【3548】 ○ チョーヒカル(趙燁)(著)/森乃 おと(文) 『絶滅生物図誌 (2018/05 雷鳥社) ★★★★

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リアルで美しい絵と分かりやすい解説。最後にちょっとだけ遊び。

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絶滅生物図誌』['18年]
チョーヒカル氏
チョーヒカル jwave.jpg 本書は、古代から現代までの絶滅生物70種を「水の生き物」「有翼の生き物」「陸の生き物」の3つに分け、リアルで美しい絵と分かりやすい解説で見開きごとに1種ずつ紹介した図鑑です。つい最近まで生存していた生き物も多く含まれており、「古生物図鑑」と「絶滅生物図鑑」をミックスしたような感じでしょうか。絵はチョーヒカル氏、文は森乃おと氏になります。

チョーヒカル 作品.jpg チョーヒカル(趙燁)氏は2016年、武蔵野美術大学を卒業。人体などにスーパーリアルなペイントをする作品で注目され、海外でも話題になっている人物で、先月['24年10月]20日にも、J-waveの女優の吉岡里帆がパーソナリティーを務める「UR LIFESTYLE COLLEGE」にゲストで出ていました。本書ではシュールリアリズムではなく(笑)リアリズムで描いています。2018年かあ。彼女は2019年から留学のためアメリカ・ニューヨークに引っ越し、以来、ニューヨークが創作拠点になっています。今だったら多忙過ぎて受けられない仕事かもしれません。

絶滅生物図誌3.jpg 森乃おと氏の本職は俳人ですが、動植物、自然などを中心に研究もしているとのこと。それぞれの生き物のキャッチコピーが分かりやすく、また、愉しいです。
  
 第Ⅰ部「水の生き物」編では「カンブリア紀の絶対王者」アノマロカリスや「5つの眼(まなこ)と象の鼻」オパビニア、「トンガリ帽子の肉食ハンター」カメロケラス、「海を支配した鉄仮面」ダンクレオステウス、「神秘の美しきら船体」アンモナイト、「優しい獣は、はやく死ぬ」ステラ―ダイカイギュウ、などが紹介されています。

絶滅生物図誌6.jpg絶滅生物図誌4.jpg 第Ⅱ部「有翼の生き物」編では、開翅70cmの大トンボ「メガネウラ」、狩りつくされた史上最大の鳥」ジャイアントモア、「不思議な国のノロマな鳥」ドードー、「50億羽から0羽になったハト」リョコウバト、「まるで夢のような青い蝶」セーシェルアゲハ、などが紹介されています。

 第Ⅲ部「陸の生き物」編では、「3mもある古代ムカデ」アースロプレウラ、「羽毛の生えた恐竜王」ティラノサウルス、「ワニを呑み込む巨大ヘビ」ティタノボア、「立て......!立つんだ、ルーシー!」アウストラロピテクス、「人類が狩った、毛むくじゃらのゾウ」ウーリーマンモス、「家ほど大きなナマケモノ」メガテリウム、「独立軍の旗印になったクマ」カリフォルニアハイイイログマ、「嫌われ者もなった奇妙な「オオカミ」」フクロオオカミ、などが紹介されています。

 本を手した人はキャッチだけで文章を読みたくなるし、本を手にしていない人は、チョーヒカルの絵を見たくなるのではないでしょうか。

絶滅生物図誌5.jpg 第Ⅳ部はコラムとして、「絶滅危惧種」を10種紹介するほか(チンパンジーやアカウミガメがこれに含まれる)、「化石」「絶滅植物」もそれぞれ10種紹介しています。そして、さらにここから8ページほど、チョーヒカルによる"遊び"的なコーナーになっており、「絶滅生物の料理レシピ」(絶滅生物を素材とした料理)10種と「絶滅生物のファッション雑貨」(絶滅生物を材料とした装身具や鞄、衣類など)10種といった具合に、「妄想逞しい」世界に入っていきます。
  
SUPER FLASH GIRLS 超閃光ガールズ』['15年/雷鳥社]趙燁(著)/ 佐藤克秋(写真)
超閃光ガールズ1.jpg超閃光ガールズ2.jpg 随分と真面目に描いているなあと思ったら最後にちょっとだけそうした遊びがあり、これも悪くなかったです。そう言えば、チョーヒカルが「ボディーペイント、トリックアートを中心に活躍する、人気の現役女子大生アーティスト」として注目され始めた頃、最初の作品集『SUPER FLASH GIRLS 超閃光ガールズ』('15年)を刊行したのが本書と同じ雷鳴社であり、版元とは気心が知れているのかもしれません。

