2012年7月 Archives

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'94年公開の個人的ラスト・アクション・ヒーロー・ムービー「トゥルーライズ」「スピード」。

『映画イヤーブック 1995』.JPGスピードdvd1.jpg トゥルーライズ dvd2.jpg TRUE LIES movie.jpg
映画イヤーブック〈1995〉 (現代教養文庫)』「スピード [DVD]」「トゥルーライズ [DVD]

 1994年劇場公開の全作品(洋画304本、邦画161本、計465本)にデータと解説を付して収録、ビデオ・ムービー、未公開ビデオのデータなども網羅しているほか、『映画イヤーブック』としては5冊目になるということで、全5冊の総索引も付きました。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「トゥルー・ロマンス」「シンドラーのリスト」「さらば、わが愛 覇王別姫」「ピアノ・レッスン」「青い凧」「ギルバート・グレイブ」「パルプ・フィクション」「ショート・カッツ」「スピード」の9作品、一方邦画は、「トカレフ」(阪本順治監督)、「全身小説家」(原一男監督)、「棒の哀しみ」(神代辰巳監督)、「忠臣蔵外伝・四谷怪談」(深作欣二監督)の4作品。

 '94年の映画館入場者数は1億2299万人で、それまでの史上最低だったそうで、前年の「ジュラシック・パーク」のような大ヒット作が無かったということもあるようですが、この頃には平成不況による停滞感が定着して、多くの人が、わざわざ映画館まで行かなくともビデオで観ればいいいという感覚になっていたのではないかなあ。

スピードdvd.jpg ハリウッド映画のアクション系で、「ダイ・ハード」('88年)、「氷の微笑」('92年)のカメラマンだったヤン・デ・ボン(「トータル・リコール」「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督と同じくオランダ人)の初監督作品「スピード」('94年)が気を吐きました。

「スピード」('94年).jpg 時速を80キロ以下に落とすと爆発する爆弾を仕掛けたバスの疾走が迫力満点のノンストップアクションで、バスが街中を車をはじき飛ばしながら爆走したり、キアヌ・リーブスが爆弾を解除するために高速で走るバスの下にもぐりこむシーン、或いは、地下鉄の車両が工事現場を破壊しながら地上に突き抜けるシーンなどは実写中心であるため見応えはありました。

スピード01.jpg 脚本を書いたグレアム・ヨストは、 アンドレイ・コンチャロフスキー監督の「暴走機関車」('86年/米)の原「スピード」ホッパー2.jpg案である黒澤明のオリジナル脚本を読んで着想を得たと述懐していますが、その脚本もまずまずではないでしょうか。但し、脚本を含めてよく出来ていた「ダイ・ハード」と比べるのと、トータルではやや落ちるか。キアヌ・リーブス、サンドラ・ブロック共に頑張っているけれど、爆弾魔のデニス・ホッパー(1936-2010)は、クイズ好きのオタクみたいで、それほど凄味がないような....。デニス・ホッパーということで、期待し過ぎてしまったのかもしれませんが(結局、大掛かりなアクションで見せる映画だった。元々の狙いも概ねそうだとは思うが)。

speed 2s.jpgスピード2  05.jpg ということで、個人的にはヤン・デ・ボン監督には次に期待、というところだったのですが、その続編「スピード2」('97年/米)であっさりコケてしまった感じでした(既に同年の「ツイスター」('97年/米)を観れば、この監督の力量の限度は窺い知れたのだが。因みに、竜巻パニックスピード2 dvd.jpg映画「ツィスター」はアメリカではそこそこヒットしたらしく、アメリカ人にとって竜巻は身近な恐怖なのでしょう(日本にもこうした映画のファンは多いらしく、Amazon.comのレビュー評価などもそう悪くないようだが、個人的には、竜巻をあまりに擬人化し過ぎているように思えた)。「スピード2」は舞台を大型客船に移したことで、看板の〈スピード〉感は無くなり、サンドラ・ブロック演じるヒロインは残りましたがキアヌ・リーブスは出演しておらず、代わりにジェイソン・パトリックが出演していましたが地味で、敵役のウィレム・デフォーの方がむしろ頑張ってはいましたが、それでもデニス・ホッパーに比べるとやはり格下感は否めなかったでしょうか。話の展開にも〈スピード〉感は感じられなかった...(いずれにせよ、キアヌ・リーブスとデニス・ホッパーがいないというのはロスト感が大きい)。
スピード2 [DVD]

トゥルーライズ dvd.jpg 「スピード」の「四つ星」評価に対し、本書で星3つの評価となっている「ターミネーター」シリーズのジェームズ・キャメロンが監督した「トゥルーライズ」('94年)の方が、ユーモアの要素があって個人的な評価はやや上になります。

トゥルーライズ1.jpg アガサ・クリスティの「おしどり探偵」シリーズの現代アクション版みたいで、アーノルド・シュワルツェネッガーはコメディも充分にこなすし、スタント無しのジェイミー・リー・カーティスも良かったです(アクションでもそれ以外でも身体を張った演技をしていたなあ)。

トゥルーライズ jlカーチス.jpg カーチェイスの場面で実際に橋を爆破したというのもスゴいですが、一方で、シュワちゃんがゴールデン・ゲート・ブリッジにしがみつくシーンやハリヤー・ジェット機上でのテロリストとの"生身"のバトルシーンなど、デジタル合成のSFXをふんだんに使っています。

 アクション・シーンをCGで撮るというのは「バットマン リターンズ」('92年)あたりがハシリだそうですが、米国の俳優協会ではその頃から、役者自身がアクションを演じる場面が無くなってしまうということで問題視され始めていたようです。「バットマン リターンズ」の中には、一旦CGで撮ったものを、俳優協会からの要請で俳優やスタントマンを使ったものに撮り直した場面があります(高い所から飛び降りたバットマンが地面に着地するシーンなど)。

トゥルーライズ2.jpg 「トゥルーライズ」ではそのほかに、ハリヤー・ジェット機の熱で空気が揺らぐシーンなどにもデジタル・ドメイン社が開発したCGが初めて使われていて、この技術は「アポロ13」('95年)のロケット発射シーンなどにも使われました(ジェームズ・キャメロンはデジタル・ドメイン社の初代共同経営者)。

 シュワルツェネッガーは、この作品の前年にジョン・マクティアナン監督の「ラスト・アクション・ヒーロー」('93年)を製作総指揮しており(主演もシュワルツェネッガー)、もう生身の肉体を使ってのアクションは終わりだなという意識はこの頃からあったのではないでしょうか。その前の作品が、それこそCGで描かれる敵と戦う「ターミネーター2」('91年)だったし(これもジェームズ・キャメロン監督)。

 個人的には、'94年の「トゥルーライズ」が(すでにCGがいっぱい使われてはいるけれども)自分の中での"ラスト・アクション・ヒーロー"ムービーという印象ですが、同じく'94年の「スピード」も、キアヌ・リーブスの次のヒット作「マトリックス」('99年)がアクションシーンをCG主体で構成していたことを考えると、キアヌ・リーブス的に言えばこれもまた"ラスト・アクション・ヒーロー"ムービーだったと言えるように思います。
 
