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「ベテラン社員は少し背中を押せばイキイキ動き出すようになる」。啓発的だった。
『なんとかしたい! 「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント』['16年]「マイ・インターン [DVD]」['15年]ロバート・デ・ニーロ/アン・ハサウェイ
「月刊 人事マネジメント」2018年6月号
人事マネジメント系の雑誌でも、「シニア社員 [戦力化] ノート」といった特集が組まれたりする昨今ですが、本書によれば、多くの企業で50歳代の非管理職層が年々増加していくなか、そうしたベテラン社員についての「モチベーションが低く職場の問題児になっている」「新たなスキル開発が進んでおらず、やれる仕事が限られている」「年下上司の言うことを聞かずに困っている」といった(これまでもあった)定番的な問題が、これまでは成果を出すのは難しいとして放置されてきてきたのが、もはや放置しておけない状況になってきているとのことです。本書はそうしたベテラン社員(40代後半から65歳で、部下と責任部署を持つ管理職でない人を想定)をどう活性化していくか、或いはまた、50歳目前から、60歳以降も働き続ける人が元気に職場で活躍する状態を、どうやって作りだしていくかをテーマとしたものです。
まず序章において、そうした問題の背景や原因を分析し、ベテラン社員がイキイキと働くために必要なものとして以下の3つを挙げています。
①やりがいのある仕事
②信頼できる上司
③職場の人間関係
そしてこれらを実現するための、ベテラン社を活性化させる5つのマネジメント・ステップとして次の5つのステップを掲げ、以 下第1章から第5章で、5つのステップのポイントを解説しています。
[ステップ1]土台をつくる...向き合い、気づき、知り合う
[ステップ2]目標を設定する...「与える」から、「考えさせる」へ
[ステップ3]心に火をつける...プライドをシフトする
[ステップ4]達成に向け支援する...仲間として支援する
[ステップ5]フィードバックする...感謝と期待を伝える
第1章(ステップ1:土台をつくる)では、ベテラン社員一人ひとりが個性的な人生を歩んできたのであり、そうした相手を知るために「仕事年表」を作成してもらい、それを共有することで、相手の思いや真実を引き出すことを勧めています。
第2章(ステップ2:目標を設定する)では、いきなり課題を与えるとベテラン社員は逃げていくとし、目標設定の前に会議を通して組織の未来を考えてもらい、その上で目標を個別に考えてもらうことを推奨しています。また、自身のマネジメントについてベテラン社員がどう思っているか、自身がフィードバックを受けることができれば、まさに本物であるとしています。
第3章(ステップ3:心に火をつける)では、ベテラン社員の持つ自分へのプライドを、自分の仕事を守るためのネガティブなプライドから、志を達成するためのものへとシフトさせることが肝要であり、自問自答を通してそのための気づきを促す「自己探求シート」というものを用いた面談を提唱しています。
第4章(ステップ4:達成に向け支援する)では、メンバーの能力を120%引き出すためには、メンバーに敬意を持ち、メンバーを「部下」という上下の関係ではなく、お互いの成長を支援できる「仲間」に進化させていくことで一体感をつくることが大切であるとしています。
第5章(ステップ5:フィードバックする)では、ベテラン社員は褒められたいと思っているのではなく、期待されたりと感謝されたりすることがその行動を変えるとして、対象者への感謝や期待を本人にフィードバックするための「フィードバックシート」というものを例示しています。
また、巻末には、ベテラン社員の活性化に取り組み、成果を出している企業例として、トヨタファイナンス、NTTコミュニケーションズ、テルモ、サトーホールディングスの4社について、その取り組みが紹介されています。
マネジャーや人事担当者とベテラン社員との間に仕事や働き方に対する共通の理解を育むことで、ベテラン社員は少し背中を押すだけでイキイキ動き出すようになるというのは、たいへん啓発的であるように思いました。もやっとした話になりがちなところを、「仕事年表」「自己探求シート」などのツールが紹介されていて、やるべきことが「見える化」されているのは良かったように思います。ただし、あくまでもそれらはツールであって、マネジャーや人事担当者が本書に書かれていることを実践するに際しては、個々人に相応のヒューマンスキルが必要になってくるようにも思いました。「ベテラン社員」問題が先送りされているような企業の人事担当者は、読んでおくのもいいのではにでしょうか。
ナンシー・マイヤーズが監督・脚本・製作を担当し、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイが主演を務めた「マイ・インターン」('15年/米)という映画がありました。ニューヨークでファッション通販サイトを運営している女社長のジュールズ(アン・ハサウェイ)が、短期間で会社を拡大させることに成功し、そんな彼女の会社に、社会貢献の一環としてのシニア・インターン制度で採用された70歳の老人ベン(ロバート・デ・ニーロ)がやってきて、ジュールズは最初から本気でベンに仕事を任せる気はなく、ベンも最初は若者ばかりの職場で浮いた存在だったが、いつしか彼はその誠実で穏やかな人柄によって社内の人気者になっていき、さらには公私にわたって困難の壁に直面したジュールを支える大きな柱になっていくという話でした。
何と言ってもコメディ映画であるし、ロバート・デ・ニーロ演じるベンは70歳ながら「背中を押す」どころか何も指示されなくても社内を変えていく"スーパー老人"的存在ですが、最初からシニアは使えないと思い込まないこと、また、当のシニア自身も人が与えてくれるのを待つのではなく自分から努力しなければならないということを示唆しているという意味では教訓的だったかもしれません(身だしなみに気を使っていたなあ)。
基本的には予定調和のストーリーは予測の範囲内なので、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイという世代の異なる二人の演技派俳優の演技を楽しむ映画として観ましたが、ロバート・デ・ニーロは、同じコメディ映画であるデヴィッド・O・ラッセル監督の「世界にひとつのプレイブック」('12年/米)でジェニファー・ローレンスと共演し(ジェニファー・ローレンスはこの作品でアカデミー主演女優賞を受賞、ロバート・デ・ニーロも助演男優賞にノミネートされた)、この「マイ・インターン」では、ジェニファー・ローレンスと同時に「レ・ミゼラブル」('12年/英)でアカデミー女演女優賞を受賞したアン・ハサウェイと共演と、積極的に演技派女優と共演しているのがスゴイなあと思います。相手もロバート・デ・ニーロとの共演を名誉なこととして望むのでしょう。アン・ハサウェイはロバート・デ・ニーロとの対談で「あなたは伝説です」と述べているし、また、撮影所でもロバート・デ・ニーロは謙虚で、全然偉ぶってなかったと言っています。ロバート・デ・ニーロ自身がまさに理想のシニアといったところでしょうか(レネ・ルッソが、個人的には「アウトブレイク」('95年)以来20年ぶりで懐かしかった)。
「マイ・インターン(字幕版)」
「マイ・インターン」●原題:THE INTERN●制作年:2015年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ●製作:ナンシー・マイヤーズ/スザンヌ・ファーウェル●撮影:スティーヴン・ゴールドブラット●音楽:セオドア・シャピロ●時間:121分●出演:ロバート・デ・ニーロ/アン・ハサウェイ/レネ・ルッソ/アンダーズ・ホーム/ジョジョ・クシュナー/アンドリュー・ラネルズ/アダム・ディヴァイン/ザック・パールマン/ジェイソン・オーリー/クリスティーナ・シェラー●日本公開:2015/10●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)
会社専属マッサージ師フィオナ=レネ・ルッソ(「アウトブレイク」('95年))/ロバート・デ・ニーロ
レネ・ルッソ in「メジャーリーグ」('89年)映画デビュー作