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新宿武蔵野館の2本。感動実話「型破りな教室」、ブータン文化が見られる「お坊さまと鉄砲」。

「型破りな教室 [DVD]」エウヘニオ・デルベス

「お坊さまと鉄砲 [DVD]」
アメリカとの国境近くにあるメキシコ・マタモロスの小学校。子どもたちは麻薬や殺人といった犯罪と隣りあわせの環境で育ち、教育設備は不足し、教員は意欲のない者ばかりで、学力は国内最底辺だった。6年生の半数以上が卒業を危ぶまれるなか、出産のため辞職した8年生の担任の代役として、マタモロス出身の教師フアレスが赴任してくる。子どもたちはフアレスのユニークで型破りな授業を通して探究する喜びを知り、それぞれの興味や才能を開花させていく。しかし、思わぬ悲劇が彼らを襲い―(「型破りな教室」)。
クリストファー・ザラ監督の2023年作で、アカデミー賞受賞作であるシアン・ヘダー監督の「コーダ あいのうた」('21年/米・仏・カナダ)の音楽教師役で注目を集めたメキシコシティ出身の俳優エウヘニオ・デルベスが、主人公の熱血教師フアレスを演じています(2023年サンダンス映画祭にてフェスティバル・フェイバリット賞(映画祭観客賞)を受賞)。
逆境の中で生徒の才能を見出し伸ばしていく教師の話で、教育格差がテーマになっている点で、カンヌ国際映画祭 で最高賞のパルム・ドールを受賞作したローラン・カンテ 監督の「パリ20区、僕たちのクラス」('08年/仏)を想起させられました。
フアレスが校長とビールを飲みながら対話する場面で、メキシコの教育について、「学校は100年前から変わっていない。ベルを鳴らし制服を着せて、「静かに」「整列しろ」「手を挙げろ」を命じる。子供たちを国という機械を動かすただの歯車にする教育だ」と言うのは、今の日本にも通じる話かもしれません。
実話がベースになっているというのは強いなあと(雑誌「WIRED」に掲載されたフアレスとパロマを取り上げる記事がきっかけになり、映画化の企画が立ち上がったという)。ストレートに感動しました。映画の中で数学の才能を見出された女生徒パロマのモデルになったパロマ・ノヨラ本人が、哲学に興味を持ったヤングケアラーのパロマを書架に案内する図書館の女性の役で出ているのは粋な演出でした、
パロマ・ノヨラ本人(右)
2006年。長年国民から愛された国王の退位によって、ブータンは民主化へ転換を図る。初めての選挙を目指して、模擬選挙が実施されることに。山に囲まれた村で報せを聞いた高僧は、なぜか弟子の僧侶タシ(タンディン・ワンチュク)に「銃を2丁手に入れてくれ」と頼む。一方、お宝があると聞きつけた銃収集家のロン(ハリー・アインホーン)が村にやってきた―(「お坊さまと鉄砲」)。
第1作「ブータン 山の教室」(19年/ブータン)がブータン映画史上初となる、第94回「アカデミー賞で国際長編映画賞」ノミネート作になったパオ・チョニン・ドルジ監督(Pawo Choyning Dorji、ブータン人の名前は、基本的に「姓(ファミリーネーム)」がなく、複数の「名(個人名)」を並べる形が一般的で、日本で同監督を短く呼ぶ際は「パオ監督」と呼ばれることが多く、ここでは「は行の監督」とした)の、第96回「アカデミー賞国際長編映画賞」ブータン代表としての出品作。2006年のブータンを舞台に、国王の退位にともなう初めての選挙を控えた村の騒動をユーモラスに描いています。
なぜ山に籠っていた高僧が出てきて、いきなり弟子に銃を入手するよう命じたのか、その理由が分からないまま外国人
の銃収集家などが絡んで話としては気を持たせますが、オチは大したことなかったかも。このほのぼのとした結末も悪くはないですが、高僧が弟子に銃が要る理由を明かさなかったのはどうしてなのか、別に、こうこうこうだからと説明しても良かったでは。でも、それを言ってしまうと、お話的には面白みが無くなってしまうからでしょう。
日経新聞の映画評で「楽しく民主主義を考える」とありましたが、新聞社的にはそうなのでしょう。個人的にはむしろ、ブータンの人たちの生活ぶりや風俗・習慣、さらには文化・価値観までもが垣間見られることの方が興味深く、また面白かったかもしれません。
この2本は「新宿武蔵野館」で観ましたが、この映画館はいつも上映作ごとのディスプレイに圧倒されます(「ある一生」('23年/独・墺)のディスプレイ)。新宿エリアでこれに次ぐのが「シネマート新宿」で(「バニシング・ポイント」('71年/米)(リヴァイバル上映)のディスプレイ)、こちらは手作り感があります(そのほか今は邦画専門館だが、昔は洋画が主だった「テアトル新宿」も昔から力を入れている)。
2024年12月24日 新宿武蔵野館
「型破りな教室」●原題: RADICAL●制作年:2023年●制作国:メキシコ●監督・脚本:クリストファー・ザラ●製作:ベン・オデル/エウヘニオ・デルベス/ジョシュア・デイビス●撮影:マテオ・ロンドノ●音楽:パスクアル・レイエス/フアン・パブロ・ビラ●時間:123分●出演:エウヘニオ・デルベス/ダニエル・ハダッド/ジェニファー・トレホ/ヒルベルト・バラーサ/ミア・フェルナンダ・ソリス/ダニーロ・グアルディオラ●日本公開:2024/12●配給:アットエンタテインメント●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-12-24)(評価:★★★★)
「お坊さまと鉄砲」●原題: THE MONK AND THE GUN●制作年:2023年●制作国:ブータン・仏・米・台湾●監督・脚本:パオ・チョニン・ドルジ●製作:シュー・フォン/ステファニー・ライ/ジャン=クリストフ・サイモン●撮影:ジグメ・テンジン●時間:112分●出演:タンディン
・ワンチュク/ケルサン・チョジェ/タンディン・ソナム/デキ・ラモ/ペマ・ザンモ・シェルパ/ハリー・アインホーン/チョイン・ジャツォ/タンディン・プブ/ウゲン・ドルジ/ユペル・レンドゥップ・セルデン●日本公開:2024/12●配給:マクザム=ザジフィルムズ●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-12-24)(評価:★★★★)
ポスターイラスト:nakaban(なかばん)
