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最後の大殺陣シーンに尽きる。赤牛の最期は"自殺願望"の充足か。

「あの頃映画 「浪人街 RONINGAI」 [DVD]」
江戸下町のはずれ、一膳飯屋の"まる太"で2人の浪人が対立した。この街で用心棒をしている赤牛弥五右衛門(勝新太郎)と、新顔の荒牧源内(原田芳雄)だ。対立する2人の前に、源内とかつてただならぬ仲であったお新(樋口可南子)に密かに心を寄せている浪人・母衣権兵衛(石橋蓮司)が仲裁に入る。一方、長屋の井戸端には土居孫左衛門(田中邦衛)という浪人が妹おぶん(杉田かおる)と共に住んでいた。2人にとって帰参は夢だが、それにはどうしても百両という大金が必要だった。そんな時、街で夜鷹が次々と斬られる事件が起こる。赤牛は白塗りの夜鷹に扮し、夜鷹殺しの侍を斬るが、それにもかかわらず夜鷹斬りは続く。翌朝、まる太の主人・太兵衛(水島道太郎)の惨殺死体が発見される。すべては旗本・小幡七郎右衛門(中尾彬)一党の仕業だった。お新をはじめとする夜鷹たちが集まって太兵衛の遺骸を囲んでいる時、突然その夜鷹斬りの旗本・小幡ら7人が乗り込んでくる。一触即発の気配が漂う中、赤牛は小幡一党らと共にその場を去るが、その日赤牛は戻って来なかった。数日後、お新は、小幡を銃で暗殺しようとして逆に彼らに捕らえられてしまう。そして、その一味の中には何と赤牛がいた。その頃、孫左衛門のところに、おぶんから相談を受けていた豪商・伊勢屋(佐藤慶)の妾・お葉(伊佐山ひろ子)が百両の情報を持って飛び込んできた。孫左衛門は手形を預かった同心の柏木(津村鷹志)を斬り倒し、首尾よく百両を手に入れるが、その夜、赤牛は酒盛りの席で小幡に「手形を盗んだのは源内に違いない」と告げ口をする。そこで、小幡は源内を誘い出す手として、おぶんを逃がし、お新を牛裂の刑に処することにした。おぶんから聞いて事態を知った源内は、十数本の剣を体中にくくり付け、お新のもとへと駆け出す。それを知った権兵衛、孫左衛門たちも―。
黒木和雄監督の1990年公開作。マキノ正博監督により1928(昭和3)年に制作・公開された「浪人街 第一話 美しき獲物」の4度目のリメイク作品で、もともとはマキノ正博監督によるセルフリメイクとして企画されたものの、マキノの健康上の理由で断念し、マキノの後押しもあって、黒木和雄が監督したもの(マキノは総監修という立場。また、終盤の17分間の大殺陣シーンの撮影は宮川一夫が特別参加している)。
原田芳雄/勝新太郎/樋口可南子/石橋蓮司/田中邦衛/中尾彬
公開を目前にした1990年1月16日、勝新太郎がハワイのホノルル国際空港で下着にマリファナとコカインを入れていたとして現行犯逮捕されるという事態が発生しため、公開は先送りとなり、ようやく8月18日になって公開にされたとのこと。勝新にとって最後の映画出演作となりました(この映画を観ていると、セリフが何言っているかよくわからないところもあったが、まだまだやれたと思われて惜しい)。
この映画、最後の大殺陣シーンに尽きる気もします。最初は原田芳雄演じる荒牧源内が一人で120人相手に刀を振り回していたけれど、原田芳雄らしいハチャメチャな殺陣でした。しかし、これではさすがに持ちこたえられない―というところへ、石橋蓮司演じる母衣権兵衛が白装束で駆け付け、こちらはきりっとした殺陣で、よれよれの原田芳雄を上回る獅子奮迅の大活躍、さらに田中邦衛演じる土居孫左衛門も戦国騎馬武者の姿(元小倉藩藩士!)で登場します(白装束に着替えたり甲冑を身に纏ったりしている時間が惜しくはないのかと思うけれど、まあ、そこは突っ込まないことに)。絶体絶命のお新を救うということに、3人がそれぞれの思いで順次かぶさって来る作りが上手いと思います。そして最後に赤牛弥五右衛門―。
考えてみれば、勝新太郎演じる赤牛弥五右衛門は、一膳飯屋の用心棒でありながら夜鷹たち習字の先生であり、原田芳雄演じる荒牧源内は、蘭学・医学を学ぶ学究の徒でもあり(平賀源内に倣ったネーミングか)、現在と将来の先生でもあるわけで、その辺りも面白いです。
後日談で、石橋蓮司演じる母衣権兵衛が、荒牧源内は医学を学ぶために長崎に行ったと、語っている相手は赤牛弥五右衛門の"位牌"であるのが寂しいです。赤牛は戦略的に中尾彬演じる小幡七郎右衛門側にくっついたフリをしたのかと思ったけれど、本当に本気で一度寝返ったのだったら、あの最期は仕方がないのかも...。いや、ここは、戦略的に小幡七郎右衛門側にくっついたフリをして(手形を盗んだ犯人を源内として小幡をそそのかしたのは疑問が残るが)、ラストは、それまでにもその気配がちらちら見られた本人の"自殺願望"を、自分が納得のいく形で満たしたととるべきなのかもしれません(一見虚無的に見える荒牧源内にではなく、赤牛弥五右衛の根底にあるものこそが"虚無"だったということか)。
勧善懲悪のある程度パターナルな結末ではありますが、原田芳雄、勝新太郎、石橋蓮司、田中邦衛が演じる4人の浪人のキャラの描き分けがしっかりできているほか、勝新とやりとりする長門裕之の蕎麦屋、伊佐山ひろ子のお葉のきりっとした視線、絵沢萠子の殺される哀れな遊女おとく、天本英世の琵琶法師...etc. 絶妙の配役が隅々まで行き渡っている感じの作品でした。
「浪人街」●制作年:1990年●監督:黒木和雄●総監修:マキノ雅広●脚本:笠原和夫●特別協力:宮川一夫●撮影:高岩仁●音楽:松村禎三●原作:山上伊太郎●時間:117分●出演:原田芳雄/樋口可南子/石橋蓮司/杉田かおる/伊佐山ひろ子/藤崎卓也/絵沢萌子/賀川雪絵/天本英世/水島道太郎/中村たつ/紅萬子/賀川雪絵/外波山文明/津村鷹志/青木卓司/甲斐道夫/中田譲治/中尾彬/佐藤慶/長門裕之/田中邦衛/勝新太郎●公開:1990/08●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-09-15)(評価:★★★★)
