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これもまた、濱口竜介監督作との類似性の点で興味深かった(特に第1話)。

「パリのランデブー [DVD]」第1話:「7時のランデブー」/第2話:「パリのベンチ」/第3話:「母と子1907年」
エリック・ロメール監督が3話構成のオムニバスで描く恋愛コメディ(1994年製作・1995年公開)。
〈第1話:7時のランデブー〉法学部の学生エステル(クララ・ベラール)は試験を控えているが、恋人のオラス(アントワーヌ・バズレル)が自分に会わない日の7時ごろにカフェで別の女の子とデートしているという話
を聞かされて勉強も手につかない。朝、市場で買い物中のクララは見知らぬ男に愛を告白され、ふと思いついてオラスがデートしていたという例のカフェに夜7時に来るように言う。その直後彼女は財布がないのに気づき、さてはあの男にスラれたと思う。夕方、アリシー(ジュディット・シャンセル)という女の子が財布を拾って届けてくれた。彼女は7時に例のカフェで待ち合わせがあるというので、エステールも件のスリとの待ち合わせの話をして一緒に行く。予想どおり、アリシーのデートの相手はオラスだった。エステルは彼に愛想が尽きる。アリシーも事態を察して去ると、そのテーブルに朝の市場の青年が腰掛け、人を待つ風でビールを注文する―。
「偶然と想像」('21年)で「ベルリン国際映画祭銀熊賞」を受賞した濱口竜介監督は、同作をエリック・ロメールの作品、特に「パリのランデブー」に触発されて作ったとのことです。「あれも偶然がテーマになっていますが、構成も含めて参考にしています」と語っていますが、中でも「偶然と想像」の第1話「魔法(よりもっと不確か)」は、この作品の第1話「7時のランデブー」を色濃く反映していたように思います(「偶然」の設定がほぼ同じ)。男の身勝手が描かれていますが、ラストで再登場した青年の方は、スリではなかったのかあ。ちょっと気の毒。でも、このユーモラスな結末は、このエピソードの救いにもなっています。3話の中でも人気の高いエピソードであることに納得です。
〈第2話:パリのベンチ〉彼(セルジュ・レンコ)は郊外に住む文学教師、彼女(オロール・ローシェール)は同棲中の恋人が別にいるらしい。9月から11月にかけて、二人はパリの随所にある公園でデートを重ねる。彼は彼女
を自宅に連れていきたいが、彼女は貴方の同居人がいやといって断る。彼女の恋人が親類の結婚式で留守にするとかで、彼女は観光客になったつもりでホテルに泊まろうと提案する。いざ目的のホテル前で、彼女は恋人が別の女とホテルに入るのを見る。別れるのは今がチャンスという彼に、彼女は「恋人がいなければあなたなんて必要ないわ」と言う―。
第1話と対照的に第2話は完全に女性上位。主人公の彼女の好みで、デートの場所はいつも外で、場所も彼女が指定するのですが、それが、9月30日 サン=ヴァンサン墓地、10月14日 ベルヴィル公園、10月21日 ヴィレット公園、11月12日 モンスリ公園、11月18日 トロカデロ庭園、11月25日 オートゥイユ庭園...といった具合に日記風に展開されていき、映画自体がパリの公園巡りみたいになっています(笑)。ラストに決定的な女性のエゴを見せつけられた気がしますが、第1話と違って、この女性が嫌になると言うより(好きにもならないが)、男女の関係というものの複雑さを感じさせ、意外と深いエピソードだったようにも思います。
〈第3話:母と子1907年〉ピカソ美術館の近くに住む画家(ミカエル・クラフト)は、知人からスウェーデン人女性(ヴェロニカ・ヨハンソン)を紹介されていた。彼は自分を訪ねて来た彼女をピカソ美術館に連れていく。自分は美術館に入らず、8時に会う約束をしてアトリエに帰るその途中、彼は若い女(ベネディクト・ロワイヤン)とすれ違い、彼女を追って美術館に入る。彼女は「母と子1907年」の前に座る。彼はスウェーデン女性と合流し、そ
