「●物理一般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1808】 日本物理学会 『知っておきたい物理の疑問55』
物理というものを身近に感じさせてくれる。テーマを日常に結びつけるのにやや苦労している?。

東野 圭吾 氏(大阪府立大学工学部電気工学科卒)
『日常の疑問を物理で解き明かす 東京スカイツリーの展望台からどこまで見える?携帯電話をアルミホイルで包むとどうなる? (サイエンス・アイ新書)』['11年]
「洗い立ての髪にドライヤーで風を当てるとすぐに乾くのはなぜ?」といった各種日常的な疑問を物理学の観点から解説していて、気軽に手に取れて解説もまあまあ分かり良く(この新書の特長であるフルカラーの図説が効いている)、何となく小難しいイメージのある「物理(学)」というものを身近に感じさせてくれます。
各章に「日常の物理―熱に関する疑問」といったタイトル付けがされているように、熱、光、音、力と運動、電気と磁気の5つのジャンル分けがされていて、体系的・網羅的であると言えばそうとも言えるし、その分、先にテーマがあって、それを日常の現象に置き換えているようなところも(まあ、日常の疑問と言っても、あくまでも対象となるのは物理現象であるわけだし)。
サブタイトルの「東京スカイツリーの展望台からどこまで見える?」というのは、ナルホド、地球の中心から地表までの距離(地球の半径)にスカイツリーの展望台の高さ(450m)を足した直線と、地球の中心と展望台から見える最遠方の地点(地表)を結んだ直線(地球の半径)と、スカイツリーの展望台とそこから見える最遠方の地点を結んだ直線(求めるx)の、3辺から成る直角三角形を描いて「三平方の定理」で求めるわけだ。
計算結果は76kmになるとのことで、これが富士山の山頂(標高3,776m)からだと220kmになるそうです。高さの違い程には見える距離の差が無いような印象を受けますが、三平方の定理から逆算すれば、地表からの高さの「平方根」に比例することになるわけで、「平方根」に比例するというのが高さの違い程には見える距離の差が無い結果につながるわけです。これを読んで、1つ基準値を覚えておけば地球の半径が分からなくとも計算できるなあと思いました(あるウェブサイトでは「d(km)=3.57√ ̄h(m)」となっていた。高さ1mのところからは3.57km先まで見えるということである本書もこのように最終公式まで書いてもらえるとより良かったかも)。
でも、これ、「日常の疑問」であるには違いないにしても、「物理の疑問」と言うより、純粋に「数学」じゃないかなあ。「虹」のテーマと複合させて、表紙カバーの図案にもなってるけれど。
もう一つのサブタイトルである「携帯電話をアルミホイルで包むとどうなる?」というのは、週刊誌(「週刊文春」)に出ていた、着信があると自動的に電源が入ってしまう「キッズケータイ」を巡っての特急電車の優先席での子どもとお爺さんとの間のトラブル話に材を得たもので、これを見ていた物理学者らしい男が、子どもが食べたおにぎりを包んでいたアルミホイルを使って―。
これ書いていたの、作家の東野圭吾氏だったそうで、やっぱり電気工学科卒だけのことはある。創作っぽい感じもするけれど、実話なのかな。それとも小説の中の話なのかな(映画を観た人の話によると『真夏の方程式』の中でのガリレオ・湯川の行動らしいが)。
冒頭の「洗い立ての髪にドライヤーで風を当てるとすぐに乾くのはなぜ?」にはナルホドと思わされ、「バスがかけているメガネ?」(バスの後部ウィンドウのガラスが外端方向に厚くなっていてワイドビュー(視野拡大)レンズの役割を果たしているという話)など、著者ら自身が見つけた「日常の疑問」の話もありますが、全体としては、結構テーマを日常に結び付けるのに苦労している印象も。
「日常」と言うより、いきなり「実験室」的な設定になっているケースも少なからずあり、ドライヤーの話もバスの話も各章の冒頭にきていて、それだけ「日常」に近いという意味で"自信作"ということなのかも。


小松崎 茂(1915-2001/享年86)
昭和40年代の頃は、大体みんな零戦など戦闘機から入って、震電、鍾馗、飛燕とか作ってから、戦車とか戦艦に行ったのではなかったかなあ。戦闘機が比較的、価格的には安かったのに対し、大和や武蔵といった戦艦は相当高かった印象が個人的にはあるけれど、本書掲載のパッケージ・イラストには、それぞれ発売年と当時の価格が記されており、また、その商品の特徴なども解説されていて、資料としても第一級のものとなっています。
TV関連のSFメカも、「サンダーバード」だけでなく(どういうわけか「サンダーバード2号」が抜群にポピュラーだった)、その後人気が出た「ウルトラマン」や「マジンガーZ」のプラモのパッケージも手掛けていて、クワガタ虫など昆虫のプラモデルもあったりし、そのまま日本のプラモデルの歴史を概観することができる本にもなっています。





