「●ふ 藤沢 周平」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【481】 藤沢 周平 『漆黒の霧の中で』
「●日本のTVドラマ (90年代~)」の インデックッスへ(「天地人」)
秀吉vs.家康、兼続vs.三成、忍者の世界の3階層にわたり楽しめる。
『密謀 上巻』『密謀 下巻』['82年/毎日新聞社]/『密謀 (上巻) (新潮文庫)』『密謀 (下) (新潮文庫 (ふ-11-13))』
時代小説、時代推理作家というイメージが強い著者ですが、これは豊臣から徳川にかけての時代の転換期を描いた「歴史小説」です(と言っても時代小説と歴史小説を区別することに藤沢周平は疑念があったようですが)。
主人公は、上杉景勝の若き参謀・直江兼続(かねつぐ)ですが、物語は兼続と豊臣方の石田三成との参謀同士の駆け引きを軸に、その「上部構造」として秀吉と家康の駆け引き、「下部構造」として兼続が擁する草(忍びの者)の活躍を描いています。
直江兼続 (なおえ かねつぐ)
当然「上部構造」は史実に則りつつ、秀吉と家康のそれぞれの智略家ぶりを、司馬遼太郎などとはまた違ったタッチで描いていて、著者が歴史小説家としても充分な力量があったことを表しています。
中核となる兼続と三成の関係においては、両者の間に果たされなかった〈密約〉があったのではないかという著者の考察を含め、互いを認め合った両者の友情にも似た感情と、上杉に仕える身である兼続の立場や心情がよく描けています。
「下部構造」の忍びの者の世界の話は創作的要素が大きいわけですが、静四郎という兼続に拾われた青年を軸に、"時代小説っぽく"描かれています。
ある意味、3階層にわたり楽しめる長編作品。1982年の刊行ですが、1997年に単行本の新装版(全1巻)が出たことでもその人気が窺える作品です。
『密謀』 '97年新装版[毎日新聞社(全1巻)]
'09年に直江兼続を主人公としたNHK大河ドラマ「天地人」が放映されたけれども(原作は火坂雅志)、妻夫木聡の演じる直江兼続、ちょっと若すぎるのでは...。全然、貫禄ないなあ。
2009(平成21)年度・NHK大河ドラマ「天地人」(原作:火坂雅志)直江兼続役:妻夫木 聡
「天地人」●演出:片岡敬司/高橋陽一郎/一木正恵/野田雄介●制作:内藤愼介●脚本:小松江里●音楽:大島ミチル●原作:火坂雅志●出演:妻夫木聡/常盤貴子/北村一輝/阿部寛/松方弘樹/吉川晃司/小栗旬/高嶋政伸/相武紗季/玉山鉄二/長澤まさみ/宍戸錠/萬田久子/笹野高史/山本圭/加藤武/高島礼子/鶴見辰吾/深田恭子●放映:2009/01~12(全47回)●放送局:NHK
常盤貴子(お船)・妻夫木聡(直江兼続)/松田龍平(伊達政宗)・松方弘樹(徳川家康)/石原良純(福島正則)・小栗旬(石田三成)/富司純子(秀吉の正室・高台院(おね))
【1982年単行本[毎日新聞社(上・下)]/1985年文庫化[新潮文庫(上・下)]/1997年新装版[毎日新聞社(全1巻)]】