【3600】 ○ 森村 誠一 『高層の死角 (1969/08 講談社) ★★★★

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ホテル内密室殺人と航空機トリックの二重構造のアリバイ崩しで愉しめる。

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『高層の死角』(1972/09 講談社ロマン・ブックス)/『高層の死角 (講談社文庫 も 1-1)』(1974/04 講談社文庫)/『高層の死角 (カッパ・ノベルス) 』(1984/04 カッパ・ノベルズ)/『高層の死角』(1997/07 廣済堂文庫)/『高層の死角』(2000/06 ハルキ文庫)/『高層の死角』(2009/10 祥伝社文庫)/『高層の死角 (角川文庫) 』(2015/02 角川文庫)
高層の死角』['69年]/『高層の死角 (1977年) (角川文庫)
高層の死角1.jpg高層の死角0角川.jpg 1969(昭和44)年度・第15回「江戸川乱歩賞」受賞作。

 昭和4X年7月22日午前7時ごろ、東京竹橋のパレスホテル3401号室で、オーナー社長である久住(くじゅう)政之助が刺殺体で発見された。死亡推定時刻は午前1時~2時の間という鑑識の報告と、部屋と寝室の両方のドアが施錠されたいわゆる「二重の密室」状態であったことから、刑事たちは内部犯行として捜査を進め、美人社長秘書の有坂冬子に容疑の目を向けるが、彼女には完璧なアリバイがあった。彼女はその日、捜査員の一人である警視庁刑事部捜査一課の平賀高明刑事とホテルで一夜を過ごしていたのだった。その直後、冬子は福岡のホテルで死体となって発見される―。

 2023年7月に亡くなった森村誠一(1933-2023/90歳没)の作品。1965年、32歳で『サラリーマン悪徳セミナー』を雪代敬太郎というペンネームで出版し、作家デビュー。34歳でホテルマンからビジネススクールの講師に転職して執筆を続け、青樹社からビジネス書や小説『大都会』を出版するが売れず、1969(昭和44)年、「ミステリを書いてみたら?」と言われて執筆したホテルを舞台にした本格ミステリがこの「江戸川乱歩賞」受賞作品です。

ホテル ニューオータニ.jpg 『人間の証明』('76年/角川書店)に出てくる東京・赤坂にある「東京ロイヤルホテル」のモデルは、作者が勤務していた「ホテルニューオータニ」と思われますが、この作品で事件が起きるのは竹橋の地上35階の「パレスサイドホテル」で(丸の内の「パレスホテル」がモデル? ただし、構造は「ホテルニューオータニ」に近い)、そのライバルとして新たに出現したというホテルが地上42階の「東京ロイヤルホテル」となっており、このモデルもやはり「ホテルニューオータニ」ではないでしょうか(「ホテルニューオータニ」は'64(昭和39)年9月竣工。ただし、当時は最上階に回転ラウンジを擁する地上17階建てで、10年後の'74(昭和49)年に地上40階の新館タワーが完成する。作者は、この計画を知っていて書いているのか?)。

 ホテル内での密室殺人と航空機トリック(松本清張の『点と線』に新味加えた感じ)の二重構造のアリバイ崩しという「本格推理」っぽい作品。「江戸川乱歩賞」選考委員の高木彬光も、「トリックに関するかぎり抜群である。ことに前半、四つの鍵をめぐる密室トリックがすばらしい。ホテルに関する知識もずばぬけていて、最初はホテルマンかと思ったくらいだが、そうでないとすればその努力には敬意を惜しまない」としていますが、実際に前職はホテルマンだったわけです(ホテルマンが推理小説を書くというイメージが無かった?)。

松本清張 .jpg 高木彬光は、「難は文章のまずさだが、この点は今後の努力によって解決されるもの」としていますが、同じく選考委員の松本清張も「ホテルを舞台に、飛行機をアリバイ造りに使った本格推理で、ホテルに関する精細な知識を裏付けとし、ホテル戦争という現代的事象を殺人動機として興味を盛り上げ、後半のアリバイ崩しもよく出来ていた。但し、内容に比して、いささかお粗末である。文章についての一層の研鑚を望む次第である」としています。

 また、これも同じく選考委員である横溝正史は、「『高層の死角』を読んだとき、私はただちにこれに決めてしまった。推理小説のつねとして、いろいろ無理もあり、説明不足の部分もなきにしもあらずだが、今度の候補作品のなかでは圧倒的に優れていると思った。読みおわったあと、今日の立身出世主義の権化のような犯人像が、かなりハッキリ印象づけられるのもよかった。だいたいこれに決めた」と(横溝正史は、文章のことは言っていない)。

 先にも述べたように、ホテル内密室殺人(四つの鍵をめぐるトリックはホテルマンだった作者ならでは)と航空機トリック(飛行機の搭乗者名簿に名前が載らないようにするには、当該飛行機に乗らなければ良いということかあ)の二重構造のアリバイ崩しで愉しめる作品。チェックインの際の用紙に記してあるナンバーなんて、ホテルマンでないと思いつかないかも。今読むと、それほどひどい文章にも思えないし、と言うか、もっとひどい文章の書き手が世に横溢している気もします。

 1977年に、NHK「土曜ドラマ」枠にて藤岡弘主演で、1983年にテレビ朝日「土曜ワイド劇場」枠にて高橋英樹主演で、2003年にTBS「棟居刑事シリーズ2・高層の死角」として 中村雅俊主演で(平賀刑事をシリーズキャラクターの棟居弘一良に改変)、それぞれドラマ化されています。

1977年・NHK「土曜ドラマ・高層の死角」藤岡弘・新藤恵美/2003年・TBS「棟居刑事シリーズ2・高層の死角」中村雅俊・華原朋美
高層の死角d.jpg

高層の死角 新藤.jpg 【1974年文庫化[講談社文庫]/1977年再文庫化[角川文庫]/1984年ノベルズ版[カッパ・ノベルズ]/1997年再文庫化[廣済堂文庫]/2000年再文庫化[ハルキ文庫]/2009年再文庫化[祥伝社文庫]/2015年再文庫化[角川文庫]】

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This page contains a single entry by wada published on 2006年7月 1日 00:08.

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