SPEED-1994 -On set / Keanu Reeves|Sandra Bullock
SPEED 1994.jpgスピード02.jpg「スピード」●原題:SPEED●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:「スピード」ホッパー.jpgヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:ランダル・マコーミック/ジェフ・ナサンソン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:マーク・マンシーナ/ビリー・アイドル●時間:115分●出演:キアヌ・リーブス/デニス・ホッパサンドラ・ブロック/ジョー・モートン/ジェフ・ダニエルズ/アラン・ラック●日本公開:1994/12●配給:20世紀フォックス映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-12-17)(評価:★★★☆)

speed 2es.jpgスピード2 01.jpg「スピード2」●原題:SPEED:CRUISE CONTROL●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:グレアム・ヨスト●撮影:ジャック・N・グリーン●音楽:マーク・マンシーナ●時間:121分●出演:サンドラ・ブロック/ジェイソン・パトリック/ウィレム・デフォー/テムエラ・モリソン/ブライアン・マッカーディー/グレン・プラマー/コリーン・キャンプ/ロイス・チャイルズ/マイケル・G・ハガーティー/ボー・スヴェンソン/フランシス・ギナン/ジェレミー・ホッツ●日本公開:1997/08●配給:20世紀フォックス映画(評価:★★☆)

ツイスター.jpgツイスタード.jpg「ツイスター」●原題:TWISTER●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:キャスリーン・ケネディ/イアン・ブライス/マイケル・クライトン●脚本:マイケル・クライトン/アン・マリー・マーティン●撮影:ジャック・N・グリーン●音楽:マーク・マンシーナ●時間:113分●出演:ヘレン・ハント/ビル・パクストン/ケイリー・エルウィス/ジェイミー・ガーツ/ロイス・スミス/アラン・ラック/フィリップ・シーモア・ホフマン/トッド・フィールド/ジョーイ・スロトニック/ジェレミー・デイビス/スコット・トマソン/ウェンデル・ジョセファー/ショーン・ウォーレン/ザック・グルニエ/ラスティ・シュウィマー●日本公開:1996/07●配給:UIP(評価:★★)
ツイスター [DVD]

「トゥルーライズ」.jpgトゥルーライズ01.jpg「トゥルーライズ」●原題:TRUE LIES●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ジェームズ・キャメロン/ステファニー・オースティン●オリジナル脚本:クロード・ジディ/シモン・ミシェル/ディディエ・カミンカ●撮影:ラッセル・カーペンター●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:144分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェイミー・リー・カーティス/トム・アーノルド/ビル・パクストン/ティア・カレル/アート・マリックトゥルーライズ  ティア・カレル.jpgトゥルーライズ チャールトン・ヘストン.jpg/エリザ・ドゥシュク/グラント・ヘスロヴ/チャールトン・ヘストン●日本公開:1994/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-09-25)(評価:★★★★)
アーノルド・シュワルツェネッガー/ティア・カレル
チャールトン・ヘストン

ラスト・アクション・ヒーローs.jpgラスト・アクション・ヒーロー  vhs.jpg「ラスト・アクション・ヒーロー」●原題:LAST ACTION HERO●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:スティーヴ・ロス/ジョン・マクティアナン●脚本:デヴィッド・アーノット/シェーン・ブラック●撮影ディーン・セムラー●音楽:マイケル・ケイメン●時間:131分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/オースティン・オブライエン/チャールズ・ダンス/ロバート・プロスキー/トム・ヌーナン/フランク・マクレー/アンソニー・クイン/ブリジット・ウィルソン/F・マーリー・エイブラハム/マーセデス・ルール/アート・カーニー/イアン・マッケラン/プロフェッサー・トオル・タナカ/ジョーン・プロウライト/ノア・エメリッヒ●日本公開:1993/08●配給:コロンビア映画(評価:★★★)

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'93年は「ジュラシック・パーク」の年か。アイロニカルだった「ザ・プレイヤー」。

『映画イヤーブック 1994』.JPG映画イヤーブック1994.jpg    ザ・プレイヤー.jpg  ザ・プレイヤー  dvd.jpg
映画イヤーブック〈1994〉 (現代教養文庫)』/「ザ・プレイヤー」チラシ/「ザ・プレイヤー デラックス版 [DVD]

 1993年に公開された洋画328本、邦画151本、計479本の全作品データと解説を収録、更に映画祭、映画賞の記録、オリジナル・ビデオ・ムービー、未公開ビデオのデータなども網羅しています。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「ザ・プレイヤー」「愛の風景」「マルコムX」「許されざる者」「クライング・ゲーム」「秋菊の物語」「ジュラシック・パーク」「アラジン」「リバー・ランズ・スルー・イット」「ザ・シークレット・サービス」「タンゴ」「友だちのうちはどこ?」など10作品、一方邦画は、「お引越し」(相米慎二監督)、「病院で死ぬということ」(市川準監督)、「月はどっちに出ている」(崔洋一監督)、「ヌードの夜」(石井隆監督)の4作品と、依然やや寂しいか。

 映画館の年間入場者数は、それまでの史上最低を記録した'92年よりやや上向いて1億3千万人台に戻りましたが、これは偏に「ジュラシック・パーク」の大ヒットのお陰、邦画は、前年の「シコふんじゃった。」に続いて、今度は「月はどっちに出ている」が映画賞を総ナメするという、表面的にはやや偏った状況でした。

ザ・プレイヤー  vhs.jpg でも、前出の通り、ピレ・アウグスト監督の「愛の風景」(スウェーデン他9カ国)、チャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」(中国)、パトリス・ルコント監督の「タンゴ」(仏)、アッバス・キアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」(イラン)といったハリウッド映画以外の作品も一部で注目された年であり、また、ハリウッド映画の中にも、ロバート・アルトマン監督がハリウッドの映画製作の内幕を描いた「ザ・プレーヤー」('92年/米)などの変わった作品もありました(この作品は1992年カンヌ国際映画祭「監督賞」「男優賞」及びインディペンデント・スピリット賞、ザ・プレイヤー 1.jpgニューヨーク映画批評家協会賞などを受賞している)。

 原作・脚本はマイケル・トルキンで、ハリウッド映画界の権力者"プレイヤー"を目指す若手プロデューサーのグリフィン(ティム・ロビンス)が、脚本を没にされた脚本家から脅迫を受けるが、逆に脅迫者とおぼしき脚本家を殺害し、その恋人(グレタ・スカッキ)をも自分の女にしてしまう―「えーつ、これで終わり!?」という感じで、皮肉を込めたピカレスク・ロマンだったわけね。

