2011年2月 Archives

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チャールズ・ブロンソンやジェームズ・コバーンの演じたバイプレーヤー的な役柄も良かった。

荒野の七人 チラシ.jpg荒野の七人07.jpg1「荒野の七人」.jpg 荒野の七人 dvd.jpg
「荒野の七人」チラシ・パンフレット(1976年版)/「荒野の七人 [DVD]

 ジョン・スタージェス監督の1960年作品で、黒澤明監督の「七人の侍」('54年/東宝)を翻案した作品であることは知られていますが、「七人の侍」がなかなかロードにかからず、名画座にも降りてこないIMG_1889.JPG時期があったので、個人的には、まだ見ぬ「七人の侍」への期待を高める契機となった作品です(エルマー・バーンスタインのテーマ曲も良かった)。

 ユル・ブリンナーが黒澤監督の「七人の侍」にすっかり惚れこみ、翻訳映画化権を買い取ったのが事の始まりだそうですが、「七人の侍」を観た後で再見すると、大まかなあらすじや登場人物の設定・台詞などを「七人の侍」へのオマージュを込めて再現しているのが窺荒野の七人 輸入版ポスター.jpgえ(黒澤監督はこの作品を観て、スタージェス監督に日本刀を贈ったとの逸話がある)、一方で、「七人の侍」の「七人」と、「荒野の七人」の「七人」を無理に重ねることはしていないのが分かりました。例えば、クリス(ユル・ブリンナー)は勘兵衛(志村喬)がモデルであるにしても多少キャラクターは異なるし、ビン(スティーブ・マックイーン)は五郎兵衛(稲葉義男)と七郎次(加東大介)の、チコ(ホルスト・ブッフホルツ)は勝四郎(木村功)と菊千代(三船敏郎)の、オレイリー(チャールズ・ブロンソンは平八(千秋実)と菊千代の、それぞれ"混合型"のキャラクターになっているそうですが、そう言われてもピンとこないようなキャラクターもいます(ビンには"菊千代"も入っているのではないか)。リー(ロバート・ヴォーン)やハリ―(ブラッド・デクスター)のようにオリジナルに無いキャラクターが造られている一方で、ナイフの名手ブリット(ジェームズ・コバーン)のように、久蔵(宮口精二)がモデルであることが比較的わかり易いものもあります(因みに、久蔵のモデルは宮本武蔵だそうな)。

『荒野の七人』(1960).jpg『荒野の七人』(1960)0.jpg 映画公開時の出演俳優らの知名度は、ユル・ブリンナーが断トツで、ホルスト・ブッフホルツがそれに続くものだったそうですが、同じくジョン・スタージェスが監督し、スティーブ・マックイーン、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンが共演した「大脱走」('63年)でスティーブ・マックイーンがIMG_1895.JPG先ず一気に抜け出て、チャールズ・ブロンソンが「さらば友よ」('68年)などで、ジェームズ・コバーンが「電撃フリント」シリーズなどで、それぞれ後に続いたという感じでしょうか(「荒野の七人」のパンフレットやチラシは、途中からスティーブ・マックィーンがメインまたは筆頭格のレイアウトになった)。

1「荒野の七人」b.png この作品でチャールズ・ブロンソンやジェームズ・コバーンの演じたバイプレーヤーチャールズ・ブロンソン .jpg的な役柄も良かったように思い、チャールズ・ブロンソンは村の子供に慕われる優しいオジさんという感じで(オレイリーの最期はややコミカルに描かれている。この人、日本では「マンダム」のコマーシャルでおコバーン「ラーク」 .jpg馴染みになった)、一方のジェームズ・コバーンは撃たれた後もナイフを投げて...こちらは渋い死に方でした(「ラーク」のコマーシャル においてもナイフ投げたりしていたなあ)。「電撃フリント」シリーズのほか、ダシール・ハメット原作のTVドラマ「The Dain Curse」(CBS 1978)に出たり、ロバート・アルトマン監督の「ザ・プレイヤー」('92年/米)にも本人役でカメオ出演していました。

荒野の七人」.jpg スティーブ・マックイーンが'80年に癌で50歳で亡くなり(アスベスト吸引による中皮腫説がある)、ユル・ブリンナーも'85年に肺癌で65歳で亡くなった後、'02年から'03年にかけての僅か1年の間に、ジェームズ・コバーン(心筋梗塞)、ブラッド・デクスター(肺ロバート・ボーン    .jpg気腫)、ホルスト・ブッフホルツ(肺炎)、チャールズ・ブロンソン(肺炎)と「七人」のうち4人が相次いで亡くなったのが寂しかったです。現時点[2011年2月時点]で存命しているのはロバート・ヴォーンのみになってしまっています(ロバート・ヴォーンは2016年11月11日急性白血病のため逝去。これで「荒野の七人」にガンマン役で出演した7人の男優全員がこの世を去ったことになった)

荒野の七人」ps.jpg「荒野の七人」002.jpg「荒野の七人」●原題:THE MAGNIFICENT SEVEN●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:ジョン・スタージェス●脚本:ウイリアム・ロバーツ●撮影:チャールズ・ラング●音楽:エルマー・バーンスタイン●原作:黒澤明/橋本忍/小国英雄(映画「七人の侍」)●時間:128分●出演:ユル・ブリンナー/スティーブ・マックイーン/チャールズ・ブロンソン/ロバート・ヴォーン/ジェームズ・コバーン/ホルスト・ブッフホルツ/ブラッド・デクスター/イーライ・ウォラック/ウラジミール・ソコロフ/ジョン・アロンゾ/ロゼンダ・モンテロス/ヨルグ・マルティネス・デ・ホヨス/リコ・アラニス●日本ジョン・スタージェス(John Sturges).jpg中野武蔵野ホール.jpg公開:1961/05●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:中野武蔵野館(78-01-19)(評価:★★★★)●併映「ビッグ・アメリカン」(ジョン・スタージェス)  中野武蔵野ホール
ジョン・スタージェス(John Sturges)
新宿ミラノ座 荒野の七人.jpg「荒野の七人」(1961年)公開中の新宿ミラノ座

「荒野の七人」(1961年).jpg

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逆境からスターになったマックイーンに相応しい作品。肉食系人種の強さを感じた。

パピヨン ポスター.jpgパピヨン 半券.jpgパピヨン パンフレット2.jpgパピヨン dvd.jpgパピヨン  タイムライフ社 1974 .jpg
映画ポスター/チケット/「映画パンフレット 「パピヨン」監督フランクリン・J・シャフナー 出演スティーブ・マックイーン」/「パピヨン-製作30周年記念特別版- [DVD]」/『パピヨン (1970年) (タイムライフブックス)
Dalton Trumbo
dalton trumbo.jpg1パピヨン001.png 実在の脱獄囚アンリ・シャリエール(1906-1973)が自らの数奇な半生を綴ったベストセラー小説のフランクリン・J・シャフナー監督による'73年の映画化作品。

 脚本はダルトン・トランボ(1905-1976)の遺作で、ハリウッドの赤狩りで映画界から干され、「ジョニーは戦場へ行った」('71年/米)を匿名で書いたという気骨の脚本家兼映画監Dalton Trumbo PAPILLON.jpg督ですが(「ローマの休日」('53年/米)の原作者・脚本家でもある)、映画の冒頭でギアナに送られる囚人達に「お前たちは祖国に見捨てられたのだ!」と威圧的に訓示する刑務所長役で出演しています(極めてアイロニカルな"お遊び"か)。

パピヨン1シーン.jpg パピヨン(スティーブ・マックイーン)が護送船上で債権偽造犯ドガ(ダスティン・ホフマン)に接近したのは、脱獄資金が要ると考えたためで(この時からもう脱獄を考えていた)、ドガは金を金属筒に入れて直腸内に隠し持っており、それを狙ってドガを殺そうとした囚人達からドガを救ったことで両者の絆は強まります。

