【3600】 ○ カルロス・マルケス=マルセット 「両親(ふたり)が決めたこと」 (24年/スペイン・伊・スイス) (2026/02 百道浜ピクチャーズ) ★★★☆(○ ルイス・ブニュエル 「欲望のあいまいな対象」 (77年/仏・スペイン) (1984/11 フランス映画社) ★★★☆)

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やや疑問を感じた「デュオ安楽死」。60代になったアンヘラ・モリーナの演技。

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「両親が決めたこと」アルフレド・カストロ/アンヘラ・モリーナ
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欲望のあいまいな対象 [DVD]」フェルナンド・レイ/キャロル・ブーケ/アンヘラ・モリーナ
両親が決めたこと01.jpg スペイン・バルセロナで暮らす80歳の舞台女優クラウディア(アンヘラ・モリーナ)は、末期がんに冒されている。がんは脳にまで転移し、錯乱や半身麻痺、さらに自我の喪失も近づくなか、彼女は安楽死を選択する。子育てよりも舞台優先で生きてきたクラウディアを支え続け、今なお愛してやまない夫フラビオ(アルフレド・カストロ)も彼女とともにスイスで安楽死することを決意し、3人の子どもたちに打ち明ける。子どもたちは戸惑い反発するが父の意志は固く、両親はデュオ安楽死に必要な手順を進め、ついに最後の旅へと出発するときがやって来る―(「両親が決めたこと」)。

両親が決めたこと02.jpg カルロス・マルケス=マルセット監督の2004年公開作で、高齢夫婦のどちらかが終末期に安楽死するとき、そのパートナーが健康であってもともに安楽死する「デュオ安楽死」を題材にした家族ドラマ。ヨーロッパで急増しているというデュオ安楽死を決めた両親と、その子どもたちの心の機微を、ユーモアを交えながら温かく描き、2024年・第49回「トロント国際映画祭」で、新たな挑戦作を評価する「プラットフォーム部門」の作品賞を受賞しています。

 それにしても、終末期の病にある母親の安楽死に加え、父親まで一緒に死ぬと言い出したいう事態には、子どもらもびっくりするのも無理ないなあ。でも、最後は容認するとこところは、やはり個人主義的な欧米人の感覚のように思えました。

「すべてうまくいきますように」2021.jpg さすがに「デュオ」ではないけれど類似した設定である、フランソワ・オゾン監督の「すべてうまくいきますように」 ('21年/仏・ベルギー)にも、スイスの安楽死を請け負う機関が出てきましたが、この「両親が決めたこと」では実際にスイスのそうした施設を使って撮影し、安楽死の手順を映画内で再現し、施設内の様子や火葬して灰になるまでを描いています。あちらは「骨拾い(骨上げ)」という慣習が無く(あれは世界的に見ると非常に珍しい風習のようだ)、いきなり"灰"になってしまうのだなあ。

ザルーム ネクスト・ドア2024.jpg 個人的には、妻の安楽死の手助けはいいけれど、夫に対しては完全な自殺ほう助ではないかとの疑問を抱きました。最後に、夫の方がちょっと逡巡したように見えましたが、人間、何らかの未練はあるのでは。施設側は「いつでも止められる」としながらも、手順的には(後押しは必要なのかもしれないが)「さあ、死になさい」と言わんばかりで、観ていてちょっとキツイ感じがしました。安楽死・尊厳死関連の作品では、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した、末期がんの女性の自死を描いたペドロ・アルモドバル監督 の「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」 ('24年年/スペイン・米)が、自分で死ぬタイミングを選ぶという点で、自分的には一番"しっくりくる死に方"(笑)でした。

アンヘラ・モリーナ in「両親(ふたり)が決めたこと」(2024)/「欲望のあいまいな対象」(1977)
両親が決めたこと03.jpg欲望のあいまいな対象 あんへら.jpg 「両親(ふたり)が決めたこと」ではアンヘラ・モリーナが、60代後半の実年齢で80歳の元舞台女優の妻クラウディアを演じています。アンヘラ・モリーナは、あの「自由の幻想」('74年/仏)のルイス・ブニュエル監督の遺作である「欲望のあいまいな対象」('77年/仏・スぺイン)で知られるようになった女優ですが、この作品を観たシネマリス (神保町)では、その「欲望のあいまいな対象」も掛かっていて、公式xでは、「1955年生まれのアンヘラ・モリーナの20代、60代の演技を続けてご覧頂けます」との触れ込みでした。