THE PLAYER 1992 movie.jpg ラスト近く、グリフィンはウケだけを狙ったどうしょうもない通俗映画を作っていて、それに主演しているのが、ジュリア・ロバーツ、ブルース・ウィリスの二人で、更にバート・レイノルズ、アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・キューザック、ジャック・レモン、アンディ・マクダウェル、シェール、ピーター・フォーク、スーザン・サランドンなどが映画内映画にカメオ出演している―この辺りはやはりロバート・アルトマンの名の下に―という感じでしょうか。

スーザン・サランドン/ピーター・フォーク

 ロバート・アルトマンは「M★A★S★H」(70年/米)、「ナッシュビル」(75年/米)以来、時々こうした"仲間内"感覚の作品を撮っていたなあ。この作品も、アイロニカルだけれど、みんなんで楽しみながら映画を作っている感じもあって、その分「毒」が中和されている印象も。

"THE PLAYER"(1992)輸入版DVD
THE PLAYER 1992.jpg「ザ・プレイヤー」●原題:THE PLAYER●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルトマン●製作:デヴィッド・ブラウン/マイケル・トルキン/ニック・ウェクスラー●脚本・原作:マイケル・トルキン●撮影:ジャン・ルピーヌ●音楽:トーマス・ニューマン●時間:124分●出演:ティム・ロビンス/グレタ・スカッキ/フレッド・ウォード/ウーピー・ゴールドバーグ/ピーター・ギャラガー/ブライオン・ジェームズ/ヴィンセント・ドノフリオ/ディーン・ストックウェル/リチャード・E・グラント/シドニー・ポラック/シンシア・スティーヴンソン/ダイナ・メリル/ジーナ・ガーション/ジェレミー・ピヴェン/リーア・エアーズ●カメオ出演ジュリア・ロバーツ/ブルース・ウィリス/バート・レイノルズ/アンジェリカ・ヒューストン/ジョン・キューザック/ジャック・レモン/アンディ・マクダウェル/The-Player.jpgシェール/ピーター・フォーク/スーザン・サランドン/ジル・セント・ジョン/リリー・トムリン/ジョン・アンダーソン/ミミ・ロジャース/ジョエル・グレイ/ハリー・ベラフォンテ/ゲイリー・ビューシイ/ジェームズ・コバーン/ルイーズ・フレッチャー/スコット・グレン/ジェフ・ゴールドブラム/エリオット・グールド/サリー・カークランド/マーリー・マトリン/マルコム・マクダウェル/ニック・ノルティ/ロッド・スタイガー/パトリック・スウェイジ●日本公開:1993/01●配給:大映(評価:★★★☆) Julia Roberts, Bruce Willis and may others for The Player

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'92年公開作品はバブル崩壊"効果"? ちょっと変わった感じの映画が目立った年。

『映画イヤーブック 1993』.JPGバートン・フィンク vhs1.jpg フライド・グリーン・トマト vhs.jpg
映画イヤーブック〈1993〉 (現代教養文庫)』/「バートン・フィンク」(VHS)/「フライド・グリーン・トマト」(VHS)  


プリティ・リーグ dvd.jpg 1992年に公開された洋画317本、邦画133本、計450本の全作品データと解説を収録していますが、この数字、本書の前年版によれば、前年の1991年に劇場公開された洋画は413本、邦画は151本、計564本となっていましたから、前年の2割減(洋画は2割5分減)ということになり、バブル崩壊の影響がこの辺りにも出たなあと。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「バートン・フィンク」「JFK」「美しき諍い女」「フライド・グリーン・トマト」「仕立て屋の恋」「プリティ・リーグ」など10作品、邦画は、「シコふんじゃった。」「いつかギラギラする日」「青春デンデケデケデケ」など4作品とやや寂しいか。
プリティ・リーグ [DVD]

バートン・フィンク0.jpg 結局、邦画界は1月に公開された周防正行監督の「シコふんじゃった。」がその年の映画賞を総ナメした形になりましたが、これ、意外と穴だったと言うか、実際に面白く(個人的にもこの年のナンバー1作品。但し、これだけ賞を獲ると、日本映画は他にいい作品がないのかという気も)、一方、洋画も例年の大作とは一味違ったものがじわじわ人気を呼んだりして、その典型が1991年・第44回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジョエル・コーエン監督の「バートン・フィンク」('91年/米)ではなかったでしょうか。

Barton Fink -John Goodman & John Turturro

バートン・フィンク1.jpg 1941年、場末の安ホテルに籠って脚本を書いていた劇作家バートン・フィンク(ジョン・タトゥーロ)は、隣室のセールス男メドウズ(ジョン・グッドマン)と親しくなるが、フィンク自身は脚本が書けなくなるスランプに陥り、更には自分の部屋で殺人事件が起きて、メドウズが死体を片付けてくれたものの、彼は完全に神経症に陥る―。

 幾つもの解釈ができる面白い作品で、結局、フィンク自身が現実と空想の区別がつかなくなっているようです。ラストのホテルの部屋の壁に架かった絵画のアップが1つの謎解きと言えるかも(バートン・フィンクのモデルはフォークナーだそうだ)カンヌ映画祭で史上初の三冠(パルム・ドール(グランプリ)・監督賞・男優賞(ジョン・タトゥーロ))を成し遂げた作品とのことで、ストーリーの巧さもあるけれども、脚本執筆という創造の苦しみが描かれているのが、同業者の共感を呼んだ?

フライド・グリーン・トマト1.jpg もう一つ、同じく'92年公開のジョン・アヴネット監督の「フライド・グリーン・トマト」('91年/米)は、「ドライビング・ミス・デージー」のジェシカ・タンディが演じる元カフェ経営者の昔話を、「ミザリー」のキャシー・ベイツ演じる夫に愛想をつかされた女性が聴くという展開でしたが(アカデミー主演賞女優同士!)、ジェシカ婆さんが淡々と語る話の内容が、ある種、女性たちの人間として生きる権利を求めての闘いの軌跡というか、感動ストーリーでありながらも、合間に入るエピソードがグリム童話みたいに残酷(猟奇的)だったりして、この取り合わせの妙が何とも言えない作品でした。
    
プリティ・リーグ 2.png 女流監督ペニー・マーシャルが「レナードの朝」('90年)の次に撮った「プリティ・リーグ」('91年/米)のあらすじは―、1943年、男たちが戦争に駆り出され、プロ野球閉鎖の危機が訪れる中、全米女子プロ野球リーグが結成され、最強チーム"ピーチズ"のメンバーは、田舎の主婦からホール・ダンサーまで、野球を愛する男顔負けのスーパー・レディースで構成さMadonna A League of Their Own.jpgれていたが、汗と埃にまみれて白球を追う彼女たちの力強く美しい姿には全米が拍手を贈った―という感動もので、一見すると漫画的題材ですが、実話がベースになっているというのはやはり強いなあと。監督役のトム・ハンクスの演技が冴え、痛快スポーツ・ドラマとなっていますが、最後の同窓会的にかつてのメンバーが集う場面は、賛否があるものの個人的には良かったです。スーパースターのマドンナがナインの一員として(エース役のジーナ・デイビスの助演として)しっかり演技しているという点で興味深い作品でもあります。マドンナはハマリ役でした。 

