2014年2月 Archives

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非常に「劇画」っぽい感じ。シーンによっては黒澤の"原点"的雰囲気を醸している。

姿三四郎 ポスター.jpg姿三四郎【期間限定プライス版】.jpg 姿三四郎 1943 すすき野原の決闘.png
姿三四郎【期間限定プライス版】 [DVD]」(79分「短縮版」)

 明治15年、会津から柔術家を目指し上京してきた青年、姿三四郎(藤田進)は門馬三郎(小杉義男)率いる神明活殺流に入門。ところがこの日、門馬らは修道館柔道の矢野正五郎(大河内傳次郎)闇討ちを計画していた。近年めきめきと頭角を現し警視庁の武術指南役の座を争っていた修道館柔道を門馬はいまいましく思っていたのだ。ところが多人数で襲撃したにも関わらず、矢野たった一人に神明活姿三四郎 01.jpg殺流は全滅。その様に驚愕した三四郎はすぐさま矢野に弟子入りを志願した。やがて月日は流れ、三四郎は修道館門下の中でも最強の柔道家に育っていたが、街に出れば小競り合いからケンカを始めてしまう手の付けられない暴れん坊でもあった。そんな三四郎を師匠の矢野は「人間の道というものを分かっていない」と一喝。反発した三四郎は気概を示そうと庭の池にび込み死ぬと豪語するが矢野は取り合わない。兄弟子たちが心配する中意地を張っていた三四郎だが、凍える池の中から見た満月と泥池に咲いた蓮の花の美しさを目の当たりにした時、柔道家として、人間として本当の強さとは何かを悟ったのであった―。(Wikipediaより)

黒澤明.jpg 1943(昭和18)年に公開された黒澤明(1910-1998/享年88)の初監督作品で、当初、全長97分の作品として公開されましたが、公開翌年に電力節約のため1作品の上映時間が80分以下に制限され、関係者の知らないところでフィルムがカットされたとのこと。切断されたフィルムは行方不明となり、戦後1952(昭和27)年に再公開された作品は79分の短縮版で、その後出されたVHS、レーザーディスク、DVDは何れもこの短縮版でした。それが、行方不明になっていたカット部分の一部がソ連崩壊後のロシアで日本人によって発見され(満州にあったフィルムがソ連に資料として持ち去られていた)、2002年に91分の「最長版」DVDが発売されています(まだ6分の逸失部分があるため「完全版」ではない)。

 原作は富田常雄で、姿三四郎は会津藩出身の西郷四郎(NHK大河ドラマ「八重の桜」にも出てきた西郷頼母は養父)、矢野正五郎は嘉納治五郎(講道館柔の創始者)とそれぞれモデルがあり、1886(明治19)年の警視庁武術大会で講道館柔道が柔術諸派に勝ったことにより、講道館柔道が警視庁の正課科目として採用されというのも史実だそうです。

姿三四郎 桧垣.jpg 原作は読んでいませんが、映画の方は黒澤明のスタートがエンタテインメント作品であったことを改めて感じさせるとともに、戦争中によくまあこんな純粋娯楽映画と言ってよい作品を撮ったものだなあと思いました。非常に「劇画」っぽい感じで、この作品を"スポ根"映画と呼ぶ人もいて、三四郎に必殺技「山嵐」によって投げられた門馬が空を舞っていくところなどは、TVドラマ「柔道一直線」みたいでした(門馬はこれにより死んでしまうのだが)。柔術派である良移心当流の檜垣源之助(月形龍之介)の気障なキャラは、近藤正臣が演じた結城真吾に継承されたのか?

姿三四郎 小夜2.jpg ストーリーとしては、姿三四郎と良移心当流師範村井半助の娘・小夜(轟夕起子)とのラブロマンスを絡めてはいるものの、定番過ぎると言うかシンプル過ぎて逆にもの足りないですが(三四郎が試合に向けて特訓練習するシーンなどがカットされ、"気持ちの持ち様"だけでいきなり強くなった印象を与えてしまう)、師匠である山本嘉次郎(1902-1974)の演出を受け継ぎながらも、熊谷久虎(1904-1986)などの演出も参照し、更に泥池に咲いた蓮の花の美しさの見せ方などにおいて独自性を見せている点は興味深いです。とりわけ、ラストの三四郎と檜垣のすすき野原での対決シーンは、後の「用心棒」や「椿三十郎」に繋がる雰囲気を色濃く醸していて、その意味でも"原点"的作品ではあるかと思います。

姿三四郎 1943 志村喬.jpg姿三四郎 1943 志村喬・藤田進.jpg 良移心当流師範・村井半助を演じるのは志村喬。檜垣にロートル扱いされ、警視庁武術大会での三四郎との試合の前半部分は何だか2人でダンスを踊っているみたいだったけれど、三四郎に投げられて半ばダウン状態のところへ娘・小夜の声が被姿三四郎 1943 大河内.jpgって再度立ち上がろうとするところはさすがに痛々しかった...。

 この作品に出演した大河内傳次郎(左)、志村喬、藤田進とも、勧進帳をベースにした戦争末期の黒澤作品「虎の尾を踏む男達」('45年)、京大事件をモチーフにした終戦翌年の黒澤作品「わが青春に悔なし」('46年)にも3人揃って出演することになります。

藤田進.jpg藤田進 とがし.jpg藤田進 加藤隼戦闘隊 - コピー.jpg 藤田進(1912-1990)は撮影所の録音係から俳優になった人。山本嘉次郎監督の「加藤隼戦闘隊」('44年)にも加藤健夫中佐役で主演、「虎の尾を踏む男達」では富樫左衛門を演じています。50年代以降では、「地球防衛軍」('57年)、「モスラ対ゴジラ」('64年)、「宇宙大怪獣ドゴラ」('64年)といった東宝特撮映画に自衛隊の現場の指揮官役でよく出ていたほか、TⅤ番組「ウルトラセブン」でも地球防衛軍長官役で出演していました。

 終戦の翌月に完成した「虎の姿三四郎 三四郎.jpg尾を踏む男達」はGHQの検閲で内容に封建的な部分があるということで当時一般公開されず、この「姿三四郎」が戦後再公開されたのと同じ1952年に初めて劇場公開されています。作られた当時に公開されなかったのは不幸ですが、「完全版」が無いのも不幸と言えます。因みに、「最長版」は2002年発売の姿三四郎 1943 dvd 黒.jpg姿三四郎 1943 dvd 赤ラベル.pngDVD BOXSETに特典映像としてあるのみのようで、その後に発売されたDVDもブルーレイも79分の短縮版のままであるのはどうしてなのか(2010年に黒澤明生誕100年記念として日本映画専門チャンネルで「最長版」がテレビ初放映、同年に池袋・新文芸坐でも「最長版」が上映された)。

姿三四郎 [DVD]」(79分「短縮版」)
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藤田進と轟夕起子/志村喬と藤田進
姿三四郎 藤田進と轟夕起子.jpg姿三四郎 志村喬藤田進.jpg「姿三四郎」●制作年:1943年●監督・脚本:黒澤明●企画:松崎啓次●撮影:三村明●音楽:鈴木静一●時間:79分(97分)●出演:大河内傳次郎/藤田進/轟夕起子/花井蘭子/月形龍之介/志村喬/青山杉作/菅井一郎/小杉義男/高堂国典/瀬川路三轟 夕起子1937.jpgSayo_and_sugata.jpg郎/河野秋武/清川荘司/三田国夫/中村彰/坂内永三郎/山室耕●公開:1943/03●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(10-09-11)●配給:映画配給社(東宝)(評価:★★★)

轟夕起子/藤田進


轟夕起子(1937(昭和12)年:雑誌「映画之友」八月号)
   

       
                                                                 
柔道一直線 dvd.jpg柔道一直線.jpg「柔道一直線」●監督:小林恒夫/富田義治/折田至/奥中惇夫/田口勝彦/山田稔/近藤一美●企画:平山亨/斉藤頼照/橋本洋二●脚本:佐々木守/上原正三/雪室俊一/高橋辰雄/細川すみ●音楽:みぞかみひでお●原作:梶原一騎●出演:桜木健一/高松英郎/牧冬吉/吉沢京子/青木和子/藤江喜幸/名古屋章/岸田森/近藤正臣●放映:1969/06~1971/04(全92回)●放送局:TBS
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松田優作(柔道部員の一人)当時19歳
「柔道一直線」松田.jpg 
                            

●黒澤明フィルモグラフィー
公 開 年  作 品 名 (制作(配給)) 脚本 主な出演
1943年  姿三四郎(東宝)黒澤明 大河内傳次郎、藤田進、轟夕起子、花井蘭子、月形龍之介、志村喬
1944年  一番美しく(東宝)黒澤明 志村喬、清川荘司、入江たか子、矢口陽子、萬代峰子
1945年  續姿三四郎(東宝)黒澤明 藤田進、轟夕起子、河野秋武、月形龍之介、大河内伝次郎、清川荘司
1945年  虎の尾を踏む男達(東宝)黒澤明 大河内傳次郎、藤田進、轟夕起子、花井蘭子、月形龍之介、志村喬
1946年  わが青春に悔なし(東宝)久板栄二郎 志村喬、清川荘司、入江たか子、矢口陽子、萬代峰子
1947年  素晴らしき日曜日(東宝)植草圭之助 藤田進、轟夕起子、河野秋武、月形龍之介、大河内伝次郎
1948年  醉いどれ天使(東宝)植草圭之助、黒澤明 志村喬、三船敏郎、木暮実千代、久我美子、山本礼三郎
1949年  静かなる決闘(大映)黒澤明、谷口千吉 三船敏郎、三條美紀、志村喬、千石規子、中北千枝子
1949年  野良犬(新東宝=映画芸術協会)黒澤明、菊島隆三 三船敏郎、志村喬、木村功、山本礼三郎、淡路恵子
1950年  醜聞(松竹=映画芸術協会)黒澤明、菊島隆三 三船敏郎、山口淑子、志村喬、桂木洋子、北林谷栄、千秋実
1950年  羅生門(大映)黒澤明、橋本忍  三船敏郎、京マチ子、志村喬、森雅之、千秋実、上田吉二郎
1951年  白痴(松竹)久板栄二郎、黒澤明 原節子、森雅之、三船敏郎、久我美子、志村喬、千秋実、岸惠子
1952年  生きる(東宝)黒澤明、橋本忍、小国英雄 志村喬、日守新一、千秋実、小田切みき、田中春男、伊藤雄之助
1954年  七人の侍(東宝)黒澤明、橋本忍、小国英雄 志村喬、三船敏郎、木村功、稲葉義男、加東大介、千秋実
1955年  生きものの記録(東宝)橋本忍、小国英雄、黒澤明 三船敏郎、志村喬、青山京子、東郷晴子、千秋実
1957年  蜘蛛巣城(東宝)小国英雄、橋本忍、菊島隆三、黒澤明 三船敏郎、山田五十鈴、志村喬、久保明、千秋実
1957年  どん底(東宝)小国英雄、黒澤明 三船敏郎、山田五十鈴、香川京子、千秋実、上田吉二郎、藤原釜足
1958年  隠し砦の三悪人(東宝)菊島隆三、小国英雄、橋本忍、黒澤明 三船敏郎、千秋実、藤田進、藤原釜足
1960年  悪い奴ほどよく眠る(東宝=黒澤プロ)小国英雄、久板栄二郎、黒澤明、菊島隆三、橋本忍 三船敏郎、香川京子、三橋達也、森雅之、志村喬、西村晃、藤原釜足、加藤武、笠智衆
1961年  用心棒(東宝=黒澤プロ)菊島隆三、黒澤明 三船敏郎、仲代達矢、司葉子、加東大介、山茶花究、河津清三郎、山田五十鈴、東野英治郎
1962年  椿三十郎(東宝=黒澤プロ)菊島隆三、小国英雄、黒澤明 三船敏郎、仲代達矢、小林桂樹、加山雄三、団令子、志村喬、藤原釜足、清水将夫
1963年  天国と地獄(東宝=黒澤プロ)小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明 三船敏郎、仲代達矢、香川京子、三橋達也、石山健二郎、木村功、加藤武、志村喬、山崎努
1965年  赤ひげ(東宝=黒澤プロ)井手雅人、小国英雄、菊島隆三、黒澤明 三船敏郎、加山雄三、山崎努、団令子、香川京子、桑野みゆき、二木てるみ
1970年  どですかでん(四騎の会=東宝)黒澤明、小國英雄、橋本忍 頭師佳孝、菅井きん、三波伸介、伴淳三郎、芥川比呂志、奈良岡朋子、加藤和夫
1975年  デルス・ウザーラ(モスフィルム)黒澤明、ユーリー・ナギービン ユーリー・サローミン、マキシム・ムンズーク、シュメイクル・チョクモロフ
1980年  影武者(東宝=黒澤プロ)黒澤明、井手雅人 仲代達矢、山崎努、隆大介、萩原健一、根津甚八、大滝秀治、油井昌由樹、桃井かおり、倍賞美津子 
1985年  乱(グニッチ・フィルム=ヘラルド・エース)黒澤明、井手雅人 仲代達矢、寺尾聰、隆大介、根津甚八、原田美枝子、宮崎美子、野村萬斎、井川比佐志、ピーター
1990年  夢(黒澤プロ)黒澤明 寺尾聰、倍賞美津子、原田美枝子、井川比佐志、いかりや長介、伊崎充則、笠智衆、頭師佳孝、根岸季衣
1991年  八月の狂詩曲(黒澤プロ=フィーチャーフィルムエンタープライズII) 黒澤明 村瀬幸子、吉岡秀隆、大寶智子、茅島成美
1993年  まあだだよ(大映=電通=黒澤プロ)黒澤明 松村達雄、香川京子、井川比佐志、所ジョージ、油井昌由樹、寺尾聰

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原節子の小津映画初主演作品。笠智衆は最後泣かなくて良かった。監督の意図を超えて論じられる作品。

晩春 1949 dvd.jpg「晩春」S24.jpg 晩春 1949 笠智衆・原節子.jpg 
あの頃映画 松竹DVDコレクション 「晩春」」原節子/笠智衆
晩春 1949 笠智衆.jpg
 早くに妻を亡くし、それ以来娘の紀子(原節子)に面倒をかけてきた大学教授の曾宮周吉(笠智衆)は、紀子が婚期を逃しつつあることが気がかりでならない。周吉は、妹のマサ(杉村春子)が持ってきた茶道の師匠・三輪秋子(三宅邦子)との再婚話を受け入れると嘘をついて、紀子に結婚を決意三島雅夫 晩春.jpgさせようとするが、周吉と昔から親友である京大教授・小野寺(三島雅夫)が後妻を娶ることに不潔さを感じていた紀子は、父への嫌悪と別れの予感にショックを受けてしまう。マサの持ってきた縁談を承諾した紀子は、周吉と京都旅行に出かけ再度心が揺れるが、周吉に説得されて結婚を決意する―。

三島雅夫/原節子

『晩春』原節子.gif 原作は広津和郎の短編小説「父と娘」。原節子が小津映画に初めて出演した作品であり、娘の縁談、親の孤独という戦後の小津作品で繰り返されるテーマがこの作品で確立されたとされており、ま「晩春」杉村春子.jpgた、「麦秋」('51年)、「東京物語」('53年)で原節子が演じたヒロインは皆「紀子」という名前であることから、「紀子3部作」の第1作ともされています(この作品は、NHK-BS2での「生誕100年小津安二郎特集」放映(2003-04)の際の視聴者の投票による「小津映画ベスト10」で「東京物語」に次いで2位にランクインした)。