1パピヨン002.png パピヨンが何度も逃亡を図って重禁固刑になる一方、ドガは隠し金を用いて一時は刑務所長代理のような立場にも就きますが、パピヨンの脱獄を助けようとした際に看守を殴ったため、成り行き上パピヨンと共に脱獄をすることになり、結局は捕まってしまい、パピヨンと同じく悪魔島に送られます。パピヨンの悪魔島からの最後の脱出では、ドガは土壇場で彼と行動を共にすることを躊躇し、そこに2人の生き方の違いが浮き彫りになっていますが、2人が強い友情で結ばれていることには変わりありません。

 ラストでパピヨンを見送るドガの、ダスティン・ホフマンの演技が良かったですが、実在のドガは1度も脱獄には参加することなく、悪魔島で15年の刑期を終えたそうです(しかし、アンリ・シャリエールの特赦活動をするなど、実際に友情関係にあった)。

1パピヨン003.png 一方、映画で2人と共に脱獄に加わったゲイの美男子マチュレットは、実際に1933年のアンリ・シャリエールの9度目の脱獄に、クルジオ(映画の中では看守との格闘に斃れる)と共に参加したそうで、映画ではマチュレットはその後の独房生活で獄死したことになっていますが、実際に獄死したのはクルジオであり、マチュレットは1944年のアンリ・シャリエールの悪魔島からの脱出(10度目)にも同行し成功しているので、ドガ、マチュレット、クルジオのそれぞれの役回りが部分的に置き換えられていることになります。

アンリ・シャリエール.jpg 原作にはこの他にもアンリ・シャリエールと友情関係にあり、彼を助ける多くの人物が登場し、アンリ・シャリエールという人はかなり律儀と言うか粘着気質ではなかったのかと思わせる記述の細かさで(単行本で上下巻2段組み各300ページ超、悪魔島から脱出する場面でまだ全体の3分の1を残している)、一方で、夢の中での審問官との遣り取りやインディオの部落での幻想的な体験がシュールに描かれていて、この部分は"小説(フィクション)"的な印象を受けますが、映画ではその部分も含め映像化されています(インディオの娘との恋物語とか、話を膨らませている部分もある。一夜にしてインディオ達がいなくなってしまうという話は原作には無く、こうした改変を加えるということは、原作に元々"小説(フィクション)"的要素があることを示唆しているのではないか)。

アンリ・シャリエール夫妻とスティーブ・マックイーン夫妻

1パピヨン005.pngPapillon (1973).jpgパピヨン _.jpg 貧しく不幸な家庭に生まれ、逆境から這い上がって大物スター俳優になったスティーブ・マックイーンに相応しい作品であり(この作品への彼の出演料は6億円!)、また、暗く狭い重禁固監獄で、腕立て伏せをして体力を保ち、ムカデやゴキブリまでスープに入れて栄養を摂って生き延びる主人公に、日本人とは異質の肉食系人種的な強さが感じられた作品でもありました。

 音楽はジェリー・ゴールドスミス。テーマ曲も良かったなあと思います(昔、学校の音楽の教科書に載っていた)。

Papillon (1973) 
「パピヨン」●原題:PAPILLON●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:フランクリン・J・シャフナー●製作:ロベール・ドルフマン/フランクリン・J・シャフナー●脚本:ダルトン・トランボ/ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:フレッド・J・キーネカンプ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:アンリ・シャリエール●時間:150分●出演:スティーブ・マックイーン/ダスティン・ホフマンパピヨンのテーマ.jpg/ロバパピヨン3.jpgート・デマン/ウッドロー・パーフリー/ドン・ゴードン/アンソニー・ザーブ/ヴィクター・ジョリー/ラトナ・アッサン/ウィリアム・スミザーズ/バーバラ・モリソン/ドン・ハンマー●日本公開:1974/03●配給:東宝東和●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-10)(評価:★★★★☆)●併映「ゲッタウェイ」(サム・ペキンパー)
"パピヨン"がココナッツ筏に乗っているのを下から安定させているダイバーが見える。

パール座入口(写真共有サイト「フォト蔵」)①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス ③高田馬場パール座 ④早稲田松竹
高田馬場パール座2.jpg高田馬場パール座 地図.pngパール座.jpg高田馬場パール座4.JPGパール座1.jpg高田馬場パール座(高田馬場駅西口、早稲田通り・スーパー西友地下) 1951(昭和26) 年封切館としてオープン。1963(昭和38)年の西友ストアー開店後、同店の地下へ。1989(平成元)年6月30日閉館。 

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アメリカン・ニューシネマ代表作2本。もし配役が当初の予定通りだったら違った作品に?。

俺たちに明日はない dvd.jpg 俺たちに明日はない1シーン.jpg    明日に向かって撃て dvd.jpg 明日に向かって撃て! チラシ 1975.jpg
俺たちに明日はない [DVD]」ウォーレン・ベイティ/フェイ・ダナウェイ「明日に向って撃て! (特別編) [DVD]

俺たちに明日はない パンフ 73年リバイバル版.gif俺たちに明日はない 3.jpg 60年代アメリカン・ニューシネマの代表的な作品と言えば、'67年の「俺たちに明日はない」「卒業」、'68年の「ワイルドバンチ」、'69年の「イージー・ライダー」「明日に向って撃て!」「真夜中のカーボーイ」あたりでしょうか。

「俺たちに明日はない」パンフレット(1973年リバイバル版)

アメリカン・ニューシネマ '60~70 別冊太陽.jpg アメリカン・ニューシネマを最も象徴する作品を1つ挙げるとすれば、メッセージ性という点から「イージー・ライダー」を挙げる人もいるかも知れませんが、やはり、"アメリカン・ニューシネマ第1号作品"とも言えるアーサー・ペン(Arthur Penn、1922 -2010)監督の「俺たちに明日はない」(Bonnie and Clyde)がそれに該当するとするのが大方の見方ではないかという気がします(何せ、この作品、当初の監督候補には、フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールといったヌーヴェルヴァーグの担い手の名が挙がっていたぐらいだし)。

アメリカン・ニューシネマ '60~70 別冊太陽 (構成=川本三郎・小藤田千栄子)

「俺たちに明日はない」1.jpg「俺たちに明日はない」2.jpg 名画座で初めて観た時には、既に公開から10年を経ており、それまでにリヴァイバル上映もされていて、おおよその展開を知ってはいましたが、それでも「死のバレエ」と言われるラスト・シーンを観た際の衝撃は大きく、併映の「真夜中のカーボーイ」(これもいい作品)を観終わった後で、また最初から見直しました(その後も何度かリヴァイバル・ロードショーなどで観た)。
俺たちに明日はない1.gif
俺たちに明日はない     .jpg デヴィッド・ニューマンとロバート・ベントンの脚本に共感したウォーレン・ベイティが製作者として関わっていますが、当初は製作に専念する予定だったそうで、一方、彼の姉であるシャーリー・マクレーンが強くボニーの役を願っていたのが、ウォーレン・ベイティがクライド役に決定したためマクレーンは役から降り(脚本の原案では、クライドはバイセクシャルとして扱われていて、これが映画化が難航する原因となったが、映画化のために改変された脚本でもクライドの"不能"がモチーフとして使われているため、何れにせよ、実姉であるマクレーンは降りざるを得なかった)、その結果フェイ・ダナウェイに白羽の矢が立ったとのこと。フェイ・ダナウェイはこの作品で一躍知名度を上げました。

 冒頭の方にある、着替えをするフェイ・ダナウェイの背中を舐めるようなショットが印象的でしたが、ウォーレン・ベイティがクライドを演じなければ、あれも無かったか、または別の女優が演じていた?(この映画の雰囲気は殆どフェイ・ダナウェイが作っているとも言え、フェイ・ダナウェイとシャーリー・マクレーンとでは随分イメージが違うような気がする)

明日に向かって撃て/バート・バカラック 1969.bmp明日に向かって撃て パンフ 75年リバイバル版.jpg ジョージ・ロイ・ヒル(George Roy Hill、1922 -2002)監督の「明日に向って撃て!」(Butch Cassidy and the Sundance Kid)も思い出深い作品であり、「俺たちに明日はない」の約半年前に観たため、自分の中ではある意味、"ニューシネマ"というとこちらの作品になるという面もあります。