Madonna in A League of Their Own

 好き嫌いが分かれそうな作品もありますが、バブル崩壊"効果"ではないでしょうが、がんがん力で押していくタイプの大作より、こうしたちょっと変わった感じの映画が目立った年でした。

バートン・フィンク dvd.jpgバートン・フィンク [DVD]」 ジュディ・デイヴィス in「バートン・フィンク」(1991年ニューヨーク映画批評家協会賞助演女優賞受賞) BARTON FINK, Michael Lerner, マイケル・ラーナー(1991年ロサンゼルス映画批評家協会賞助演男優賞受賞)
ジュディ・デイヴィス バートン・フィンク.jpgBARTON FINK, Michael Lerner, 1991l.jpg「バートン・フィンク」●原題:BARTON FINK●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジョエル・コーエン●製作:イーサン・コーエン●脚本:ジョエル&イーサン・コーエン●撮影:ロジャー・ディーキンス●音楽:カーター・パウエル●時間:116分●出演:ジョン・タトゥーロ/ジョン・グッドマン/ジュディ・デイヴィス/マイケル・ラーナー/ジョン・マホーニー/トニー・シャルーブ●日本公開:1992/03●配給:KUZUIエンタープライズ(評価:★★★★)

「フライド・グリーン・トマト」 (91年/米).jpg「フライド・グリーン・トマト」●原題:FRIED GREEN TOMATO●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・アヴネット●製作:ジョン・アヴネット/ジョーダン・カーナー●脚本:キャロル・ソビエスフライド・グリーン・トマト dvd.jpgキー/ファニー・フラッグ●撮影:ジェフリー・シンプソン●音楽:トーマス・ニューマン●原作:ファニー・フラッグ「フライド・グリーン・トマト・アット・ザ・ホイッスル・ストップ・カフェ」●時間:130分●出演:キャシー・ベイツ/ジェシカ・タンディ/メアリー・スチュアート・マスターソン/メアリー=ルイーズ・パーカー/スタン・ショウ/シシリー・タイソン/クリス・オドネル/ゲイラード・サーテイン/ティム・スコット/ロイス・スミス/グレイソン・フリック/アフトン・スミス/ゲイリー・バサラバ/レイノール・シェイン●日本公開:199206●配給:アスキー映画(評価:★★★★)
フライド・グリーン・トマト [DVD]

トム・ハンクス/ジーナ・デイヴィス/ マドンナ
プリティ・リーグ [DVD].jpgプリティ・リーグ 1.png「プリティ・リーグ」●原題:A LEAGUE OF THEIR OWN●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ペニー・マーシャル●製作:ロバート・グリーンハット/エリオット・アボット●脚本:ババルー・マンデル/ローウェル・ガンツ●撮影:ミロスラフ・オンドリチェク●音楽:ハンス・ジマー●時間:116分●出演:トム・ハンクス/ジーナ・デイヴィス/マドンナ/ロリー・ペティ/ロージー・オドネル/ジョン・ロビッツ/デヴィッド・ストラザーン/ゲイリー・マーシャル/ビル・プルマン/ティア・レオーニ/アン・キューザック/エディ・ジョーンズ/アン・ラムゼイ/ポーリン・ブレイスフォード/ミーガン・カヴァナグ/トレイシー・ライナー/ビッティ・シュラム/ドン・S・デイヴィス/グレゴリー・スポーレダー●日本公開:1992/10●配給:コロンビア・トライスター映画社(評価:★★★★)

Madonna - 1992 Steven Meisel   ジーナ・デイビス in「テルマ&ルイーズ」('91年/米)
Madonna - 1992 Steven Meisel.jpg テルマ&ルイーズ ジーナ・デイビス.jpg

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'91年公開作品で個人的◎は「テルマ&ルイーズ」。この年は「ツイン・ピークス」の年だった。

映画イヤーブック 1992 1.JPG映画イヤーブック 1992.jpg  テルマ&ルイーズ dvd.jpg ターミネーター2 dvd.jpg ツイン・ピークス dvd.jpg映画イヤーブック〈1992〉 (現代教養文庫)』「テルマ&ルイーズ (スペシャル・エディション) [DVD]」「ターミネーター2 特別編 [DVD]」「ツイン・ピークス ファーストシーズン [DVD]

 現代教養文庫の『映画イヤーブック』の1992年版で、1991年に劇場公開された洋画413本、邦画151本。計564本のデータを収めるほか、映画祭、映画賞の記録、オリジナル・ビデオムービー、未公開ビデオデータなども網羅しています(付録の部分が充実して、前年版より約50ページ増の470ページに)。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「わが心のボルチモア」「ワイルド・アット・ハート」「ニキータ」「マッチ工場の少女」「ダンス・ウィズ・ウルブス」「羊たちの沈黙」「エンジェル・アット・マイ・テーブル」「ターミネーター2」「コルチャック先生」「テルマ&ルイーズ」「真実の瞬間(とき)」「ボイジャー」「髪結いの亭主」「トト・ザ・ヒーロー」など、一方、邦画で四つ星は、大林宣彦監督の「ふたり」、山田洋次監督の「息子」、北野武監督の「あの夏、いちばん静かな海」、竹中直人監督の「無能の人」の4本だけで、分母数が違うけれどこの頃は概ね「洋高邦低」が続いた時期だったのかもしれません。

テルマ&ルイーズ ジーナ・デイビス.jpgテルマ&ルイーズ1.bmp 個人的なイチオシは、リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」('91年/米)で、専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とレストランでウエイトレスとして働く独身女性のルイーズ(スーザン・サランドン)の親友同士が週末旅行に出掛けた先で、自分たちをレイプしようとした男を射殺したことから、転じて逃走劇になるという話(ロンドン映画批評家協会賞「作品賞」「女優賞(スーザン・サランドン)」受賞作)。

テルマ&ルイーズ2.bmp リドリー・スコットが女性映画を撮ったという意外性もありましたが、ジーナ・デイヴィスとスーザン・サランドンが、どんどん破局に向かいつつも、その過程においてこれまでの束縛や因習から解放され自由になっていく女性を好演し、彼女ら追いつつも彼女らの心情を理解し、何とか連れ戻したいとテルマ&ルイーズ ハーヴェイ・カイテル.jpgテルマ&ルイーズ ブラッド・ピット.jpg思う警部役のハーベイ・カイテルの演技も良かったです(まださほど知られていない頃のブラッド・ピットが、彼女らの金を持ち逃げするヒッチハイカー役で出ていたりもした)。
ハーヴェイ・カイテル(全米映画批評家協会賞「助演男優賞」受賞)/ブラッド・ピット

 逃避行の背景となる西部の大自然を、映像に凝るリドリー・スコット監督らしく美しく撮っていて、最後は何台ものパトカーによりグランドキャニオンの絶壁に2人は追いつめられるのですが、こうなると結末は見えてしまうものの(「明日に向かって撃て!」の現代女性版だね)、からっとした爽快感があって、ある種、日常生活や夫の面倒にかまけ、生きることに飽いている女性の「夢」を描いた作品と言えるかも(アメリカの女性ってそんなに鬱々とした日常を生きているのか?―でも、ある層はそうかもしれないなあ)。


