【3639】 ○ バスター・キートン/エドワード・F・クライン 「キートンのハイ・サイン(The High Sign)」 (21年/米) (1921/04 米国公開) ★★★★ ( ○ 「キートンの即席百人芸(キートンの一人百役/The Playhouse)」 (21年/米) (1921/10 米国公開) ★★★☆)

「●バースター・キートン監督・出演作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2160】 「キートンの強盗騒動
「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

ストーリー性の強い「ハイ・サイン」。トリック優先の「即席百人芸」。

キートンのハイ・サイン00.jpg
「キートンのハイ・サイン」
キートンの即席百人芸00.jpg
「キートンの即席百人芸」
バスター・キートン傑作集(2) [DVD]」(「ハード・ラック」「ザ・ハイ・サイン」「悪太郎」「即席百人芸」「漂流」所収)
キートンのハイ・サイン01.jpgバスター・キートン傑作集2.jpg 無賃乗車のバスターが列車から放り出された所は遊園地の近く。メリーゴーランドを楽しんでいる人のポケットから新聞をかすめ取り、求人広告欄を探す。銃の射的場で客集めのために射的のエキスパートを募集しているのを見つけ、広告の住所を頼りにその射的場=タイニイ(ちっちゃな)・ティムの店を訪ねてみることにした。その途中、無警戒な警官から拳銃をせしめて射的の練習をするが、腕のせいか拳銃のせいか狙った的に命中させられないバスターであった。射的場では、キートンのハイ・サイン02.jpgタイニイ・ティムがバスターを迎え、命中のしるしの鐘を鳴らせるようになったら雇う旨を言い残して席を外し、地下の別室に向かう。実力では鐘を鳴らせないことが判ったバスターは、的に命中しなくても鐘だけは鳴る仕掛けを考えつき、ティムの居ない間にその備えつけを完了する。店の地下室は、ティムが率いるギャング団"ブリンキング・バザーズ"のアジトだった。一味は裕福な実業家から1万ドルを脅し取ろうとしていたが、期限を過ぎても金を渡そうとしないので「ええキートンのハイ・サイン03.jpgい面倒だ、殺っちまおう」と相談していた。標的にされた実業家の方でも身の危険を感じ、自宅を改造するなどギャング団の襲撃に備えていた。ティムが一旦店に戻りバスターの様子を見に行くと、百発百中で鐘を鳴らしている。これは殺し屋として使えると閃いたティムは一味にその案を教えるために再び地下室に降りた。その間にその店に立ち寄った実業家父娘もまたバスターの銃の腕前に惚れ込み、ボディガードを依頼した。娘に切願されたバスターは断らなかった。ギャング団の計画がまとまるとバスターは地下室に連れて行かれた。そこで入団を強要され、実業家の殺しを命令されたバスターは、実業家の自宅へ向かう―。(「キートンのハイ・サイン」)

 キートン・プロのキートン監督・出演作の【第7作(米国公開日:1921年4月12日)】。射撃の実力皆無のバスターが、ひょんなことから射撃の名人と勘違いされ、ギャング団に無理やり入れられて、実業家の殺しの実行役を命じられてしまう一方で、当の実業家からもその娘とともに腕を見込まれ、彼のボディガードを依頼されるという、これまでの作品に比べて一段とストーリー性の高い内容です。

キートンのハイ・サイン04.jpg 同時にギミックも満載で、冒頭のかすめ取った新聞を広げていくとどんどん大きくなっていく(こんな新聞どうやって印刷するのか)小ネタから始まって、ラストは仕掛けだらけの屋敷を悪党どもに追われて1階から2階、1階から1階へと駆け巡る、その様子を屋敷ごと断面図的に見せます。

 1989年のカリフォルニアの古典映画発掘作業にて蘇生した幻の作品の1つで、そうした作品が今、DVDなどで観ることができるのは有難いです。1921年4月に米国で公開されていますが、1920年に撮影されたキートンの初単独監督作品です。ただし、キートン本人が気に入らずその年は公開が見送られ(同年、キートンの監督作品である「文化生活一週間(マイホーム)」 が公開されている)、完成後1年を経てやっと公開されましたが、その間に編集が入ったため、複数のバージョンがあるようです。
  
