躍を遂げたわけで、原作にある「ぽっちゃりとした小肥りで、色が白い」という伊佐子の描写とは少し異なりますが、悪女役はスンナリは嵌っているように思いました。沢田信弘を橋爪功が演じることで、観る側は何かありそうな気がするのではないでしょうか。
ただ、ドラマの途中で橋爪功演じる沢田信弘が、比嘉愛未演じる速記者・宮原素子に、妻が自分を殺そうとしていると言ってしまっている場面があるため、原作のラストの〈どんでん返し〉効果が薄れてしまいました。沢田信弘が宮原素子に遺書を預けたのは原作通りですが、伊佐子が素子に半分あげるから書き直された遺言書はもとから無かった事にして欲しいと頼むのはドラマのオリジナル。原作では、「伊佐子は一言も発しないでぶるぶる震えていた」とあります。ただ、これが、素子の供述書の中で語られているところが、(これはこれでダメとは言わないが)原作のやや弱いところかもしれません。かたせ梨乃演じる沢田家の家政婦の信弘に対する激情もドラマのオリジナル。元のお話が比較的単純なので、脚本家はいろいろやりたくなるのかなあ。
「松本清張 強き蟻」●演出:松田秀知●脚本:森下直●チーフプロデューサー:岡部紳二(テレビ東京)●音楽:佐藤準●原作:松本清張●出演:米倉涼子(沢田伊佐子〈36〉美貌の女性で沢田信弘の後妻)/高嶋政伸(佐伯義雄〈37〉佐伯法律事務所の弁護士)/比嘉愛未(宮原素子〈25〉速記者)/笛木優子(沢田妙子〈29〉信弘の前妻との娘)/かたせ梨乃(椿サキ〈58〉沢田家の家政婦)/矢島健一(川瀬卓郎〈51〉大日本工学の新社長)/要潤(石井寛二〈30〉Jリーグ選手)/宅麻伸(塩月芳彦〈57〉帝国食品の副社長)/橋爪功(沢田信弘〈67〉伊佐子の夫で大日本光学の役員)●放映:2014/07/02(全1回)●放送局:テレビ東京










上記には、例えば『にぎやかな未来』から『笑うな』の間に刊行された『東海道戦争』('65年/早川書房(ハヤカワ・SF・シリーズ)(13篇))や『ベトナム観光公社』('67年/早川書房(ハヤカワ・SF・シリーズ)(18篇))、『アフリカの爆弾』('68年/文藝春秋)、『アルファルファ作戦』('68年/早川書房(ハヤカワ・SF・シリーズ)(14篇))、『ホンキイ・トンク』('69年/講談社(9篇))、『わが良き狼(ウルフ)』('69年/三一書房(8篇))などは含まれていませんが、これらは収録作品数からわかる通り、短篇集でありショートショート集ではないためでしょう。