ターミネーター2 01.jpg 「ダンス・ウィズ・ウルブス」といったアカデミー賞受賞作品と並んで「羊たちの沈黙」や「ターミネーター2」が星4つの評価を得ているというのがこの年の特徴でしょうか。

ターミネーター2L.jpg ジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター2」('91年/米)は、形状記憶疑似合金でできたT1000型ターミネーターが登場したものでしたが、この作品の前に「アビス」('89年)を撮り、ずっと後に「アバター」('09年)を撮ることになるターミネーター2 t1000.jpgジェームズ・キャメロン監督らしい特撮CGが冴えていたように思われ、T1000型を演じるロバート・パトリックも、華奢なところがかえって凄味がありました。一方、アーノルド・シュワルツネッガーが演じる旧タイプのT800型ターミネーターを善玉にまわしてヒューマンにした分、前作「ターミネーター」に比べ甘さがあるように思いました(これ、本書において山口猛氏が書いている批評とほぼ同じなのだが、山口氏の評価は最高評価になる星4つ)。IMDb評価は、「ターミネーター」が[8.1]、「ターミネーター2」が[8.6]で、「2」が上になっています。後からまとめて観た人は「2」の方がいいのかもしれないけれど、それぞれリルタイムで観た自分の場合、「1」のインパクトが大きかったです。

 「ターミネーター」('84年/米・英)はアーノルド・シュワルツネッガーを一気にスターダムに押し上げた作品でしたが、ジェームズ・キャメロン監督にとっても監ターミネーター14.png督デビュー作「殺人魚ターミネーター00.jpgフライング・キラー」(81年)に続く監督2作目であり、彼の出世作と言えます。ジェームズ・キャメロン監督はシュワルツネッガーと1度会食をしただけで、キャリアが浅く当初脇役で出演の予定だった彼をT800型ターミネーター役に抜擢することを決めたそうですが、シュワルツネッガーの全裸での登場シーンから始まって、そのストロングタイプのヒールぶりは今振り返ってもターミネーター    .jpg強烈なインパクトがあったように思います。ただ、この作品の後、「ターミネーター2」との間の7年間の間隔があり(ヒットしたB級映画にありがちだが、すぐにでも続編を撮りたいところが版権が複数社に跨っており、撮ろうにもなかなか撮れなかった)、その間にターミネーター01.pngシュワルツネッガーは「レッドソニア」「コマンドー」「ゴリラ」「プレデター」「バトルランナー」「レッドブル」「ツインズ」「トータル・リコール」「キンダガートン・コップ」といった作品に主演しており、こうなるともう悪役には戻れない...。特に「ツインズ」や「キンダガートン・コップ」といったコメディもそつなくこなしているのが大きいと思われ、人気面だけでなく演技面でも、「コナン・ザ・グレート」('82/米)でラジー賞の"最低男優賞"になってしまった人とは思えない成長ぶりでした(このことが「ターミネーター2」の"ヒューマンなターミネーター"役につながっていくわけか)。 

ツイン・ピークス1.jpg 因みに、91年は、これも映像表現に特徴のあるデイヴィッド・リンチ監督のテレビ・シリーズ「ツイン・ピークス」のビデオが日本でリリースされた年で、日本中のレンタルビデオ店が「ツイン・ピークス」入荷&予約待ち状態になるという大ブームになりましたが、この作品もある意味「脱日常」的な作品だったなあと(まあ、「Xファイル」にしろ「LOST」にしろ、どれもみんな「脱日常」なのだが)。

ツイン・ピークス2.jpg ビデオ14巻、全29話(パイロット版を含めると30話)、24時間強のサスペンス・ミステリーですが、毎回毎回いつもいいところで終わるので、続きを観るまで禁断症状になるという(あの村上春樹も米国でリアルタイムでハマったという)―ラストは腑に落ちなかったけれども(「えーっ、これが結末?」という感じか)、そのことを割り引いてもテレビ・ムービーの金字塔とツイン・ピークス3.jpg言えるのでは(デイヴィッド・リンチによると、このラストはあくまでも第2シーズンの最終話に過ぎず、「ツイン・ピークス」という物語そのものの結末ではないとのことだが、続編は未だ作られていない)。

 この作品のパイロット版は、もともとTVシリーズの第1話として作られたものですが、ヨーロッパへの輸出用に作られた、それ自体で映画として完結するインターナショナル・ヴァージョンが当時リリースされており、本編の「謎とき」とまではいかないですが、背景の説明としてガイド的役割を果たしています。

ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間.jpg また、'92年に「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」という劇場版が作られ、本編との矛盾もあるものの、こちらも本編の解説的役割を果たしています(と言っても、到底一筋縄で解るといったものではないけれど)。

ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間 [DVD]

 TV版の雰囲気をしっかり引き継いでいるし(むしろデイヴィッド・リンチ的な雰囲気はより前面に出ている)、"壊れゆくローラ"を演じたシェリル・リーの演技も悪くない。ある意味、TV版の結末よりも正統派的な展開なのかもしれないけれど、メタファーの大部分が理解不能だったなあ。《ツイン・ピークス・フリークス》と言われる人のサイトを見て、なるほどそういうことなのかと理解した次第(登場人物そのものがメタファーだったりしてるわけだ)。まあ、TVシリーズを最後まで観てから映画を観た方がいいに違いはありません(それでも、よく解らないところが多かったのだが)。

THELMA & LOUISE 2.jpgTHELMA & LOUISE.jpg「テルマ&ルイーズ」●原題:THELMA & LOUISE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:リドリー・スコット/ミミ・ポーク●脚本:カーリー・クーリ●撮影:エイドリアン・ビドル●音楽:ハンス・ジマー●時間:129分●出演:スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス/ハーヴェイ・カイテル/マイケル・マドセン/ブラッド・ピット●日本公開:1991/10●配給:松竹富士(評価:★★★★☆)

ターミネーター2-15.jpg「ターミネーター2」●原題:TERMINATOR2:JUDGMENT DAY●制作年:1991ターミネーター2 02.jpg年●制作国:アメリカ●監督・製作:ジェームズ・キャメロン●脚本ジェームズ・キャメロン/ウィリアム・ウィッシャー●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:137分(公開版)/154分(完全版)●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/リンダ・ハミルトン/エドワード・ファーロング/ロバート・パトリック/アール・ボーエン/ジョー・モートン/ジャネット・ゴールドスタイン●日本公開:1991/08●配給:東宝東和(評価:★★★)

