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「●スティーブ・ジョブズ」の インデックッスへ
ジョブズのカリスマ的プレゼンの秘密を、フツーの人が共有できるよう具体的に解明している。
Carmine Gallo
"The Presentation Secrets of Steve Jobs: How to Be Insanely Great in Front of Any Audience"
『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』['10年/日経BP社]
'11年10月にスティーブ・ジョブズが56歳で亡くなった際に、ジョブズ関連本がどっと出ましたが、本書は、ジョブズが亡くなる前の年に刊行されたもので(原著"The Presentation Secrets of Steve Jobs"の刊行も'10年)、個人的には久しぶりの読み返しでしたが、大体、ジョブズ本は、ジョブズが亡くなる前に刊行されたものの方が、ジョブズの死に伴って急遽刊行されたものより翻訳がしっかりしているようにも思います。
本書は、ジョブズのカリスマ的なプレゼンテーションの秘密を具体的に解明したもので、確かに、ビジョンを誰にでも分かる言葉にしてみせ、多くの人が望むところの自らがありたい姿を明確化することで、周囲を巻き込んで大きなうねりを創り出す、カリスマに不可欠な条件をジョブズが携えていたことは、本書を読んでもよく分かりますが、一方で、プレゼンテーションにおいて彼が周到な準備をし、効果的なプレゼンを行うための細心の準備と最大限の努力を怠らなかったこともよく分かりました。
本書の優れている点は、ただジョブズを礼賛するのではなく、彼のプレゼンの技法を一般論に落とし込んでいるため、ジョブズの評伝と言うよりもプレゼンのテキストとして読めることであり、また、お手本にしているジョブズのプレゼンのやり方が、決められた方針に則って徹底しているものであるために、その分、退屈な教科書に止まらず、インパクトのある啓発を含んだものとなっていることかと思います。
本書が紹介しているプレゼンテーションのポイントは、ジョブズが実際に行った数々のキーノートをベースにしているとのことで、「ストーリーを作る」(シーン1~7)、「体験を提供する」(シーン8~13)、「仕上げと練習を行う」(シーン14~18)、という"3幕"構成の中で、「人を惹きつける18の法則」(18シーン)について述べられていますが、個人的にも、どれをとっても啓発される要素の多いものでした。
その中には、なぜあなたのプレゼンテーションを気に掛ける必要があるのかという「一番大事な問いに答える」(シーン2)という根源的な問題から(そのために、聞き手の悩みや喜びのツボは何か、まずは想像力を逞しくして、紙にペンを走らせてみようとある)、「救世主的な目的意識を持つ」(シーン3)といった壮大なもの、「ツィッターのようなヘッドラインを作る」(シーン4)といったテクニカルなものまで含まれていて、更に「ヘッドラインは70文字以下」といった具体的手法にまで落とし込まれていたりします(原著で「140文字以内」とあるのを、訳者の井口耕二氏が日本語換算しており、こうした翻訳も親切)。
「ロードマップを描く」(シーン5)にある、要点を3点に纏める「3点ルール」や、ジョブズ自身がマッキントッシュ発売の時に用いた(有名な"1984"のプレゼン)「敵役を導入する」(シーン6)、「正義の味方を登場させる」(シーン7)という手法にも、なるほどと思わされるものがありました。
「禅の心で伝える」(シーン8)では、箇条書きで文字がずらっと並ぶパワーポイントのテンプレートの問題点、余白や画像・写真の効果を説いており、また「『びっくりするほどキレがいい』言葉を使う」(シーン10)では、言葉はシンプルで具体的であることが重要であることを具体例で説明しいて、忘れられないプレゼンにするためには「『うっそー!』な瞬間を演出する」(シーン13)というのも、フツーのプレゼンの教科書には書いていないことではないでしょうか。
「存在感の出し方を身につける」(シーン14)、「簡単そうに見せる」(シーン15)、「目的に合った服装をする」(シーン16)などを読むと、ジョブズのプレゼンが天性の才能の導くままに恣意的に行われていたものではなく、精緻な計算のもとに周到な準備を経てなされていたものであることがよく分かり、だからこそ「台本を捨てる」(シーン17)ことが可能であり、またジョブズ自身、プレゼンを「楽しむ」(シーン18)ことが出来たのだなあと。
とにかく啓発的であると同時に具体的に書かれているので、重要なプレゼンに際して、資料作成に入る前や出来上がった資料の効果をチェックする時、あるいはプレゼンのリハーサルを行う際に改めて一読するといいかも。
ジョブズの病状が回復の見通しが立ちにくく、彼の新たなプレゼンを聴く機会はそう訪れないかもしれないという状況で書かれた本でもあり(著者自身は本書刊行後の'10年10月に "Back to the Mac"と題した彼の新製品の紹介のプレゼンを聴いたそうだが)、ある意味、彼の"遺産"を、カリスマではないフツーの人が共有化できることを意図した本でもあるように、個人的には思いました。お奨めです。
《読書MEMO》
●人々を惹きつけるプレゼン 18の法則
第1幕 ストーリーを作る
シーン1 構想はアナログでまとめる
シーン2 一番大事な問いに答える
シーン3 救世主的な目的意識を持つ
シーン4 ツイッターのようなヘッドラインを作る
シーン5 ロードマップを描く
シーン6 敵役を導入する
シーン7 正義の味方を登場させる
第2幕 体験を提供する
シーン8 禅の心で伝える
シーン9 数字をドレスアップする
シーン10 「びっくりするほどキレがいい」言葉を使う
シーン11 ステージを共有する
シーン12 小道具を上手に使う
シーン13 「うっそー!」な瞬間を演出する
第3幕 仕上げと練習を行う
シーン14 存在感の出し方を身につける
シーン15 簡単そうに見せる
シーン16 目的に合った服装をする
シーン17 台本を捨てる
シーン18 楽しむ


