【3520】 ○ 別冊太陽編集部(編) 『写実絵画の画家たち―ホキ美術館コレクション(別冊太陽 日本のこころ)』 (2020/03 平凡社) ★★★★

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素晴らしい写実絵画の数々。画家のアトリエが紹介されているのも興味深い。

写実絵画の画家たち.jpg写実絵画の画家たち02.jpg 写実絵画の新世紀2016.jpg 
島村信之「日射し」(2009)『写実絵画の新世紀: ホキ美術館コレクション (別冊太陽 日本のこころ 241) 』['16年]
写実絵画の画家たち ホキ美術館コレクション (別冊太陽 日本のこころ)』['20年]

「ホキ美術館」.jpg 千葉市の昭和の森に隣接する地にある、日本初の写実絵画専門美術館「ホキ美術館」(2010年開館)のコレクションをフィーチャーしたもので、『別冊太陽』のこの特集としては、『写実絵画の新世紀―ホキ美術館コレクション)』('16年)に続く第2弾になります。

青木敏郎「白デルフトと染付の焼き物の静物」(2012)
写実絵画の画家たち03.jpg 前回は、森本草介(1937-2015/78歳没)の追悼号の意味合いもありましたが、それでもほかに野田弘志、中山忠彦、羽田裕など25人ほどの画家の作品を紹介するものでした。こちもとトップにくるのは森本草介で(表紙も前回同様に森本作品)、以下、野田弘志をはじめ、中山忠彦、青木敏郎、五味文彦、生島浩、島村信之など、やはり同じくらいの人数の画家の作品が紹介されています。
  
野田弘志
写実絵画の画家たち0.jpg 画家ごとにプロフィール紹介や作品解説が丁寧にされているのは前回と同じですが、今回は画家自身のコメントが主となっており、また今回は、主だった画家の制作現場であるアトリエが紹介されているのが興味深いです。前回も石黒賢一郎のアトリエの紹介がありましたが、今回は十数人の画家について、基本的にまずアトリエ紹介から始まり、その後に作品がくる構成になっています。仕事場は(写実画家らしく?)整然としていて、画家のアトリエと言うよりデザイン事務所っぽいものも中にはあったように思いました。また、塩谷亮の「翠抄」などの制作過程が再現されており、写実絵画がどのような過程を経て描かれ、完成するのを知ることもできます。

生島浩「月隠り」(2011)/中山忠彦「トルコブルーの胸飾り」(1988)/五味文彦「飛行計画―南風の囁き(部分)」(2013)
写実絵画の画家たち04.jpg写実絵画の画家たち01.jpg五味文彦.jpg でも、やっぱり、掲載された写実絵画の緻密さ、素晴らしさがいちばんでしょうか。この点でも前回に劣るものではなく、観ていて飽きません。人物画、静物画、風景画、コラージュなど、それぞれの画家の得意とする分野も微妙に違っていて、バラエティに富んでいます。比較的近年に制作された作品が多いのも今回の特徴かと思います。前回との重複はほとんど無く、所蔵作品の豊富さを物語っています。ホキ美術館にはぜひ一度行ってみたいと思います。   
    
三重野慶画集 言葉にする前のそのまま』['21年] 三重野慶「言葉にする前にそのまま」(2017)
三重野慶画集.jpg三重野慶「言葉にする前にそのまま.jpg

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