の名画の前で例の女性にわざと聞こえるように絵の講釈を始める。彼女が席を立ち、彼は慌てて別れを告げて女を追って美術館を出て、道で声をかける。彼女は自分は新婚で夫は出版業者、今度出る画集の色を原画と比べに来たのだという。彼はめげず、彼女も興味を覚えて彼の絵を見にアトリエに行く。二人は絵画談義を交わし、結局何もないまま女は去る。画家はしばし絵筆を取って作品に手を加え、スウェーデン女性との待ち合わせの場所に行く。だが時間が過ぎても女は現れない。家に帰った画家は絵の中の人物を一人完成させ、呟く。「それでも今日一日まったく無駄ではなかった」と―。
ベネディクト・ロワイヤンの《美術女》ぶりがいいですが、元々は人気モデルで、映画出演はあまりないみたい。スウェーデン人女性=のヴェロニカ・ヨハンソンも同じくモデル系でしょうか(皆が振り返るような振るには勿体ない美人だと思ったら、最後は女の方が男を振ったのか)。こうした演技経験の浅い人を使うところがエリック・ロメールらしく、先に挙げた濱口竜介監督はそうした部分においてもこれに倣っていて、「ハッピーアワー」('15年)で主演した演技経験の無い4人の女性に、第68回「ロカルノ国際映画祭最優秀女優賞」をもたらしています。
各話の頭にアコーディオン弾きと歌い手の2人組が出てくるのは、ルネ・クレール監督の「巴里の屋根の下」へのオマージュでしょう。各話を繋いでいく辺りも演出方法そうですが、エリック・ロメール監督自身、先駆者の影響を受けているのだなあと改めて思いました。
濱口竜介監督は演出においてひたすら「本読み」をやることで知られていますが、エリック・ロメール監督がそうであり、さらに遡るとジャン・ルノワール監督もそう。濱口監督によれば、エリック・ロメールは演技経験のない人とそれをやることを好み、ジャン・ルノワールはプロフェッショナルの役者とそれをやることを好んだそうです。濱口監督の場合、経験のない人とは「親密さ」('12年)で実際に「本読み」をやり、プロの役者とは米アカデミー国際長編映画賞などを受賞した「ドライブ・マイ・カー」('21年)の《映画ワークショップ》の場面としてそれを見せていました。


今回シネマブルースタジオで観た、「飛行士の妻」('80年)、「美しき結婚」('81年)、「満月の夜」('84年)、「緑の光線」('86年)、「友だちの恋人」('87年)、「レネットとミラベル/四つの冒険」('87年)、「木と市長と文化会館/または七つの偶然」('93年)、そしてこの「パリのランデブー」('95年)はすべて'84年設立のシネセゾンの配給で、日本での初公開は'83年11月オープンの「WAVEビル」内に出来たシネヴィヴァン六本木でした。

シネヴィヴァンは独自に映画パンフレットを作っていて、ロベール・ブレッソン監督の「ラルジャン」 ('83年/仏・スイス)やフレディ・M・ムーラ監督の「山の焚火」('85年/スイス)、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の「童年往時/時の流れ」('85年/台湾)などはシネヴィヴァンで観ましたが、エリック・ロメール作品は当時見逃してしまいました。そうこうしている内に、シネセゾンそのものが'98年6月にその活動を終え、シネヴィヴァン六本木も'99年12月25日閉館となりました。
シネマブルースタジオの今回のシリーズ上映は有難いですが、この手の映画って、観ることができる時に観ておかないと次はいつ観られるかわからない、と改めて思わされました。
「パリのランデブー」●原題:LES RENDEZ-VOUS DE PARIS(英:RENDEZ-VOUS IN PARIS)●制作年:1993年●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・ロメール●製作:フランソワーズ・エチュガレー●撮影:ディアーヌ・バラティエ●音楽:エリック・ロメール●時間:105分●出演:(第1話)クララ・ベラール/アントワーヌ・バズレル/ジュディット・シャンセル/(第2話)セルジュ・レンコ/オロール・ローシェール/(第3話)ミカエル・クラフト/ヴェロニカ・ヨハンソン/ベネディクト・ロワイヤン●日本公開:1993/11●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-03-13)(評価:★★★★)