「明日に向かって撃て!」パンフレット(1975年リバイバル版)(左)/バート・バカラック・オリジナル・サウンドトラック版CD(右)

明日に向って撃て 1シーン.jpg 「俺たちに明日はない」と同様に実在の人物をベースとしたギャング・ストーリーであり、アメリカン・ニューシネマに特徴的な悲劇的結末を迎えますが、多分この作品で最も印象に残るのは、バート・バカラックの「雨にぬれても」が流れる中、ポール・ニューマン(Paul Newman、1925 - 2008)がキャサリン・ロスを自転車に乗せて走るシーンではないかと思われ、イメージとしては「俺たちに明日はない」より明るいというか、ソフィストケートされて和田 誠 氏.jpgいる印象を受けます。

 この「雨に濡れても」の自転車のシーンは、その後TVコマーシャルで随分マネものが作られましたが、和田誠氏は、このシーンを初めて観た時に「CMみたい」と思ったそうで(『お楽しみはこれからだ PART2―映画の名セリフ』('76年/文藝春秋))、その感覚は分かる気がします。

 当初予定されていた配役は、ポール・ニューマンと共同で脚本を買い取ったスティーブ・マックイーン(Steve McQueen、1930-1980)がブッチ役で、ポール・ニューマンがサンダンス役だったそうですが、マックイーンが都合により出演しなくなったため、ポール・ニューマンがブッチ役に回り、当時無名のロバート・レッドフォード(Robert Redford、1936-)がサンダンス役に抜擢されたとのこと。

明日に向かって撃て 01.jpg しかも、いきなりロバート・レッドフォードに白羽の矢が立ったわけではなく、最初はマーロン・ブランド(Marlon Brando、1924-2004)がポール・ニューマンの共演者としてサンダンス役をやることになっていたのが、キング牧師の暗殺事件にショックを受けた(本当に?)マーロン・ブランドが役を断った結果、ロバート・レッドフォードに初の大役が回ってきたというから、世の中わからないものです。もし、マックイーンとポール・ニューマンの組み合わせだったとすれば、或いはポール・ニューマンとマーロン・ブランドの組み合わせだったら、これも違った雰囲気の作品になっていたように思います。当初予定配役の変更により、結果として、「俺たちに明日はない」はフェイ・ダナウェイを、「明日に向って撃て!」はロバート・レッドフォードを、それぞれスターダムに押し上げた作品になったわけだなあと。
                        
ジーン・ハックマン(全米映画批評家協会賞「助演男優賞」受賞)
俺たちに明日はない ジーン・ハックマン.jpg俺たちに明日はない」.jpg「俺たちに明日はない」●原題:BONNIE AND CLYDE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:アーサー・ペン●製作:ウォーレン・ベイティ●脚本:デヴィッド・ニューマン/ロバート・ベントン/ロバート・タウン●撮影:バーネット・ガフィ●音楽:チャールズ・ストラウス●時間:122分●出演:ウォーレン・ベイティ/フェイ・ダナウェイ/ジーン・ハックマン/マイケル・J・ポラード銀座文化・シネスイッチ銀座.jpg/エステル・パーソンズ/デンヴァー・パイル/ダブ・テイラー/エヴァンス・エヴァンス/ジーン・ワイルダー●日本公開:1968/02●配給:ワーナー・ブラザーズ=セブン・アーツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)●2回目:早稲田松竹(78-05-20)●3回目:銀座文化(88-06-18)(評価:★★★★)●併映(1回目):「真夜中のカーボーイ」(ジョン・シュレジンジャー)
ウォーレン・ベイティ フェイ・ダナウェイ.jpg2017年第89回アカデミー賞作品賞プレゼンター/フェイ・ダナウェイ(76歳)・ウォーレン・ベイティ(79際)
早稲田松竹.jpg高田馬場a.jpg早稲田松竹 1951年封切館としてオープン、1975年からいわゆる「名画座」に
①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス/③高田馬場パール座/④早稲田松竹

「スクリーン」1972年 10月号 表紙=キャサリン・ロス
スクリーン 1972年 10月号 表紙=キャサリン・ロス.jpg明日に向って撃て! ロス.jpgbutch_cassidy_and_the_sundance_kid1.jpg「明日に向って撃て!」●原題:BUTCH CASSIDY AND THESUNDANCE KID●制作年:1969●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・ロイ・ヒル●製作:ジョン・フォアマン●脚本:ウィリアム・ゴールドマン●撮影:コンラッド・L・ホール●音楽:バート・バカラック●時間:110分●出演:ポール・ニューマン/ロバート・レッドフォード/キャサリン・ロス/ストローザー・マーティン/ジェフ・コーリー/ジョージ・ファース/クロリス・リーチマン/ドネリー・ローズ/ケネス・マース/ヘンリー・ジョーンズ●日本公開:1970/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:渋谷文化劇場(77-10-23)(評価:★渋谷文化劇場.png★★★)●併映:「追憶」(シドニー・ポラック)
渋谷文化劇場 1952年11月17日、渋谷東宝会館地下にオープン 1989年2月26日閉館(1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーがオープン)

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「●ジョン・ヴォイト 出演作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(旧イイノホール)

「チャンプ」に比べリアリティがある分、カタルシス効果は弱い。佳作だが地味か。

TABLE FOR FIVE 1982 5人のテーブル.jpg5人のテーブル チラシ.png 5人のテーブル ビデオ.jpg    飯野ビル.jpg
「5人のテーブル」輸入版VHS・チラシ/「5人のテーブル [VHS]」/内幸町・旧飯野ビル(手前中央)

Table For Five movie poster2.jpg5人のテーブル 輸入版dvd.jpg もとプロゴルファーで現在は不動産屋のタネン(ジョン・ヴォイト)は、別れた妻(ミリー・パーキンス)のもとで育てられている3人の子供たちと年に一度過ごす期間に、夏の地中海を豪華客船で旅をするというプランを立てる。それは子供達の愛情を取り戻し、妻との復縁の為に無理をして実行した旅行だったが―。

 父親と息子の絆を描いた「チャンプ」('79年)で父親のプロボクサー役を演じたジョン・ヴォイトが、3年後のこの作品でもまた、自堕落により離婚し、今は何とか家族との絆を回復したいと考えている父親を演じています(この映画の製作も兼ねたジョン・ヴォイトの実生活における父親もプロゴルファーだった。娘は女優のアンジェリーナ・ジョリー)。

 主人公の父親が、酒などで身を持ち崩した離婚男であるのは「チャンプ」のボクサーと同じですが、いきなりエジプト旅行とかを思い立ったりして、性格的にもやや破綻気味なのが「チャンプ」とは異なる点で、"性格俳優"のジョン・ヴォイトが演じるにより相応しいキャラクターだったかも知れません。

 3人の子供(内1人はベトナム系養子)を連れての旅の最中にも、元妻以外の新たな相手女性を探し求めたりしていて、レストランでの食事で"5人席"を予約した腹の内を子供達に見透かされるなど、子供の方も「チャンプ」よりスレてきていていますが、そうしたことも含め、脚本にはリアリティがあったのでは。

5人のテーブル 1.jpg 別れた妻の再婚相手は弁護士であり、普通にエンタメ系ならば、こうした社会的地位のある強力なライバルとダメ男だった主人公が競い合って、最後は主人公が再び家族を取り戻すという風になりがちなのですが、この作品は必ずしもそうはなりません。

 「チャンプ」のような"大円団"的な終わり方にはならないので、「チャンプ」と同じくらい"泣ける映画"との触れ込みでロードにかかりましたが、カタルシス効果は弱いと思います。

TABLE FOR FIVE3.jpg 「父親とは何か」を考えさせる映画であり、但し、ここで求められている父親像は、ハリウッド映画の伝統的な「強い父親」像ともやや異なり、アメリカ映画というよりヨーロッパ映画を観ているみたいな感じでした("新たな相手女性?"役でマリー・クリスチーヌ・バローとか出てくるし)。