Mac製品の写真が、内容的にも点数的にも充実していて、それらが綺麗に配置されており、全体的にみても、ジョブズ自身の写真も充実しているばかりでなく、編集デザイン的にも美しい構成。更には記事も充実していて、「MAC LIFE」の執筆・編集・デザイン陣の総力結集という感じでしょうか。






昨年('11年)10月に56歳で亡くなったスティーブ・ジョブズの軌跡を追った本ですが、彼の人生のターニングポイントとなった幾つものシークエンスにおけるジョブズを撮った、余白スペース無しの大判の写真が充実していて、ジョブズの様々な発言と組み合わせたレイアウトも美しく、ジョブズの言葉の力強さを引きたてています。

因みに、「ファインディング・ニモ」('03年)の制作の際に、ピクサーの美術部門のメンバーは、クジラの中にニモが呑みこまれるシーンを描くために、海岸に打ち上げられたクジラの死体を見に出かけたとのこと、ピクサーのデザイナー達は、アニメの映像世界の細部にジョブズ以上のこだわりを持っていたわけです。
更に、ジョブズとビル・ゲイツの間の様々な交渉についても、ジョブズが犯した過ちを鋭く検証していて、いかにジョブズが失ったものが大きかったかということが理解でき、Windowsのユーザーインターフェイスがその典型ですが、ある意味オリジナルはMacであり、普通ならばマイクロソフトではなくアップルがコンピュータ産業の覇者となり、ジョブズが世界一の億万長者の地位にいてもおかしくなかったことを示唆しているのも頷けました。
「ファインディング・ニモ」●原題:FINDING NEMO●制作年:2003年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・スタントン/リー・アンクリッチ●製作:グラハム・ウォルターズ(製作総指揮:ジョン・ラセター)●脚本:アンドリュー・スタントン/ボブ・ピーターソン/デヴィッド・レイノルズ● 音楽:トーマス・ニューマン/ロビー・ウィリアムズ●時間:100分●出演:アルバート・ブルックス/エレン・デジェネレス/アレクサンダー・グールド/ウィレム・デフォー/オースティン・ペンドルトン/ブラッド・ギャレット/アリソン・ジャニー●日本公開:2003/12●配

