「●スポーツ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2301】 増田 俊也 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』
タイトルの印象と異なり、「スポーツ紙のスポーツ面」のごくフツーのコラム記事という感じ。
『こわ~い中国スポーツ (ベースボール・マガジン社新書 7)』['08年]/姚明 LONG-NET.com 劉翔 LONG-NET.com
北京オリンピックの最中に本書を読んでいますが、本書は北京五輪開幕の1年前の記念イベントの取材から始まっていて、当局がいかに国家のイメージアップを図るために張り切っているか(或いは苦慮しているか)が、「人工消雨」「マナー講座」「マスコット」作戦などを通して述べられていて、取材規制などからもピリピリしたものが伝わってきます。
但し、取材規制に対するボヤキみたいなものはあるものの、話は政治批判の方へは行かずに競技や選手の方へ行き、メダル大国を目指しての中国スポーツ界の奮闘ぶり、とりわけ、バスケットボールの姚明(ヤオミン)、110mハードルの劉翔などスター選手にフォーカスしています。
郭晶晶 LONG-NET.com Rendb.com
この2人に次ぐ有名アスリートとして、女子飛び込みの郭晶晶(かく・しょうしょう/グオ・チンチン)を取り上げていますが、この化粧品会社のCMモデルもこなす美人選手のスキャンダラスな話題にはほとんど触れずにさっと流し、むしろ、バレーボールや柔道、卓球など、その他の競技における監督・選手の強化ぶりなどにページを割いていて、まさに、「スポーツ紙のスポーツ面」の極々フツーのコラム記事といった感じです。
実際、スポニチ(大阪)連載の記事がベースになっているのですが、この際、「芸能面」的要素もあってもよかったのでは。何だか、当局に気を使っているような気さえしてきます(この人、比較的身内が集まる小規模な講演会では、「北京オリンピックの光と影」などという演題で話をしているのだが)。
元共同通信社の記者で、学生時代は早稲田大学ラグビー部の選手、政治的観点やドーピング問題からスポーツ界を取材した本もありますが(『汚れた金メダル―中国ドーピング疑惑を追う』('96年/文藝春秋))、本書はあくまでも「中国のスポーツ」を純粋に取材したものだったのか―(タイトルと内容のイメージがずれる)。
このまま、スポーツ記事みたいに読み手のアスリートマインドに訴えるだけで終わるのかなと思いきや、最後の方で、世界のスポーツ用品メーカーやプロ・スポーツ団体が、いかに中国市場に参入し、ビジネスで成功を収めようと奮闘しているかが紹介されていて、そうか、「政治」ではなく「経済」の方にいったのかと。
確かに、多くの内政問題を抱える中国がオリンピック開催国となった背景には、諸外国の中国という巨大市場への経済的動機付けが大きく働いていると思いますが、本書での解説はかなり表面的なものに止まっている感じでした(日本企業で北京五輪大会全体の公式スポンサーになれたのは「コクヨ」だけだったのか。一体、何をサプライするのだろうか)。
プロ野球のロッテの親会社が、中国リーグのあるチームのスポンサーを検討していたが、ユニフォームの背中に「楽天」というロゴが入ることになるため断念したという"余談"が面白かったです(「ロッテ」の中国語表記は「楽天」)。
《読書MEMO》
●北京五輪2008
2008年8月17日に行われた女子3m飛板飛込み決勝で、郭晶晶は金メダルを獲得 [写真左/エキサイトニュース]、翌18日に行われた男子110メートルハードル1次予選で、劉翔は足を痛めレースを棄権 [写真右/産経ニュース]。