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2006年09月10日 書評:HUREC AFTERHOURS 人事コンサルタントの読書備忘録
【484】 ◎ 松本 清張 『西郷札―松本清張短編全集〈1〉』 (1963/12 カッパ・ノベルス) ★★★★☆
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松本清張の短編集に手をつけてみたい人には最もオススメできる1冊。strong>
『西郷札-松本清張短編全集〈1〉 (カッパ・ノベルス)』〔'63年〕

松本清張作家活動40周年記念ドラマスペシャル「西郷札」
('91年TBS/出演:緒形直人,仙道敦子)
表題作の「西郷札(さつ)」とは、西南戦争中に薩軍が発行した軍票(兌換紙幣)のこと。
薩軍にいた主人公・樋村雄吾はその造幣に携わるが、敗戦後は人力車夫となる。
そしてある日、かつて思いを寄せていた義妹と偶然に再会するが、彼女は政府要人・塚村圭太郎の妻になっていた。
ふたりは逢引を重ねるが、雄吾はふとしたことから西郷札の政府買い上げ運動の協力をある人物から要請され、義妹を通して塚村に会う。
塚村の「充分(政府が西郷札を買い上げる)見込みがある」という言葉に、雄吾は自分自身のために西郷札の買占めに奔走するが―。
『週刊朝日』が'50(昭和25)年に募集した小説コンクールに松本清張(1909‐1992)が応募し、「3等」に入選したデビュー作ですが、ホントは実力的には「1等」だった。
作者が朝日新聞の校正部に勤めていることが判明し、慌てて「3等」にしたわけで、現にこの作品は直木賞候補になっています。
それにしても歴史から題材を得るのがうまい(このうまさに三島由紀夫が嫉妬して、文学全集編纂のとき松本清張を外したという話もある)。
多分、明治初期のキャリア官僚で、出世コースび乗りながら後世に名を残していない人物がいることから、こうした物語を構想したのではないかと言われています。

カッパ・ノベルズの松本清張短編全集は'63(昭和38)年に刊行されましたが、'77年と'02年に改訂が行われていて、02年改訂は「没後10周年企画」として行われました。
全11巻あり、この第1巻には初期の作品が8作収められて、「くるま宿」「或る『小倉日記』伝」「火の記憶」などの名作が並び、「啾々吟」「戦国権謀」「白梅の香」といった歴史小説もあります。
個人的には最後の、阿蘇で自殺しそこなった人を助けるという変わったことをしている親父から聞いた話を裏返して書いた「情死傍観」が拾い物でした。
清張の短編集に手をつけてみたい人には最もオススメできる1冊です。
【1963年ノベルズ版・2002年第3版[光文社]/1965年文庫化[新潮文庫]/2008年再文庫化[光文社文庫]】
投稿者 wadamy : 2006年09月10日 11:19