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「GLS―1阻害薬」は万能? まだ「可能性」の話であって、やや先走っている印象も。
『老化は治療できる! (宝島社新書) 』['21年]
本書は、著者ら東京大学医科学研究所などの研究チームがマウス実験から「老い」の原因となる「老化細胞」を除去する薬として2021年に発見した「GLS―1阻害薬」というものを紹介した本。この薬には老化した人間の肉体も若返させる可能性があるとし、研究チームの東大の先生が、老化のメカニズムと「アンチエイジング治療薬」の可能性を解説しています。
まず前提として人間の寿命は最長120歳ほどで、これは変わらないだろうとし、ただし、「GLS―1阻害薬」にとって老化細胞が除去されることで老化は抑えられ、さらにはがんの治療に役立つ可能性もあるとのことです。マウスに投与すると老化細胞が死んで、加齢性疾患が改善することが分かっており、有効ながん治療薬として臨床試験が進められています。
確かに、長生きはしたいけれど、老いの苦しみを味わうのは嫌だという思いは誰しも抱いていると思われるし、こうした「老化を治療する」薬の発見は喜ばしいことだと思います。120歳まで30歳のまま生きれるのならば、こんないいことはないです。ただ、あくまでもまだ研究段階なので、あまり喜びすぎるのもどうかと思いました。
「老化は治療できる」という考え方は、『LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界』の著者のハーバード大学のデビッド・シンクレア教授が急先鋒ですが(日本人ではワシントン大学の今井眞一郎教授で、今井教授は、「100歳まで寝たきりにならず、120歳くらいまでには死ぬという社会は、10年、20年後には来ると思う」と言っている)、あの本では「NMN」という物質が万能薬のように書かれていました(そのシンクレア教授でさえ、その"特効薬"の点滴は時期尚早だと反対している)。
『LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界』['20年]
本書は若干「GLS―1阻害薬」が万能であるというトーンが強いように思いました。開発者としては、それぐらいの希望を持って研究することでモチベーションは上がるだろうし、世間も大きな期待を寄せるかと思いますが、まだ「可能性」の話であって、やや先走っている印象も受けました(タイトルから、今すぐ出来る「老化を治療する方法」があるのだと思った人もいたのでは)。
ただし、国内外でこの「GLS―1阻害薬」は現在も進行中のようで、本書刊行後も、経口薬が開発され、安価で供給できる見通しが立ったとの情報もあるようです。でも、その前に、国内で認可を得て治験を積み重ねていくことがカギとなるのではないでしょうか。