杉村春子/原節子

 前年作の「風の中の牝雞」('48年)に比べ、技術的に格段の進歩を遂げているばかりでなく、戦後の小津作品のスタイルが確立されているとともに、笠智衆の演技スタイルも確立「風の中の牝雞」笠智衆 02.jpgされていることを改めて感じます。1942年公開の同じく小津監督の「父ありき」(小津作品の中では初主演)で7歳年下の佐野周二の父親を演じてから老け役が定着していたというのもありますが、この「晩春」でも、実年齢(45歳)より10歳余り年上になる56歳の初老の父親を演じています。所謂よく知られている「笠智衆」のイメージに近いですが、「風の中の牝雞」の時と比べると、僅か1年後の出演作品でありながらも、その"見た目年齢"の違いに驚かされます。
笠智衆 in「風の中の牝雞」(1948)

笠智衆/原節子/月丘夢路
晩春 原節子・月丘夢路91.jpg晩春 曾宮周吉2.jpg 笠智衆は演技について演出家と対立するようなことはなかったそうで、小津作品でも小津の言うとおりに演技をしたとのことですが、自らが泣くシーンを演じることはだけは拒否していて、この「晩春」のラストの独りリンゴの皮を剥くシーンで、その後に「慟哭する」というというシナリオだったのが、それを拒否して、うなだれるシーンに変更されたとのこと。彼が小津の演出に従わなかったのはこの時だけだったと言われています(「眠っているみたいだ」と評されて憤りを感じたとも(『大船日記―小津安二郎先生の思い出』('91年/扶桑社)))。
    
『晩春』(1949年).jpg よく原節子の美しさが絶賛される作品で、またその号泣シーンなどでも知られているわけですが(続く「麦秋」「東京物語」でも原節子は号泣する)、個人的には、自分の娘を嫁にやる初老の男の複雑な心境にウェイトを置いて観ました(あくまでも主人公は周吉かと)。但し、この作品を、父に対して性的コンプレックス(エレクトラコンプレックス)を抱いていた娘が、そこから解放される物語であるとの見方があることで知られており、言われてみればナルホドなあと。

晩春 1949 旅館のシーン.jpg そうなると、京都旅行で父と娘が同じ旅館部屋で枕を並べて寝るシーンなども、やや性的な意味合いを帯びてくるわけですが、その場面の終りの方で一瞬床の間の壺が映し出されるシーンがあり、それが、ヒロインがエレクトラコンプレックスから解放された瞬間だという説もあるそうです。蓮實重彦氏が『監督 小津安二郎』('83年/筑摩書房、'92年/ちくま学芸文庫)で、この場面における"性の露呈"を指摘し、高橋治氏が『絢爛たる影絵―小津安二郎』('82年/文藝春秋、'10年/岩波現代文庫)で「エレクトラ・コンプレックスが最も美しく結実したのは矢張り有名なあの京都の宿のシーンだろう」としています。

 現役最高齢の映画監督マノエル・ド・オリヴェイラ(2014年2月現在105歳(2015年4月、満106歳で死去))が、2003年の「小津安二郎生誕100周年記念国際シンポジウム」で、これらは「父子相姦」のメタファーなのかという問題を再提起して議論を呼びましたが、これで海外のこの映画をに対する「近親相姦」映画としてのそれまでの見方が更に強まったとされるものの、その時にそうした問題提起をしたオリヴェイラ監督自身は、「晩春」における娘と父の関係を性的なものではなく、深い情愛によって結ばれた神聖なものであるとしたとのこと、また、「タクシードライバー」('76年)の脚本家で「MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS」('85年)などの監督作もあるポール・シュレイダーになると、"壺"は「もののあわれ」を表しているとします。

Banshun (1949).jpg晩春 壺.png この"壺"を誰が見ているのかによっても解釈は異なってきますが、父・周吉は先に眠ってしまうことから、後は、ヒロインか「神の眼」かの何れかにならざるを得ない―ヒロインのそれまでの結婚に対する頑な態度が変わったのは、この時の旅館部屋での"枕を並べての"父子の会話以降であり、その会話からもヒロインの気持ちのターニングポイントは見て取れなくもないですが、その延長線上にある"壺"は、映画評論家ドナルド・リチーの指摘のように、それを見ているのはヒロインであると解釈するのが自然かもしれず、ドナルド・リチーは壺に、それを見つめるヒロインの結婚の決意が隠されていると分析しています(因みに蓮實重彦氏は、『監督 小津安二郎』の最後の章をこのシーンの捉え方に割いていて、ポール・シュレーダー、ドナルド・リチー両氏の解釈を批判し、それらとはまた違った見解を示しているが、ここではこれ以上は引用しないでおく)。
Banshun(1949)

 結局、このシーンを観てどう感じるかは人によって様々でしょう。小津作品の幾つかが、監督の意図をはるかに超えた場所まで独り歩きし、到達していこうとしていることを最も端的に示す論争の1つと言えるかと思います。自分自身は正直よく分かりませんでしたが(これも誰かが言っていたことだと思うが、壺を見ているのは「神の眼」ともとれなくはない)、こうした様々な見方を参照していくと、主人公・周吉のラストの悲哀も、"悲哀一色"ではなく、ややどろっとした"重たいもの"からの解放されたという側面もあり、その上で感じる乾いた"諦観"のような侘しさというものではなかったかという気がします(笠智衆は泣かなくて良かった)。

「晩春」1.jpg 「晩春」2.jpg

「晩春」ポスター.jpg

晩春 1949 ポスター.jpg晩春 1949 完成記念.jpg「晩春」●制作年:1949年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:伊藤冝二●広津和郎「父と娘」●時間:108分●出演:笠智衆/原節子/月丘夢路/宇佐美淳/杉村春子/青木放屁/三宅邦子/三島雅夫/坪内美子/桂木洋子/清水一郎/谷崎純/高橋豊子/紅沢葉子●公開:1949/09●配給:松竹●最初に観た場所:大井武蔵野館 (84-02-07)(評価:★★★★☆)●併映:「早春」(小津安二郎)

晩春21.jpgNHK-BS2 視聴者の投票による「小津映画ベスト10」(「生誕100年小津安二郎特集」ホームページ(2003年))
第1位 「東京物語
第2位 「晩春
第3位 「麦秋
第4位 「生れてはみたけれど
第5位 「浮草」
第6位 「彼岸花
第7位 「秋刀魚の味
第8位 「秋日和
第9位 「早春
第10位 「淑女は何を忘れたか

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千石規子がいい。昭和20年代のヒューマニズムをテーマにした黒澤作品群の中では好きな方。

Shizukanaru kettô(1949).jpg       静かなる決闘 デジタル・リマスター版.jpg  「静かなる決闘」00.jpg
Shizukanaru kettô(1949)静かなる決闘 デジタル・リマスター版 [DVD]

静かなる決闘 野戦病院.jpg 若い軍医・藤崎(三船敏郎)は、戦時中の野戦病院で患者・中田(植村謙二郎)を手術中に、誤って自分の指に怪我をして患者の梅毒に感染してしまう。そして薬もろくにない中で病気をこじら静かなる決闘 2.jpgせてしまう。終戦を迎え、父・孝之輔(志村喬)の病院で働くようになった藤崎は、戦中から6年間彼の結婚の正式申出を待っていた婚約者の美佐緒(三條美紀)に対し、梅毒感染を隠したまま、結婚を申し出ることが出来ずにいる。一方の美佐緒は、藤崎が自分に対して距離を置いていることに苦悩する。ある日、藤崎は、梅毒の治療薬サルバルサンを自らに注射してい静かなる決闘 3.jpgるところを、見習い看護師の峯岸るい(千石規子)に見られてしまう。峯岸は元ダンサーで、妊娠して男に捨てられたところを病院に拾われたのだったが、藤崎の日頃の人道主義的な言動に反感を抱いていた彼女は、普段高潔なことを言っているのに梅毒に感染していると、理由も知らずに彼のことを誤解する。子どもを産むことを勧める藤崎に対して逆に彼を詰(なじ)るが、これを父・孝静かなる決闘 三船&志村.jpg之輔が偶然立ち聞きし、父は初めて息子が梅毒に感染していることを知る。最初は息子を詰問するつもりだった父だが、手術中の不可抗力からの感染と知って息子に同情するとともに、事実を美佐緒に話すべきだと諭す。しかし、藤崎は、完治には長い年月のかかる(当時)梅毒に感染したことを美佐緒に話せば、彼女の性格からして自分を待ち続けるだろうが、そのことは彼女の青春を犠牲にすることでもあり、それは出来ないと言う。この親子の話し合いを偶然立ち聞きした峯岸は、藤崎に対し自分が誤解をしていたことを知る―。

「静かなる決闘」志村.jpg 「酔いどれ天使」('48年)に続く黒澤明の監督8作目で、1949(昭和24)年公開の大映作品であり、原作は菊田一夫の舞台劇「堕胎医」(1947年発表)。年齢差15歳の志村喬(1905-1982/享年76)と三船敏郎(1920-1997/享年77)が親子の役を演じているのが興味深いです。見習い看護師の峯岸るいを演じた千石規子(1922-2012/享年99)は、黒澤明作品に最も多く出演している女優です。

静かなる決闘 6.jpg 苦悩する医師を演じた三船敏郎は、彼らしからぬ抑えた演技で、それを三船らしくないとしてフラストレーションを感じるか否かがこの作品の好き嫌いの分かれ目の1つになるかもしれませんが、個人的には、この映画での三船敏郎は悪くないと思っています。但し、やはり何と言っても、見習い看護師の峯岸るいを演じた千石規子がいいです。最初は、観客の視点に立った"繋ぎ"的な役回りに見えたのが、やがて物語において重要なファクターを占めるようになり、終わってみれば、作品自体が彼女の成長物語だったようにも思えてきます。

 峯岸るいは、偶然により藤崎の梅毒感染の秘密を知り、それまでの藤崎への反感が一旦は憎悪の域に達しますが、また更に偶然によりその原因の真相を知ったことで、藤崎へのわだかまりは尊敬の念へと転じます。但し、それをストレートに藤崎に伝えることが出来ず、最初は美佐緒を通して伝えようとするところなどはいじらしかったです。

静かなる決闘 7.jpg しかし、だからと言って藤崎の考え方を完全に理解したわけではなく、相変わらず人道主義を口にする彼に対して、「男の人の肉体的な要求なんてそんなに簡単に抑制できるものなんですか」とカマをかけます。「医者だって人間でしょう」という彼女の言葉が引き金となって、藤崎は自らの悔しさと美佐緒に対しての生々しい想いを峯岸にぶちまけ、彼の苦悩をストレートに受け止めた峯岸も号泣します。その号泣の後で、またも「僕は医者なんだ。人間の良心を持って生きていかなければならないんだ」と言って"あるべき自分"に立ち返ろうとする藤崎に対して、峯岸は再度カマをかけていて、ここはある種"男と女"の会話になっています。しかもテーマは"性欲"であると言ってもよく、峯岸自身が、病院ってこういう話ができる不思議なところだと言っているぐらいです(しかも、その後、ぎこちなく事務的な会話に移るのが却ってリアリティがある)。このシーンでの千石規子の演技は、三船敏郎のそれと拮抗しているように思いました(女性を描くのが不得手だと言われた黒澤明の作品にしては、活き活きとした女性像が描かれていると思った)。

「静かなる決闘」ラスト.jpg 自らの暗い過去から人間を斜に構えてしか見ることが出来なかった見習い看護師の峯岸が、ラストでは凛とした看護師になっていて、しかも見違えるほど美しくなっています。孝之輔が、息子・藤崎が巷で"聖者"と呼ばれているということに対して、「あいつはね、ただ自分より不幸な人間の傍で希望を取り戻そうとしているだけですよ。幸せだったら案外俗物になっていたかもしれません」というのも解り易過ぎる解題のようにも思えますが、味わいのある言葉でもあり、作品全体としても感動作であるには違いないと思います。

菊田一夫.jpg 原作は菊田一夫の舞台劇「堕胎医」(1947年)で、千秋実主演で舞台でもヒットしたそうですが、藤崎と峯岸るいを軸とした話になっていて、美佐緒はほんの脇役に過ぎなかったそうです。振り返れば、映画においてもそうした見方ができますが、但し、原作では主人公の医師が梅毒を次第に悪化させ遂に発狂し、相手が誰かの判断もできなくなって精神病院へ送られるところで幕となるというもので、映画も最初のシナリオの段階ではそのような結末を想定していたのが、当時梅毒が既に「治る病気」になっており(1946年に占領軍が招聘した米国大学教授の指導の元に日本の製薬会社各社がペニシリンの生産を開始し、翌1947年から病院を通して日本中へと広まった)、GHQの圧力もあったかと思われますが、こうした希望の持てる終わり方になっています(但し、その代わりに中田の方が梅毒の病状が進行して発狂していくのだが)。

「静かなる決闘」ポスター.jpg「静かなる決闘」 三条美紀.jpg 昭和20年代の黒澤作品は、ヒューマニズムをテーマにしたものが多く、それらの評価は結構割れているようですが、この作品もその1つでしょう。それら作品群の中では個人的には好きな方です。戯曲の方が素晴らしいという映画評論家もいますが、観ていないので何とも言えません。但し、自分としては、原作以上の映画作品を作る監督の一人が黒澤明だと思っています。
三船敏郎/三條美紀(娘は紀比呂子

  千石規子
「静かなる決闘」 千石.jpg千石規子「静かなる決闘」.jpg「静かなる決闘」●制作年:1949年●監督:黒澤明●製作:本木荘二郎●脚本:黒澤明/谷口千吉●撮影:相坂操一●音楽:伊福部昭●時間:108分●出演:三船敏郎/志村喬/三條美紀/千石規子/植村謙二郎/山口勇/中北千枝子/宮島健一/佐々木正時/泉静治/伊達正/宮島城之/宮崎準之助/飛田喜佐夫/高見貫/須藤恒子/若原初子/町田博子●公開:1949/03●配給:大映●最初に観た場所:八重洲スター座(79-08-20)(評価:★★★★)●併映:「デルス・ウザーラ」(黒澤明)

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黒澤映画唯一のホームドラマ。映像的には興味深いが、映画的にはイマイチか。

素晴らしき日曜日 ポスター.jpg素晴らしき日曜日 dvd.jpg
 
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素晴らしき日曜日 02.jpg 戦争の傷跡が残る東京で、職についてはいるが友人宅に居候中の雄造(沼崎勲)と、大家族の姉の家に同居中の(中北千枝子)のカップルは、一緒に住むこともままならず、週に一度日曜日に会えることだけが唯一の楽しみだった。手持金僅か35円ながらも、楽しいランデヴーを計画する2人の前に、切なく惨めな現実が立ちはだかる。真面目に生きることの虚しさに失望しそうになりながらも、2人は喫茶店を開く夢を語り合う―。

 映画における35円は、現在の貨幣価値に換算すると約3,500円だそうですが、昌子が「これなら入場無料よ」と言って雄造を引き連れて入った「新興模範住宅」の展示場、建売が10万円になっているなあ。部屋の中で未来の生活を夢見て浮き浮きしている昌子と、「夢じゃ腹は膨れない」と浮かない気分の雄造とが対照的です。