パリの南西部ヴァンデ県サン=ジュイールの市長ジュリアン(パスカル・グレゴリー)は、村の原っぱに、図書館とCD・ビデオのライブラリー、野外劇場、プールを備えた総合文化センターを建設しようと考えていた。だが、この計画は周囲の賛同を得られないでいる。ジュリアンの恋人で、根っからのパリっ子である小説家のベレニス(アリエル・ドンバール)も「文化会館なんて必要かしら」と少々懐疑的
。村のエコロジストの小学校教師マルク(ファブリス・ルキーニ)は、烈火のごとく怒る。ジュリアンにインタビューした女性ジャーナリストのブランディーヌ(クレマンティーヌ・アムルー)のルポは編集長(フランソワ・マリー・バニエ)の独断で、マルクを中心としたエコロジー特集になってしまう。そんなある日、偶然にマルクの娘ゾエ(ギャラクシー・バルブット)とジュリアンの娘ヴェガ(ジェシカ・シュウィング)が出会って友達となり、ゾエは市長に「文化会館よりみんなが集まって楽しめる広場がいいわ」と訴える。結局、予定地の地盤が弱いことが判明し、建設は中止となった。代わりにジュリアンは広大な土地を開放し、そこは人々の憩いの広場となった―。
アリエル・ドンバールをたっぷり観られる映画でもあります。市長ジュリアン役のパスカル・グレゴリーは、「海辺のポリーヌ」('83年)ではアリエル・ドンバールに袖にされる役でしたが、10年後のこの作品では恋人同士の役。パスカル・グレゴリーは、最近では婁燁(ロウ・イエ)監督の 「
文化会館設立反対派の教師マルクを演じたのはファブリス・ルキーニで、「レネットとミラベル 四つの冒険」('87年)の第4話「絵の売買」の画廊の主人役などエリック・ロメール監督の常連。最近ではフランソワ・オゾン監督のコメディ映画「
「木と市長と文化会館 または七つの偶然」●原題:L'ARBRE, LE MAIRE ET LA MEDIATHEQUE OU LES HASARDS(英:THE TREE, THE MAYOR AND THE MEDIATHEQUE)●制作年:1993年●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・ロメール●製作:フランソワーズ・エチュガレー●撮影:ディアーヌ・バラティエ●音楽:エリック・ロメール●時間:105分●出演:パスカル・グレゴリー/アリエル・ドンバール/ファブリス・ルキーニ/クレマンティーヌ・アムルー/フランソワ・マリー・バニエ/ジャン・パルヴュレスコ/フランソワーズ・エチュガレー/ギャラクシー・バルブット/ジェシカ・シュウィング/レイモンド・ファロ/マヌエラ・ヘッセ●日本公開:1994/04●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-02-28)((評価:★★★☆)
自転車のパンクをきっかけにミラベル(ジェシカ・フォルド)は、ある田舎道で、この町の納屋のような家に一人で住み、絵を描いて暮らしているレネット(ジョエル・ミケル)と出会う。彼女はミラベルに、夜明け前に1分間だけ音のない世界になる"青の時間"を体験させようと家に泊まるよう誘うが、せっかくのチャンスが車の音で失敗に終わる。落胆するレネットに、ミラベルはもう1晩泊まることを告げ、二人はその昼間に田舎の生活と自然を満喫する。そして2泊目の夜明け、二人は"青い時間"を味わい 感動する―。(第1話「青い時間」)