ターミネーター ps.jpgターミネーター25.jpg「ターミネーター」●原題:THE TERMINATOR●制作年:1984年●制作国:アメリカ/イギリス●監督:ジェームズ・キャメロン●製作:ゲイル・アン・ハード●脚本:ジェームズ・キャメロン/ゲイル・アン・ハードターミネーター03.png●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:108分●出演:新宿文化シネマ2.jpgアーノルド・シュワルツェネッガー/マイケル・ビーン/リンダ・ハミルトン/ポール・ウィンフィールド/ランス・ヘンリクセン/リック・ロッソヴィッチ/ベス・マータ/ディック・ミラー●日本公開:1985/05●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:新宿・文化シネマ2 (85-05-26) (評価:★★★☆)
新宿文化シネマ2 2006(平成18)年9月15日閉館、2006(平成18)年12月9日〜文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」としてオープン(2008(平成20)年6月14日「角川シネマ館」に改称)、文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」としてオープン

Twin Peaks (1990)
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Twin Peaks (ABC 1990).jpgツイン・ピークス.jpg「ツイン・ピークス」 Twin Peaks (ABC 1990/04~1991/06) ○日本での放映チャネル: WOWWOW(1991)
                                   
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カイル・マクラクラン
      
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」●原題:TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER(Twin Peaks:Fire Walk With Me)●制作年:1TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER2.jpgTWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER.jpg992年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・リンチ●製作:グレッグ・ファインバーグ●脚本:デイヴィッド・リンチ/ロバート・エンゲルス●撮影:ロン・ガルシア●音楽:アンジェロ・バダラメンティ●時間:135分●出演:シェリル・リー/レイ・ワイズ/カイル・マクラクラン/デヴィッド・ボウイ/キーファー・サザーランド●日本公開:1992/05●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★?)

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'90年公開作品で個人的◎は「ドゥ・ザ・ライト・シング」「ドライビング Miss デイジー」。

映画イヤーブック 1991 3298.JPG映画イヤーブック1991 教養文庫.jpg  ドゥ・ザ・ライト・シング0.bmp DRIVING MISS DASIY.bmp
映画イヤーブック〈1991〉 (現代教養文庫)』「ドゥ・ザ・ライト・シング [DVD]」「ドライビングMissデイジー [DVD]
 
 90年代に毎年刊行された現代教養文庫(版元の社会思想社は倒産)の『映画イヤーブック』の1991年版で、1990年に劇場公開された洋画406本、邦画146本、計552本のデータを収めています。ストーリー紹介だけでなく、主だった作品は、映画評論家が分担して執筆し、それぞれ批評を織り込んでいて、後でDVDなどで観賞する際の参考になりました(本書評価は★★★★→必見、★★★→ぜひ見る価値アリ、★★→見て損はしない、★→ヒマつぶしにはなるかも)。本書における四つ星評価(「必見」)作品から幾つか拾うと―。

ドゥ・ザ・ライト・シング1.bmp '90年公開の洋画で先ず個人的に良かったのは、スパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」('89年/米)で、ブルックリンの黒人街でピザ屋を営むイタリア系父子と店員のムーキーやその周辺の黒人たちの暑い夏の1日を、毒々しい色彩感覚とラップのリズムにのせて描いたものですが、まだメジャーになる前のスパイク・リー監督自身がピザ屋の店員のムーキー役で主演しており、作品の根柢には人種差別問題があるのですが、予定調和に終わらない結末にスパイク・リーの鋭さが窺えました。ダニー・アイエロは「ゴッドファーザーPart II」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」にもちょこっと出ていた俳優ですが、この作品で1989年・ロサンゼルス映画批評家協会賞「助演男優賞」を受賞しています。(本書評価★★★★/個人的評価★★★★☆)。

ドライビング miss デイジー.bmp 続いて良かったのがブルース・ベレスフォード監督の「ドライビング Miss デイジー」('89年/米)で、90年度アカデミー賞優秀作品賞・主演女優賞などの最多4部ジェシカ・タンディ アカデミー賞.jpg門に輝いた秀作(ジェシカ・タンディは歴代最高齢(80歳)でのアカデミー主演女優賞受賞)。1948年のアトランタを舞台に70歳過ぎのユダヤ人の元教師(ジェシカ・タンディ)と黒人運転手(モーガン・フリーマン)の交流を描いたもので、ラストの老人ホームでの二人の再会シーンは感動的。こうした"感動ストーリー"仕立てを好まない人もいますが、個人的には入れ込んでしまいました。dジェシカ・タンディの名演もさることながら、この頃のモーガン・フリーマンもいいです(本書評価★★★★/個人的評価★★★★☆)。

「ショーシャンクの空に」03.jpg モーガン・フリーマンが映画俳優として知られるようになったのは50歳の時、ジェリー・シャッツバーグ監督の「NYストリート・スマート」('87年/米)でアカデミー助演男優賞にノミネートされてからで、この「ドライビング Miss デイジー」でアカデミー主演演男「ショーシャンクの空に」02.jpg優賞にノミネートされたのは52歳の時。さらにフランク・ダラボン監督の「ショーシャンクの空に」('94年/米)でティム・ロビンスと共に主役レッドを演じて最高の評価を得、前作に続いてアカデミー主演演男優賞にノミネートされますが受賞はならず、その10年後に、クリント・イーストウッドが監督した「ミリオンダラー・ベイビー」('04年/米)でアカ「ショーシャンクの空に」1994.jpg「ショーシャンクの空に」モーガン.jpgデミー助演男優賞受賞を受賞し、4回目のノミネートでアカデミー俳優となります。(●2023年10月9日、「ショーシャンクの空に」を「TOHOシネマズ錦糸町オリナス」にて「午前十時の映画祭13」で4K版にて再鑑賞(劇評で観るのは初)。モーガン・フリーマンの堂々たる演技が、レッドを単なる"観察者"ではなくより強い存在していることを再認識した。一方で、アカデミー賞を獲れなかった理由も、主人公と異なりレッドが"行動者"ではなく"観察者"に留まっているという役柄設定のせいもあったのではないかと思った。原作は スティーヴン・キングの『刑務所のリタ・ヘイワース』。壁に貼られた女優のポスターリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクエル・ウェルチと変わっていくのが時の流れを表していた。2023年時点で、IMDb Top 250 Moviesの第1位[スコア9.3])
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 自分としては「ショーシャンクの空に」よりも「ドライビング Miss デイジー」に感動してしまったクチなのですが、アメリカの黒人コミュニティーの間では「ドライビング Miss デイジー」は白人にとって都合のいい黒人が描かれている映画として、評判は良くないようです。確かにハリウッド映画の伝統的な黒人の描かれ方の枠を出ていないかも(でも、個人的には名作だと思う)。その対極にあるのが、「ドゥ・ザ・ライト・シング」でもあると言え、アカデミー賞授賞式のプレゼンターとして舞台に立ったキム・ベイシンガーは、「今年のノミネート作品ほど素晴らしい作品が揃った年はない。しかし一つだけ最高の傑作をアカデミーは忘れている」と発言して、「ドゥアカデミー賞 キム・ベイシンガー1.jpgアカデミー賞 キム・ベイシンガー.jpg・ザ・ライト・シング」を取り上げ、「この映画には真実がある」と訴えています(キム・ベイシンガーも「ドライビング Miss デイジー」が良くないとは言っていない。しかしながら、この頃からアカデミーのある種"偏向"を見抜いていたとも言える)。

