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半端じゃない読書量。一体いつ自分の作品を書いているのかと...。
『桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。』['07年] 『少年になり、本を買うのだ 桜庭一樹読書日記 (創元ライブラリ) (創元ライブラリ L さ 1-1)』['09年]
異色のライトノベルとして評判になった『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』('04年/富士見ミステリー文庫)を読みましたが、皆が言うほどの"傑作"なのかよく分からず、大体ライトノベルというのが自分の肌に合わないのかなと思っていたら、今や直木賞作家だからなあ、この人。ライトノベルといっても終盤で露わになる近親相姦的モチーフはへヴィで、これがまあ"異色"と言われる所以ですが、このモチーフ、『私の男』へと連なっていったわけかあ。
角川文庫の新聞広告で読書案内人のようなこともやっていて、読書家であることでも知っていましたが、本書はタイトル通り、「書評」と言うより読書生活を綴った「日記」のようなもので、Webでの連載('06年2月〜'07年1月分)を纏めたもの。
ミステリ中心ですが、近代文学や海外の純文学作品、詩集やノンフィクション、エッセイなども含まれていて、でもやっぱり中心は内外のミステリでしょうか(東京創元社のHP上で連載だったこともあるが)、その読書量の多さに圧倒されます。
『桜庭一樹 ~物語る少女と野獣~』 ['08年/角川グループパブリッシング ]
まず、"ミステリ通"の好みそうな作品をよく拾っているなあと感心させられますが、自然とそういう本の方向に向かうのだろうなあ、こういう読書生活を送っていると。
自分はそこまでミステリに嵌っているわけではないので、ああ、こんな本もあるんだあみたいな感じでついていくのがやっと、とてもそれらを探して読みまくるというところには至らないですが、それでもこの本自体が1冊の「読み物」乃至はエッセイとして楽しめました。
あまり大仰ぶらず批評家ぶらず、ストレートに「わあ〜、面白かったあ」みたいな感じで、併せて自分の生活を戯画化しながら書いているので、ついつい親近感を覚えさせるのでしょうが、ミステリ通の人が読めば、また違った読み方ができるのかも。
何れにせよ半端な読書量では無く、一方で小説を量産しているわけで、一体いつ自分の作品を書いているのかと...。
各ページの下の方に、文中で取り上げた本が書影付きで載っていて、必要に応じて簡単な解説もされているのが親切に思えました(自分で解説しているものもあれば編集者が書いているのもある。相互の感想のやりとりも楽しい)。
因みに、2009年の「角川文庫の100冊」(正式タイトル「2009年 発見。角川文庫夏の100冊」)の中の「作家12人が選んだこだわりの角川文庫」というコーナーでこの人が選んだ1冊は、本書でも取り上げられている寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』でした。
【2009年文庫化[創元ライブラリ(『少年になり、本を買うのだ-桜庭一樹読書日記』)]】