同監督の「緑の光線」に似ているように思いました。シリーズ第5作「緑の光線」('86年)は、孤独なヒロインがバカンスの最後の日に知り合った若者と一緒に、日没前に一瞬だけ見えるという太陽の「緑の光線」を見に行くという話でしたが、「青い時間」では、それぞれ田舎と都会に住む若い女性同士の組み合わせ。二人の出会いから、性格の全く異なる二人が打ち解けていく様ががごく自然に描かれていていました。自然も美しいし(「緑の光線」と同じく、チーズで有名なブリー地方が舞台)、レネットの住まいも悪くなかったです。でもパリで絵の勉強をするために、彼女はミラベルのアパートへ―。
秋になり、パリのミラベルのアパートで同居し、美術学校に通うレネットは、ある日ミラベルと待ち合わせしたモンパルナスのカフェで、奇妙なボーイ(フィリップ・ロダンバッシュ)と出会う。小銭を持っていないミラベルがコーヒー代に200フラン札を出すと、ボーイは「どうせ友だちなんか来ないんだろう。飲み逃げしようとしてもそうはいかない。おつりが出せないから小銭で払え」と無理難題を言う そこにミラベルがやってきて、彼女は500フラン札を出してボーイと押し問答が続くが、ボーイが席を離れた隙に二人はお金を払わず逃げてしまう しかし、レネットは翌朝、代金を払いにカフェに行く―。(第2話「カフェのボーイ」)
物乞いに小銭をやるレネットに影響を受けたミラベルは、ある日、スーパーで万引きする女(ヤスミナ・アウリー)を見つけ、彼女を助ける行為をするが、成り行きから女が万引きした商品はミラベルの手に残ってしまう 帰宅後、二人は彼女の行為について議論する 。ある日 レネットは、駅で小銭をせびる女(マリー・リヴィエール)に会い、彼女に小銭を与えたため電車に乗り遅れてしまう。 電話をしようとするが小銭がないので、彼女も通行人に小銭をせびるがうまくいかない。 すると、先ほどの女がまた通行人から小銭をせびっているのを見つけ、彼女に金を返すように詰め寄るが、彼女が泣き出してしまい 諦める―。(第3話「物乞い、窃盗常習犯、女詐欺師」)
レネットは、今月家賃を払う番だったが、金が無く、 二人はレネットが描いた絵を画廊に売ることにする。 レネットは言葉が話せないふりをして画廊の主人(ファブリス・ルキーニ)と交渉するがうまくいかない。しかし、他の客が画廊に入って来たのを契機に、ミラベルが機転を発揮し二人は大金を手にする―。(第4話「絵の売買」)
4話の中では第1話が★★★★、第4話が★★★☆、あと第2話と第3話が★★★といったところでしょうか。どれもユーモアを交えた軽快なタッチで描かれていて、「喜劇と格言劇」シリーズの作品と比べてもより軽いかも。「喜劇と格言劇」シリーズが男女の恋愛模様を中心に描いているのに対して、女性同士のからっとした感じの友情を描いており、そうした男女の情が絡まない分、軽くなっているのかもしれません。
パリ近郊の新都市セルジー・ポントワーズで市役所に勤めるブランシュ(エマニュエル・ショーレ)は、職員食堂で最後の夏休みを迎えた学生レア(ソフィー・ルノワール)と出会い意気投合する。恋人ファビアン(エリック・ビエラード)の好きな水泳が苦手というレアのため、ブランシュは水泳の手ほどきをすることに。そして二人がプー
ルにいたところへ、ファビアンの友人アレクサンドル(フランソワ・エリック・ゲンドロン)が現れる。ブランシュはたちまちアレクサンドルに恋してしまうが、好きな相手に対して臆病になってしまう性格のため打ち解けられない。ファビアンは卒業を機に、最近ウマが合わないファビアンを捨て、パリを去ろうとする。運命の悪戯でブランシュはファビアンと親しくなり、一夜を共にする。ところが、休暇旅行から帰ってきたレアがファビアンと仲直りしたとブランシュに告げる。一方、レアはアレクサンドルに口説かれる―。
「友だちの恋人」(副題は「友だちの友だちは友だち」)は、エリック・ロメール監督による1987年公開作品。同監督の「喜劇と格言劇」シリーズ第6作で、これがシリーズ最終作になります。パリ郊外のニュータウンを舞台に、4人の男女が繰り広げる恋愛模様を軽快なタッチで描いていて、これまでのシリーズ作が一人の女性が主人公だったのが、今回は一応ヒロインに焦点を合わせながらも、主人公とその女友達の恋愛も描いていて、相互に"反応"し合う男女2×2の恋物語になっている点が特徴的です。