 結局2人は聞きつけた話から賃貸住宅へ回りますが、こちらは終日陽の当たることのない最悪の部屋で、それでも家賃600円。2人の給料を合せても1,200円なので、どのみち借りるのは難しい。雄造は何とか気を取り直して、子どもたちの野球に混ぜてもらうと、打球が饅頭屋を直撃して、饅頭代10円を賠償させられて残金は25円に。友人が経営するキャバレーに行ってみると、今度はタカリに間違われる始末となります。

素晴らしき日曜日 03.jpg キャバレー(ダンスホールのような感じ)に出入りする羽振りの良さそうな人たちと、雄造が通された部屋にいたタカリ屋、街を見下ろす高台で持参のおにぎり昼食を取る2人の前に現れた少年浮浪者、等々、"戦後復興"も人によってその歩みに早い遅いがあったことを改めて窺わせます。

素晴らしき日曜日 アパート.jpg 気分を変えて上野動物園に行く2人ですが、入園料を払うと残りは23円で、しかも突然の雨降り。昌子が10円で鑑賞できるという東京公会堂でのコンサートのポスターを見つけて上野駅から国電に飛び乗って会場に駆け込むも、安いチケットはダフ屋に買い占められており、頭に来た雄造は喧嘩騒ぎまで起こし、絶望感からアパートに引き籠って不貞腐れる羽目に。

素晴らしき日曜日 仮想コンサート.jpg 昌子もそんな彼を見ているのが辛くて一旦はアパートを出ていきます。しかし、また戻って来て、2人で喫茶店で将来の夢を語り合うも、コーヒー1杯5円、茶菓子1個5円のはずがミルクコーヒーは10円だったみたいで、遂には所持金不足に―といった具合に、話は明るくなったり暗くなったりしながらも、所持金の消費と共に結局はどんどん暗くなっていって、この後どうなるかと思ったら、最後で思い切った演出の転換が行われています(それまでのホームドラマ的な演出が、途中から完全に舞台劇のような演出及び場面設定に切り替わる)。

素晴らしき日曜日 ラスト.jpg 黒澤明が撮った唯一のホームドラマとも言われている作品で、黒澤明と小津安二郎の映画の作りや演出の違いを比べようと思っても、片や歴史物や社会物或いはスペクタル娯楽作品だったりし、片や"その時点での"現代物ホームドラマばかりで、状況設定が違い過ぎて比較しにくのですが、この作品だと比較可能かもしれません。

素晴らしき日曜日 01.jpg素晴らしき日曜日02.jpg この作品を観て思うのは、やはり黒澤は小津のように淡々とした感じでは終わらないなあと。むしろ"終われない"のかも。最後、まさに交響楽を編むようなドラマにしないと収まらないのでは。ラストの無人のコンサート広場での仮想演奏会の場面もそうだし、中北千枝子演じる昌子がスクリーンの中から観客に向かって拍手を求めるシーンなどはまさにそのように思いました。

 このシーン及び演出の終盤からの切り替えは、主演の沼崎勲が撮影中に雑踏恐怖症になったのも一因としてあるようですが(コンサート広場も日比谷の野外音楽堂を模したセットらしい)、個人的には、前半から中盤にかけての街中のロケシーンの素晴らしき日曜日 上野公園1.jpg方が、時代の雰囲気やシズル感があって良かったように思います。走る2人を追いかけるカメラの躍動感が黒澤映画っぽいです。また、上野公園の入り口階段傍の石垣や、上野駅の入り口付近の様子が今とあまり変わっていないことにも気付かされました。

素晴らしき日曜日 日比谷公会堂.jpg この作品を"感動作"として推す人も多いかと思いますが、自分としては、「映像」的には貴重なシーンが多くあり興味を引いたものの(当時流行った「街頭写真屋」などは当然のことながら役者が演じているのだが)、「映画」的には黒澤作品としてはイマイチで、あまり上野公園.jpg彼の得意ではないジャンルの作品だったような気がします。

「素晴らしき日曜日」●制作年:1947年●監督:黒澤明●製作:本木荘二郎●脚本:植草圭之助●撮影:中井朝一●音楽:服部正●時間:108分●出演:沼崎勲/中北千枝子/渡辺篤/中村是好/内海突破/並木一路/菅井一郎/清水将夫/小林十九二/水谷史朗/日高あぐり/有山緑/堺左千夫/河崎堅男/森敏●公開:1947/06●配給:東宝●最初に観た場所:銀座並木座 (91-04-07)(評価:★★★)●併映:「野良犬」(黒澤明)

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老人問題を早期に取り上げたと言うより、そのレトリックにおいて佳作の「青い血の女」。

青い血の女 dvd.jpg青い血の女 title.jpg青い血の女3.jpg 第9話 死体置場(モルグ)の殺人者.jpg
DVD 怪奇大作戦 Vol.2」(第6話「吸血地獄」/第7話「青い血の女」/第8話「光る通り魔」/第9話「散歩する首」)「DVD恐怖劇場アンバランスVol.5」(第9話「死体置場(モルグ)の殺人者」/第10話「サラリーマンの勲章」)
岸田森(牧)/小橋玲子(小川)/原保美(的矢)/松山省二(野村)/勝呂誉(三沢)
怪奇大作戦0.jpg 三沢(勝呂誉)は久しぶりに会った友人・鬼島明(山中紘)の家でくつろいでいたが、家の前で偶然見かけた鬼島の父・竹彦(浜村純)の話をした際の鬼島夫妻の様子から、鬼島と竹彦の間に確執があることが窺えた。急にテレビの映りが変になったところで話にキリをつけ、三沢は鬼島の誘いで一泊することに。その夜、三沢は就寝中に何者に襲われ、手に傷を負う。同じ頃、帰宅途中のサラリーマンが刃物で殺害され、三沢は手の傷から事件の容疑者となってしまう。証拠不十分で釈放された三沢だが、その帰り道にまたも何者かに襲われる。三沢の事件を知った鬼島は一人暮らしの父の家を訪ねるが、竹彦は会おうともせず、一人"子供部屋"に戻り、ベビーベッドに横たわる何かに向かって話しかけるのだった。翌晩、竹彦の家を見張っていた三沢は、酒に酔った竹彦をタクシーで家まで送り届けた女性に会うが、女性を自分の車内に残して竹彦を自宅に送る間に、女性は何者かに襲われ、三沢は自宅に逃げ帰った彼女の後を追うが、女性の部屋に着くと女は既に息絶えていた。三沢はまたも容疑者にされるが、これも証拠不十分で釈放に。自分が襲われた晩に鬼島宅でテレビ画像が乱れたことを警察の町田警部(小林昭二)に告げ、それが警察の今回の事件の聞き込みと一致したことから、犯行時にテレビ画面を乱すほどの強力な電波が出ていることが判明、調べてみると、その電波の発信源は竹彦の家だった―。

「怪奇大作戦」 岸田森(1939-1982)・勝呂誉
怪奇大作戦.jpg怪奇大作戦 suti-ru.jpg 「怪奇大作戦」は円谷プロダクションが制作し、TBS系で1968(昭和43)年9月から1969(昭和44)年3月まで毎週日曜日19:00-19:30に全26話が放送された、SRI(科学捜査研究所)の活躍を描いた特撮テレビドラマ。2007年にNHKデジタル衛星ハイビジョンで「怪奇大作戦 セカンドファイル」(全3回)、2013年にNHK-BS2で「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」(全4回)としてリメイク放映されて、この間BS-2などでオリジナルの再放映もされています。オリジナルは最初の方、回が浅い間はやや方向性がバラバラだったような感じでしたが、この第7話「青い血の女」辺りになると、大体定まってきたかなという感じでした。

青い血の女 1.jpg サラリーマン、三沢、女性を襲ったのは《殺人人形》で、早くから画面に登場しますが、これは完全に機械仕掛けのからくり人形。その殺人人形を操っているのは誰なのか。ラストで警察が竹彦の部屋に踏み込む際に、竹彦は、ここには4歳の女の子がいるだけだと拒みますが、そこで彼らが見たものは―。

青い血の女2.jpg う~ん。竹彦は、自分を見捨てていく子どもたちの代わりに《女の子》を作って(高額の特許料で生活しているようだから発明家なのだろう)これを偏愛していたけれど、その《女の子》が老人である竹彦に代わって老人を見捨てる者を襲っているうちに"彼女"も自我を持つようになるとともに成熟し、竹彦から自由になりたいと考え、「あたしも老人を捨てて独立するの。だから、あたしも殺さなきゃ...」ということで"自殺"することになるわけか。なかなか凝ったレトリックだったなと思います。

青い血の女 sri.jpg 「青い血の女」というタイトルから成熟した女性が出てくると思われがちですが、結局"自我を持った人形"だったわけで(老人の少女愛、人形愛というのは川端康成っぽい?)、但し、自殺して「血を流した」という意味においては半ば"人間"であり、しかしながら「血が青かった」という意味では"人間"ではなかったという、こうしたレトリックにおいても、シリーズの中では佳作とされるべきものではないかと思います。

 「孤立する老人」の問題を早期に取り上げたことによっても傑作エピソードとされていますが、エピローグで三沢、的矢(原保美)、牧(岸田森)、野村(松山省二)、さおり(小橋玲子)といったSRI(科学捜査研究所)の面々がそうした"世評風に"事件を振り返っている一方で、この「怪奇」を科学的にどう説明するかということについては「科学捜査研究所」であるのに誰も追及しないとうのが違和感ありますが、「怪奇」を暴かず、「怪奇」は「怪奇」のままにしておくというのが、この辺りで確立されたこのシリーズの「方向性」だったと言えるかと思います。
        
恐怖劇場アンバランス title2.jpg死体置場(モルグ)の殺人者.jpg この「青い血の女」は大井武蔵野館で観ましたが、併映作品の1つに「恐怖劇場アンバランス(第9話)死体置場(モルグ)の殺人者」('73年/フジテレビ、長谷部安春監督)がありました。「恐怖劇場アンバランス」は円谷プロが「怪奇大作戦」に続いて制作した本格オムニバスホラーの1時間ドラマで、「ウルトラQ」の企画時のタイトルだった「ア恐怖劇場アンバランス title.jpgンバランス」を冠しており、「怪奇大作戦」のSRIのようなレギュラーメンバーがおらず「ウルトラQ」のようなスタイルで、内容的には「怪奇大作戦」にも増して大人向けの色合いが濃くなっています。内容が過激で、台本の段階かそれ以前でストップし放映されなかったものが幾つかあり、おおよそ3年のお蔵入り期間を経て放映された13話のうち、制作No.7まではオリジナル脚本によるホラー路線で、制作No.8以降は原作付きのサスペンスに路線変更しています(放映順は制作順と異なる)。その原作者というのが、円地文子、西村京太郎、松本清張、山田風太郎、仁木悦子、樹下太郎といった錚々たるメンバーで、監督も、まだ巨匠扱いされる以前の鈴木清順、藤田敏八、神代辰巳、黒木和雄あたりだったりします。また、作り手として知られる人たち(大和屋竺、蜷川幸雄、唐十郎)が主演俳優として出演しているのも、今観ればレア感があります。

1死体置場(モルグ)の殺人者1.png21死体置場(モルグ)の殺人者.png この第9話「死体置場(モルグ)の殺人者」(制作No.3)のあらすじは―
 雨の降る夜道、医大助教授の水上(久富惟靖)は、インターン生の愛人・小野寺涼子(西尾三枝子)を乗せた車を運転中、誤って村田(向精七)をはね殺してしまう。教授への昇進を控え、さらには将来の医学部長を目指す水上は、事実をもみ消すため死体を大学へ運び、死体保存用のホルマリンのプールへと沈める。愛人と一緒だっため、大学の医学部長の娘である妻(中原早苗)にもそのことを隠すが、村田はゾンビとなって水上の前に現れる―
i死体置場(モルグ)の殺人者s.jpg第9話 死体置場(モルグ)の殺人者1.jpg というもので、背景が「白い巨塔」('66年/大映)みたいで、水上と涼子(演じるのは元「プレーガール」メンバーの西尾三枝子)のベッドシーンもあったりして、完全に大人向けになっています。ゾンビなった村田が脱がされた背広をまた着直しているし(結局、水上の妄想か。但し、ゾンビ村田は涼子の前にも現れるし、更には自宅にも)、包帯ぐるぐる巻きになって家に帰ったのに、村田の妻が「あなたどうしたの?」程度にしか驚かないし(これは人が死ぬ前に近しい者の前に現れるという超常現象か)、野坂昭如(特別出演)演じる、水上の教授昇進祝いに水上宅に来ていた友人「第9話 死体置場(モルグ)の殺人者 0.jpg坂野」が、唐突に死体が甦る話をし始める(しかもセリフ棒読み)違和感など、突っ込みどこ第9話 死体置場の殺人者 野坂.jpgろは多いですが、怪奇モノ(怪談×モダンホラー)としてはオーソドックスだったでしょうか、いや、オーソドックスと言うより"ベタ"と言うべきか。あくまで今観て思うことで、リアルタイムで見ていた頃は結構怖がって観ていたかもしれません(そのことを加味して、星半分オマケ)。

西尾三枝子(涼子)/野坂昭如(坂野)

西尾三枝子(1947年生まれ)映画「砂の上の植物」(1964)/「サインはV」(1970)/「プレイガール」(1970-74)
西尾三枝子 砂の上の植物群9 - コピー.png 西尾三枝子 サインはv.jpg プレイガール nisiuo.jpg
 
 
怪奇大作戦2 [VHS].jpg大井武蔵野館.jpg「怪奇大作戦(第7話)/青い血の女」●制作年:1968年●監督:鈴木俊継●監修:円谷英二●制作:円谷英二●脚本:若槻文三●特技:高野宏一●音楽監督:山本直純●音楽:玉木宏樹●出演:勝呂誉/原保美/岸田森/松山省二/小橋玲子/小林昭二/山中紘/浜村純●放送:1968/10/27●放送局:TBS●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「恐怖劇場アンバランス(第9話)死体置場(モルグ)の殺人者」(長谷部安春)/「ウルトラQ/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦/死神の子守歌」(実相寺昭雄)
 
怪奇大作戦2 [VHS]
      
1  死体置場(モルグ)の殺人者.png「恐怖劇場アンバランス(第9話)/死体置場(モルグ)の殺人者」●制作第9話 死体置場(モルグ)の殺人者111.jpg年:1969年(制作№3)●監督:長谷部安春●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクシ小野寺涼子を演じた西尾三枝子.jpgョン/フジテレビ●脚本:山浦弘靖●音楽:冨田勲●出演:久富惟靖/西尾三枝子/向精七/渥美国泰/柳川慶子/高杉哲平/熊倉重之/鈴木勇作/小池泰光/酒井郷博/宮島邦継/斉藤リカ/倉石和第9話)/死体置場(モルグ)の殺人者」n.jpg旺/野坂昭如(特別出演)/中原早苗/高橋幸雄●放送:1973/03/05●放送局:フジテレビ●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「怪奇大作戦(第7話)/青い血の女」(鈴木俊継)/「ウルトラQ/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦/死神の子守歌」(実相寺昭雄)
 
野坂昭如[右](特別出演) 
 
 
 