欲望のあいまいな対象01.jpg テロの危険に満ちたセビリア。初老の紳士(フェルナンド・レイ)は、発車間際の電車に乗り込もうとしてきた1人の女にバケツの水を被せる。驚く相客の男女らに、彼は女が悪魔であることを語り始める、その娘コンチータ(キャロル・ブーケ)のことを。初老の紳士マチューがコンチータに会ったのは、従兄の判事エドワール(ジュリアン・ベルトー)を食事に招いた日のこと。その日雇われた新しい小間使がコンチータだったのだ。その初々しい姿にすっかり魅せられたマチューは、夜コンチータを呼んだ。しかしコンチータはその部屋を逃げ去り、翌朝、マチューの家を出て行った。彼女を忘れられないマチューはローザンヌのレ欲望のあいまいな対象02.jpgマン湖畔で偶然彼女と再会する。演劇仲間といっしょの彼女は、興行主に騙され無一文だと言う。そんな彼女に金を握らせるマチュー。彼はそれがきっかけで、パリに帰ってからもコンチータのアパートを訪れた。アパートでは、彼女(アンヘラ・モリーナ)は、母と二人で貧しい生活を送っていた。マチューは、母親に大金を渡し、コンチータを自分の邸に引き取ろうとするが、コンチータは、そんなやり方のマチューに怒り、手紙を残して彼の許を去ってしまう。夜も眠れぬマチュー。再びとあるバーで偶然コンチータを見かけた彼は、今度こそは離すまいと、郊外の別荘に連れてゆく。ところが、ベッドの中でマチューが手にしたものは、なんと彼女を守る貞操帯だ。マチューの欲望は一向に満たされない―(「「欲望のあいまいな対象」)。

欲望のあいまいな対象03.jpg 「欲望のあいまいな対象」はルイス・ブニュエル監督の遺作で、主人公の男性がのめり込むヒロイン・コンチータを、フランス人で映画初出演のキャロル・ブーケ(ヒロインの無垢な少女の面の担当?)とスペイン人女優のアンヘラ・モリーナ(ヒロインの妖艶な悪女の面の担当?)の二人の女優が演じるという「二人一役」の演出がなされていましたが、特にアンヘラ・モリーナの美貌とエロティックな肢体は目を惹きます。

欲望のあいまいな対象04.jpg 列車の中で主人公が語る話が映画のメインストーリーですが、その列車にバケツで水をぶっかけられたコンチータも乗っているわけで、彼女もお返しに主人公にバケツで水をぶっかける―ところが、主人公の話が終わって、映画もこれで終わりという時に2人は...。"想定外の結末"との世評ですが、全体を振り返ってみると、やっぱりという気もしないではない、と言うか、この結末しかないのではないかという気もします(この主人公は「病膏肓に入る」だなあ)。エンディングに爆発に象徴されるように、テロによる政情不安というのも背景にあるのでしょうか。個人的にはその辺りの関連はあまりよく分からなかったけれど。

 

両親が決めたことえ.jpg両親(ふたり)が決めたことTHEY WILL BE DUST.jpg「両親(ふたり)が決めたこと」●原題:POLVO SERAN(英題:THEY WILL BE DUST)●制作年:2024年●制作国:スペイン・イタリア・スイス●監督:カルロス・マルケス=マルセット●製作:トノ・フォルゲラ/アリアドナ・ドット/ジョバンニ・ポンピリ/オイゲニア・ムーメンターラー/ダービト・エピナイ●脚本:カルロス・マルケス=マルセット/クララ・ロケ/コーラル・クルス●撮影:ガブリエル・サンドル●音楽:マリア・アルナル●時間:106分●出演:アンヘラ・モリーナ/アルフレド・カストロ/モニカ・アルミラル・バテット/パトリシア・バルガロ/アルバン・プラド/マヌエラ・ビーダーマン●日本公開:2026/02●配給:百道浜ピクチャーズ●最初に観た場所:神保町・シネマリス(26-02-17)●同日上映:「欲望のあいまいな対象」(ルイス・ブニュエル)

欲望のあいまいな対象」[Prime Video]「映画パンフレット★『欲望のあいまいな対象』/ルイス・ブニュエル監督、フェルナンド・レイ、キャロル・ブーケ
欲望のあいまいな対象  p.jpg欲望のあいまいな対象 p.jpg「欲望のあいまいな対象」●原題:CET OBSCUR OBJET DU DESIR(英:THAT OBSCURE OBJECT OF DESIRE)●制作年:1977年●制作国:フランス・スペイン●監督:ルイス・ブニュエル●製作:セルジュ・シルベルマン●脚本:ルイス・ブニュエル/ジャン=クロード・カリエール●撮影:エドモン・リシャール●時間:99分●出演:フェルナンド・レイ/キャロル・ブーケ/アンヘラ・モリーナ/バレリー・ブランコ/エレン・バル/リタ・ラッチ・ペイロ/デイビッ ト・ロッチャ●日本公開:1984/11●配給:フランス映画社●最初に観た場所(再見):神保町・シネマリス(26-02-17)●同日上映:「両親(ふたり)が決めたこと」(カルロス・マルケス=マルセット)

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