 70年代後半から80年代にかけては、日本の経済は安定成長期でしたが(その後、バブル経済に突入する)、片やアメリカは、景気が低迷して企業の生産性は落ち込み、リストラが横行して多くの労働者が失業に喘いでいました。

5人のテーブル2.jpg 「チャンプ」('79年)と「5人のテーブル」('82年)の2作品だけの比較で見るのは乱暴かもしれませんが、不況の時は「一発逆転」的なドリーミィな作品がウケるかも知れないけれども、あまりに不況が長引くと、そんな"夢物語"のような話は次第に受け容れられにくくなり、こうしたリアルな脚本になったのではないかとも。

 豪華客船での地中海クルーズという見た目の派手さとは逆に、作品そのものの印象が、"佳作"ではあるが地味ということになるのはそのせいでしょう。世の景気は映画の作風に影響するのかも(ビデオ化はされているが、DVDは見当たらない。"バブル直前の日本"向きの作品ではなかった?)。

 霞が関(内幸町)・飯野ビル内「イイノホール」での試写会で鑑賞しました(試写会で映画を観るというのは個人的には滅多にないことなのだが、たまたま勤め先の近くだったので)。霞が関のど真ん中、地下鉄「霞が関」駅の真上に、これだけの敷地を使って9階建とは勿体ないと常々思っていたら(隣の日比谷中日ビルも10階建とそう高くはないが)、この度、約半世紀ぶりに建て替えられることになりました(新ビルは27階建、ホールの席数は600超→500席に減る)。

「5人のテーブル」●原題:TABLE FOR FIVE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・リーバーマン●製作: ロバート・シャッフェル/ジョン・ヴォイト●脚本:デイヴィッド・セルツァー●撮影:ヴィルモス・ ジグモンド●音楽:ジョン・モリス●時間:122分●出演:ジョン・ヴォイト/リチャード・クレンナ/ミリー・パーキンス/マリー・クリスチーヌ・バロー/ロクサーナ・ザル/ロビー・カイガー/ソン・ホアン・ブイ/ケヴィン・コスナー●日本公開:1983/03●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:霞が関・イイノホール(83-03-01)(評価:★★★☆)

新イイノホール.jpg飯野ビル3.jpgイイノホール地図.jpg旧イイノホール 1960年10月霞が関・飯野ビル内に、試写会、舞踊・演劇・落語公演、会議・セミナー用多目的ホールとしてオープン。2007(平成19)年10月30日閉館。2011(平成23)年11月再オープン予定。

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子役を使って泣かせるなんてアザトイと思いながらも、やはり泣けてしまう...。
チャンプ dvd.jpg THE CHAMP.jpg  新宿ピカデリー.jpg 新宿ピカデリー 新館.jpg
チャンプ [DVD]」 Ricky Schroder and Jon Voight  旧・新宿ピカデリー(2006年閉館)/新・新宿ピカデリー

「チャンプ」 (79年/米).jpgチャンプ 輸入版ポスター.jpg いつの日か栄光の座に返り咲くことを夢見る元世界チャンピオンのボクサー(ジョン・ヴォイト)と、彼を尊敬し今もチャンプと呼ぶ息子(リッキー・シュローダー)の親子の絆、それに別れた妻(フェイ・ダナウェイ)が絡んでの家族愛を描いた作品で、日本でも大いにヒットしました。

 「ロミオとジュリエット」 ('68年/英・伊) 、「ブラザー・サン シスター・ムーン」('72年/英・伊)のフランコ・ゼフィレッリ監督よるキング・ヴィダー監督の同名作品('31年)のリメイクですが、子役リッキー・シュローダーの演技が絶賛され、これはフランコ・ゼフィレッリの演出によるところが大きいのではないかと個人的には思いました(この監督は、アッシジのフランチェスコの半生を描いた「ブラザー・サン シスター・ムーン」('72年/伊)でも素人に近い役者を使っていたが、主演のグレアム・フォークナーは聖人になりきっていた)。

輸入版ポスター

 もともとイタリア映画(イタリア人監督の映画)には、ビットリオ・デ・シーカの「自転車泥棒」('48年)からエルマンノ・オルミの「木靴の樹」('78年)にまで連なるネオレアリズモの流れがあり、共通する要素は"素人"乃至"子役"を旨く使っていることではないかとも思ったりします。

チャンプ 1979 03.jpg 37歳でチャンピオン戦というのはかなり無理があるなあとか(実際、当時はボクシングを冒涜しているとの批判もあったが、ジョン・ヴォイドのボクシング・スタイルは、「ロッキー」のシルベスター・スタローンのそれなどよりはずっと本モノぽかった)、或いは、子役を使って泣かせるなんてアザトイなあとか、やや斜に構えて観ていても、やはり結局最後は泣けてしまいます。

チャンプ(1931).jpg 個人的には子役の演技にはやや鼻につく面もありましたが、強さと弱さの両面を併せ持つ父親を演じたジョン・ヴォイドの演技がそれをカバーしているように思いました。フェイ・ダナウェイも含め、"ベテランが脇を固める"というパターンか。因みに、この作品は、キング・ヴィダー監督の1931年作品のリメイクですが、旧作の方は未見。小津安二郎の「出来ごころ」('34年)のヒントとなった作品でもあるそうです。

「チャンプ」(1931)

 上映後に女性客がみんな泣いているのでちょっと気恥ずかしかった記憶がありますが(今ここで流されている涙を全部かき集めたらどれぐらいになるのだろうかなどと余計な事を考えてしまうのが自分の悪い癖)、とは言え、映画を観て涙を流すことが皆無になったら、映画館に行って映画を観る意味は無くなるのかも知れない...。

チャンプ 1979 01.jpg「チャンプ」●原題:THE CHAMP●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:フランコ・ゼフィレッリ●製作:ダイソン・ロヴェル●脚本:本 ウォルター・ニューマン●撮影:フレッド・コーネカンプ●音楽:デイヴ・グThe Champ (1979).jpgルーシン●原作:フランシス・マリオン●時間:123分●出演:ジョン・ヴォイト/フェイ・ダナウェイ/リッキー・シュローダー/ジャック・ウォーデン/アーサー・ヒル/ジョーン・ブロンデル/ストロザー・マーティン●日本公開:1979/07●配給:MGM映画=CIC●最初に観た場所:新宿ピカデリー(80-11-14)(評価:★★★☆)●併映:「クレイマー、クレイマー」(ロバート・ベントン)
The Champ (1979)

 この作品を観たのは、新宿松竹会館の旧「新宿ピカデリー」に於いてで、当時は「新宿松竹」(地下劇場)との2館体制で、「新宿ピカデリー」は2本立ての二番館でした(「チャンプ」の併映は「クレイマー、クレイマー」だった)。それが後に「アマデウス」('84年/日本公開'85年)を観た頃にはロード館になっていて、その後、松竹会館全体としては3館体制、4館体制となっていきました(新宿ピカデリー1~4)。

新宿ピカデリーS.jpg新 新宿ピカデリー.jpg 「新宿ピカデリー(ピカデリー1)」は1,154席(2001年の改修前)の大劇場でしたが、2006年に全館閉館し、2008年に10スクリーンのシネコンとして再オープンしました。新生「新宿ピカデリー」の10スクリーン全部合わせた席数は、以前の4館の合計の約5割増しになるそうですが、最大席数の「スクリーン1」で約600席と、かつての「ピカデリー1」の約半分しかないことになります。
新「新宿ピカデリー」 2008年7月オープン

 「みんな泣いているのでちょっと気恥ずかしかった」と書きましたが、大スクリーンということだけでなく、多くの観客と感動を共有できるのも大劇場の魅力かも知れないと思ったりもします。そうした大劇場は消えゆくのみかという寂しい気もするし、同じ1フロアーに昔は一体どうやって今の2倍もの客席を詰め込んでいたのかと思うと、やや不思議な気もします(ゴンドラ席があったなあ)。