 
怪奇大作戦 sri.jpg怪奇大作戦 TITLE.jpg「怪奇大作戦」●演出:飯島敏宏/円谷一/実相寺昭雄/ 鈴木俊継/小林恒夫/安藤達己/長野卓/仲木繁夫/福田純/満田かずほ●制作:円谷英二●脚本:上原正三/金城哲夫/佐々木守/若槻文三/市川森一/福田純/高橋辰雄/藤川桂介/田辺虎男/石堂淑朗/山浦弘靖●音楽監督:山本怪奇大作戦 .jpg直純(主題歌「恐怖の町」作詞:金城哲夫/作曲:山本直純/歌:サニー・トーンズ)●出演:勝呂誉(三沢)/岸田森(牧)/原保美(的小川さおり(小橋玲子).jpg矢)/松山省二(野村)/小橋玲子(小川)/小林昭二(町田)●放映:1968/09~1969/03(全26回)●放送局:TBS

小橋玲子(小川さおり役)

怪奇大作戦 DVD-BOX 上巻【DVD】

「怪奇大作戦」(全26話)放映ラインアップ
放送日 話数 制作 No. サブタイトル 脚本 監督 特殊技術
1968年
9月15日 1 3 壁ぬけ男 上原正三 飯島敏宏 的場徹
9月22日 2 1 人喰い蛾 金城哲夫 円谷一 的場徹
9月29日 3 2 白い顔 金城哲夫/上原正三 飯島敏宏 的場徹
10月6日 4 4 恐怖の電話 佐々木守 実相寺昭雄 大木淳
10月13日 5 5 死神の子守唄 佐々木守
10月20日 6 6 吸血地獄 金城哲夫 円谷一 的場徹
10月27日 7 8 青い血の女 若槻文三 鈴木俊継 高野宏一
11月3日 8 7 光る通り魔 上原正三/市川森一 円谷一 的場徹
11月10日 9 9 散歩する首 若槻文三 小林恒夫 大木淳
11月17日 10 11 死を呼ぶ電波 福田純 長野卓 的場徹
11月24日 11 10 ジャガーの眼は赤い 高橋辰雄 小林恒夫 大木淳
12月1日 12 13 霧の童話 上原正三 飯島敏宏 的場徹
12月8日 13 12 氷の死刑台 若槻文三 安藤達己 高野宏一
12月15日 14 14 オヤスミナサイ 藤川桂介 飯島敏宏 的場徹
12月22日 15 15 24年目の復讐 上原正三 鈴木俊継 大木淳
12月29日 16 16 かまいたち 長野卓 高野宏一
1969年
1月5日 17 17 幻の死神 田辺虎男 仲木繁夫 的場徹
1月12日 18 18 死者がささやく 若槻文三 的場徹
1月19日 19 19 こうもり男 上原正三 安藤達己 大木淳
1月26日 20 20 殺人回路 市川森一/福田純 福田純 佐川和夫
2月2日 21 22 美女と花粉 石堂淑朗 長野卓 的場徹
2月9日 22 21 果てしなき暴走 市川森一 鈴木俊継 佐川和夫
2月16日 23 24 呪いの壺 石堂淑朗 実相寺昭雄 大木淳
2月23日 24 23 狂鬼人間 山浦弘靖 満田かずほ 的場徹
3月2日 25 25 京都買います 佐々木守 実相寺昭雄 大木淳
3月9日 26 26 ゆきおんな 藤川桂介 飯島敏宏 佐川和夫

円谷プロダクション 『円谷プロ全怪獣図鑑』 (2013/06 小学館)
円谷プロダクション監修 円谷プロ全怪獣図鑑0.jpg

恐怖劇場アンバランス Blu-ray BOX」(2016年リリース)
恐怖劇場アンバランス 1973.jpg
「恐怖劇場アンバランス」●監督:鈴木清順/藤田敏八/長谷部安春/山際永三/神代辰巳/森川時久/黒木和雄/満田かずほ/鈴木英夫/井田探●監修:円谷英二●特撮:佐川和夫●制作年:1969年8月~1970年4月●制作:円谷プロダクション/フジテレビ●脚本:田中陽造/小山内美江子/若槻文三/市川森一/山崎忠昭/滝沢真里/満田かずほ(禾+斉)/山浦弘靖/上原正三●音楽:冨田勲●解説:青島幸男●放映:1973/01~04(全13回)●放送局:フジテレビ

「恐怖劇場アンバランス」(全13話)放映ラインアップ
話数 制作No. サブタイトル ☆原作 脚本/監督
第1話 10 木乃伊(ミイラ)の恋 ☆円地文子 田中陽造/鈴木清順
第2話 7 死を予告する女 小山内美江/藤田敏八
第3話 9 殺しのゲーム ☆西村京太郎 若槻文三/長谷部安春
第4話 6 仮面の墓場 市川森一/山際永三
第5話 5 死骸(しかばね)を呼ぶ女 山崎忠昭/神代辰己
第6話 11 地方紙を買う女 ☆松本清張 小山内美江子/森川時久
第7話 12 夜が明けたら ☆山田風太郎 滝沢真理/黒木和雄
第8話 8 猫は知っていた ☆仁木悦子 満田穧(かずほ)/満田穧
第9話 3 死体置場(モルグ)の殺人者 山浦弘靖/長谷部安春
第10話 13 サラリーマンの勲章 ☆樹下太郎 上原正三/満田穧
第11話 2 吸血鬼の絶叫 若槻文三/鈴木英夫
第12話 1 墓場から呪いの手 若槻文三/満田穧
第13話 4 蜘蛛の女 滝沢真里/井田 探

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ラロジエールに娘が...太すぎるサイドストーリー。面白かったが、改変の一部がやや気に入らない。

Épisode 5 鳩の中の猫.jpg鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ0.jpg 鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ2.jpg
Les Petits Meurtres d'Agatha Christie Épisode 5 : Le chat et les souris(鳩のなかの猫)

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ3.jpg 森で身元不明の女性の遺体が発見される。遺体に着衣はなく、頭を砕かれていた。時を同じくして、森の近くの女子寄宿学校では、学生達が休みから学校に戻ってきた。新任の教師も集まり、学校は活気を取り戻していた―。

 ポワロやミス・マープルに代わって、ラロジエール警視とランピオン刑事のコンビが事件を解決していく「フレンチ・ミステリー」の2010年の作品(第5話)で、2011年9月に「AXNミステリー」で放映されました(女性の全裸死体をそのまま映すところがフランスのTVっぽい?)。

鳩のなかの猫 クリスティ文庫.png 原作は1959年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品で、原題「Cat among the Pigeons」は、女生徒(鳩)達の園である学園に殺人者(猫)が紛れ込んでいるという意。中東の王国で起きた革命騒ぎのさなか、莫大な価値をもつ宝石が消えうせ、一方、ロンドン郊外の名門女子校で新任の体育教師が何者かに射殺されるのですが、ふたつの事件には実は関連があったという話です。

 原作で最後に事件を解決するのはポワロですが、そのポワロは原作を読み始めて3分の2を過ぎないと出てきません。原作に比較的忠実に作られているとされている英国ITVデヴィッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」シリーズでも、この原作の映像化作品(第59話/2008年製作)では、ポワロを最初から登場させたり、登場人物の一部を端折ったりしていました。

クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫.jpg "改変の妙"が売りのこの「フレンチ・ミステリー」シリーズですので、この作品も、新学期から学校に転入してきた革命があった国の王女と、国王から宝石を託された男性の姉の娘(同じくこの学校の生徒)を同一人物にしたりしています(原作では王女はニセモノだったけれど、この作品ではホンモノになっている!)。

 更に、事件解決の鍵となる宝石の在り処に辿り着く女子校生ジュリエット(原作ではジュリア)の母親は、原作ではトルコにのんびりバス旅行に行っている有閑マダム(実は昔諜報機関にいた)になっていますが、ここでは学校の寮母と同一人物になっていて、寮母の娘であるジュリエットはその関係で、庶民でありながら上流階級の子女が集うこの学校に入学が許されたことになっています(従って、学校で高慢ちきでイヤミな女子学生からイジメを受けている。但し、寄宿寮で同室の王女とは仲良し)。

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ1.jpg でも、何よりの改変は、ジュリエットの母親である寮母とラロジエール警視は昔一夜を共にしたことがあり、実は彼女の娘ジュリエットはラロジエールの娘でもあったという―このもの凄い改変が、それまで娘がいることを知らなかったラロジエールと、父親を知らなかった娘の出会いの物語という、太いサイドストーリーを形成しています(太過ぎる!)。

 「テニスラケットの入れ替え」などは原作を踏襲していてそれなりに面白かったですが、原作の犯人は宝石狙いだったのに、ここではそれに加えて、中東国で国王を殺害したことになっていて、最後、王女が剣でブスリと父の仇を討つという、ややぶっ飛び過ぎの結末。「目には目を歯には歯を」はかつてのイスラム圏の話で、フランスだと一応は殺人罪が適用されると思うのですが、何となく目出度し目出度しで終わってしまったような...。

 ラロジエールとジュリエットの父娘の別れは切ないけれど、そんなに裕福ではない母子家庭に対し、ラロジエールには今後しばらくは養育費を送り続ける義務が発生しているのではないかなあ、などと考えてしまいます。

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ.jpg鳩の中の猫.jpg 原作では、女子校の校長は立派な人物で、彼女の教育観には原作者クリスティの教育観が織り込まれていますが、ここでは、頑なに学校の名誉にこだわる石のような女性にキャラクター改変されていて、全体として面白Flore Bonaventura.jpgかったなりにも、この改変が個人的にはやや気に入らず、評価は「△」としました。

「クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/LE CHAT ET LES SOURIS●制作年:2010年●本国放映:2010/9/8●制作国:フランス●監督:エリック・ウォレット●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・ コルッチ/Flore Bonaventura/Stéphane Caillard/Isabelle Candelier/Marilyne Canto●原作:アガサ・ クリスティ●日本放映:2011/09●放映局:AXNミステリー(評価:★★★)

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ポアロが出てくるのは後の方だけれど、やはりポアロ物らしい傑作。

鳩のなかの猫 ポケミス.jpg 鳩のなかの猫 hm文庫.jpg 鳩のなかの猫 クリスティ文庫.png  鳩のなかの猫 dvd.jpg「名探偵ポワロ 41」
鳩のなかの猫 (1960年) (世界ミステリシリーズ)』『鳩のなかの猫 (1978年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)』『鳩のなかの猫 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』「名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 3」(2010)

 中東のラマット国での革命勃発当日、アリ・ユースフ国王は、自分が生き延びられなかった場合に備え、一族伝来の巨額の価値を持つ宝石を国外へ持ち出すよう、英国出身の親友ボブ・ローリンスンに託す。ボブは、自分は国王の国外脱出行に同行するため、別の誰かに宝石を託そうとするが、姉のジョアン・サットクリフが娘ジェニファーの肺炎の療養のため当地に滞在し、やがて英国へ戻ることになっているのに目をつける。そのジェニファーが通うロンドン郊外の名門女子校メドウバンクは、新たに夏季学期を迎えていたが、新任の体育教師が何者かに射殺されるという事件が起きる。その学校には、今学期からラマット国の国王の従妹であるシャイスタ王女が転入してきたところでもあった。莫大な価値を持つ消えた宝石の謎と、名門女子校で起きた体育教師殺害事件には何か関連があるのか―。

鳩のなかの猫 原著.jpg 1959年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品で、原題「Cat among the Pigeons」は、女生徒(鳩)達の園である学園に殺人者(猫)が紛れ込んでいるという意。ポワロ物ですが、ポワロが登場するのは、メドウバンクの生徒で知人の娘であるジュリアが彼に相談を持ち込んできてからで、これが全体の3分の2を過ぎてからということもあって、今一つポワロ物という印象が薄かった作品でした(作家の浅暮三文氏もハヤカワ・クリスティー文庫の解説で、ポワロは「友情出演」の感が強いとしている)。でも今回読み直してみて、ラストの畳み掛け感は素晴らしく、やはりポワロ物らしい傑作ではないかと感じました。

Cat Among the Pigeons Dust-jacket illustration of the first UK edition

 冒頭の中東のラマット国での革命の話は、作者の政治的冒険譚風の初期作品の雰囲気もありますが、これはポアロ物では全33の長編の内の第28長編とのことで、かなり後の方。実は1958年に起きたイラン革命をモチーフにしているとのことで、その頃の作者は、遺跡の発掘作業のため毎年のようにイラクに赴いていた考古学者である夫に随行して当地を訪ねていたとのことです。また、メドウバンク校のモデルは、作者の娘が通っていた全寮制の女子予科校だそうです。そうしたこともあって作者にとっても愛着があるのか、この作品は作者の自選ベスト10にも入っています。

 第2の殺害事件が起き、ポワロが捜査に乗り出してからも第3の殺害事件が発生するなど、相変わらず殺人事件に"事欠かない"状況ですが、「3連続殺人」でしかも被害者は同じ学校の女教師ばかりというというのが、振り返れば、推理をミスリードさせる1つのポイントでした。ミステリ書評家の濱中利信氏は、この作品を傑作としながらも、物語の視点が一定していない、探偵役が不在である、犯人がアリバイ不在の状況の中で犯行を犯すとは考えにくい等ミステリとしての欠点も指摘しています。個人的にもその辺りが、星5つまでには至らない理由でしょうか。但し、中盤部分の探偵役は、ジェニファーとテニスラケットを交換したことから宝石の在り処に辿り着いたジュリアでしょう。

 嫌な人物も多く出ていますが、国王とボブの厚い信頼に基づく友情から始まって、国王が密かに結婚していた女性が、宝石の受け取りを拒否し、更に、その1つを、宝石の在り処を突き止めたジュリアに贈ることを言付けるなど、清廉な人物も登場し、読後感は悪くありません(メドウバンクの校長オノリア・バルストロードも立派な人物)。

鳩のなかの猫 ドラマ.jpg 英国LWT(London Weekend Television)制作・デヴィッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」シリーズで、第59話(本国放映2008年)として映像化されていますが、ポワロがなかなか登場しないのではマズイと思ったのか、原作の冒頭にあるメドウバンクの新学期が始まる場面からポワロが登場します(引退を考えている校長オノリアが、自分の後継者の人選にあたり、人間洞察に優れたポワロの助言を求めたという設定。原作ではポアロは、女生徒ジュリアの母親を介して学園と繋がるが、校長のオノリアとは直接面識がなく、初めて会う直前はやや警戒気味。但し、会ってから後はオノリアの人格者ぶりに感心する)。

鳩のなかの猫 ドラマ2.jpg ポワロが女生徒らの只中にいたりする場面は原作には無く、また、第2の殺人事件の被害者ヴァンシッタートをカットし、被害者を別の人物に変更しています(但し、結末の整合性は保っている)。更には、宝石の1つがジュリアに贈られることになったエピローグで、ポアロがわざわざキャンディドロップに混ぜて、この中に1つだけ固いキャンディがある、なんて言って彼女に贈るのも、原作でのポワロの登場時間の少なさを補うTVドラマ版のオリジナル。但し、時間を遡ったりしてはいるけれども、大筋では原作のプロットに忠実であり、原作の持ち味は活かしていたと思います(「IMDb」のレーティングは8.0という高ポイント)。