主要登場人物4人の関係がどんどん移り変わって、観ている方も混乱しますが、仕舞いには、登場人物であるブランシュとレアも互いに勘違いしたりして(笑)。ラストは
ハッピーエンドでしたが、ブランシュは周囲に振り回されている印象も。これがハッピーエンドでなかったら、あまり好きになれない映画だったかもしれません。この二組、この先大丈夫かなあというのもあります(特にアレクサンドルはプレイボーイだし)。
ロメール監督の「
「友だちの恋人」●原題:L'AMI DE MON AMIE(英:BOYFRIENDS AND GIRLFRIENDS)●制作年:1987年●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・ロメール●製作:マルガレット・メネゴス●撮影:ベルナール・リュティック●音楽:ジャン=ルイ・ヴァレロ●時間:102分●出演:エマニュエル・ショーレ/ソフィー・ルノワール/エリック・ヴィラール/フランソワ・エリック・ジェンドロン/アン=ロール・マーリー●日本公開:1988/07●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-02-04)(評価:★★★☆)




オフィスで秘書をしているデルフィーヌ(マリー・リヴィエール)は、独りぼっちのヴァカンスを何とか実りあるものにしようとする。恋に恋する彼女の理想は高く、昔からの男友達も、新たに現われた男性もなんとなく拒んでしまう。ヴァカンスを前に胸をときめかせていた。7月に入って間もない頃、ギリシア行きのヴァカンスを約束していた女ともだちから、急にキャンセルの電話が入る。途方に暮れるデルフィーヌ。周囲の人がそんな彼女を優しく慰める。女ともだちのひとりが彼女をシェルブールに誘ってくれた。が、シェルブールでは独り、海ばかり見つめているデルフィーヌ。8月に入り山にでかけた彼女は、その後、再び海へ行った。そこで、彼女は、老婦人が話しているのを聞いた。ジュール・ヴェルヌ『緑の光線』の話で、太陽が沈む瞬間に放つ緑の光線は幸運の印だという。太陽が水平線に沈んだ瞬間、青い光線が最後まで残って、それがまわりの黄色と混ざって私たちの目に緑の光線として届き、それを見た者は幸福を得られるという。何もなく、パリに戻ることにした彼女、駅の待合室で、本を読むひとりの青年と知り合いになる。初めて他人と意気投合し、思いがけず、自分から青年を散歩に誘う。海辺を歩く二人の前で、太陽が沈む瞬間、緑の光線が放たれたのだった―。(「緑の光線」)
エリック・ロメール監督による1986年のフランス映画。同監督の「喜劇と格言劇」シリーズ全6作の内の第5作にあたり、1986年「ヴェネツィア国際映画祭」金獅子賞受賞作品です。同監督は、「全編がシナリオなしの即興演出で撮られた『緑の光線』の場合は、毎朝その場で役者に台詞を渡して撮っていた」(『映画狂人のあの人に会いたい』蓮見重彦、河出書房新社(2002))と述べています。これまでの作品にもその傾向が見られましたが、このシーリーズの5作目にして、そのスタイルが非常に効果的な演出に繋がったように思います。個人的には、濱口竜介監督がその演出方法を参照・応用したとされていますが、確かに濱口監督の作品に通じるところがあります。