新宿ピカデリー 閉館.jpg新宿ピカデリー.jpg 旧・新宿ピカデリー 1958年、靖国通り沿い「新宿松竹会館」1階に「新宿松竹映画劇場」オープン。1962年~「新宿ピカデリー」(1154席)、1987年~「新宿ピカデリー1」。2001年3月改修(820席)。2006年5月14日閉館。

【松竹会館全体】1958年10月28日「新宿松竹映画劇場」「新宿名画座」「新宿スター座」「新宿松竹文化演芸場」の4館オープン、1962年9月28日~「新宿ピカデリー」「新宿松竹」に、1987年7月4日~雀荘を改修し「新宿ピカデリー2」(44席)オープン(3館体制)、1992年8月12日「新宿ピカデリー2」オープン(4館体制、前「ピカデリー2」→「ピカデリー3」)、1999年6月12日「新宿松竹」→「ピカデリー2」、「ピカデリー2」→「ピカデリー3」、「ピカデリー3」→「ピカデリー4」に改称。2001年3月全館改修。2006年5月14日閉館。2008年7月19日、新生「新宿ピカデリー」オープン(10スクリーン)。

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骨太感のある娯楽映画。ボガートの好演を凌ぐエドワード・G・ロビンソンの悪役ぶり。

キー・ラーゴ dvd.jpg キー・ラーゴ ポスター.jpg KEY LARGO.jpg key largo movie.jpg
キー・ラーゴ [DVD]」/輸入版ポスター  ローレン・バコール、ハンフリー・ボガート

キー・ラーゴ2.jpg 第2次世界大戦の復員将校フランク(ハンフリー・ボガート)は、戦死した部下の遺族に会いにフロリダ半島南端の小島キー・ラーゴを訪ねるが、当地で部下の父親(ライオネル・バリモア)と未亡人ノーラ(ローレン・バコール)が経営するホテルは、ギャングの頭目ロッコ(エドワード・G・ロビンソン)とその一味らの隠れ家になっていた。大きな取引を控え、ハリケーンの接近に苛立つギャング達は横暴になっていき、ノーラや父親に暴力を奮い、遂には保安官助手を殺してしまうが、戦争のため虚脱感に陥っているフランクはそれを見て何の反応も示さず、ノーラはその腑甲斐なさを歯がゆく思う―。

「キー・ラーゴ」ローレン・バコール.jpg 1948年の作品。1939年にブロードウェイで上演されたマックスウェル・アンダーソンの戯曲「キー・ラーゴ」を、ジョン・ヒューストンとリチャード・ブルックスが映画用に脚色したもので、「脱出」('44年)「三つ数えろ」('46)、「潜行者」('47年)に続く、ボガートとバコールの4度目にして最後の夫婦共演作でもあります。

 オリジナルが戯曲であったことは後に知りましたが、それほど多くない登場人物、密室状態のホテル、フランクとロッコの心理的駆け引きやノーラのフランクに対する見方の変化など、確かに心理劇的要素が強い作品かも。

キー・ラーゴ 1.jpg それでいてスカッとしたカタルシスがあるのは、最初の内は"男気"をなかなか見せないフランクが、徐々にその本分を発揮し、最後に...というプロセスから結末までの描き方の上手さによるものでしょう。

 ロッコの情婦ゲイ(クレア・トレヴァー)が、アル中の元歌手か何かで、ロッコからそんなに酒が飲みたいなら歌えと言われて一生懸命歌いますがそんな下手なんじゃやれないと言われたりして、最後はフランクがロッコに逃亡用の船の操縦を命じられた際にそっとフランクにピストルを手渡すところなどは、定番と言えば定番なのですが、役者陣がしっかりしている分、シンプルなストーリーが活き、骨太感のある娯楽映画に仕上がっています(クレア・トレヴァーはこれら一連の演技でアカデミー助演女優賞受賞)。

「キー・ラーゴ」E・G・ロビンソン.jpg とりわけ、その演技が光るのはエドワード・G・ロビンソンで、その強面の悪役ぶりは、ボガートの好演をも喰ってしまっているほどです。エドワード・G・ロビンソン 十戒.jpg「十戒」('57年)でも、チャールトン・ヘストン演じるモーゼに逆らって民衆を堕落へと扇動する男を演じていましたが、こうした心理劇的要素の強い作品では、ますますその凄味が増してくる俳優だったように思います(スティーブ・マックイーンと共演した「シンシナティ・キッド」('65年)などもそう)。

キー・ラーゴ エドワード・G・ロビンソン.jpg エドワード・G・ロビンソン(1893-1973/享年79)という人は8カ国語を操るインテリだったそうで、そのリベラルな思想のため40年代後半はハリウッドでも冷遇され、この作品でも"後輩スター"であるハンフリー・ボガートの脇に回ることになりましたが、仕事と割り切って出演を承諾、ボガートの方もロビンソンに対し"先輩スター"として接し、他のスタッフもこれに倣うよう命じたという逸話があります。

 この作品は吉祥寺の「ジャヴ50」で観ましたが(当時は自主上映館としての色合いが強かった)、現在は「バウスタウン」内の「バウスシアター2」というミニシアター(席数50)になっています。当時の「ジャヴ50」の客席フロアは"個席"ではなく、長椅子(ビニール張りのソファー)が並べられているだけであり、「席数50」と言うより「収容観客数50」という意味でのネーミングだったのでしょう。

Key Largo (1948)
KEY LARGO3.jpgKey Largo (1948).jpg「キー・ラーゴ」ローレン・バコール2.jpg「キー・ラーゴ」●原題:KEY LARGO●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ヒューストン●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:リチャード・ブルックス/ジョン・ヒューストン●撮影:カール・フロイント●音楽:マックス・スタイナー●原作戯曲:マックスウェル・アンダーソン「キー・ラーゴ」●時間:138分●出演:ハンフリー・ボガート/エドワード・G・ロビンソン/ローレン・バコール/ライオネル・バリモア/クレア・トレヴァー/ジョン・リッジリー/モンテ・ブルー/トーマス・ゴメス●日本公開:1951/11●配給:セントラル●最初に観た場所:吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50(85-12-21)(評価:★★★★)

吉祥寺バウスシアター2(旧ジャヴ50)           
じゃv50.jpgバウスシアター.jpg.png吉祥寺バウスシアター.jpg吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50 1951年~「ムサシノ映画劇場」、1984年3月~「吉祥寺バウスシアター」(現・シアター1/218席)と「ジャヴ50」(現・シアター2/50席)の2館体制でリニューアルオープン。2000年4月29日~シアター3を新設し3館体制に。 2014(平成26)年5月31日閉館。

吉祥寺バウスシアター映画から船出した映画館』(2014/05)
吉祥寺バウスシアター 映画から船出した映画館.jpg じゃv 50.jpg
   
バウスシアター2.JPG吉祥寺バウスシアター3.jpg吉祥寺バウスシアター内

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3監督のオムニバス。コアなファンがいてもおかしくない雰囲気はある。

世にも怪奇な物語 dvd.jpg  世にも怪奇な物語 ポスター.jpg  世にも怪奇な物語 輸入版dvd.jpg
世にも怪奇な物語 HDニューマスター版 [DVD]」/ポスター/輸入版DVD 
世にも怪奇な物語 1-1.jpg世にも怪奇な物語 ジェーン・フォンダ.jpg エドガー・アラン・ポーの怪奇小説3作を基に、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの3監督が共作したオムニバス映画。一応、全体のトーンはゴチック・ホラーですが...。

 第1話「黒馬の哭く館」(ロジェ・ヴァディム監督) 若くして莫大な財産を相続し、我儘放題に暮らす伯爵家の娘フレデリック(ジェーン・フォンダ)は、ある日、親族で唯一彼女を批判して憚らない男爵ウィルヘルム(ピーター・フォンダ)に偶然助けられたことで彼に一目惚れし、彼を誘惑しようとするが、男爵は彼女の誘い世にも怪奇な物語」 (67年/仏・伊)2.jpgには乗らず、プライドを傷つけられた彼女は家臣に命じて男爵の厩に火をつけさせる。愛馬を助けようとした男爵は焼死し、ショックを受けた彼女は、火事の後にどこからともなく現れた黒馬に癒しを求める―。

