【2137】 ○ 黒澤 明 「野良犬 (1949/10 東宝) ★★★★

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「醉いどれ天使」「静かなる決闘」「野良犬」で順位づけに迷う。

野良犬 1949 ポスター1.jpgNora inu(1949).jpg野良犬 1949 dvd.jpg 野良犬 1949 0.jpg
「野良犬」ポスター/Nora inu(1949) /「野良犬<普及版> [DVD]」三船敏郎/志村喬

Nora-inu  (野良犬), 1949.jpg 警視庁捜査一課の新米刑事・村上(三船敏郎)は、帰宅途上のバス中、上着ポケットに入れたコルト拳銃を掏られたことに気づき、男が走り出したのを見つけ追かけるが見失う。野良犬1.jpgお銀(岸輝子)翌日、中島係長(清水元)に報告、スリ係で女スリの名が浮上、お銀を執拗に追って、闇で拳銃を扱う仲介屋を探せとのヒントを彼女から貰う。下町の盛り場で銃の取引場所を聞き出して、仲介屋の女(千石槻子)を逮捕するが、銃を渡した相手は元締めの本多(山本礼三郎)でないと判らないという。盗まれた銃によって殺人事件が起きており、所轄警察の刑事・佐藤(志村喬)と野良犬 千石.jpg組むことになった村上は、本多が野球好きと聞き、佐藤と共に球場で本多を探し出して逮捕、拳銃を借りた男の名が遊佐(木村功)だと判り、今度は遊佐を探すことに。大ベテラン刑事の佐藤は、村上に捜査の手順、取調べの方法などを指導する。村上野良犬 1949 い.pngらは遊佐の実家(姉の家)を訪ねるが遊佐は不在で、遊佐の友人のヤクザから遊佐の情婦でダンサーの並木ハルミ(淡路恵子)のことを聞き彼女にも会うが、彼女は遊佐の居場所を言わない。そうした中、次の強盗殺人事件が起きる。村上は遊佐が情婦の所へ行くと睨みハルミ宅を訪問、一方の佐藤は、ハルミの部屋のマッチ箱から、村上の銃を借りて一人でホテルに行き遊佐の居所を突き止めるが、その凶弾で倒れる。自責の念にかられる村上に対し、ハルミも遂に遊佐との待ち合わせ場所と時間を自白する。村上は丸腰のまま指定の駅に急行、遊佐を見つけ出し、逃げる彼を追い詰める。遊佐の銃で手を撃たれるが、格闘の末に遊佐を逮捕する。村上は佐藤を病院に見舞うが、逆に佐藤は村上を励ます―。 三船敏郎 [Toshiro Mifune]/千石規子 [Noriko Sengoku]

菊島隆三.jpg 黒澤明監督の1949(昭和24)年作品で(製作は「新東宝・映画芸術協会」)、黒澤がこの頃初めて知った菊島隆三(1914-1989)と意気投合し、ジョルジュ・シムノンばりの犯罪映画を作ろうとして企画したのが本作。ジョルジュ・シムノンは「メグレ警部」シリーズで知られる作家で、後のパトリス・ルコント監督の「仕立て屋の恋」 ('89年/仏)の原作者でもあります。

野良犬 三船.jpg 序盤の、村上が仲間のアドバイスを受けながら、犯人の手掛かりを求めて東京中を歩き回るシーン、まず女スリの行方を追って下町を歩き回り、次にその女スリの示唆で、拳銃密売ルートの手掛かりを求めて復員服で闇市を歩き回るのですが、このシーンが、戦後間もない東京の姿を炙り出していて圧巻です。

noraimu.jpg 次に来る、後楽園球場で本多を捜すシーンもいいです。プロ野球はまだ2リーグ制に移行する前であり、巨人と南海が戦っていて、「赤バット」の川上がタイムリーヒットを打ったりしています。試合中に本多の居場所が判り、但し、5万人の観客の真っ只中で銃を持っている可能性のある相手と渡り合うわけにはいかないので、ではどうすればよいか、試合終了までに考えなければならない、そこで思いついたのが...(まあ、単純と言えば単純な方法だったが)。

野良犬 楽屋.jpg 村上・佐藤が屋上で話す場面の空を広く撮ったカメラ割りや、ダンサー達の楽屋の半裸の女体が画面一杯に犇(ひし)めいてムンムンした雰囲気の漂うシーンのなど、カメラにおける工夫が随所に見られ、どのシーンも印象に残ります。

 ラスト近くの村上が駆けつけた駅(田舎駅の風情だが現在の「大泉学園駅」か)の待ち合わせ客の中から遊佐を割り出すシーンのカメラワークも緊迫感がありましたが、やや疑問に思ったのは、村上が遊佐の顔を知らないで彼を追っていることで、これは彼が初犯であるためでしょうか(写真くらい手に入らなかったのか)。