Guddoferozu(1990).jpgグッドフェロー1.bmp マーティン・スコセッシ監督の「グッドフェローズ」('90年/米)は、実在の人物をモデルにギャングたちの生き様を描いた作品で、ヴェネツィア国際映画祭「銀獅子賞」受賞作。ロバート・デ・ニーロが口封じのために仲間を次々と殺していく様子や、ジョー・ペシがギャングの幹部に呼ばれて昇格かと思い出向いたところ、逆に殺されてしまうところなどオソロシイ。「グッドフェローズ」って、反語的意味合いを含んでいるわけね(本書評価★★★★/個人的評価★★★★)。
Guddoferozu(1990)

トータル・リコール 12.jpg 「トータル・リコール」('90年/米)は、フィリップ・K・ディック(1928-1982/享年53)の短編SF小説「記憶倍シャロン・ストーン12.jpgります」をポール・バーホーベンが監督したもので、シュワルツェネッガー演じる主人公の偽(ニセ)の妻役に、後に同じくポール・バーホーベン監督の「氷の微笑」('92年/米)に主演するシャロン・ストーンが出ていました。優れたSF映画に贈られる「サターンSF映画賞」の第17回受賞作。この作品、最近リメイクされています(本書評価★★★★/個人的評価★★★☆)。

フィリップ・K・ディック原作映画 「ブレードランナー」 ('82年/米)/「マイノリティ・リポート」('02年/米)
ブレードランナー チラシ.jpg ブレードランナー.jpg    マイノリティ・リポート01.jpg マイノリティ・リポート 02.jpg 


ロボコップ 警官.jpg 因みに、ポール・バーホーベン監督は「ロボコップ」('87年/米)で米映画界に進出して成功を収めたオランダ人です。「ロボコップ」は、殉職した警官の遺体を利用したサイボーグ警官が活躍するバイオレンスSFアクション映画で低予算で作られながらもヒットし、「ロボコップ2」「ロボコップ3」やテレビドラマシリーズも作られました(2014年にリメイクされた)。サイボーグ警官を演じたのはピーター・ウェラーでしたが、アーノルド・シュワルツェネッガーも候補だったとロボコップ 1987 pw.jpgか。犯罪多発都市としてデトロイト市を舞台としていますが、デトロイトは当時から既に自動車産業の衰退で荒廃していたため、ロケのほとんどはダラスで行われたそうです。暴力シーンも多いですが、一方で、ピーター・ウェラーの演じる哀愁を帯びた主人公と、そのロボット歩き(ピーター・ウェラーしかできなかったので彼がスタントも演じた)はなかなかのものでした。ラストで、悪人がオム二社(ロボコップを造った会社)の会長を人質にして逃走を図りますが、悪人はオムニ社の役人で、ロボコップに内蔵されていた「オムニ社役員には危害を加えない」というプログラムがあって手を出せないでいたところ、会長が悪人に「お前はクビだ!」と叫んだことでプログラムの規定が消滅し、ロボコップは悪人を射殺するという、そうしたコミカルな面もありました(これも「サターンSF映画賞」の受賞作)。

  
バタアシ金魚ド.jpgバタアシ金魚 dvd2.bmp 洋画ばかり挙げましたが、邦画では「バタアシ金魚」('90年/シネセゾン)なんてあったなあ。個人的には自主制作時代の作品も何本か観たことのある松岡錠司監督の劇場用映画デビュー作、主演の筒井道隆(坊主「バタアシ金魚」.bmp頭で出演)・高岡早紀にとっても共にデビュー作ということで、新鮮味はありました。コミックが原作ながらも、インディペンデント系の雰囲気を残してしてまあまあ面白かったけれど、ストーリーとしては中途半端だった印象も。過食症でブタのように太った主人公も高岡早紀が演じたのだろうか。顔があまり映っていなかったが...(本書評価★★★★/個人的評価★★★☆)。 


ドゥ・ザ・ライト・シング 03.jpg

ドゥ・ザ・ライト・シング dvd.jpg「ドゥ・ザ・ライト・シング」●原題:DO THE RIGHT THING●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:スパイク・リー●撮影:アーネスト・ディッカーソン●音楽:ビル・リー●時間:120分●出演:スパイク・リー/ダニー・アイエロ/ルビー・ディー/サミュエル・L・ジャクソン/オジー・デイヴィス/リチャード・エドソン/ジョン・タトゥーロ/ビル・ナン/ロージー・ペレス/ ジョイ・リー/ジャンカルロ・エスポジート/ジョン・サベージ/ロビン・ハリス●日本公開:1990/04●配給:ユニヴァーサル=UIP(評価:★★★★☆)ドゥ・ザ・ライト・シング [DVD]
ドライビング miss デイジー dvd.bmp
ドライビング miss デイジー ちらし.jpg「ドライビング Miss デイジー」●原題:DRIVING MISS DASIY●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ブルース・ベレスフォード●製作:リチャード・D・ザナック/リリ・フィニー・ザナック●原作・脚本:アルフレッド・ウーリー●撮影:ピーター・ジェームズ●音楽:ハンス・ジマー●時間:99分●出演:ジェシカ・タンディ/モーガン・フリーマン/ダン・エイクロイド/パティ・ルポーン/エスター・ローレ/ジョアン・ハヴリラ/ウィリアム・ホール・Jr.●日本公開:1990/05●配給:東宝東和(評価:★★★★☆)ドライビングMissデイジー [DVD]

「ショーシャンクの空に」d.jpg「ショーシャンクの空に」01.jpg「ショーシャンクの空に」●原題:THE SHAWSHANK REDEMPTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:フランク・ダラボン●製作:ニキ・マーヴィン●撮影:ロジャー・ディーキンス●音楽:トーマス・ニューマン●原作:スティーヴン・キング「刑務所のリタ・ヘイワース」●時間:142分●出演:ティム・ロビンス/モーガン・フリーマン/ボブ・ガントン/ウィリアム・サドラー/クランシー・ブラウン/ギル・ベローズ/ジェームズ・ホイットモア●日本公開:1995/06●配給:松竹富士(評価:★★★★)ショーシャンクの空に [DVD]

「グッドフェローズ」.jpg「グッドフェローズ」●原題:GOODFELLAS●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:アーウィン・ウィンクラー●脚本:ニコラス・ピレッジ/マーティン・スコセッシ●撮影:ミヒャエル・バルハウス●時間:145分●出演:レイ・リオッタ/ロバート・デ・ニーロ/ジョー・ペシ/ロレイン・ブラッコ/ポール・ソルヴィノフランク・シベロ/グッドフェローズ dvd.jpgマイク・スター/フランク・ヴィンセント/チャック・ロー/フランク・ディレオ/サミュエル・L・ジャクソン/クリストファー・セロ/スザンヌ・シェパード/キャサリン・スコセッシ/チャールズ・スコセッシ●日本公開:1990/10●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★★)グッドフェローズ スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]