ロジェ・ヴァディム.gif ロジェ・ヴァディム監督による第1話は、ゴチックホラー調と次回作「バーバレラ」にも通じるセクシー&サイケデリック調の入り混じった感じで、詰まる所、ヴァディムが妻の美貌と伸びやかな肢体を獲りたかっただけのことかとも勘繰りたくなるくらいジェーン・フォンダがセックス・アピールしており、これ、純粋な意味での"ゴチック調"とはちょっと違うかも...。

第2話「影を殺した男」.jpg世にも怪奇な物語 影を殺した男1.jpg 第2話「影を殺した男」(ルイ・マル監督) 暴力で他の生徒らを支配する残忍な少年ウィリアム・ウィルソンが、ある時他の少年を苛めていると1人の転校生が近付いてきて、その少年もウィリアム・ウィルソンと名乗るが、彼は全てにおいてウィルソンより優れていた。ある夜、寝ていたその転校生をウィルソンは絞め殺そうとするが、途中で気付かれ放校処分に。数年後、医大に進んだウィルソン(アラン・ドロン)は若い女性を誘拐し、解剖を始めようとしていた―。

「影を殺した男」02.jpg世にも怪奇な物語 2.jpg アラン・ドロンがベッドに縛りつけた全裸女性を解剖しようとするシーンをルイ・マル監督が撮っているというのも驚きですが、むしろ、この第2話「影を殺した男」の方が、ポーの作品の雰囲気は出ていたかも知れず、青年になったウィルソンの、優(やさ)男の裏側に残忍さを秘めた二重人格者ぶりは、TV番組「デクスター」のよう。この場合、"二重人格"と言うより完全に"分身"(ドッペルゲンガー?)だけど。 ウィルソン(アラン・ドロン)は、イカサマ賭博で手に入れた女(ブリジット・バルドー)を鞭打ち残酷な快楽に浸るというスゴい設定ながも、ドロンは好演しており、ドロン相手にトランプの賭けをする女賭博師ブリジット・バルドー(ロジェ・ヴァディムの元妻!)の演技も良くて、ジェーン・フォンダよりは演技しているという感じでした。

世にも怪奇な物語 悪魔の首飾り1.jpg 第3話「悪魔の首飾り」(フェデリコ・フェリーニ監督) 落ちぶれたイギリス人俳優トビー(テレンス・スタンプ)は撮影のためイタリアへ飛ぶが、酒と麻薬で意識は混濁。そのトビーの前に度々現れるのは、少女の姿をした死神だった―。

世にも怪奇な物語 3.gif 第3話は、ストーリーよりも、フェリーニ監督の映像美が(美的と言うより意匠的なのだが)堪能できる作品。主人公の妄想に出てくる少女(死神)が、なぜ白い服を着て白いボールを持っているのかよく解りませんが、まあ、理屈よりも映像美...。テレンス・スタンプの出ようとしている映画が、キリストが西部の草原に降臨するという「カトリック西部劇」なるわけのわからない映画であることや、マスコミの取材攻勢を描いたところなどは「甘い生活」('59年)の雰囲気に繋がりますが、3作品の共通テーマが「死」であることからすると、締め括りに最も相応しい作品かも知れません。世にも怪奇な物語 輸入版ポスター.jpg一方で、これだけが時代背景が「現代」であることもあって、前2作とはトーンが異なる感じも(イタリア人監督ということもあるか)。ただ、神経質そうな主人公を演じるテレンス・スタンプの演技は悪くない、と言うか、かなり良かったように思います(アラン・ドロンより上か)。

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ.jpg和田 誠 氏2.jpg 何れも「怪奇」な話であるけれども怖くはないという感じ。和田誠氏は『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』('75年/文藝春秋)の中で、ロジェ・ヴァディムのパートは「耽美主義的映像が逆に小細工のようでいけなかった」とし、「通俗的にはルイ・マルが面白く、怖さや不思議さではフェリーニが圧巻」としています。

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ

高田馬場東映パラス 入り口.jpg「世にも怪奇な物語」.jpg 高田馬場東映パラス(時々変わった作品を上映していた)で観て以来、10年以上もビデオにもならなかったので、もう見(まみ)えることはないと思っていたら、'99年にTV放映されビデオも発売、最近はCS放送で放映されたり、DVDにもなったりしていて、昨年('10年)は遂にデジタル・リマスター版が新宿武蔵野館で公開されました。

 3作とも、コアなファンがいてもおかしくない、カルトというか独特な雰囲気は確かにありました。考えてみれば、作風はマイナーでありながらも一応エドガー・アラン・ポーの原作に忠実に作られているわけだし、何よりも贅沢過ぎると言っていいくらい豪華な配役でもあることだし、実際そうなったから言うわけではないですが、リバイバル上映されてもおかしくない作品でした。

世にも怪奇な物語」 pos.jpg
世にも怪奇な物語」 (67年/仏・伊)1.jpg「世にも怪奇な物語」●原題:仏:HISTOIRES EXTRAORDINAIRES(珍しい物語)/伊:TRE PASSI NEL DELIRIO(譫妄への三段階)/英:SPIRITS OF THE DEAD(死者の霊)●制作年:1967年●制作国:フランス/イタリア●監督:ロジェ・ヴァディム(1話「黒馬の哭く館」)/ルイ・マル(2話「影を殺した男」)/フェデリコ・フェリーニ(3話「悪魔の首飾り」)●脚本:ロジェ・ヴァディム(1話「黒馬の哭く館」)/パスカル・カズン(1話)/ルイ・マル(2話「影を殺した男」)/クレマン・ビドル・ウッド(2話)/ダニエル・ブーランジェ(1話、2話)/フェデリコ・フェリーニ(3話「悪魔の首飾り」)/ベルナルディーノ・ザッポーニ(3話)●撮影:クロード・ルノワール(1話「黒馬の哭く館」)/トニー世にも怪奇な物語 1-2.jpgノ・デリ・コリ(2話「影を殺した男」)/ジュゼッペ・ロトゥンノ(3話「悪魔の首飾り」)●音楽:ジャン・プロドロミデス(1話「黒馬の哭く館」)/ディエゴ・マ悪魔のような恋人2.jpgッソン(2話「影を殺した男」)/ニーノ・ロータ(3話「悪魔の首飾り」)●原作:エドガー・アラン・ポー「メッツェンゲルシュタ世にも怪奇な物語」 (67年/仏・伊)00.jpgイン」(1話「黒馬の哭く館」)/「ウィリアム・ウィルソン」(2話「影を殺した男」)/「悪魔に首を賭ける勿れ」(3話「悪魔の首飾り」)●時間:121分●出<演:ジェーン・フォンダ(1話「黒馬の哭く館」)/ピーター・フォンダ(1話)/アラン・ドロン(2話「影を殺した男」)/ブリジット・バルドー(2話)/テレンス・スタンプ(3話「悪魔の首飾り」)/サルヴォ・ランドーネ(3話)●日本公開:1969/07●配給:MGM●最初に観た場所:高田馬場東映パラス(86-11-30)(評価:★★★☆)●併映:「白夜」(ルキノ・ヴィスコンティ)
 
  
 
 
 
 
高田馬場a.jpg高田馬場・稲門ビル.jpg高田馬場東映パラス 入り口.jpg高田馬場東映パラス 高田馬場駅早稲田口・稲門ビル4階(現・居酒屋「土風炉」)1975年10月4日オープン、1997(平成9)年9月23日閉館

①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス/③高田馬場パール座/④早稲田松竹 

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共演の男優・女優を追悼。シェイクスピアを下敷きにした見所多い(?)作品「禁断の惑星」。