  
キートンの即席百人芸01.jpg 今夜のオペラ劇場の出し物は、歌や踊りやお喋りを黒人的なノリで白人が演じるミンストレルショー。序曲を奏でるのは、半分ジャズバンド風の管弦楽団。幕が上がって役者が揃う、「ブラウン君この辺りの竜巻はすごいらしいね」「そうなんでさぁご主人様、そいつにやられると、1ドル銀貨が四つに割れて25セント玉になっちまうんでさぁ」...と、とぼけた台詞。そして、このショーが他の何より秀逸なのは、演ずる人もスタッフも、見る人までもが皆バスター・キートン、という趣向。第二幕、二人組のタップダンスが鮮やかで、もっと見ていたいなあ、というところで、バスターは夢から醒めた。現実のバスターは舞台の裏方=雑用係。大道具の片付けやキートンの即席百人芸02.jpgら、新入りを楽屋に案内するのやら、地味な仕事を一人で何役もこなさなければならない。今度の新入りは、手品師のアシスタントガール。てっきり一人の女の子だと思ったら、双子の姉妹。鏡の効果で四人に見える。これは一体夢の続きか?!、とバスターは混乱してしまう。我侭な劇場支配人ジョーから言われる難題にも、バスターはそれなりに巧く対応する。兵隊役が一度に5、6人辞めた穴埋めを今すぐ何とかしろ、と命じられれば、近くの工事現場から人足を集めてきたり...。ところが、支配人のアゴ髭に着いたタバコの火を消すために、消化作業用の斧を用いて支配人をノックアウトしてしまう。怒りをかったバスターは劇場内を逃げ回ることに―。(「キートンの即席百人芸」)

キートンの即席百人芸03.jpg キートン・プロのキートン監督・出演作の【第9作(米国公開日:1921年10月6日)】。キートンの映画的好奇心=トリックが昇華した作品です。動きのタイミングを計るために、知人のバンジョー奏者にリズムを取らせてカメラを廻したとのことです。ヴォードヴィル時代に演じたと技の名残りがが多く見られる、キートン本人のアイデアを知るには最良のテキストです。

 見どころは、まさに「一人百役」。多重露出の手法を用いて、出演者からオーケストラ、観客に至るまですべてバスター・キートンという夢のような劇場を作り上げています(オチとして実際に夢だったわけだが)。ただ、その分そうしたトリックが優先されていて、後からストーリーを考えついた様な構成に感じられ、【第7作】「キートンのハイ・サイン」や【第8作】「キートンの強盗騒動」など比べるとやや後退した印象も受けなく、それらの評価より星半分マイナスにしました。

キートン全短編集-4枚組- [DVD]
キートン全短編集-4枚組.jpg「キートンのハイ・サイン(悪運)」●原題:THE HIGH SIGN●制作年:1921年●制作国:アメリカ●監督・脚本:バスター・キートン/エドワード・F・クライン●製作:ジョセフ・M・シェンク●撮影:エルジン・レスリー●時間:18 分●出演:バスター・キートン/バーテイン・バーケット・ゼイン/アル・セント・ジョン●米国公開:1921/04(評価:★★★★)

「キートンの即席百人芸(キートンの一人百役)」●原題:THE PLAYHOUSE●制作年:1921年●制作国:アメリカ●監督・脚本:バスター・キートン/エドワード・F・クライン●製作:ジョセフ・M・シェンク●撮影:エルジン・レスリー●時間:20 分●出演:バスター・キートン/ヴァージニア・フォックス/ジョー・ロバーツ●米国公開:1921/10(評価:★★★☆)

●収録内容
・キートン全短編集(1) 99分 
1.ザ・ハイサイン (1920)
2.文化生活一週間 (1920)
3.ゴルフ狂の夢 (1920)
4.案山子 (1920)
おまけ デブ君の浜遊び (1917)
・キートン全短編集(2) 103分 
5.隣同志 (1920)
6.化物屋敷 (1921)
7.ハード・ラック (1921)
8.悪太郎 (1921)
9.即席百人芸 (1921)
・キートン全短編集(3) 102分
10. 漂流 (1921)
11. 酋長 (1921)
12. 警官騒動 (1922)
13. 華麗なる一族 (1922)
14.キートンの鍛冶屋 (1922)
・キートン全短編集(4) 95分   
15. 北極無宿 (1922)          
16. 成功々々(1922)
17. 電気館 (1922)
18. 空中結婚 (1922)
19. 捨小舟 (1923)

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1