渋谷東急 2003年7月12日、同年6月の渋谷東急文化会館の閉館に伴い、直営映画館(「渋谷パンテオン」「渋谷東急」「渋谷東急2」「渋谷東急3」)の代替館として渋谷クロスタワー2Fにオープン。2013年5月23日閉館。



個人的には、ちょうどNHKスペシャルで「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」('11年12月24日放送)を見たところでしたが、それと照らしても、偏りの少ない伝記と言えるのではないでしょうか。元々が毀誉褒貶の激しいジョブズですが、そのスゴイ面、人を強烈に引きつける面と、ヒドイ面、友人や上司にはしたくないなあと思わせる面の両方が書かれていて、それでいて、ジョブズに対する畏敬と愛着が感じられました。
アップルの共同創業者や自らが引き抜いた経営陣との確執のほかに、同年代のライバルであるビル・ゲイツとの出会いや彼との交渉、Windowsの牙城を切り崩そうするジョブズの攻勢なども描かれていますが、ピクサーでの仕事におけるディズニー・アイズナー会長との様々な権利を巡るビジネス面での交渉が特に詳しく描かれており、アメリカのコンピュータ業界の内幕を描いた本であると同時に、映画ビジネス界を内側から描いたドキュメントにもなっています。
NHKスペシャルの「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」を見て、彼の人生には幾つかの印象的な場面が印象的な映像と共にあったように思われ、とりわけ、'84年のマッキントッシュ発売の際のジョージ・オーエルの『1984』をモチーフとしたコマーシャル(CM監督は「ブレードランナー」('82年)のリドリー・スコット)や、'86年のCGの可能性を如実に示した"電気ランプ"の親子が主人公の短篇映画「ルクソーJr.」(Luxo Jr.)、'95年の「世界初のフル3DCGによる長編アニメーション映画「トイ・ストーリー」などが個人的には脳裡に残りました。
「トイ・ストーリー」以外は番組で初めて見ましたが、そうした映像のイメージもあって本書を比較的身近に感じながら読むことができ、「トイ・ストーリー」も、初めて観た時はCGが進化したなあと思っただけでしたが、ジョブズが買収も含め個人資産を10数年も注ぎこむも全く利益を生まなかったピクサーが、土壇場で放った"大逆転ホームラン"だったと思うと、また違った感慨も湧きます(この作品だけでも公開までの4年間の投資額は5千万ドルに及び、「こんなに金がかかるなら投資しなかった」とジョブズは語っているが、本作のヒットでピクサー株は高騰し、結果的にジョブスの資産は4億ドル増えた)。
人々を惹き付ける素晴らしいプレゼンテーションをする一方で、傲慢な人柄で平気で人を傷つけ、また、類まれなイノベーターとして製品のデザインや性能への完璧主義的なこだわりを持つ一方で、相手の弱みに付け込む政治的画策も厭わない冷酷な経営者という一面も持つ―こうしたジョブズの多面性が、本書では充分に描かれているように思いました。
「トイ・ストーリー」●原題:TOY STORY●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ラセター●製作:ラルフ・グッジェンハイム/ボニー・アーノルドズ●脚本:ジョス・ウィードン/アンドリュー・スタントン/ジョエル・コーエン/アレック・ソコロウ●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ランディ・ニューマン●時間:81分●出演:トム・ハンクス/ティム・アレン/ドン・リックルズ/ジョン・モリス/ウォーレス・ショーン/ジョン・ラッツェンバーガー/ジム・バーニー●日本公開:1996/03●配給/ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン(評価★★★☆)