演出もストーリーも自然な流れでよくできていると思いました。「緑の光線」は、ジュール・ヴェルヌの小説で、太陽が沈む最後の瞬間に放つ緑の光線を見ると"自分と他人の感情が分かる"という言い伝えがあることを知った女性の、緑の光を求める旅を描いた作品で、要するに「緑の光線」とは日没時にたまに見られるグリーン・フラッシュのことを指します(小学校の自由研究で日の出・日没観測をやったので見たことがある)。そのモチーフをうまく作品に織り込んでいるように思いました(スピリチュアルな印象もある一方で、なぜグリーン・フラッシュが起きるのか見知らぬオジさんが科学的に説明もしていたなあ)。よくある日没シーンですが、観ている側も思わず固唾を飲んで見つめてしまいます。主人公デルフィーヌの心情が観ている側に伝わっているから、美しく感動的なシーンになっているのでしょう。デルフィーヌ役のマリー・リヴィエールが好演していて、何よりもそのキャラクターに好感が持てるのが大きかったです。しかし、フランス人にとってバカンスをどう過ごすかは大問題なわけだなあ(評価は★★★★)。
二十歳の法学部の学生フランソワ(フィリップ・マルロー)は、秘書として働く5歳年上のアンヌ(マリー・リヴィエール)と交際中。そんなある日、航空会社パイロットのクリスチャン(マチュー・カリエール)が以前から不倫関係にあったアンヌを訪ね、妻とヨリを戻したので関係を完全に終わらせようと申し出る。話を終えた2人が部屋から出ていくところをフランソワが偶然目撃し、2人の仲を疑う。動揺したフランソワがパリの街をさすらっていたところ、クリスチャンが別の女性といる姿を目撃し、衝動的に尾行する。途中のバスで彼はリュシー(アンヌ=マリー・ムーリー)と目が合う―。(「飛行士の妻」)
1980年発表の「喜劇と格言劇」シリーズ第1作。主人公の青年がある勘違いをしたため、交際中の年上の女性の不倫相手の妻(ややこしい!)が一体誰なのかというちょっとしたミステリ仕立てにもなっています。これ、後に続く作品の流れで行くと、フランソワはたまたまバスで乗り合わせ共に謎を探ったリュシー(ぱっと見、15歳に見えないくらい大人っぽいが、キャラクター的にはやは女子高生だった)と結ばれそうな気もしますが、結末はほろ苦いものとなっています。結局、この映画でマリー・リヴィエールが演じているアンヌというのは悪女に近いかなあ。フランソワは何だか人生を回り道しそうなタイプに見えました(評価は★★★☆)。
パリで美術史を学ぶサビーヌ(ベアトリス・ロマン)は画家で妻子持ちの愛人シモン(フェオドール・アトキン)との関係を清算し、結婚することを決意する。親友のクラリス(アリエル・ドンバール)は従兄弟で弁護士のエドモン(アンドレ・デュソリエ)を紹介する。サビーヌは彼との結婚を決意するのだが、多忙なエドモンがなかなか電話に出てくれない―。(「美しき結婚」)
1981年発表の「喜劇と箴言」シリーズの第2作目。第1作よりよりはわかりやすい面白さになりました。ただし、ベアトリス・ロマン演じるヒロインのサビーヌの猪突猛進的な暴走感もあったなあ。結婚を絶対視していて、しかも、「自分が相手を好きならば相手も自分を好きに違いない」的な思い込みが凄いです。思われた相手は迷惑しそう。エドモンが最後に付き合えない理由をやんわり傷つけないように言ってるのに、逆上して彼を罵倒する場面は、見ていて痛々しかったです。第1作より作りはいいのですが、ヒロインが好きになれない。最後は親友(アリエル・ドンバール、米国生まれだが、父親がフランスの駐メキシコ特命全権大使だっためにメキシコで育ち、フランス語とスペイン語を話す)にまで当たっていたからなあ。友達無くすタイプ(評価は第1作と同じく★★★☆)。
インテリア・デザイナーのルイーズ(パスカル・オジェ)は、仕事一筋の男性レミ(チェッキー・カリョ)とパリ郊外で同棲中。パーティ好きなルイーズと生真面目なレミは相容れない性格だが、縛られることを嫌うルイーズの自由気ままに対してレミは寛容に接しようとする。そんなある日、美しいゆえ常に誰かと交際し続けてきたルイーズは、孤独になりたくて新たに一人部屋を借りることに。ルイーズは妻帯者の親友オクターブ(ファブリス・ルキーニ)と遊び歩き、やがて彼から関係を求められるが、ルイーズは友だち以上の感情をもっていな い。あるパーティで、ルイーズはバスチアン(クリスチャン・ヴァデム)という美青年と知り合う。オクターヴの忠告も聞かずバスチアンの誘いにのるルイーズ―(「満月の夜」)。