鳩のなかの猫 dvd2.jpg「名探偵ポワロ(第59話)/鳩のなかの猫」●原題:AGAHTA CHRISTIE'S POIROT SEASON11: CAT AMONG THE PIGEONS●制作年:2008年●制作国:イギリス●本国放映:2008/09/21●監督:ジェームス・ケント●脚本:マーク・ゲイティス●時間:94分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ) /ハリエット・ウォルター(バルストロード) /アマンダ・アビントン(ブレイク) /エリザベス・バーリントン(スプリンガー) /アダム・クローズデル(アダム) /ピッパ・ヘイウッド(アップジョン夫人) /アントン・レッサー(ケルシー警部) /ナターシャ・リトル(アン) /キャロル・マクレディ(ジョンスン) /ミランダ・レーゾン(ブランシュ) / クレア・スキナー(アイリーン) /スーザン・ウールドリッジ(チャドウィック) /ロイス・エドメット(ジュリア) /アマラ・カラン(シャイスタ王女) /ケイティ・ルング(スイ・タイ) /ジョー・ウッドコック(ジェニファー)●日本放映:2010/09/14●放映局:NHK‐BS2(評価:★★★☆)名探偵ポワロDVDコレクション 20号 (鳩のなかの猫) [分冊百科] (DVD付)

Épisode 5 鳩の中の猫.jpg鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ0.jpg 「クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫」 (10年/仏) ★★★

【1960年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(橋本福夫:訳)]/1978年文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(橋本福夫:訳)]/2004年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(橋本福夫:訳)]】

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ラストまで飽きさせない展開である上に、諸々のもやもやが最後一度にスッキリする。

第13話/ラドフォード家の遺産 dvd.jpg 第13話/ラドフォード家の遺産 dvd.jpg 第13話/ラドフォード家の遺産.jpg
Inspector Morse: Sins of the Father [DVD] [Import]」(ラドフォード家の遺産)

第13話/ラドフォード家の遺産 01.jpg 150年もの歴史を誇るラドフォード醸造社の社長トレヴァー(アンディ・ブラッドフォード)が酒樽の中で死体で見つかる。ライバル企業からの買収問題に揺れるラドフォード家では、自立再建派の被害者と会社売却派の弟スティーブン(ポール・シェリー)との間に確執があり、更にスティーブンは、元秘書の妻を差し置いて、兄トレヴァーの妻ヘレン(キム・トンソン)と親密状態にある。兄の死によって新社長となり、会社を売却の方に舵を切るかに思えたスティーブンだったが、彼もまた殺害され、酒樽の中で見つかる。息子2人を亡くしたチャールズ(ライオネル・ジェフリーズ)とその妻イザベル(イザベル・ディーン)が、会社の自立再建か売却かを決める重役会議を召集する。一方、トレヴァーの秘書ゲイルは、鉄道オタクの薬剤師ブリースと交際しているが、モースが事件を探る中で、ブリースとその母親は、ラドフォード社の創業に纏わる秘密があるらしいことが判る。そして、その秘密を知っているらしい弁護士ネルソンも殺害されてしまう―。

第13話/ラドフォード家の遺産 vhs.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第13話で、1990年に本国で放映され、2000年に日本語字幕付きVHSが発売されています。原題は「父親たちの罪」の意。監督は、「シャーロック・ホームズの冒険(第25話)/四人の署名」 ('78年/英)などのピーター・ハモンド。

Inspector Morse - Sins of the Father [VHS] [Import]

 関係者が揃って口をつぐむため、モースは皆何か隠していると訝しみ、やや不機嫌そう。事件解決には相当に難儀しましたが、第1・第2の犯行(兄弟の殺害)と、第3の弁護士の殺害が密接に関係しているとの見当をつけながらも、両事件の犯人を切り離して考えることで犯人逮捕に至り、事件は一件落着したかに―しかし、モースは何となく腑に落ちない...。

 一旦は事件が解決したように見えた後で、部下の部長刑事(ここではルイス)の何気ない言葉から真相に気づくというのは、「バーナビー警部(第47話)/消えないセピア色」('06Ye Olde Fighting Cocks, St Albans, Herts, UK - The Sins of the Fathers (1990).jpg年/英)にもあります。ルイスの言葉遣いは庶民派で、弁護士の事務所にかかってきた犯人からと思われる電話の言葉遣いは上流階級のものだったということなのでしょう(その違いから閃いた)。鉄道オタクの薬剤師(それにしてはモデルのような美人の黒人の恋人がいる)の母親の言葉遣いは"庶民派"であり、よって犯人ではなく、実は母親は、第3の犯行が息子の仕業だと思って彼を庇ったのでした。

Ye Olde Fighting Cocks, St Albans, Herts, UK - The Sins of the Fathers (1990) in Movie Location

 トレヴァーが持っていた「会社の評価額が高すぎる」という殺害される直前に3年前の日付で書かれた手紙の意味がずっと謎であり(売却反対派の彼ならば、その逆のことを言うのが自然である)、観ていて理解できなかったのが、最後にその謎が氷解する展開も見事で、ラストまで飽きさせない展開である上に、諸々のもやもやが一度にスッキリするという、「IMDb」のレーティングが7.8と、前作「邪悪の蛇」の8.0に続いてある程度高いのも頷けるエピソードでした。
Lisa Harrow
Lisa Harrow.gif スティーブンの妻(リサ・ハーロウ)が、夫とは躰だけの関係で結婚したと割り切って、ラドフォード家の人々には愛想をつかしながらも、自宅室内プールでオペラ「椿姫」を聴きながらスイミングに勤しみ、ナイスボディだけは維持しているというのがなかなか良かったです(義姉に自分の夫を「貸し出してもいいのよ」と言う発想がスゴイね。体力ありそうだし、一時、彼女が真犯人ではないかと...)。まあ、彼女にはラドフォード家の遺産相続人である2人の子供もいるわけだし、伝統を重んじ(カネへの執着もさることながら、それ以上に)不名誉を嫌うラドフォード家の人々の価値観の方に尋常ならざるものInspector Morse Sins of the Fathers [Audiobook].jpgがあるわけで、彼女が愛想をつかすのも無理はないといったところでしょうか(但し、彼女にとっても財産は魅力的であるが故に、こうした割り切り方になるわけか。納得)。

「主任警部モース(第13話)/ラドフォード家の遺産」●原題:INSPECTOR MORSE:THE SINS OF THE FATHERS●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/10 ●監督:ピーター・ハモンド●脚本:ジェレミー・バーナム●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アンディ・ブラッドフォード/イザベル・ディーン/サイモン・スレイター/リサ・ハーロウ/カミラ・エインズリー/キム・トンソン●VHS発売:2000/11●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)

Inspector Morse: Sins of the Fathers [Audiobook] [Audio Cassette] (1993)

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次々と入れ替わる「第一容疑者」。シリーズの中でも傑作の部類ではないか。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 dvd.jpgTHE INFERNAL SERPENT.jpg 主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 0.jpg
Inspector Morse Set Four - The Infernal Serpent [DVD] [Import]」/「Inspector Morse: Infernal Serpent Set [DVD] [Import]」(The Infernal Serpent(邪悪な蛇)/The Sins of the Fathers/Driven to Distraction/Masonic Mysteries/Second Time Around/Fat Chance)

THE INFERNAL SERPENT2.jpg ある雨の夜、ボーフォートの学内討論会「環境問題は党派政治を超えるか」に学寮長のマシュー(ジェフリー・パルマー)と参加しようとしていたディア博士(デヴィッド・ニール)が、忘れ物を取りに戻った際に何者かに襲われ死亡し、学寮長は現場から逃げ去った若者とぶつかって負傷する。博士の直接の死因は心臓発作だったが、討論会での問題発言を阻止しようとした何者かの仕業なのか? 学寮長は化学肥料会社に投資して利益をあげていたが、その会社は環境問題を引き起こして問題になっていた。その告発記事を書いた「日曜新聞」の記者シルヴィ(チェリル・キャンベル)は学寮長の養女であり、今度の事件後に公邸を訪れ、家族に煙たがられながらも取材のため滞在していた。学寮長夫妻の娘イモジェン(イレーネ・リチャード)はかつて心に傷を負って大学を中退し、今は結婚して夫と厩舎を営んでいたが、今も神経を病んでおり、その原因は定かでない。学寮長の妻ブランチ(バーバラ・リー=ハント)は元ピアニストで、以前は庭師フィルの娘アマンダも彼女にピアノを習いに来ていた。モースは、学寮長の公邸に何度か届いた嫌がらせの小包と事件との関連を疑う一方、学寮長が事件の際に目撃した若者ミックに辿り着いて身柄を確保するが、彼は、自分が博士の傍に行った時には彼は既に死んでいたと言う。ミックと同性愛関係にあり、彼を匿っていた数学者のジェイク(トム・ウィルキンソン)はアメリカに高飛びし、ミックの部屋は何者かによって放火される。モースが、末期がんで入院中のミックの母親を病院に訪ねた際に、逃げ去る不審者を見つけて追跡するが捕り逃がしてしまう―。

 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第12話で、1990年に本国で放映され、2000年に日本語字幕付きVHSが発売されています。TV用のオリジナル脚本ですが、「IMDb」のレーティングは8.0という高ポイントとなっており、実際、よく出来ていたと思います。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 2.jpg 今回は「倒叙法」できたのかと思わせるぐらい、冒頭から不審な素振りを見せる人物が出てきて、実は博士は学寮長と間違えられて殺害されたのではないかとのモースの見方が出てきた以降は、「第一容疑者」が目まぐるしく入れ替わる展開。モースも事件の展開に振り回され放しという感じの中、当の学寮長までも殺害されてしまいます。

 最後に、過去の"邪悪"な出来事が、様々のヒントや当事者の証言から浮かび上がり、モースは学寮長殺害の真犯人にようやっと行き着いたようですが、この学寮長は、誰によって殺害されてもおかしくない人物だったなあと(モースはシルヴィとイモジェンの写った古写真から手掛かりを得るが、その後も、真犯人が誰だったかということについての意外性は十分あった)。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 パブ.jpg 一方のルイスは、現場に残された嘔吐物の分析に執心し、モースが相変わらずパブにちょくちょく立ち寄っては推理を纏めようとしているところへ、ビールを飲んでいるモースに向かってゲロの内容物の話ばかりするため、さすがにモースは嫌な顔をしますが、結局、このルイスの"ゲロへの執着"が、捜査が行き詰ったことに加え、上層部からの圧力もあって事件解明を諦めかけていたモースを、博士殺害の真犯人に導きます。

 しかし、学寮長殺害犯も博士殺害犯も、モースが真犯人に行き着く前に最後自ら犯行を認めた感じでもあり、ブランチがミルトンの『失楽園』の一節から引いた「家の中には邪悪な蛇がいた」という言葉は重く感じられ、一方、酔っぱらって復讐犯行に及ぶ際は、相手を間違えないように注意しなければネ、とも思ったりして...。結果として、別人物がその目的を果たしたことになりますが、主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 vhs.jpgそうしたこともあって、博士の死因は心臓発作にして、どのみち余命僅かだったことにしたわけか(高潔な人物だったという博士には気の毒だったが、殺人罪にはならないわけだ)。

 モースは不審者を追って走り回ったり、自殺しようとする犯人を説得したりと、シリーズとしてはやや珍しい側面も見せますが、パターンから外れ過ぎているという印象はさほど無く、むしろ結末はシリーズらしい余韻を残すものであり、「IMDb」のレーティング"8.0"は伊達ではなく、シリーズの中でも傑作の部類ではないかと思います。

 大学の構内で、考え事をしながら歩いているモースとすれ違ったのが、コリン・デクスターか。モースが、ふと振り返り気味に視線を遣って、「他人の空似か」みたいな表情をチラっと見せた後にまた思索に戻るのがご愛嬌でした。

Inspector Morse: Infernal Serpent [VHS] [Import]
 

Audio Book Colin Dexter Inspector Morse Infernal Serpent.jpg「主任警部モース(第12話)/邪悪の蛇」●原題:INSPECTOR MORSE:THE INFERNAL SERPENT●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/03●監督:ジョン・マッデン●脚本:アルマ・カレン●原案:コリン・デクスター●時間:109分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ジェフリー・パーマー/デヴィッド・ニール/チェリル・キャンベル/イレーネ・リチャード/バーバラ・リー=ハント/トム・ウィルキンソン●VHS発売:2000/10●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)
Inspector Morse: Infernal Serpent (Mci Talk Tapes)」(Audiobook [カセット] 1998)

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「犯罪編」と「推理編」の2部構成から成る変則的倒叙法。文庫で約700ページあるが、一気に読める。

黒い福音 1961.jpg黒い福音 角川.jpg黒い福音 新潮文庫0.jpg黒い福音 新潮文庫.jpg 黒い福音 松本清張 Kindle版 .jpg
黒い福音 (1961年)』/『黒い福音』角川文庫/『黒い福音 (角川文庫)』/『黒い福音 (新潮文庫)』/『黒い福音』新潮文庫 Kindle版
「松本清張 黒い福音~国際線スチュワーデス殺人事件~テレビ朝日開局55周年記念」(テレビ朝日 2014年1月17日放送)
0黒い福音国際線スチュワーデス殺人事件.jpg 終戦直後、カトリックの一派バジリオ会所属のグリエルモ教会のルネ・ビリエ神父は、聖書の翻訳作業を行う目的で、江原ヤス子のもとに通っていた。しかし深夜になると、彼女の寝室からすすり泣きや忍び笑いが洩れてくるのだった。ルノーで乗り付けるビリエ神父に加え、ヤス子の家では深夜にトラックが謎の荷物の積み下ろしを行っていて、ヤス子の生活は急速に派手になっていく。ある時、荷物の運搬に携わっていた日本人が警察に密告し、トラックから統制品の砂糖が押収された。刑事が教会を訪れたが、教会を統括するフェルディナン・マルタン管区長は、物資のヤミ商売は日本人が勝手にやったと言い、更に管区長は、ビリエ神父に日本政府の高官夫人を通じて"穏便に解決"するよう手配し、日本人の運搬責任者に"犠牲"になるよう指示する。その後7年が過ぎ、教会は以前にも増して発展、その間に、管区長のやり方に異議を唱えた神父は朝鮮半島の僻地に飛ばされ、代わりにシャルル・トルベックが神父となった。トルベックは純真な神学生であり女性を知らなかったが、日本人女性の信者の間で人気が出て、ビリエ神父と江原ヤス子が親しげに馴れ合う様子を目にしたことを契機に、彼もまた、信者の一人生田世津子と親密になっていく。そんなトルベックに、ビリエ神父から思わぬ指令が下る―。

 「週刊明星」昭和34(1959)年6月号.jpgBOACスチュワーデス殺人事件.jpg 1959(昭和34)年3月に起こったBOACスチュワーデス殺人事件をもとに、フィクションの形で推理を展開した長編小説で、中央公論社から刊行されていた「週刊コウロン」に1959(昭和34)年から翌年にかけて連載され(1959年11月3日号 - 1960年10月25日号)、1961年11月に同社から刊行されています。
「週刊明星」昭和34(1959)年6月14日号

 文庫で約700ページありますが、時間さえ許せば一気に読める面白さで、事件発生までの背景・過程を描いた第1部(犯罪編)と、刑事たちによる捜査を描く第2部(推理編)の2部構成になっていることも、飽きさせない理由の1つかもしれません。

 犯罪編の方は、トルベックが犯行に追い詰められていく背景と経緯が丁寧に描かれていて、こちらの方が全体の6割、推理編が残り4割という比率。従って、大きな括りでは「倒叙型」の推理小説と言えるものの"変則的"であり、例えば「刑事コロンボ」で言えば、ドラマの半ばを過ぎて殺人事件が起きる展開といったところでしょうか。

