【2020】 △ ピーター・メダック 「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第7話)/親指のうずき」 (06年/英) (2008/06 NHK-BS2) ★★★

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"トミ・タぺ"にミス・マープルがしゃしゃり出て、何から何まで全て解決してしまったように見えてしまう。

ミス・マープル2 親指のうずき dvd.jpg ミス・マープル2 親指のうずき.jpg   マープル2 親指のうずき0.jpgアガサ・クリスティーのミス・マープル DVD-BOX 2

マープル2 親指のうずき2.jpg トミー(アンソニー・アンドルー)とその妻タペンス(グレタ・スカッキ)は、トミーの叔母エイダ(クレア・ブルーム)に会いに養護ホーム「サニー・リッジ」に行く。養老院には、タペンスのブローチを誉める老ランカスター夫人(ジェーン・ウィットフィールド)や時間にこだわるマジョリー(ミリアム・カーリー)がいた。エイダ叔母から邪険にされたタペンスは、ランカスター夫人の部屋で、彼女から突然、「暖炉の奥の子供はあなたのお子さん?」と聞かれ驚く。数週間後、エイダ叔母が心臓病で急死し、遺品の引き取りに来たタペンスは、その中に、以前には彼女の部屋には無かった風景画と、1通の手紙を発見、手紙には「ランカスター夫人は安全ではない。なにかあったらこの絵を見て」とあった。 タペンスは、エイダの死んだ日にランカスター夫人が身内に引き取られたと聞き、マージョリーに面会に来ていたミス・マープル(ジェラルディン・マクイーワン)から、ランカスター夫人は無理やり連れ去られたらしいと聞かされる。タペンスとマープルは、絵に描かれていた家から、その家のある村を探し出す。村で酒場の女主人ハンナ(ジョシー・ローレンス)や司祭(チャールズ・ダンス)とその妻ネリー(リア・ウィリアムズ)、ジョンソン夫妻と娘ノラ、フィリップ卿(レスリー・フィリップス)などに会うが、皆、何かを隠している雰囲気がある―。

 2006年に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演の英国グラナダ版で、この年に作られたシーズン2全4話の内の第3話(通算第7話)であり、日本ではNHK‐BS2で2008年6月24日に発放映(第6話「動く指」の前日)。原作『親指のうずき』はアガサ・クリスティ(1890‐1976)が1968年、78歳の時に発表した、トミー&タペンス・ベレズフォード夫妻シリーズの長編第3作ですが(原題:By the Pricking of My Thumbs)、トミ・タぺ夫婦は齢を重ね、原作ではこの時点で2人共60代後半になっています。

 この映像化作品では、時代設定を第二次世界大戦後(50年代初め)にしているようで、それでも既に2人とも探偵染みたことはしていませんが、トミーはそれなりに老けているけれど(「新・刑事コロンボ/汚れた超能力」で犯人役グレタ・スカッキ.gifを演じたアンソニー・アンドリュース。この時、実年齢58歳)、仕事上はまだ現役、一方のタペンスは彼より随分と若い感じで(「推定無罪」「ザ・プレイヤー」のグレタ・スカッキ。この時の実年齢は46歳)、暇を持て余し気味の状態にあり、しかも、夫から相手にされていないという思い込みから、ややキッチン・ドランカー気味(これは原作にない描写)。彼女なりの直感で事件の臭いを嗅ぎつけ、持ち前の好奇心で、ランカスター夫人誘拐(?)事件を追います。

グレタ・スカッキ(Greta Scacchi)

親指のうずき 映画タイアップカバー2.jpg パスカル・トマ監督の映画化作品『アガサ・クリスティーの奥様は名探偵』('05年/仏)の原作が同じくこの『親指のうずき』ですが、話がちょっと分かりづらかった印象があり、このTV版にも背後関係においてそのキライはあったかも(村全体が、ある種"犯罪装置"みたいになっているのだが、元々原作が、その部分の説明的要素が少ない)。

ミス・マープル2 親指のうずき3.jpg 非マープル物に強引にミス・マープルを登場させていることによって、改変される部分が自ずと多くなるわけですが、更にオリジナリティを出そうとして、駐留米軍兵士のクリス(O・T・ファグベンル)と警官イーサン(マイケル・ベグリー)の村の娘ローズ(ミシェル・ライアン)を巡る恋の鞘当の話があり、警察はクリスを疑うという―原作に無い話、原作に無い登場人物、原作に無い容疑者―もはや改変過剰...。

親指のうずき ミステリ文庫 2.jpg 絵に描かれた家は、原作では早いうちに「運河の家」をタペンスが見つけるのに、この映像化作品では「魔女の家」がなかなか見つからない―この原作の焦点である「意外な犯人」はさすがに変えてなかったけれど、エイダ叔母さんも犯人の犠牲者にしてしまったなあ。タペンスを甥の嫁とも思わず邪険に扱い、認知症にさしかかっているかに思えた彼女が、実は、原作以上に事の真相に気付いていて、絵の中で色々とそのことを示唆し、それゆえに殺害されたということなのでしょう(絵に書き加えられた暗示は、原作では、ハヤカワ・ミステリ文庫の表紙の真鍋博のイラストにもあるように、舟一艘だけだったのではないか。この映像化作品では外にも色々と...)。

ミシェル・ライアン.jpg ミス・マープルは、クリスの無実を晴らして彼のローズへの想いをバックアップし、更に、最後にはタペンスに「あなた一人で事件を解決したのよ」と言って、トミーも改めて彼女のことを評価し直し愛おしく思うという、夫婦の倦怠期の脱却にも彼女が一役果たした終わり方ですが、どうみても、ミス・マープルがしゃしゃり出て、何から何まで全てを解決してしまったように見えてしまうなあ。

ミシェル・ライアン(Michelle Ryan)

ミシェル・ライアン2.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第7話)/親指のうずき/●原題:BY THE PRICKING OF MY THUMBS, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 2●制作年:2006年●制作国:イギリス●演出:ピーター・メダック●脚本:スチュワート・ハーコート●原作:アガサ・クリスティ「親指のうずき」●時間:93分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/アンソニー・アンドルーズ/グレタ・スカッキ/パトリック・バーロウ/マイケル・ベグリー/スティーブン・バーコフ/クレア・ブルーム/ブライアン・コンリー/チャールズ・ダンス/ミシェル・ライアン/O・T・ファグベンル/クレア・ホルマン/ミリアム・カーリン/ボニー・ラングフォード/ジョシー・ローレンス●日本放送:2008/06/24●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★)

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This page contains a single entry by wada published on 2013年10月 4日 23:55.

【2019】 ○ アガサ・クリスティ (深町眞理子:訳) 『親指のうずき』 (1970/12 ハヤカワ・ミステリ) ★★★☆ was the previous entry in this blog.

【2021】 ○ 窪 美澄 『ふがいない僕は空を見た』 (2010/07 新潮社) ★★★★ is the next entry in this blog.

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