Akira Kurosawa, "Stray Dog" (1949)

野良犬 1949 ラスト.jpgnorainu2.jpg ラストの野原での(当時の練馬大泉は殆ど湿原状態だった?)村上と遊佐の格闘シーンも迫力がありましたが、「醉いどれ天使」('48年/東宝)で、哀しいシーンに「カッコウ・ワルツ」を流すという用いられ方をした"映像と音楽の対位法"が、ここでは両者が初めて対峙するシーン(近隣の窓辺からピアノの音が流れてくる)と、取っ組み合いの決着がついた場面(先生に引率された児童らが童謡を歌いながら行く)で用いられています(音楽は早坂文雄)。

野良犬 1949.jpg 遊佐の実家の貧しさは(やはり写真は無理か。東野英治郎が桶屋の親父役を演じている)、犯罪と貧困の相関関係を示唆しているようにも思えましたが、犯人に感情移入してしまいそうになる三船敏郎演じる村上に対し、志村喬演じる佐藤が、「一匹の狼のために、傷付いた多数の羊を忘れるな。俺は単純に奴らを憎む。悪い奴は悪いのだ」「何もかも世の中のせいにして、悪いことをする奴は、もっと悪い」と諭し、ラストでも、「外を見ろ。今日もあの屋根の下で何人かの善良な人間が遊佐のような奴の餌食になっている。遊佐やハルミへの情はわかるが自然に忘れるよ」と―。志村喬って結構、黒澤映画の中で主題を要約して語っている(「静かなる決闘」('49年)然り)。

小林信彦.jpg野良犬 1949 淡路.jpg 作家の小林信彦氏が、黒澤映画の中では「七人の侍」「天国と地獄」がベストで、もう一本を「野良犬」にするか「醉いどれ天使」にするかいつも迷うといったことを言っていましたが、個人的は、1940年代後半(昭和20年代前半)の黒澤作品では「醉いどれ天使」「野良犬」に加えて「静かなる決闘」も甲乙付け難く、観直すたびに順位付けが微妙に変わりそうです(今回は何れも星4つで揃えたが、揃えるならば、全部星5つにするという手もあっていい)。

淡路恵子(当時16歳)

野良犬 1949 淡路2.jpg 「静かなる決闘」の原作、菊田一夫の舞台「堕胎医」に主演し、それを観た黒澤明監督から映画出演を勧められた千秋実(1917-1999)の映スリー・パールズ-10.jpg画デビュー作ですが(クラブの従業員役)、今年['14年]1月に亡くなった淡路恵子(1933-2014)の映画デビュー作でもあり、印象としては圧倒的にこちらの方が強烈でしょうか。松竹歌劇団に入団前の松竹音楽舞踊学校(宝塚音楽学校のようなものか)の在校生の時に黒澤明監督のこの作品に抜擢起用され(当時16歳)、本作出演の翌年にSKDに入団し、「君の名は」('53年/松竹)出演までは専らSKDの舞台で、草笛光子、深草笙子とのユニット「スリー・パールズ」として活躍しました。
SKD・スリー・パールズ(左から草笛光子、深草笙子、右が淡路。1952年10月)
    

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野良犬 1949  ポスター0.jpg「野良犬」●制作年:1949年●監督:黒澤明●製作:本木荘二郎●製作会社:新東宝・映画芸術協会●脚本:菊島隆三/黒澤明●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●時間:122分●出演:三船敏郎/志村喬/木村功/清水元/河村黎吉/淡路恵子/三好栄子/千石規子/本間文子/飯田蝶子/東野英治郎/永田靖/松本克平/岸輝子/千秋木村 功 野良犬.jpg実/山本礼三郎●公開:1949/10●配給:東宝●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(10-12-18)(評価:★★★★)

木村 功(当時26歳)


「野良犬」スチール写真/淡路恵子逝去記事(東京新聞/2014年1月12日朝刊)
野良犬 スチール1.jpg東京新聞 2014年1月12日 淡路恵子訃報記事.jpg
                
                           
                                                                        


淡路恵子 1.jpg淡路恵子.jpg淡路恵子2.jpg


                                        

                                                                                    
 

                                                     
 
 
                                                                   
   
                                           
                                             
                                               

 
 
 
黒澤明作品ベスト17(個人サイト)
   1『野良犬』
   2『七人の侍』
   3『隠し砦の三悪人』
   4『酔いどれ天使』
   5『天国と地獄』
   6『赤ひげ』
   7『椿三十郎』
   8『用心棒』
   9『生きる』
   10『どん底』
   11『わが青春に悔なし』
   12『どですかでん』
   13『羅生門』
   14『醜聞』
   15『虎の尾を踏む男達』
   16『姿三四郎』
   17『蜘蛛巣城』

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和田泰明


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This page contains a single entry by wada published on 2014年5月18日 22:33.

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