 事件が起きて間もなくして連載が始まったことから、当時の反響は大きかったと思われますが、今読んでも十分面白く、作者の推理とストーリーの構築力には脱帽させられます。

 個人的には犯罪編の方が面白かったですが、推理編に入っても飽きることはなく、但し、警察は事件の核心に迫りながらも、日本の国際的な立場がまだ弱かったために、キリスト教団の閉鎖的権威主義に屈せざるを得なかった―というほろ苦い結末でした(作者は事件に関する別の推理も展開しており、この作品は、作者が最有力と考える説の1つを小説化したものか)。

 犯罪編ではトルベックの視点から男女の情というものもしっかり描いていて、一方、推理編では、刑事と新聞記者が情報をバーターする場面や、容疑者の唾液から血液型を割り出すためにコーヒーを勧める場面などがあり、こちらも興味深いものでした。

黒い福音 TV宇津井.jpg この作品は1984年にTBSで宇津井健(1931-2014.3.14/享年82)主演でドラマ化されていますが、個人的には未見。先月(2013年1月)テレビ朝日で、ビートたけし、竹内結子主演で再ドラマ化されたものを見ました。

黒い福音 ドラマ 1.jpg こちらは生田世津子が死体で見つかる場面、つまり、原作の推理編から始まり、推理を通して事件を遡っていくという展開となっており、ある意味、"正統派"の倒叙法と言えます。原作の通りにやろうとすると、半分以上が外国人であるトルベックが主人公になってしまうというのもあって、推理編からスタートして、警視庁捜査一課の刑事・藤沢六郎(ビートたけし)を主人公にもってきたといったところでしょう。
テレビ朝日「松本清張 黒い福音~国際線スチュワーデス殺人事件~」(ビートたけし/瑛太/竹内結子)2014/01/17

い福音~国際線スチュワーデス殺人事件d.jpg 藤沢刑事は小説の中にも出てきて捜査の要となりますが、ドラマのように若い刑事を同行させたり、捜査陣と対立したりすることはありません。ドラマの方は、これもまた、「張込み」「点と線」などでこれまで清張作品のドラマ化作でビートたけしが演じた"ビートたけし流の刑事ドラマ"(乃至そうした刑事キャラ)になっているように感じました。役者としてのビートたけしの弱点は、何を演じてもビートたけし風になってしまうことでしょう(今回も、最初に出てきた時から"ビートたけし"で、最後まで"ビートたけし"だった)。


竹内結子(1980-2020/40歳没) 映画「春の雪」(2005年)綾倉聡子 役(ヒロイン)/TVドラマ「真田丸」(2016年) 茶々(後の淀君) 役/映画「決算!忠臣蔵」(2019年)大石りく 役
竹内結子 春の雪2.jpg 竹内結子 真田丸 (1).jpg 竹内 結子 決算忠臣蔵 - コピー.jpg


「黒い福音」t.jpg「松本清張 黒い福音~国際線スチュワーデス殺人事件~テレビ朝日開局55周年記念」●監松本清張 黒い福音~国際線スチュワーデス殺人事件.jpg督:石橋冠●製作:(チーフプロデューサー)五十嵐文郎/(プロデューサー)藤本一彦/池田邦晃/里内英司/中山秀一●脚本:尾西兼一/吉本昌弘●原作:松本清張●出演:藤沢六郎:ビートたけし/瑛太/竹2竹内結子 ビートたけし 黒い福音 インタビュー.jpg内結子/木村文乃/佐野史郎/池内博之/小池栄子/川原和久/阿南健治/スティーブ・ワイリー/ニコラス・ペタス(格闘家)/風吹黒い福音 ビートたけし.jpgジュン/角野卓造/北大路欣也(特別出演)/國村隼/市原悦子/嶋田久作●放映:2014/01/17(全1回)●放送局:テレビ朝日
「ビートたけし・竹内結子「黒い福音」インタビュー」(「ザ・テレビジョン」)


【1964年文庫化[中央公論文庫]/1966年再文庫化[角川文庫]/1971年再文庫化[新潮文庫]/2013年再文庫化[角川文庫(Kindle版)]】

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「インテレクチュアルな好奇心」(五木寛之)を満たす傑作。

点と線―長編推理小説 (1958年).jpg点と線29.JPG 点と線.png 点と線 映画1.jpg
カッパ・ノベルズ(1960/1973) 『点と線―長編推理小説 (カッパ・ノベルス)』映画「点と線」('58年/東映)
『点と線 』.jpg点と線―長編推理小説 (1958年)』[四六版]
    『点と線 (新潮文庫)

点と線 4.jpg松本 清張 『点と線』 新潮文庫.jpg 汚職事件の摘発が進行中の某省の課長補佐・佐山憲一(31)と、料理屋女中・お時(本名:桑山秀子)の死体が九州の香椎海岸で発見される。2人の死は情死との見解が強まるが、佐山の遺留品の中から、東京から九州方面へ向かう特急「あさかぜ」号の中で発行された「御一人様」の列車食堂のレシートが残っていたことに、地元警察のベテラン刑事・鳥飼重太郎が疑問を抱く。警視庁捜査2課の警部補・三原紀一も現地を訪れ、捜査が進む。実務者の佐山は汚職事件の鍵を握る人物であり、検察は佐山に確認したいことが多くあり、また、佐山の死で"利益を得る"上役官僚が複数いた。その中に、汚職事件の中心にある某省の部長・石田芳男(50)がおり、捜査線上に、某省に出入りする機会工具商・安田辰郎が上がる。佐山とお時の間の繋がりが認められず、三原は2人が青酸カリを飲んだ前後の安田の足取りを追う。すると、2人が青酸カリを飲んだ翌日の夜に、安田が仕事で北海道の小樽に行き、そこで取引先の業者と会っていた。東京から青森へ向かう特急列車や、北海道へ渡る青函連絡船でも、安田がいたことの証言や、乗車記録が残っている。2人が青酸カリを飲んだ夜に安田が九州にいることは物理的に不可能に思えたが、航空機を利用すれば、安田が業者に会う前に九州から北海道に着くことが可能なことに三原は気付く。しかし、安田は該当する便に乗っておらず、乗客全員を当たって偽名などがないか裏付けを取るが、全員がその便に乗っていたことが判明し、捜査は難航する―。

点と線 旅.jpg 松本清張(1909‐1992)のあまりに有名な長編推理小説で、雑誌「旅」の1957(昭和32)年2月号から1958(昭和33)年1月号に連載され(挿絵は佐藤泰治)、加筆訂正の上、1958年2月に光文社から単行本刊行されていますが、連載当時は、同時期に「週刊読売」に連載されていた『眼の壁』に比べて反響は少なく、作者自身から「病気のため休載にしてほしい」との申し出が「旅」の編集者にあったのを、編集者が「休載するなら『眼の壁』など、他の全ての連載を休載にしてもらう」と迫ったため、結局休載することなく連載が続けられたとのことです。

東京駅の13番線ホームに立つ松本清張[朝日新聞デジタル]
松本清張00.jpg 東京から博多まで夜行列車で20時間ほどかかった時代の話であることを念頭に読む必要はありますが、安田が、自分が東京駅の13番線プラットフォームで料亭「小雪」の女中2人に見送られる際に、向かいの15番線プラットフォームにお時が男性と夜行特急列車時間の習俗 カッパノベルス.jpg「あさかぜ」に乗り込むところを見たという他の目撃者付き証言に対して、13番線から15番線に停まっている「あさかぜ」を見通せるのは17時57分から18時01分までの4分間しかないことが判り、三原は、逆にこの「空白の4分間の謎」から安田に対する嫌疑が確信に近いものとなり、安田が航空機を使ったのではないかというアリバイのトリックを思い立つ(この"移動"トリックは、'61年発表の『点と線』の姉妹編とも言える時間の習俗でも使われている)という展開は、すんなり腑に落ちるものでした(しかし、この後も多くの推理の壁が三原の前に立ちはだかる)。

点と線 カッパノベルズ2.JPG 今手元にあるのはカッパ・ノベルズの'73(昭和48)年発行版(162版)で、「香椎海岸」や「青函連絡船」など10枚の写真が収められていてシズル感を高めているほか、冒頭には「東京駅構内で取材する松本清張氏」の写真もあります。カッパ・ノベルズとしての刊行部数は92万部で、84万部を売り上げた『ゼロの焦点』と並んで、カッパ・ノベルズの初期の隆盛を支えたことになりますが(部数は1974年7月26日付「夏のカッパ祭り」の新聞広告より。最近までの累計では共に100万部を超える)、『点と線』は『ゼロの焦点』より先に発表されたものの、その時はまだカッパ・ノベルズ創刊前であったため、当初四六版で発行され、『ゼロの焦点』より後からカッパ・ノベルズに入れられています。

五木寛之.jpg また、巻末には、昭和44年に行われた、この作品を巡る荒正人・尾崎秀樹の2人の対談があり、その中で、作家の五木寛之氏が、「松本清張氏はプロレタリアート・インテリゲンチャとして成熟した稀有な例」だとし、「その文学はプロレタリアートの怨念とインテレクチュアルな好奇心をバネとしている」と言っていることを取り上げています(五木寛之氏の"プロレタリアート・インテリゲンチャ"という表現に対して荒正人・尾崎秀樹両氏の間で距離感の違いはあるようだが)。それにしても、当時発行部数7000万部だったカッパ・ノベルズの内1000万部が松本清張作品だったというのはスゴイことだと思いました(荒正人は、夏目漱石の本が明治・大正・昭和の時代をかけて1000万部読まれてきたのに対し、松本清張はこの数字に僅か10年で到達してしまったことを取り上げ、大衆社会の中で"米の飯"のような必需品のような読まれ方をしてきたと指摘している)。

点と線 ラスト.jpg この作品は、『ゼロの焦点』や『砂の器』などの作者の他の代表作に比べると、「インテレクチュアルな好奇心」を満たすウェイトの方が高いように思われ、その点では無駄が少なく、一方、作者が昭和30年代に初めて「社会派推理というジャンルを築いた」という説明の流れの中で紹介される作品としては、"社会派"の部分はやや希薄な印象も受けます。但し、作中で殆ど姿を見せない安田の妻・亮子(最終的には自らの死も心中に見せかけたと推察され、自らも含む2度の"心中偽装"を行ったことになる)の人物造型は、抑圧された女性の怨念を描いて巧みな後の清張作品の、ある種「原点」的な位置づけにあると言えるかもしれません。
映画「点と線」(1958) 監督:小林恒夫

テレビ朝日「点と線」(2007) 監督:石橋冠
点と線 ドラマ0.jpg この作品は、「テレビ朝日」開局50周年記念ドラマスペシャルとして2007年11月24日と25日2夜連続で放送されていますが(2009年には「点と線~松本清張生誕100年記念特別バージョン」として再放映された)、ビートたけしが鳥飼重太郎を演じることで、高橋克典が演じる三原より鳥飼の方が事件解明の中心になっていて、原作では三原は鳥飼から幾つかの示唆を得ながらも自分で事件を解明するのに対し、ドラマでは鳥飼が独断で東京に行き三原と共に、あるいは単独で捜査するよう改変されており、かな点と線 テレビ朝日 1シーン.jpgり原作とは異なった印象を受けました。これまで何度も映像化されているのであればこうした改変もあっていいのかもしれませんが、テレビドラマとしては初の映像化だったので、ストレートに原作をなぞって欲しかった気もします。上司からの捜査中止命令にその場では抵抗しない三原(高橋克典)に対して鳥飼(ビートたけし)が怒りをぶちまけ、両者が殴り合いになるのはやりすぎで(あまりに"ビートたけし"風)、終盤の鳥飼と安田の妻・亮子(夏川結衣)の"直接対決"もドラマのオリジナル。原作を読んでいない人は松本清張がそんな話を書いたのかと思ってしまうのではないかなあ(原作では、鳥飼が三原に捜査を諦めないよう手紙で激励するとともに捜査のヒントを与えるにとどまっているし、安田宅に出向いて安田の妻と直競対峙するといったこともない。完全に、ビートたけしを主役にするための改変である)。


点と線 チラシ.jpg 小林恒夫監督による映画化作品('58年/東映)は、高峰三枝子、山形勲、志村喬といったベテランはともかく、三原刑事役の南廣が映画初出演ということもあり(元々はジャズドラマーだった)、演技がややパターン化したものであったのが、最初に観たときにイマイチだった印象に繋がっています(当点と線.jpg時40歳の高峰三枝子に28歳の役をやらせたのもきつかったか)。また、映像でトリックを解明するとやや複雑に感じられてしまい、原作が『ゼロの焦点』以上にトリックの占めるウェイトが高いものであったことを改めて認識させられるものでした。

映画「点と線」(1958) 監督:小林恒夫/主演:高峰三枝子、山形勲

 しかし、最近DVDで改めて観て、三原刑事役の南廣はある種"語り手"的な役割も果たしているので、むしろ演技過剰にならなくてよかったのではないかとか、高峰三枝子の「女の情念」の演技はさすがで、若い頃貧しくて旅行に行けず、時刻表で"空想の旅"をしていたという松本清張の情念を反映していていたのではないかとか再評価したい面もあって、また汽車の長旅や青函連絡船などが出てくるレトロ感もあって、個人的評価を△から○に変更しました。ラストの方の、心中現場に駆け付けた刑事たちの中に鳥飼刑事(加藤嘉)が居たりするなど、原作と異なる点はありますが、ビートたけしのテレビ版などと比べると、ほぼ原作に忠実に作られているように思いました。

点と線ges.jpg

点と線 映画2.jpg 点と線 映画3.jpg                                  
図1 「点と線」 .png図 2「点と線」 .png
   
図3 「点と線」 .png図4 「点と線」 .png

                                
「点と線」 ポスター.jpg「点と線」 ポスター2.jpg「点と線」●制作年:1958年●監督:小林恒夫●企画:根津昇 ●脚本:井手雅人●撮影:藤井静●音楽:木下忠司●原作:松本清張「点と線」●時間:85分●出演:南廣/高峰三枝子/山形勲/加藤嘉志村喬点と線 志村喬.jpg点と線 加藤嘉.jpg点と線_m.jpg点と線 DVD.jpg三島雅夫/堀雄二/河野秋武/奈良あけみ映画 「点と線」(1958年/東映) .jpg/小宮光江/月丘千秋/光岡早苗/楠トシエ/風見章子/織田政雄/曽根秀介/永田靖/成瀬昌彦/神田隆/小宮光江/増田順二/奈良あけみ/花沢徳衛/楠トシエ●劇場公開:1958/11●配給:東映●最初に観た場所:池袋文芸地下(88-01-23) (評価★★★☆)●併映:「黄色い風土」(石井輝男)/「黒い画集・あるサラリーマンの証言」(堀川弘通)

映画 「点と線 [DVD]」(1958年/東映) 

山形勲(安田商会・安田辰朗)/月丘千秋(「小雪」女中・八重子)/光岡早苗(同・とみ子)/志村喬(警視庁捜査二課係長・笠井警部)/河野秋武(警視庁捜査二課・土屋刑事)/加藤嘉(東福岡署・鳥飼重太郎刑事)     
点と線tentosen03.jpg 点と線tentosen09.jpg
 