禁断の惑星 dvd.jpg 禁断の惑星 英語ポスター.jpg 禁断の惑星 ポスター.jpg 昆虫型ミュータントがアダムス博士を襲う.jpg
禁断の惑星 [DVD]」「禁断の惑星」輸入版ポスター/日本版ポスター 「宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]

禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg 宇宙移民が行われている2200年代、アダムス機長(レスリー・ニールセン)が率いる宇宙船は、20年前に移住して消息を絶った移民団の捜索のために、惑星第4アルテアへ着陸するが、アルテア移民団の生き残りは、モービアス博士(ウォルター・ピジョン)と、アルテアで誕生した彼の娘アルティラ(アン・フランシス)の2人と、博士が作った万能ロボット・ロビーだけだった。博士によれば、アルテアにはかつて高度に進化し、発達した科学を創り上げた先住民族が存在したが、原因不明の滅亡を遂げ、そして移民団も正体不明の怪物に襲われて自分達以外は死んでしまったという―。

アン・フランシス_3.jpgForbidden Planet2.jpgForbidden Planet.jpg アダムス機長を演じたレスリー・ニールセンが昨年('10年)11月に亡くなった(享年84)のに続いて、アルティラを演じたアン・フランシスも今年('11年)1月に亡くなり(享年80)、寂しい限りです。TV番組「ハニーにおまかせ」('56年~)の私立探偵役のアン・フランシスも、「裸の銃(ガン)を持つ男」('86年)のレスリー・ニールセンも、この映画では2人とも20代でしょうか。この作品を観ると、永遠に2人とも若いままでいるような錯覚に陥ります。

禁断の惑星 名画座ミラノ2.jpg 「禁断の惑星」がシェイクスピアの「テンペスト」を下敷きにしていることはよく知られていて、最初に劇場(名画座ミラノ、すでに「名画座料金」ではなくなっていた)で観た時も、同時期の作品「宇宙水爆戦」('55年)などに比べてよく出来ているように思いました。

宇宙水爆戦1.jpg 「宇宙水爆戦」の方は結構キッチュ趣味と言えるかも。惑星間戦争で絶滅の危機にある星の異星人の科学者が、地球の科学者に協力を依頼するが、実はその星の指導者は地球を支配して移り住むことを企んでいた―というストーリーですが、最後、事件が一見落着したかと思ったら、宇宙船内に潜んでいた宇宙昆虫人間みたいなミュータントに襲われそうになるという―このとってつけたように出現するミュータントがポスターなどではメインになっていて、それだけストーリーは印象に残らないといことでしょうか。ストーリー的にも怪物キャラクター的にも、当時流行ったSFパルプマガジンの影響を強く受けているようです(そのこともキッチュ感に繋がる要因か。でもこのキッチュ感こそが、この作品の根強い人気の秘密かも)。

宇宙家族ロビンソン3.jpg 一方、「禁断の惑星」に出てくる有名キャラクターは万能ロボット「ロビー」で、これを参照したのが60年代に作られたテレビ番組「宇宙家族ロビンソン」に出てくるロボット(愛称:フライデー)だったりし、先駆的な要素も結構あったわけです(「宇宙家族ロビンソン」には外にも「宇宙水爆戦」も参考にしている箇所が幾つかある)。

刑事コロンボ 愛情の計算2.png刑事コロンボ 愛情の計算.jpg 因みに、このロボットは、「刑事コロンボ」の第23話「愛情の計算」('74年)にも"ゲスト出演"してロビーとフライデー.jpgおり(下半身の造りが二本脚から台座型に変わっている)、人工知能研所の所長である犯人のアリバイ作りに一役買っていますが、ロボットのキー・ボードを叩く手つきの大雑把さを見ると、ちょっと所長の代役をさせるには無理な感じも。

ロビー(「禁断の惑星」)とフライデー(「宇宙家族ロビンソン」)のおもちゃ

 事件の鍵を握る天才少年の名は、スティーブン・スペルバーグで、これは勿論、コロンボ・シリーズ第3話「構想の死角」を撮ったスピルバーグ監督の名前をもじったもの。息子を庇う親心を利用して犯人を自白に追い込むというのは、後のフェイ・ダナウェイが犯人役を演じた第62話「恋におちたコロンボ」('93年)でもFaye Dunaway & Peter Falk.jpg恋におちたコロンボ2.jpg(こちらは娘を庇ってだが)使われましたが、真犯人ではないと分かっていながら拘束するのはいかがなものでしょうか(「恋におちたコロンボ」の脚本はピーター・フォーク自身が手掛けている)。但し、フェイ・ダナウェイの演技力はさすが。70年代のシリーズ作に比べ見劣りがする90年代のシリーズ作(特に後期作品)の中では、ひときわ映える名犯人役と言っていいのではないでしょうか。
Faye Dunaway & Peter Falk

アン・フランシス「死の方程式」「溶ける糸
死の方程式 アン・フランシス.jpg溶ける糸3 アン・フランシス.jpg 因みに「刑事コロンボ」シリーズに出たのはロボットだけではなく、アン・フランシスも「刑事コロンボ」の第8話「死の方程式」('72年)にロディ・マクドウォール(「猿の惑星」)演じる犯人の秘書兼愛人役で、第15話「溶ける糸」('73年)にレナード・ニモイ(「スタートレック」)演じる犯人に殺されてしまう看護婦役で出ているし、レスリー・ニールセンも、第7話の「もう一つの鍵」で、犯人である広告会社役員役のスーザン・クラークの恋人役で、第34話「仮面の男」('75年)で、元同僚のスパイに殺害される被害者役仮面の男2.jpg刑事コロンボ 仮面の男2.jpgで出ています。

レスリー・ニールセン 「仮面の男

 レスリー・ニールセンはこの頃もまだ二枚目俳優で(コメディ初出演は「フライング・ハイ」('80年))、「禁断の惑星」や「刑事コロンボ」の演技と「裸の銃(ガン)を持つ男」('88年)の演技を比べてみるのも一興でしょうか。コメディ俳優としてブレイクするきっかけとなった「裸の銃を持つ男」ではエリザベス女王裸の銃(ガン)を持つ男(1988).jpgをはじめフセイン大統領、ホメイニなど様々な人物をコケにし、「裸の銃を持つ男PART2 1/2」('88年)では当時のアメリカ大統領裸の銃(ガン)を持つ男2.jpgジョージ・ブッシュをコケにしています。「裸の銃を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱」('94年)までプリシラ・プレスリー、ジョージ・ケネディ、O・J・シンプソンという共演トリオは変わらず和気藹々といった雰囲気でしたが、O・J・シO・J・シンプソンs.jpgンプソンは'94年に発生した元妻の殺害事件(「O・J・シンプソン事件」)の被疑者となってしまいました(刑事裁判で殺人を否定する無罪判決となったが、民事裁判では殺人を認定する判決が下った)。


Forbidden Planet3.jpg 「禁断の惑星」という作品は、ストーリーも凝っているように思われ、「テンペスト」をなぞるだけでなく、「イドの怪物」という精神分析的な味付けがされていて、ファーザー・コンプレックスがモチーフになっているように、フロイディズムの影響も濃く滲んでいます。
 また、ロボット・ロビーが博士に怪物の攻撃を止めるよう命じられても出来ないのは、アイザック・アシモフの「ロボット3原則」が下敷きになっているわけですが、この「ロボット3原則」は「ロボコップ」('87年/米)のラストなどにも援用されていたなあ。

 「禁断の惑星」も、時代ものSFパルプマガジンをそのまま映像化したような雰囲気はあるものの、それでいて結構おシャレな、レトロ・モダン感満載の"未来"像が楽しめるし、アン・フランシスがパルプマガジンの表紙そのままに超ミニで歩き回るし、この作品が実質的には映画デビュー作であるアダムス機長を演じたレスリー・ニールセンは、多分大多数の日本人がイメージしキャプテンウルトラ222.jpgている彼の演技とは全く異なる演技をしているし(昔の怪獣映画の宝田明や夏木陽介の感じ、乃至は、背景も含めると「キャプテンウルトラ」('67年)の中田博久の方がより近いか)、いろいろと見所が多い作品です(「なぜウチの中にビオトープがあるのか?」とか、突っ込み所も含めて)。

