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ホーム・コメディ&特撮パニック映画「船出」。米暗黒史を取り上げている点で評価されるべき「白人酋長」。

「キートンの船出(漂流)」バスター・キートン/シビル・シーリー

「キートンの白人酋長」バスター・キートン/ジョー・ロバーツ

「バスター・キートン傑作集(2) [DVD]」(「ハード・ラック」「ザ・ハイ・サイン」「悪太郎」「即席百人芸」「漂流」所収)
「バスター・キートン傑作集(3) [DVD]」(「酋長」「警官騒動」「キートン半殺し」「鍛冶屋」所収)

マイホームパパのバスターは、家族とマリンレジャーを楽しむために、クルーザーをハンドメイドし、この度ようやく完成した。その船を運び出すのにクルマで牽引しようとするが、建造作業場だった一階のガレージの出口が狭くて苦労する。無理な牽引の結果、家は全壊するが、バスターは、船を「DAMFINO(damned if I know=知るもんか)」号と名付け、家は
そのままにしてマリーナに向かう。運河に面したマリーナでの進水式は、船の構造に問題があったのか、進水ならぬ浸水式になってしまうが、家族みんなで修復していよいよ出航、海に向かって運河を下っていく。橋の下をくぐる時にはマストや煙突が引っかからないよう寝かせられる工夫がされていた。河口で一休みの後、大海に乗り出す頃には、夕闇が訪れていた。夜も更けて、あとは寝るだけという時刻、海は嵐で大荒れに。一枚の枯れ葉のように波に翻弄される「知るもんか号」、バスターは救難信号を他の船に送って、助けを求めるが―(「キートンの船出」)。
キートン・プロのキートン監督・出演作の【第10作(米国公開日:1921年11月10日)】。50年代に旧キートン邸よりフィルムが大量発見されたことで今日のリバイバル上映が可能となった作品の1つですが、本作がそれらフィルムの中で最も危篤状態にあったと言われています。キートン・プロ第1作の「キートンの文化生活一週間」('20年)の続編とも言うべき作品で、サイレント期キートン唯一のホーム・コメディで、「文化生活一週間」の時は新郎新婦でまだ子どもはいなかったですが、今度は妻と二人の息子を連れての外航記となっています。世評では、映画的完成度は同時代のキートン自身の作品も含めて、数多くの喜劇の中でも極めて高いものとされているようです。
一家の乗った小船が嵐に見舞われ、笹の葉のように荒波に揉まれるわけで、ちょっと怖いというか、ある種パニック映画的です。船体がぐるぐる回転するシーンなどは、セットと模型でうまく撮っているなあと(今風に言えば"特撮"だが、完成度が高い)。奥さん役のシビル・シーリー(Sybil Seely、当時21歳)は、「キートンの文化生活一週間」でバスターの新妻役を、「キートンの囚人13号」('20年)や「キートンの案山子」('20年)でバスターの憧れの恋人を演じていましたが、その彼女も今度は子役共々に水浸しの熱演で、コレ、撮る方も撮られる方も撮影が大変だったろうなあ。
最後、家もクルマも船も失って流れ着いた場所は一体どこか―船の名前がラストのオチになっていますが、生きていればそれで良しとする究極の楽観主義というか、そこに家族の絆の強さが見い出せる作品でもありました。

アメリカ中西部、インディアンの一族が居留地で平和に暮らしている。ところがその近くに事務所を構える悪賢い石油業者が手先を使い、居留地の権利証を奪い取ってしまった。石油業者から立退き要求の通知を受けとり、怒ったインディアンの酋長は一族全員に命ずる、「ここに最初に入ってきた白人を殺せ」。するとその時も知らないバスターが入口から入ってきた、捕虫網を持ち、蝶々を追って。バスターはインディアンたちに捕まり火刑柱にくくり付けられてしまうが、一旦は逃げ出すことに成功する。執拗な追跡をかわし、避難したあばら屋でバスターはアスベスト材を見つけ、それで下着を作り着用した。結局は、再び捕まってしまい、火あぶりの刑が執行される。しかし、火あぶりでも死なないバスターは、今までとは逆に一族の崇敬を受け酋長に祭り上げられる。そして土地問題を知ると、一族を引き連れ石油業者に談判しに向かうことに―(「キートンの白人酋長」)。
キートン・プロのキートン監督・出演作の【第11作(米国公開日:1922年1月15日)】。斜面から転がり落ちたり、毛布をパラシュートみたいにして崖から飛び降りたり、吊り橋アクションやら、驚
きのスタントの連続。特に、斜面から転がり落ちるシーンは、後の「キートンのセブン・チャンス」('25年)を想起させます。キートンにしては珍しくハッピーエンドな作品。インディアンのために土地の権利を勝ち取ったキートンは、酋長の娘(ヴァージニア・フォックス)に求婚する。熱烈に接吻する二人。「2年後」のテロップの後に画面が戻ると、二人はまだ接吻し続けている―要するに、一瞬にして恋に落ちたが、それは一瞬にして覚めるような恋ではなかったということが言いたいのでしょう。

「キートンの船出」と比べ、アクションのスケールは大きいけれど、「船出」の特撮級のギミックには負けるでしょうか。しかしながら、マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ主演の 「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」 (2023年/米)ではないですが、石油業者がインディアンを騙して土地を奪おうとして画策したアメリカの暗黒史を取り上げているという点で、評価されるべきかと思います(「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」の場合は、連続殺人事件までもが絡んでくるが)。
●ヴァージニア・フォックス出演のキートン映画
1920 キートンの隣同士 Neighbors The Bride
1921 キートンの化物屋敷 The Haunted House Bank President's Daughter
1921 キートンのハード・ラック Hard Luck Virginia
1921 キートンの強盗騒動 The Goat Chief's daughter
1921 キートンの即席百人芸 The Playhouse Twin Uncredited
1922 キートンの白人酋長 The Paleface Indian Maiden Uncredited
1922 キートンの警官騒動 Cops Mayor's Daughter
1922 キートンの鍛冶屋 The Blacksmith Horsewoman
1922 キートンの電気屋敷 The Electric House Girl Uncredited
1923 捨小舟 The Love Nest The Girl

「キートンの船出(漂流)」●原題:THE BOAT●制作年:1921年●制作国:アメリカ●監督・脚本:バスター・キートン/エドワード・F・クライン●製作:ジョセフ・M・シェンク●撮影:エルジン・レスリー●時間:22 分●出演:バスター・キートン/シビル・シーリー/エドワード・F・クライン●米国公開:1921/10●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(84-01-15)●併映:「キートンの文化生活一週間(マイホーム)」「キートンの強盗騒動(悪太郎)」「キートンの警官騒動」「キートンの鍛冶屋」「キートンの空中結婚」(評価:★★★★)
「キートンの白人酋長(キートンの酋長、キートンのハッタリ酋長)」●原題:THE PALEFACE●制作年:1922年●制作国:アメリカ●監督・脚本:バスター・キートン/エドワード・F・クライン●製作:ジョセフ・M・シェンク●撮影:エルジン・レスリー●時間:21 分●出演:バスター・キートン/ジョー・ロバーツ/エドワード・F・クライン●米国公開:1922/01(評価:★★★★)
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