 
点と線 ビートたけし6.jpg点と線 ビートたけし.jpg「松本清張 点と線」●監督:石橋冠●制作:五十嵐文郎●脚本:竹山洋●音楽:坂田晃一●原作:松本清張●時間:234分/【特別バージョン】138分●出演:ビートたけし/高橋克典/内山理名/小林稔侍/樹木希林/原沙知絵/大浦龍宇一/平泉成/本田博太郎/金児憲史/名高達男/大鶴義丹/竹中直点と線 テレビ朝日 2.jpg人/橋爪功/かたせ梨乃/坂口良子/小野武彦/高橋由美子/宇津井健/池内淳子/江守徹/市原悦子/夏川結衣/柳葉敏郎/(ナレーション・解説)石坂浩二●放映:2007/11(全2回)/【特別バージョン】2009/08(全1回)●放送局:テレビ朝日
ビートたけし×松本清張 点と線 [DVD]

週刊『松本清張』 1号 点と線 (デアゴスティーニコレクション)」 (2009/10)/『点と線―長篇ミステリー傑作選 (文春文庫)
週刊 松本清張 【創刊号】 点と線.jpg週刊松本清張 点と線.jpg点と線 文春文庫.jpg 【1958年単行本・1960年ノベルズ版・1968年カッパ・ノベルズ改版/1971年文庫化・1993年改版[新潮文庫]/2009年再文庫化[文春文庫]】

点と線 (新潮文庫)
点と線 (新潮文庫)1.jpg 点と線 (新潮文庫)2.jpg 点と線 (新潮文庫),200_.jpg

カッパ・ノベルズ(1973)
『点と線』2 .JPG

《読書MEMO》
● 桂 千穂 『カルトムービー本当に面白い日本映画 1945→1980』['13年/メディアックス]
IMG_3点と線.JPG

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このシリーズ第1作が一番面白く、その後はどんどん大味になっていく。

ダイハード 1988 ちらし.jpg ダイハード 1988 02.jpg ダイハード 1988 05.jpg
「ダイ・ハード」チラシ
ダイハード 1988 01.pngダイハード dvd.jpgダイハード 1988 04.jpg 「ダイ・ハード シリーズ」の中で一番面白かったのはやはり第1作の「ダイ・ハード」('88年)であり、「テロ集団に襲われたロサンゼルスの高層ビル」という設定を生かして、縦のアクションに徹したのが成功した1つの要因だったと思います。
ダイ・ハード [DVD]

ダイ・ハード-04.jpgダイハード 1988 03.jpg ブルース・ウィリス演じるニューヨーク市警マックレーン刑事は、これまでに無かった新たなヒーロー像を産み出した言えるし(その"嘆き節"も受けた)、マックレーンが高層ビル内で孤軍奮闘する状況の中、外部から無線の声だけでサポートする黒人刑官(レジナルド・ヴェルジョンソン)との男同士の見えない絆なども、観客を熱くさせるものがあったと思います。

ダイハード 1988 アラン・リックマン.jpgダイハード 1988 リックマン.jpg また、英ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身のアラン・リックマン(1946-2016/享年69)演じるテロリストも良かったです。アラン・リックマンは「ロビン・フッド」('91年)でもケビン・コスナー演じるロビンの敵役の悪役を演じましたが、半ばコメディ仕立てということもあってか、「ダイ・ハード」で見せたほどの凄味や演技のキレはありませんでした(但し「ロビン・フッド」の演技で英国アカデミー賞助演男優賞を受賞している)。「ダイ・ハード」での好演は、リックマンの落下シーンで事前に打ち合わせていたタイミングより早く彼を落下させ、"素"の驚きの表情を撮るなどした、ジョン・マクティアナン監督の演出の妙にあるのでしょうか(撮影は、後に「スピード」('94年)を監督することになるヤン・デ・ボン)。

 その後「ダイ・ハード2」、「ダイ・ハード3」、「ダイ・ハード4.0」と作られましたが、だんだん質が落ちていったような...。

エルム街の悪夢4.jpg 「ダイハード2」('90年)は、スイス出身で、「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」('88年)を撮ったレニー・ハーリンの監督作です。「エルム街の悪夢」シリーズは'84年から'97年までの間に7作作られいて、ライバルシリーズであった「13日の金曜日」シリーズは'88年から'02年までの間に10作作られています('03年には「フレディ vs ジェイソン」が作られている)。「エルム街の悪夢4」は「フレディ対超能力少女」で、その前に観た「13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた!」('86年)が、"ジェイソン"はコメディアンだったのか?と思えるほど怖くなかったのですが、「エルム街の悪夢4」ダイ・ハード2 1990.jpgにおけダイハード2   .jpgる"フレディ"のコメディアン化は、ジェイソンのそれを上回っているように思えました。そんなこともあって、「ダイハード2」も劇場に行くのをためらわれたのですが、劇場で観たらまあまあの出来だったでしょうか。但し、雪のワシントン・ダレス空港を舞台に(原作はウォルター・ウェイジャー『ケネディ空港/着陸不能』)、旅客機ダイハード2 03.jpgの爆発、滑走路の大火災とスペクタル・シーンが大掛かりになった分だけ主人公のマックレーン刑事がスーパーマン化し、「1」と比べると大味な印象を受けました。レニー・ハーリンは、この後、シルヴェスター・スタローン主演の「クリフハンガー」('93年)を撮っています(「ダイハード2」の終盤のクライマックスシーンでのマックレーン刑事が懐からライターを取り出すところから、彼がまだ喫煙者であったころが窺える)。
ダイ・ハード2 [DVD]」('90年)

ダイ・ハード3.jpg 「ダイハード3」('95年)で監督をマクティアナン、舞台をニューヨークに戻して原点回帰? ニューヨーク市内で突如爆弾テロが発生し、「サイモン」と名乗る犯人は警察に電話し、ジョン・マクレーンを指名する。嫌がらせの様に、黒人達が多く住むハーレムのど真ん中で、「黒ん坊は嫌いだ(I hate Niggers)」というカードを下げさせられたマクレーンは、自身が白人である事も災いし、当然それを見た黒人ギャング達に半殺しにされかける。しかし、その近くで店を経営する黒人の男・ゼウス(サミュエル・L・ジャクソン)に助けられ、それを知り、面白くなかったサイモンの指示によって、2人は行動を共にする事になるというあらすじ。
ダイ・ハード3 [DVD]」('95年)

ダイハード3 ジェレミー・アイアンズ.jpg マクレーンに協力する黒人ゼウスを演じたサミュエル・L・ジャクソン(前年の「パルプ・フィクション」('94年/米)で一気に知名度をアップさせていた)、敵役サイモンを演じたジェレミー・アイアンズと(個人的には「運命の逆転」('90年/米)以来だったなあ)、共に演技達者で、途中まではそれなりに楽しませてくれましたが、途中から主人公のスーパーマン化は前作より更に進行し、最終的には一層大味な作品になってしまいました。

ダイ・ハード4.0 01.jpg その12年後に作られた「ダイハード4.0(フォー)」('07年)では(いきなりマクレーンの娘が出てきた)、不正にネットワークへアクセスするハッカーを利用して、政府機関・公益企業・金融機関への侵入コードを入手したテロリストがライフラインから防衛システムまでを掌握し、サイバーテロによって全米を揺るがすという設定で、それでもテロリストとまともに戦っていダイ・ハード4.0 3.jpgるのは(若いハッカーを従えた)マクレーンただ1人という不思議な設定で、彼の娘は例のごとくテロリストの人質に。一部にサイバー合戦も見られますが、遂には国防省から最新鋭戦闘機F-35まで出てきてしまって、これが結構間抜けな役回りで、通信システムを掌握するテロリストのミスリードでマクレーンを攻撃(いくら命令とは言え、街中のハイウェイで戦闘機が機銃を乱射するかなあ)、これはもう、カネをかければいいものが出来ると勘違いしているのではないかと思わざるを得ません。マクレーンはトラックから戦闘機に飛び乗り、戦闘機からハイウェイに舞い降りと、殆ど人間ではあり得ない超絶アクションで、これまた更に大味に。まあ、自分の中では既に「3」でこのシリーズは終わったという印象ではありましたが...。

ダイ・ハード/ラスト・デイdvd.jpgダイ・ハード/ラスト・デイ1.jpg 最近作のシーリズ第5作となる「ダイ・ハード/ラスト・デイ」('13年)は、舞台をシリーズ初の海外であるロシアに移しての展開でしたが(今度はいきなりマクレーンの息子が出てきた)、周囲の迷惑を顧みない滅茶苦茶なカーチェイスから始まって(巻き添えの死傷者が何十人と出てもおかしくない)、ラストでは女性敵役がマックレーンに対する怨みからヘリコプターで突っ込んでくるという、殆ど盲目的自爆の様相。彼女イリーナ(ユーリヤ・スニギル)はそれまで何のためにマックレーンを欺こうとしていたのか。もう完全にリアリティとはサヨナラした上に、ストーリーまでも破綻気味―「3」以降「5(ラスト・デイ)」まであまり評価する気にならないのですが、「5」はこれまでの中で最も劣るように思いました。 「ダイ・ハード/ラスト・デイ [DVD]」('13年)

 これでホントに終わりにするのかと思ったら「6」を作る予定があるらしく、ブルース・ウィリスの当シリーズへの思い入れは解らなくもないけれど、どうなんだろうか。

ダイハード 1988 00.jpg「ダイ・ハード」●原題:DIE HARD●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:ローレンス・ゴードン/ジョエル・シルバー●脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ/ジェブ・スチュアート●撮影:ヤン・デ・ボン●音楽:マイケル・ケイメン●原作:ロデリック・ソープ「ダイ・ハード」●時間:131分●出演:ブルース・ウィリス/アラン・リックマン/アレクサンダー・ゴドノフ/ボニー・ベデリア/レジナルド・ヴェルジョンソン/アート・エヴァンス/ウィリアム・サドラー●日本公開:1989/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:渋谷東宝(89-02-12)●2回目:三軒茶屋映劇(89-07-01)(評価:★★★★)●併映(2回目):「レッド・スコルピオン」(ジョセフ・シドー)
渋谷 東横映画劇場(1936年).jpg渋谷東宝.jpg渋谷東宝 1936年「東横映画劇場」として開場(座席数1,401席)。1944年「渋谷東宝映画劇場」に改称、後に渋谷東宝(渋谷東宝会館1階)、渋谷スカラ座(同4階)、渋谷文化劇場(同地階)の3館体制に。1989(平成元)年2月26日閉館(閉館時座席数1,026席)。1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーが開館。(右写真:「渋谷東宝会館」(渋谷東宝劇場・渋谷スカラ座/地階・渋谷文化劇場)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(右写真中央)は1952年、世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン。(「三軒茶屋中央劇場」も2013年2月14日閉館)  ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ) ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り) ③三軒茶屋中劇(中央劇場)

ダイ・ハード2-38.jpgダイ・ハード2.jpg「ダイ・ハード2」●原題:DIE HARD 2: DIE HARDER●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:レニー・ハーリン●製作:ローレンス・ゴードン/ジョエル・シルバー/チャールズ・ゴードン●脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ/ダグ・リチャードソン●撮影:オリヴァー・ウッド●音楽:マイケル・ケイメン●原作:ウォルター・ウェイジャー「ケネディ空港/着陸不能」●時間:124分●出演:ブルース・ウィリス/デニス・フランツ/ウィリアム・サドラー/フランコ・ネロ/ジョン・エイモス/ボニー・ベデリア/ウィリアム・アザートン/レジナルド・ヴェルジョンソン/フレッド・トンプソン●日本公開:1990/09●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)
ダイ・ハード2 [DVD]

スマイルBEST エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃 [DVD]
エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター.jpg「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」●原題:A NIGHTMARE OF ELM STREET 4 THE DREAM MASTER●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:レニー・ハーリン●製作:ロバート・シェイ/レイチェル・タラレイ●脚新宿オデヲン座0.jpg本:スコット・ピアース/ ブライアン・ヘルゲランド●撮影:スティーヴン・ファイアーバーグ●音楽:クレイグ・セイファン●時間:94分●出演:ロバート・イングランド/リサ・ウィルコックス/チューズデイ・ナイト/アンドラス・ジョーンズ/ダニー・ハッセル/ブルック・ゼイス/トイ・ニューカーク/ニコラス・メレ/ブルック・バンディ/ロドニー・イーストマン/ケン・サゴーズ●日本公開:1989/04●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿オデヲン座(89-04-30)(評価:★★)
新宿オデヲン座 1951(昭和26)年11月、現在の歌舞伎町「第二東亜会館」の場所に開館。1959年4月「グランドビル」(後の「第一東亜会館」)地下1階に移転。2009(平成21)年11月30日閉館。(写真:歌舞伎町「第一東亜会館」(左から新宿オスカー・新宿オデヲン座・新宿アカデミー)

13日の金曜日 PART6 ジェイソンは生きていた! [DVD]」/チラシ
13日の金曜日 PART6ジェイソンは生きていた.jpg13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた! tirasi.jpg「13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた!」●原題:FRIDAY THE 13TH PART6:JASON LIVES●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:トム・マクローリン●製作:ドン・ビーンズ●撮影:ジョン・R・クランハウス●音楽:ハリー・マンフレディーニ●時間:87分●出演:トム・マシューズ/ジェニファー・クック/デヴィッド・ケーガン/トム・フリドリー/レネー・ジョーンズ/ケリー・ヌーナン/トニー・ゴールドウィン/ナンシー・マクローリン/ヴィンセント・ガスタフェッロ/ロン・パリロ●日本公開:1986/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:東急レックス(89-04-30)(評価:★★)東急レックス.jpg東急レックス2.jpg
東急レックス(渋谷東急3) 東急文化会館の地下1階(地下東急ストア隣り)。1956年12月1日オープン。当初はニュース映画館「東急ジャーナル」。1969年7月5日~封切館「東急レックス」(466席)。1990(平成2年)10月、「渋谷東急3」に改称。2003(平成15)年6月30日閉館。
(モノクロ写真:東急レックス(1977(昭和52)年)/カラー写真:「東急文化会館」(左から渋谷東急2(旧東急名画座)・渋谷東急・渋谷パンテオン・東急レックス(後の渋谷東急3)

ダイ・ハード3-47.jpgダイ・ハード3 ps.jpg「ダイ・ハード3」●原題:DIE HARD: WITH A VENGEANCE●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:ジョン・マクティアナン/マイケル・タッドロス●脚本:ジョナサン・ヘンズリー●撮影:ピーター・メンジース・ジュニア●音楽:マイケル・ケイメン●時間:128分●出演:ブルース・ウィリス/サミュエル・L・ジャクソン/ジェレミー・アイアンズ/グラハム・グリーン/コリーン・キャンプ/ラリー・ブリッグマン/アンソニー・ペック/ニック・ワイマン/サム・フィリップス/ケヴィン・チェンバーリン/シャロン・ワシントン/スティーヴン・パールマン/マイケル・アレクサンダー・ジャクソン/アルディス・ホッジ●日本公開:1995/07●配給:20世紀フォックス(評価:★★☆)
ダイ・ハード3 [DVD]

ダイ・ハード4.0 02.jpgダイ・ハード4.0 [DVD].jpg「ダイハード4.0(フォー)」●原題:DIE HARD 4.0: LIVE FREE OR DIE HARD●制作年:2007年●制作国:アメリカ●監督:レン・ワイズマン●製作:マイケル・フォトレル●脚本:マーク・ボンバック●原案:マーク・ボンバック/デヴィッド・マルコーニ●撮影:サイモン・ダガン●音楽:マルコ・ベルトラミ●時間:129分●出演:ブルース・ウィリス/ジャスティン・ロング/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ティモシー・オリファント/マギー・Q/シリル・ラファエリ/エドアルド・コスタ/ジョナサン・サドウスキー/クリフ・カーティス/ケヴィン・スミス/ヤンシー・アリアス●日本公開:2007/07●配給:20世紀フォックス(評価:★★☆)
ダイ・ハード4.0 [DVD]