キャプテンウルトラ ハック2.jpg 尚「キャプテンウルトラ」にも、「宇宙警察パトロール隊」と共に「宇宙船シュピーゲル号」(なぜか「鏡」を意味するドイツの有名週刊誌の名前)に乗り込み、バンデル星人や怪獣たちと戦い続ける万能ロボット「ハック」が登場しますが、こちらは「ゴジラ」以来の日本の"伝統"か(この番組の制作城野ゆき.jpg会社は東映)、着ぐるみっぽいロボットでした。このシリーズは、脚本が番組放送に追いつかなくなった「ウルトラマン」と、その後継番組として構想されていた「ウルトラセブン」との間の所謂「つなぎシリーズ」だったので、書割りのような背景からも察せられる通り、番組制作予算は限られていたようです。その後ウルトラ・シリーズでお決まりとなる"紅一点"の女性隊員は、ここでは「アカネ隊員」ですが、「ウルトラマン」で桜井浩子が演じた「フジ・アキコ隊員」、「ウルトラセブン」で菱見百合子が演じた「アンヌ隊員」と並んで、この「キャプテンウルトラ」で城野ゆきが演じた「アカネ隊員」も、今も第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」.jpgって人気があるようです。いわばフジ・アキコ隊員の後輩格、アンヌ隊員の先輩格になりますが、アカネ隊員は紅一点と言うより"準主役"と言った方がいいかも。アカネ隊員は番組の最初から準主役級でいたわけでなく、レギュラーメンバーだった「キケロ星人ジョー」(演じていたのは無名時代の小林稔侍)が子供たちに不人気で12回までで降板(キケロ星に帰郷したことにされてしまった)、それと入れ替わるようにして(重なっている時期がある)レギュラーメンバーとして準主役となったものです。このアカネ隊員、もともと変装を得意とし、一度だけコスプレっぽい服を着ていたことがありましたが(第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」)、あれは一体なんだったのか(「禁断の惑星」のアン・フランシスを意識したのか)。
 

禁断の惑星 11 アンフランシス.jpg SFパルプマガジン風ファッション

禁断の惑星 21 アン・ニールセン.jpg 万能ロボット・ロビー登場

禁断の惑星 20 アン.jpg なぜウチの中にビオトープがあるのか?

禁断の惑星 04 アン・レスリー.jpg アン・フランシス/レスリー・ニールセン
Forbidden Planet(1956)
Forbidden Planet(1956).jpg
「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98しねまみらの.jpgシネマミラノ.jpg分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシスレスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス/ボブ・ディックス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
名画座ミラノ 1971年11月30日、歌舞伎町「東急ミラノビル」4Fに「名画座ミラノ」オープン、→1987年10月26日~封切館「シネマミラノ」、2006年6月1日~「新宿ミラノ3」(209席) 2014(平成26)年12月31日閉館。
新宿東急ミラノビル4館(シネマミラノ・ミラノ座・新宿東急・シネマスクエアとうきゅう)2005年8月
新宿ミラノ会館4館 20051.08.jpg

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]」 

宇宙家族ロビンソン dvd.jpg宇宙家族ロビンソン l.jpg宇宙家族ロビンソンの一コマ.jpg「宇宙家族ロビンソン」Lost in Space (CBS 1965~68) ○日本での放映チャネル:TBS(1966~68)
(全3シーズン。第1シーズンはモノクロ、第2シーズンからカラー)

宇宙家族ロビンソン ファースト・シーズン DVDコレクターズ・ボックス 通常版」 
  
刑事コロンボ 愛情の計算 vhs.bmp「刑事コロンボ/愛情の計算」●原題:MIND OVER MAYHEM●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:アルフ・ケリン●脚本:スティーブン・ボッコ/ディーン・ハーグローブ/ローランド・キビー刑事コロンボ 愛情の計算3.bmp●原案:ロバート・スペクト●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ホセ・ファーラー/ロバート・ウォーカー/ジェシカ・ウォルター/リュー・エヤーズ/リー・H・モンゴメリー/アーサー・バタニデス/ジョン・ザレンバ/ウィリアム・ブライアント/ルー・ワグナー/バート・ホランド●日本公開:1974/08●放送:NHK総合(評価:★★★)特選 刑事コロンボ 完全版「愛情の計算」【日本語吹替版】 [VHS]

恋におちたコロンボ1.jpg「新・刑事コロンボ/恋におちたコ恋におちたコロンボ dvdブック.jpgロンボ」●原題:IT'S ALL IN THE GAME●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ビンセント・マクビーティ●製作:クリストファー・セイター●脚本:ピーター・フォーク●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/フェイ・ダナウェイ/アルマンド・プッチ/クローディア・クリスチャン/ジョン・フィネガン/ビル・メイシー/シェリー・モリソン/ブルース・E・モロー/ジョニー・ガーデラ/ダグ・シーマン/ダニエル・T・トレント/トム・ヘンシェル日本公開:1999/05●放送:NTV(評価:★★★☆)
新刑事コロンボDVDコレクション 17号 (恋におちたコロンボ) [分冊百科] (DVD付)

裸の銃(ガン)を持つ男 dvd.jpg裸の銃(ガン)を持つ男 1.jpg「裸の銃(ガン)を持つ男」●原題:THE NAKED GUN:FROM THE FILES OF POLICE SQUAD!●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・ザッカー●製作:ロバート・K・ウェイス●脚本:ジェリー・ザッカー/ジム・エイブラハムズ/デヴィッド・ザッカー/パット・プロフト●撮影:ロバート・スティーヴンス●音楽:アイラ・ニューボーン●時間:85分●出演:レスリー・ニールセン/プリシラ・プレスリー/ジョージ・ケネディ/O・J・シンプソン/リカルド・モンタルバン/ナンシー・マルシャン●配給:UIP映画配給●日本公開:1989/04(評価:★★★☆)
裸の銃(ガン)を持つ男 [DVD]

「キャプテンウルトラ」中田.jpgキャプテンウルトラ.jpg「キャプテンウルトラ」●演出:佐藤肇/田口勝彦/加島昭/竹本弘一/山田稔/富田義治ほか●制作:平山亨/植田泰治●脚本:大津皓一/高久進/長田紀生/井口達/伊上勝ほか●音楽:冨田勲●出演:中田博久/城野ゆき小林稔侍/伊沢一郎/安中滋/相馬剛三/都健二/田川恒夫●放映:1967/04~09(全24回)●放送局:TBS 「キャプテンウルトラ Vol.2 [DVD]

(第9話怪生物バンデルエッグあらわる .jpgキャプテンウルトラ」第9話42.jpg「キャプテンウルトラ(第9話)/怪生物バンデルエッグあらわる」●制作年:1967年●監督:加島昭●脚本:鈴木良武/伊東恒久●音楽:冨田勲●時間:92 分●出演:中田博久(第9話)怪生物バンデルエッグあらわる kobayasi.jpg小林稔侍城野ゆき/伊沢一郎/安中滋/佐川二郎/桐島好夫/川田信一/(以下、非レギュラー)八名信夫/三重街恒二/大槻憲/木内博之/比良元高●放送局:TBS●放送日:1967/06/11(評価:★★★)

中田博久(キャプテンウルトラ=本郷武彦)/城野ゆき(アカネ隊員)第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」
キャプテンウルトラ」9.jpg キャプテンウルトラ」第9話61PQCFU.jpg
「キャプテンウルトラ」第1話「バンデル星人襲来す」 
」第1話「バンデル星人襲来す」.jpg

キャプテンウルトラ 第1話 「バンデル星人襲来す」.jpg 城野ゆき(アカネ隊員)1_500.jpg アカネ隊員cp.jpg 城野ゆき(アカネ隊員)
小林稔侍(キケロ星人ジョー)[当時26歳]/「シュピーゲル号」プラモデル
キャプテンウルトラ 小林稔侍.jpg シュピーゲル号.jpg

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