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「STAP細胞」問題に偏り過ぎ。あれは"オカルト"ではなく単なる"不正"ではないか。
『反オカルト論 (光文社新書) 』['16年]
占い、霊感商法に死後の世界...科学が発達した21世紀でさえ、「オカルト」は多様な姿で生き続けている。この「罠」に、大学生や社会的エリート、学問に携わる専門家でさえも陥ってしまうのはなぜか。現代社会にはびこる欺瞞に囚われないための科学的思考法を、わかりやすい対話方式で取り上げる―といういのが、版元の口上(実際、教授と助手の会話形式になっていて読みやすい)。
「週刊新潮」の連載がベースになっていますが、連載中には、「幸福の科学」がら、著者の大学に押しかける、職員に「抗議書」を手渡す、役職者に「面会依頼」を郵送する、ネットで名誉を毀損する等の「嫌がらせ」を受けたり、スピリチュアリズムの大家(?)大門正幸氏から「週刊新潮」宛てに抗議メールが届いて、それに対してネット上で反論したりと、いろいろあったようです。
『「生まれ変わり」を科学する―過去生記憶から紐解く「死」「輪廻転生」そして人生の真の意味』['21年/桜の花出版]
第1章は、大門正幸氏との論争(実際には大門氏は著者の議論に応えていないが)のネタの1つとなった、スピリチュアリズムの起源とされるフォックス姉妹の所業が実はイタズラで、後に彼女らもそれを認めているという話から始まり(大門氏はその"所業"を霊が存在することの証しとして自著で引用し、彼女たちが実はイタズラだったと告白したことには触れていない)、ちょっと期待しました。
ところが、第2章に入って、なぜ人は妄信するのかということを論じるにあたって、「STAP細胞」事件に触れたと思ったら、どんどんそちらの方に行ってしまいました(連載が「STAP細胞」問題の発覚と時期的に近かったこともあるのかもしれないが)。確かに「人はなぜ騙されるのか」、という観点からすれば、プロセスにおいて繋がってくるのかもしれませんが、「STAP細胞」の事件そのものは"オカルト"と言うより"捏造"であり、単純に"不正"であるということの問題ではないでしょうか。いまだに当事者である女性研究者を信じている人はいるようなので("頑張れ!"的な取り巻き応援団は結構いるようだ)、完全には終っていない問題ではあるのでしょうが。
著者には『新書100冊』('23年/光文社新書)や『天才の光と影―ノーベル賞受賞者23人の狂気』('24年/PHP研究所)といった著書があることから、もう少し広い観点からの「反オカルト論」を期待しましたが、「STAP細胞」問題に偏り過ぎで、その点は期待外れでした。著者の言っていること自体は間違っているわけではありません。ただ、オカルトに関する議論になっていないということです。