ダイ・ハード/ラスト・デイw.jpg「ダイ・ハード/ラスA GOOD DAY TO DIE HARD 01.jpgト・デイ」●原題:A GOOD DAY TO DIE HARD●制作A GOOD DAY TO DIE HARD 02.jpg年:2013年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ムーア●製作:アレックス・ヤング●脚本:スキップ・ウッズ●撮影:ジョナサン・セラ●音楽:マルコ・ベルトラミ●キャラクター創造:ロデリック・ソープ●時間:98分(劇場公開版)・102分(最強無敵ロング・バージョン)●出演:ブルース・ウィリス/ ジェイ・コートニー/セバスチャン・コッホ/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ユーリヤ・スニギル/ラシャ・ブコヴィッチ●日本公開:2013/02●配給:20世紀フォックス(評価:★★)
Yuliya Snigir

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シリーズの中で一番面白かった「魔宮の伝説」。この頃は"手作り"感があった。

インディージョーンズ 魔宮の伝説 dvd.jpg インディジョーンズ 魔宮の伝説 パンフレット.jpg インディジョーンズ魔球の伝説4298.JPG
インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説 [DVD]」「映画パンフレット 「インディ・ジョーンズ-魔宮の伝説-」

インディジョーンズ魔球の伝説4299.JPG 「インディ・ジョーンズ シリーズ」の最初の3作のうち、個人的には最初の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」('81年)は名画座に降りてくるのを待って観ましたが、この「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」('84年)はロード館で観ました。第3作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」('89年)もロードで観ましたが、結局、一番面白かったのは「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」だったように思います。

「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」パンフレット

 日本でも、前作を上回るヒットを記録しましたが、年間興業収入では「ゴーストバスターズ」の69.7億円に次いで2位でした。因みに'82年本邦公開の「レイダース」は年間5位で、その年のトップは同じくスピルバーグ監督の「E.T.」の163.5億円(これは15年興行収入.jpg後に「タイタニック」('97年公開)に抜かれるまで1位の記録だった)、'89年公開の「最後の聖戦」も、同年公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2」の94.0億円に及ばず2位と、このシリーズ作は何れも年間トップを取ってはいなかったんだなあと、やや意外な思いもします。「最後の聖戦」公開時に「シリーズ最終作」と銘打っていたように思いますが、その後「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」('08年)が作られています(2008年の年間興業収入57.1億円で第3位。この年の第1位は「崖の上のポニョ」の155億円)。

 シリーズ全体の原案はジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグ、製作には何れもはジョージ・ルーカス(ルーカス・フィルム)が噛んでいて、第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の原作は、後に「ライト・スタッフ」「存在の耐えられない軽さ」「ライジング・サン」などを監督することになるフィリップ・カウフマン、脚本は「白いドレスの女」を監督することになるローレンス・カスダンと、第1作から才人が集まっていたことになります。

インディジョーンズ魔球の伝説4300.JPG 「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の3年後に作られた第2弾「魔宮の伝説」の時代設定は前作の1年前(1935年)ということになっていて、トロッコやつり橋の使い方が上手く、アニメをそのままのスピード感で実写化したという感じでした。今だったらCGに委ねるところをセットやミニチュア模型でやっている、この"手作り"感がいいのかもしれません。

 50年代、60年代のミュージカル映画のようなオープニングから始まって、物語の舞台が、上海 → メイアプール → パンコットとテンポよく移り変わり(メイアプールは実在するインドの小村、パンコットは架空の宮殿)、ピンチを脱したと思ったらまたピンチの連続で、何も考えずにただただ楽しめます。

インディジョーンズ魔球の伝説4301.JPG 冒頭のシーンは「ザッツ・エンターテインメント」('74年)へのオマージュでもあるのでしょうか。007映画やディズニーインディジョーンズ魔球の伝説4302.JPG映画、スピールバーグが好きな「フラッシュ・ゴードン」('36年)など様々な映画へのオマージュが随所込められており、ラストの大洪水シーンは、前作「レイダース」のパロディになっているなど、トリビアな見所も多いです。

 この作品を撮った時、ジョージ・ルーカス39歳、スティーブン・スピルバーグ37歳と、共に30代で、しかも、それでいてシリーズ2作目。二人とも若かったのだなあと改めて思います(シリーズ第1作の時は更にそれぞれ3歳若かったわけだが)。

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 dvd.jpg 5年後に作られた「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」('89年)は、時代設定は1938年で第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の2年後という設定。ジョーンズ博士の少年時代を演じたのはリバー・フェニックスで(当時19歳)、この作品の4年後に麻薬死しています。
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インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 husi2.jpg 物語は聖杯伝説をベースにしており、手に入れれば願いはすべて叶うという聖杯を巡ってのナチス連中とインディたちの争奪戦。ナチスに誘拐された考古学者である父親(ショーン・コネリー)を救出に向かったインディも捉えられ...と、本来ならばもっとハラハラドキドキさせられるような展開になるところが、ハリソン・フォード演じるインディのおとぼけぶりに輪をかけるようなショーン・コネリー演じる父親のおとぼけぶりで、コメディ映画みたいになっていました。

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 husi.jpg インディは馬に乗って軍用列車を追いかけたり、ナチスの一味と殴り合い、撃ち合いしたりと相変わらずアクション面でも頑張っていますが、前作に比べると派手さがなく、テンポもイマイチ。最後は、聖杯の守り主みたいな騎士が出てきiインディ・ジョーンズ/最後の聖戦.jpgてなかなかシュールに盛り上げてくれましたが(それにしてはその手前の仕掛けがやたらメカニックだったりもする)、「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」のラストと被ってしまい、結果的に「ショーン・コネリーがとぼけた父親役をやっている映画」という印象インディ・ジョーンズ/最後の聖戦s.jpgのみが強く残ってしまった気がします。但し、ショーン・コネリーはこの作品における「007シリーズ」のジェームズ・ボショーン・コネリー   .jpgンドのパロディ的要素を含む役どころを気に入っていたようで(敵か味方か途中までよく分からないボンドガール的な女性が出てくるのは007へのオマージュか)、2006年に俳優業を引退宣言していますが、もし映画界に戻ってくるとしたら「インディ・ジョーンズ」に出られるときだけとも語っています。
 
ザ・ロック s.jpgザ・ロック 1996.jpg 因みに、ショーン・コネリーがジェームズ・ボンドのパロディ的要素を含む人物設定の役柄として出演している作品の代表的なものとしては、アメリカ海兵隊員の英雄率いるテロリストと、制圧する特殊部隊との攻防を描いたマイケル・ベイ監督によるアクション映画「ザ・ロック」('96年/米)があります。かつて敵に包囲された末に救援も得られずに部下を見殺しにされ、それに対して何の補償もない国に憤りを抱くハメル准将(エド・ハリス)が、14人の部下と共に化学兵器を奪取して、ザ・ロックと呼ザ・ロック アルカトラズ.JPEGばれるかつての刑務所島アルカトラズ島に観光客・ガイド計81人を人質にとって立て籠り、サンフランシスコを化学兵器の標的にして莫大な補償金を要求、化学兵器のスペシャリストであるグッドスピード(ニコラス・ケイザ・ロック ケイジ コネリー 2.jpgジ)がアメリカ海軍特殊部隊SEALsに同行して島に潜入することになりますが、潜入にあたってアルカトラズ島からの唯一の脱獄成功者で、現在は刑務所に幽閉中の元イギリス情報局秘密情報部(SIS)部員・兼SAS大尉のメイソン(ショーン・コネリー)の協力を得るというもの。結局、SEALsは敵の前に全滅し、残されたのは元脱獄囚メイソンと化学兵器オタクのグッドスピードのみという、まあアクション映画のパターナルな展開ですが、ショーン・コネリー演じるメイソンが元SIS(SISの中にMI6がある)ということで、ジェームズ・ボンドが意ザ・ロックL.jpgアリエール ジェルボール.jpg識されていることは明白でした。この映画公開の前年にサンフランシスコに行き、ゴールデン・ゲート・ブリッジからアルカトラズ島を観てきたところだったので懐かしかったですが、映画自体はやや大味でした。エド・ハリスの叛乱はかなり理不尽であるし(最後、自分でも作戦変更した)、FBIでありながら戦闘経験のない化学兵器オタクであるはずのニコラス・ケイジ(アクション映画の主役は初)が、カーチェイスをはじめ結構アクションしていました。化学兵器である毒ガスの溶剤が洗濯用の洗剤に見えてしまったのが難でした。

ザ・ロック 01.jpg 因みに、ショーン・コネリー演じるメイソンが刑務所から移送された後に滞在をリクエストし、その豪華なスウィートルームをしばし満喫するホテルは、サンフランシフェアモント サンフランシスコ めまい.jpgスコの「ザ フェアモント サンフランシスコ」で、ここは映画「めまい」('58年)や「タワーリング・インフェルノ」('74年)などの撮影にも使われたホテルであり(TVドラマ「アーサー・ヘイリーのホテル」にも使われた)、2010年に米国の世界最大級のオンライン旅行コミュニティサイト「トリップfairmontsf-location1.jpgアドバイザー」が映画の舞台となったり重要なシーンに登場したホテルの中で、ユーザーからの評価が高いものをランキfairmontsf-hero-overview2.jpgング化した「映画の舞台になった米国のホテル トップ10」を発表していますが、その中で第1位に選ばれています。
フェアモント サンフランシスコ

「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年) 
インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説es.jpg インディ・ジョーンズ シリーズ3作の個人的評価は、第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」が★★★☆、第2作「魔宮の伝説」が★★★★、第3作「最後の聖戦」が★★★といったところです(第3作が星3つと厳しいのは、絶対評価と言うより、ややシリーズの中での相対評価になっているためで、普通の娯楽映画としてみれば十分楽しめる作品であると言える)。因みに「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」は、2000年代に入って、ソフト化作品のタイトルに"インディ・ジョーンズ"と付けるようになっており、これはこの作品がインディ・ジョーンズ シリーズの第1作であることを知らない年代層が増えてきたためでしょうか。   

レイダース/失われたアーク vhs.jpgレイダース/失われたアーク<聖櫃>(字幕 [VHS]」「インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》 [DVD]
レイダース/失われたアーク dvd.jpg「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」●原題:RAIDERS OF THE LOST ARK●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグレイダース/失われたアーク《聖櫃》.jpg●製作:フランク・マーシャル●脚本:ローレンス・カスダン●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョージ・ルーカス/フィリップ・カウフマン●時間:115分●出Reidâsu Ushinawareta âku (1981).jpg演:ハリソン・フォードカレン・アレン/ジョン・リス=デイヴィス/デ飯田橋佳作座.jpgンホルム・エリオット/ポール・フリーマン/ロナルド・レイシー/ヴォルフ・カーラー/ジョージ・ハリス/アルフレッド・モリーナ/ビック・タブリアン/アンソニー・ヒギンズ●日本公開:1981/12●配給:パラマウント映画/CIC●最初に観た場所:飯田橋佳作座(82-07-11)(評価:★★★☆)●併映:「スター・ウォーズ」(ジョージ・ルーカス)
飯田橋佳作座(神楽坂下外堀通り沿い)1957(昭和32)年10月1日オープン、1988(昭和63)年4月21日閉館
Reidâsu/Ushinawareta âku (1981)
Indi Jônzu - Makyû no densetsu (1984)
Indi Jônzu - Makyû no densetsu (1984).jpg
インディジョーンズ魔球の伝説4303.JPG「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」●原題:INDIAN JONES AND THE TEMPLE OF DOOM●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ロバート・ワッツ●脚本:ウィラード・ハイク/インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説2.jpgグロリア・カッツ●撮影:ダグラスインディ・ジョーンズ/魔宮の伝説ges.jpg・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョージ・ルーカス●時間:118分●出演:ハリソン・フォード/ケイト・キャプショー/キー・ホイ・クァン/アムリッシュ・プリ/ロイ・チャオ/ロシャン・セス/リック・ヤン/デヴィッド・ヴィップ/チュア・カー・ジ「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」0.JPG「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」1.JPGョー/フィリップ・タン/ダン・エイクロイド/フィリップ・ストーン●日本公開:1984/07●配給:パラマウント・ピクチャーズ●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ劇場(84-07-08)(評価:★★★★)
  
新宿プラザ8.jpg新宿プラザ 閉館上映チラシ.jpg新宿プラザ劇場200611.jpg 新宿プラザ劇場 1969年10月31日オープン、歌舞伎町・コマ劇場隣り(1,044席) 2008(平成20)年11月7日閉館
新宿プラザ劇場内.jpg
1981年「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」/1984年「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」/1989年「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦ド.jpg「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」●原題:INDIAN INDIANA JONES AND THELAST CRUSADE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ロバート・ワッツ●脚本:ジェフリー・ボーム●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●製作総指揮:ジョージ・ルーカス●時間:127分●出演:ハリソン・インディ・ジョーンズ/最後の聖戦e.jpgフォード/ショーン・コネリー デン/ホルム・エリオット/アリソン・ドゥーディ/ジョン・リス=デイヴィス/ジュリアン・グローヴァー/インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 リバー・フェニックス.jpgリヴァー・フェニックス/マイケル・バーン/ケヴォルク・マリキャン/リチャード・ヤング/ロバート・エディスン●日本公開:1989/07●配給:パラマウント・ピクチャーズ●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ劇場(89-07-30)(評価:★★★)
リヴァー・フェニックス(1970-1993)in 「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」

The Rock (1996)
ザ・ロック ケイジ コネリー34.jpgThe Rock (1996).jpg
「ザ・ロック」●原題:THE ROCK●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・ベイ●製作:ドン・シンプソン/ジェリー・ブラッカイマー●脚本:デヴィッド・ウェイスバーグ、他●撮影:ジョン・シュワルツマン●音楽:ハンス・ジマー、他●時間:135分●出演:ショーン・コネリー/ニコラス・ケイジ/エド・ハリス/ジョン・スペンサー/ウィザ・ロック ケイジ コネリー33s.jpg リアム・フォーサイス/デヴィッド・モース/マイケル・ビーン/ザンダー・バークレー/ラルフ・ペデュート/デヴィッド・ボウ/ヴァネッサ・マーシル/ジェームズ・カヴィーゼル/ドワイト・ヒックス/ジョン・C・マッギンリー/ジョン・ラフリン/アンソニー・クラーク/デヴィッド・グラント/トニー・トッド/ボキーム・ウッドバイン/ダニー・ヌッチ/ショーン・スケルトン/スティーヴ・ハリス/インゴ・ノイハウス/グレゴリー・スポールダー/ブレンダン・ケリー/レイモンド・クルス/マーシャル・R・ティーグ/フィリップ・ベイカー・ホール/スタンリー・アンダーソン/スチュアート・ウィルソン/ハワード・プラット/ハリー・ハンフリーズ/レオナルド・マクマハン/クレア・フォーラニ/トッド・ルイーゾサム・ホイップル●日本公開:1996/09●配給:ブエナ・ビスタ・インターナショナル・ジャパン(評価:★★★)

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