【3543】 ○ 大江 英樹 『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方 (2023/03 光文社新書) ★★★★

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90歳までに使い切ると思っても71歳で亡くなることも。使い切ることの難しさを考えさせられた。

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大江 英樹(2024.1.1、71歳没)『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方 (光文社新書) 』['23年] 
山崎 元(2024.1.1、65歳没)『がんになってわかった お金と人生の本質』['24年]

がんになってわかった お金と人生の本質.jpg 今年['24年]1月1日に71歳亡くなった経済コラムニスト・大江英樹(1952-2024)氏の本。急性森永卓郎2024.jpg白血病の入院から退院しリハビリに励んでいることを公表していましたが...(奇しくも同じ日に、大江氏と並んで金融経済教育における二大巨頭ともされる経済評論家の山崎元(はじめ)(1958-2024)氏も食道がんにより65歳で亡くなっている。そう言えば、経済アナリストの森永卓郎氏(1957年生まれ)もがん闘病中である(2025年1月逝去)

DIE WITH ZERO2020.jpg 大江英樹氏は、大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事して定年まで勤務し、2012年に独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行ってきたとのこと。本書は、日本版『DIE WITH ZERO』ともいえる本で、お金を貯め込んだって天国に持って行けるわけではなし、幸せのために生きているうちにお金を使わなくては意味がないということを伝えています。
  
 第1章でお金に対して人々が持っているタテマエとホンネ、勘違いを紐解くことかえら始めています。「投資の儲けは不労所得」という思い込みは一般にはあるだろうなあ。

 第2章では、お金の歴史とお金の持つ役割について解説しています。金融経済教育は著者の本分ですが、お金の役割は①取引と決済、②価値の尺度、③価値の保存、に加え、「感謝の表明」であるとしている点が著者らしいです。

 第3章では、お金を増やしたいという呪縛を解明していきます。お金を貯め込む理由として、漠然とした「老後不安」というのはやはりあるのでしょうが、著者はそれが"過剰"なのは良くないと。お金の価値を「死」から逆残して菅家よとして、人は死ぬ時にいちばんお金を持っているというデータを示し、イソップ寓話の「アリとキリギリス」の逆説的解釈を示していますが、この辺りは『DIE WITH ZERO』の流れとぴったり重なります。

 第4章では、お金の賢い減らし方として、①好きなことにお金を使う(何事にも受動的なサラリーマン脳を捨てよと)、②思い出にお金を使う(モノ消費よりコト消費。旅は人生そのもの)、③人にお金を使う(他人に投資する。偽善でも自己満足でもかまわない)、④価値にお金を使う(世の中に無駄なものなど何もないので、無駄使いしても構わない。でも、「見栄」や「義理」でお金を使うのはやめる)を挙げています。

 第5章では、お金に人生を支配されないようにするためにはどうすればよいかを説いています。ある意味、お金よりも大切なものは世の中のもすべてで、お金より優先すべきに事柄として、①時間、②信用、③健康、④幸福感の4つを挙げ、その理由を述べています。

 いい本ですが、個人的には『DIE WITH ZERO』を先に読んでしまったので、重なる部分が多い分、インパクトはやや弱かったかも。著者自身は、「自分が持っているお金は、なるべく90歳までに使い切ってしまおうと思っています」と書いていますが71歳で亡くなってしまった...。「使い切る」ことの難しさを考えさせられます。

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This page contains a single entry by wada published on 2024年11月 3日 16:02.

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