『絶滅生物図誌』原画展(2018 調布市・手紙舎)
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絶滅生物図誌t1.jpg絶滅生物図誌ステラーダイカイギュウのミルクシェイ.jpg絶滅生物図誌 アンモナイトのロールケーキ.jpg
ステラーダイカイギュウのミルクシェイク/アンモナイトのロールケーキ
  
   
   
  
《読書MEMO》
●目次
はじめに Prologue
絶滅と進化の歴史

I 水の生き物 AQUATIC ANIMALS
アノマロカリス......カンブリア紀の絶対王者
オパビニア......5つの眼とゾウの鼻
オットイア......悪食なのにキレイ好き?
ハルキゲニア......カンブリアの海の幻
ピカイア......芯を通して生きてゆく
カメロケラス......トンガリ帽子の肉食ハンター
アランダスピス......カブトを被った最初の魚
ダンクレオステウス......海を支配した鉄仮面
ヘリコプリオン......ミステリアスな渦巻く歯
サンヨウチュウ......3億年を生き抜く世渡り上手
ディプロカウルス......川底のブーメラン頭
ヘノドゥス......私はカメではありません
クロノサウルス......大アゴの海のティラノサウルス
アンモナイト......神秘の美しき螺旋体
パキケトゥス......ヒヅメを持ったクジラの祖先
ステラーダイカイギュウ......優しい獣ははやく死ぬ
チチカカオレスティア......聖なる湖の黄金の魚
イブクロコモリガエル......可愛いわが子は胃袋の中で
オレンジヒキガエル......消えたコスタリカの宝石
ヨウスコウカワイルカ......長江の女神を探せ

II 有翼の生き物 WINGED ANIMALS
ミクロラプトル・グイ......4枚の翼をもつ羽毛恐竜
ディアトリマ......恐鳥の束の間の栄光
ジャイアントモア......狩りつくされた史上最大の鳥
ハーストイーグル......時速80㎞で急降下するハンター
エピオルニス......飛べなかったロック鳥
ドードー......不思議の国のノロマな鳥
タヒチシギ......南洋の島での静かな絶滅
オオウミガラス......元祖ペンギン最後の日
セーシェルアゲハ......まるで夢のような青い蝶
スティーブンイワサザイ......猫に発見され猫に滅ぼされた小鳥
ホオダレムクドリ......ファッショントレンドになった神聖な鳥
リョコウバト......50億羽から0羽になったハト
ワライフクロウ......夜の森に響く怪しい高笑い
カロライナインコ......羽飾りにされた北米のインコ
ゴクラクインコ......美しさは悲劇のはじまり
ヒースヘン......アンラッキーなソウゲンライチョウ
バライロガモ......愛されピンクは罪のいろ
グアムオオコウモリ......業深き名物グルメ

III 陸の生き物
アースロプレウラ......3mもある古代ムカデ
コティロリンクス......でっぷり太って小顔はキープ
ティラノサウルス......羽毛の生えた恐竜王
コリフォドン......でっぷり太って小顔をキープ
ティタノボア......ワニを呑み込む巨大ヘビ
アンドリューサルクス......手がかりは史上最大の上アゴ
カリコテリウム......ウマの顔してナックルウォーク
プラティベロドン......顔面シャベルのへんてこゾウ
アウストラロピテクス......立て...! ...立つんだ、ルーシー!
マクラウケニア......ダーウィンを悩ませた不思議な生き物
ジャイアントバイソン......角幅2m! 筋骨隆々のバッファロー
スミロドン......剣のような牙をもつ「古代トラ」
ウーリーマンモス......人類が狩った、長い毛の生えたゾウ
ケブカサイ......マンモスの忠実なる友
グリプトドン......徹頭徹尾の鉄壁ガード
メガテリウム......家ほど大きなナマケモノ
ディプロトドン......巨大すぎるコアラの先祖
メガラダピス......ゴリラのようなキツネザル
オーロックス......ラスコー洞窟に描かれた野生ウシ
ブルーバック......輝く青き毛並みをもつ獣
クアッガ......馬車をひいた半身シマウマ
カリフォルニアハイイログマ......独立軍の旗印になったクマ
フクロオオカミ......嫌われ者になった奇妙な「オオカミ」
ウサギワラビー......ハイ・ジャンプならおまかせ
ブタアシバンディクート......変な足をした喧嘩好き
ボリエリアボア......楽園に棲んでいたヘビの受難
ピレネーアイベックス......絶滅からのクローン再生第一号
シフゾウ......隠されていた皇帝の神獣
索引

IV コラム COLUMNS
絶滅危惧種
化石
絶滅植物
絶滅生物の料理レシピ
絶滅生物のファッション雑貨
大きさ比べ

絶滅をめぐる6つのキーワード
おわりに Epilogue
参考文献

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