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本のある生活、本をめぐる交友を通しての、本というものに対する様々な視点がいい。

『本を読む兄、読まぬ兄 [吉野朔実劇場]』(シリーズ第5弾)『お父さんは時代小説が大好き―吉野朔実劇場
』(シリーズ第1弾)『お母さんは「赤毛のアン」が大好き―吉野朔実劇場
』(シリーズ第2弾)『弟の家には本棚がない―吉野朔実劇場
』(シリーズ第3弾)『犬は本よりも電信柱が好き―吉野朔実劇場
』(シリーズ第4弾)
漫画家・吉野朔実が、日常での自分と本との付き合いをエッセイのように描いた「本の雑誌」連載のコミックシリーズで、もうこれで5冊出ています。
シリーズの最初で、芥川や漱石をとり上げたかと思うと、『羊たちの沈黙』のようなサイコサスペンスやサイエンス系・心理学系の本をとりあげたりしていて、次に何が出てくるかわからない面白さがありましたが、総じてミステリーが多いのは、やはり漫画家としてストーリーテイリングの参考になるのか(波瀾がありそうで結局は何も無かったというような小説には、結構手厳しかったりする)と思ったけれど、このシリーズ第5冊を読んで、改めて、このあちこちにジャンルが跳ぶのはシリーズを通して健在だったなあと(実際には、本の中身より、本のある生活、本をめぐる交友などを通しての、本というものに対する様々な視点の部分が面白いのだが)。
シリーズ第1冊の『お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き』('96年)では、ケストナーの『飛ぶ教室』をめぐる対談で、この本が泣けるのは、「一杯のかけそば」が泣ける話だということと、どう違うのかを(思い出し泣きしながら)論じていたりしていて、神経症患者を描いたオリーバー・サックスの『妻を帽子とまちがえた男』に新鮮な興味を覚え、この辺りから、精神医学への興味が始まっているのかな。
シリーズ第2冊『お母さんは「赤毛のアン」が大好き』('00年)の「私はこれを"読みきった自慢"」という、「難解だったり起伏が無かったりする本を我慢して最後まで読んだことの自慢」は笑えて、でも、出版業界ってさすが読書家の人が多いよなあ、と改めて感じた次第。
シリーズ第3冊『弟の家には本棚がない』('02年)は、中勘助に関するエッセイの部分が良く、この辺りからしばしば精科医の春日武彦さんが登場し、結局、この人も著者の交友サークルの1人ということか(著者と春日氏の対談集が本になっているが)、春日さんの人柄までわかってしまう。
シリーズ第4冊『犬は本よりも電信柱が好き』('04年)の「電車の中は誤解でいっぱい」という、電車の中で読む本を巡る鼎談(ドストエフスキーの『悪霊』を読んでいたら"宗教の人"から名刺を渡されたとか)も面白く、こうなってくると、もっと対談やエッセイ部分を増やしてもいいような気もしました。
そして昨年['07年]刊行のシリーズ第5冊『本を読む兄、読まぬ兄』('06年)、「お札の絵柄がマンガのキャラクターだったら」という話が一番笑えた。
作家・平山夢明氏との対談がありますが、ページ数が少なくてちょっと物足りなく、ついでに、平山氏と春日氏の対談本(『「狂い」の構造』('07年/扶桑社新書))も読んでしまいました。
《読書MEMO》
『神様は本を読まない (吉野朔実劇場)』['10年]<吉野朔実劇場>シリーズ第6弾
『悪魔が本とやってくる (吉野朔実劇場)』['13年]<吉野朔実劇場>シリーズ第7弾
『天使は本棚に住んでいる (吉野朔実劇場)』['16年]<吉野朔実劇場>シリーズ第8弾
『吉野朔実は本が大好き (吉野朔実劇場 ALL IN ONE)』['16年]


吉野 朔実(漫画家・書評家)2016年4月20日、病気のため死去。57歳。