先にダグラス・パーマー『
CG復元図がリアルでスゴイ迫力!(子どもでなくとも大人でもぐっと惹かれるものがある)、CGもここまできたかという印象ですが、化石写真などとの配置が上手くなされていて、写真とCGが自然な感じで繋がっているように感じられました(CGがまるで写真のように見えることに加えて、レイアウトの妙が効いているため、相乗効果を醸している)。
『EVOLUTION 生命の進化史』もそうですが、こちらは更に陸生動物の登場までに相当のページを割いていて(180頁強)、かなり本格的。でも、子どもたちが喜びそうな恐竜についてもこれまた詳しく(恐竜リスト 約800点)、見開きページいっぱいを使ったダイナミックなCG復元画(骨格見本を含む)だけでなく、その種に見られる部位の特徴などをピンポイントで解説するなどしていて、大人も子どもも楽しめます。
生命誕生から現在まで、地球35億年の生命の進化の歴史をイラスト化したもので、パノラマ・イラストを全て繋げると全長50メートルにも及ぶという「壮大な命の絵巻物」。
丁度、歴史年表を見ているように、年代表が各パノラマ・イラストの最上部にあり、年代に関する情報や気候と生物相に関する情報が記されていて、下部には、化石産出地のかつての位置と現在の位置(大陸移動しているため両者は異なってくる)の図、種のリスト、イラストの一部のクローズアップや化石写真付きの解説などがあります。



森鷗外(1862-1922/享年60)
今年(2012年)は森鷗外(1862-1922/享年60)没後150周年。岩波新書創刊時のラインアップのうちの1冊である本書は、鷗外の二度目の妻・しげ(志げ)への書簡集で(最初の妻・登志子とは、別居後に離婚)、編纂者の小堀杏奴(1909-1998)は鷗外の次女です。しかし、長男(登志子との間の子)の名前が於菟(おと)で、長女が茉莉(まり)(作家の森茉莉)、次女が杏奴(あんぬ)で二男が不律(ふりつ)、三男が類(るい)というのはすごいネーミングだなあ。オットー、マリ、アンヌ、フリッツ、ルイと片仮名で書いたほうがよさそうなぐらいです。
"しげ"とは1902(明治35年)、鷗外が41歳、彼女が23歳で結婚しており、結婚して3年、娘・茉莉が生まれて2年ということで(しかも妻との年の差18歳)、手紙文は読みやすい文体で書かれており、中には(娘に対して)でれでれ状態と言ってもいいくらいのトーンのものもあるのは無理もないか(鷗外の堅いイメージとは裏腹に、ごくフツーの親ばかといった感じ)。
●「岩波新書」創刊第1回の20点




関東大震災後の復興から東京オリンピック開催までを絵葉書(主に彩色絵葉書)で追ったもの―と言っても、単に時系列で並べるのではなく、序章「復興」の後は、「銀座」「日本橋」「丸の内、日比谷」「上野」「浅草」「新宿、渋谷」といった地域ごとに括った章と、「夜景」「祝祭」「鉄道と市電」「遊覧バス」「東京タワー」「羽田」といった交通機関などテーマごとに括った章が交互にくる構成になっています。
こうした構成により、大都市・東京のモダン化の過程における「主役」の変遷も見てとれますが、重要文化財建造物として外観上は保存されているもの(「日本橋」「和光ビル」「市政会館」など)は別として、今はすっかり変わって昔の面影さえも無くなってしまったものもあれば、何となく今もその雰囲気を残しているものもあったりして興味深いです。
例えば、日本で最初の地下鉄は、1927(昭和2)年に上野・浅草間で開通した同じものですが、同じ地下鉄の出入口でも、上野は今のどこにあたるか分からなかったけれども、浅草は、ああ、あそこか、という感じで、(今も意匠が似ている)次に古い銀座線の終点となる渋谷駅は、当初からデパートのあるターミナルビルの中に吸い込まれていくような作りだったわけだなあと。
東武線の駅と松屋浅草店が一緒になった東武浅草駅などは、私鉄の高架線の発達に伴って作られ
た高架駅のハシリであり(右写真:隅田川を渡る東武鉄道)、「市電」も銀座通りのど真ん中を走るなどして(下写真)、公共交通機関の主役として非常に発達していたわけですが、これも銀座通りに限らず、都内のあちこちの幹線道路の中央分離帯などに、今もその名残りが見られます。
著者は、産経新聞の記者だった1999(平成11)年、古いパリの様子を調べる手段として絵葉書の重要性を知り、芸術写真とは違って、街の普通の姿を示す絵葉書の魅力に取りつかれ、今や十数万枚を蔵するコレクターとして知られています(十年そこそこの期間で集めた割には膨大な数!)。