1984年発表の「喜劇と箴言」シリーズの「喜劇と格言劇」シリーズ第4作。恋多き女性を個性的に演じて室内装飾も担当したパスカル・オジェが、遺作となった本作で1984年・第41回「ヴェネチア国際映画祭女優賞」を受賞しています(パスカル・オジェは「満月の夜」公開2か月後に心臓発作のため25歳で夭折した)。
登場人物それぞれに恋人が複数いたり、お互い知り合いだったりして、性的交渉も含め自由奔放に生きているようで、それでいて息苦しさもあって、結局、冒頭の格言"二人の妻を持つ者は心をなくし、
二つの家を持つ者は分別をなくす"に帰結するような話だったように思います。パスカル・オジェ演じる男を切らしたことが無いというのが自慢の主人公ってあまり好きになれないなあ(キャラクターは嫌いだけれどファッションは好きという人も多いみたい)。野性味のある男が好きな彼女は〈満月の夜〉に彼氏とは別のそんな男(クリスチャン・ヴァディム、「
「緑の光線」●原題:LE RAYON VERT(英:THE GREEN RAY)●制作年:1986年●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・ロメール●製作:マルガレット・メネゴス●撮影:ソフィー・マンティニュー●音楽:ジャン=ルイ・ヴァレロ●時間:98 分●出演:マリー・リヴィエール/リサ・エレディア/ヴァンサン・ゴーティエ /ベアトリス・ロマン●日本公開:1987/04●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-12-26)(評価:★★★★)
「飛行士の妻」●原題:LA FEMME DE L'AVIATEUR(英:THE AVIATOR`S WIFE)●制作年:1980年●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・ロメール●製作:マルガレット・メネゴス●撮影:セシル・デキュシス●音楽:ジャン=ルイ・ヴァレロ●時間:107分●出演:フィリップ・マルロー/マリー・リヴィエール/アンヌ=マリー・ムーリー/マチュー・カリエール●日本公開:1996/03●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-11-20)(評価:★★★☆)
「美しき結婚」●原題:LE BEAU MARIAGE(英:THE GOOD MARRIAGE)●制作年:1981年●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・ロメール●製作:マルガレット・メネゴズ●撮影:ベルナール・リュティック●時間:103分●出演:ベアトリス・ロマン/アンドレ・デュソリエ/アリエル・ドンバール/フェオドール・アトキン/ユゲット・ファジェ/ヴァンサン・ゴーティエ/タミラ・メツバ/ソフィー・ルノワール/パスカル・グレゴリー●日本公開:1996/03●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-11-28)(評価:★★★☆)
アリエル・ドンバール
「満月の夜」●原題:LES NUITS DE LA PLEINE LUNE(英:FULL MOON IN PARIS)●制作年:1984年●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・ロメール●製作:マルガレット・メネゴズ●撮影:レナート・ベルタ●音楽:エリ&ジャクノ●時間:101分●出演:パスカル・オジェ/チェッキー・カリョ/ファブリス・ルキーニ/クリスチャン・ヴァディム/ラズロ・サボ●日本公開:1987/01●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-12-19)(評価:★★★)