トータル・リコール [DVD]
トータル・リコール003.jpgトータル・リコール dvd.jpg「トータル・リコール」●原題:TOTAL RECALL●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:ポール・バーホーベン●製作:バズ・フェイシャンズ/ロナルド・シュゼット●脚本:ロナルド・シュゼット/ダン・オバノン/ゲイリー・ゴールドマン●撮影:ヨスト・ヴァカーノ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:フィリップ・K・ディック「記憶売ります」●時間:113分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/レイチェル・ティコトータル・リコール シャロン・ストーン.jpgティン/シャロン・ストーン/ロニー・コックス/マイケル・アイアンサイド/マーシャル・ベル/メル・ジョンソン・Jr/ ロイ・ブロックスミス/レイ・ベイカー/マイケル・チャンピオン/デビッド・ネル●日本公開:1990/06●配給:東宝東和(評価:★★★☆)

ロボコップ 1987.jpgロボコップ pw.jpg「ロボコップ」●原題:RoboCop●制作年:1987年●制作国:アメリカ●監督:ポール・バーホーベン●製作:アーン・L・シュミット●脚本:エドワード・ニューマイヤー/マイケル・マイナー●撮影:ヨスト・ヴァカーノ/ソル・ネグリン●音楽:ベイジル・ポールドゥリス●時間:103分●出演:ピーター・ウェラー/ナンシー・アレン/ロニー・コックス/カートウッド・スミス/ダン・オハーリー/ミゲル・フェラー/ロバート・ドクィ/フェルトン・ペリー/レイ・ワイズ/ポール・マクレーン●日本公開:1988/02●配給:ワーナー・ブラザース映画(評価:★★★★)
ロボコップ/ディレクターズ・カット [DVD]

高岡早紀(17歳)(テレフォンカード)/「バタアシ金魚 [DVD]
バタアシ金魚 1990.jpg「バタアシ金魚」2.bmpバタアシ金魚 dvd.jpg「バタアシ金魚」●制作年:1990年●監督・脚本:松岡錠司●製作:日本ビクター●撮影:笠松則通●音楽:茂野雅道●原作:望月峯太郎●時間:95分●出演:高岡早紀/筒井道隆/白川和子/伊武雅刀/東幹久/土屋久美子/浅野忠信/大寶智子/橋本真由子/いしかわじゅん/桜金造/山村美智子/佐藤オリエ/安原麗子●公開:1990/06●配給:シネセゾン●最初に観た場所:シネパトス新宿 (90-06-16)(評価:★★★☆)

筒井道隆(19歳)・浅野忠信(16歳)共に映画デビュー作
「バタアシ金魚」筒井・浅野.jpg「バタアシ金魚」浅野.jpg  
 「バタアシ金魚」で、浅野忠信は丸刈りで牛川工業高校水泳部の主将ウシを演じた。 
 浅野忠信は、自身のSNSのプロフィールとコメントが書かれたページで、「バタアシ金魚」について「撮影の時はあまり楽しくなかったです。撮影以外の時も楽しくなかったです」とコメント。他の部員役は床屋でカットしたが、「僕だけ八王子まで行って、そこから車でちょっと行ったふつうの家に連れてかれ、牛のフンくさい太陽がギラギラ照っている外で、とても暑い思いをしてバリカンの試し刈りとしか思えない断髪式をやった事がとてもムカムカ」したとし、さらに「人の頭を刈るだけ刈って長さメチャクチャ」「あとはメイクさん、向こうで切ってと言って、端の方で頭刈られて、極めつけは、さっきまで僕が頭を刈られてた所でロケをやっているんですから、もうバクハツ寸前でした」と。しかし最後は「でも泳ぎがうまくなったし、世の中の厳しさが分かったし電車にも詳しくなったし、友達ができたのでよかったです。スタッフの人はいい人ばかりでした」としている(引用:「浅野忠信」インスタグラム(@tadanobu_asano))

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往年の大物俳優のトリビア集。洋画ファンには気軽に楽しめる本。 

ハリウッド・スキャンダル―.jpgハリウッド・スキャンダル.jpg 『ハリウッド・スキャンダル―ちょっと気になる話 (現代教養文庫)

 プレイボーイ誌に連載されたゴシップ欄の集大成の抄訳で(原題"CELEBRITY TRIVIA:A Collection of Little‐Known Facts About Well‐Known People"、原著刊行は1980年)、ハリウッド映画のスターを中心に、映画監督や歌手などのトリビアを、編訳者が選んだもの。

 この翻訳が出て間もなくして読んだのですが、振り返ってみれば、出てくるのは大物スター、それも「超大物クラス」ではあるものの、そうドロドロした話ばかりでなくいい話もあったりして、洋画ファンには気軽に楽しめる本でした(版元が無くなっているので、新たに入手しようとすれば古書市場からになるが)。

ピーター・フォーク2.jpg 個人的に一番印象に残った話は、ピーター・フォークのエピソードで、彼は3歳の時に悪性の腫瘍のため右目を取り、代わりに義眼を入れていたのですが、12歳の時、野球の試合で二塁打を三塁打にしようと三塁にかけ込んだらアンパイアがアウトにしたので、「どこ見てんだヨォ。お前のがよっぽどこれが必要じゃねぇかァ?」と、おもむろに義眼を取り出して怒鳴ったことがある―というもの。

 気が強かったんだなあ。因みに、ベテラン性格俳優のトーマス・ミッチェルが1962年にブロードウェイの舞台で「コロンボ副隊長」を演じたのを、TV作家のリチャード・レヴィンソンとウィリアム・リンクがTV「刑事コロンボ」にするため、歌手のビング・クロスビーにコロンボ役の白羽を立てたもののクロスビーの都合がつかず、それでピーター・フォークにコロンボ役が廻ってきたとのこと。

Gregory Peck/Gary Cooper
グレゴリー・ペック .jpgゲイリー・クーパー .jpg この手の話は本書の中で他にも幾つか紹介されていて、グレゴリー・ペックは「真昼の決闘」の主役を降りたが、「駅馬車」(1939)の主役を降りたゲイリー・クーパーが代わりに主役をやり、アカデミー主演男優賞を獲得した―。因みに、ウィキペディアによれば製作者のスタンリー・クレイマーはこの映画を「誰も守ろうとするガッツが無かったので滅んでいった町についての話だ」と語ったといい、別の本で、ジョン・ウェインなどは同じような理由でこの作品が好きではなかったというような話を読んだことがあります(作家の村上春樹氏が『村上さんのところ』('15年/新潮社)真昼の決闘 ド.jpgで「何度も観返している映画ベスト3はなんですか?」との問いに、「ジョン・フォードの『静かなる男』と、フレッド・村上春樹 09.jpg村上さんのところs.jpgジンネマンの『真昼の決闘』です。四面楚歌みたいな状況に置かれたときに(何度かそういうことがありました)、よく観ました。見終わると、「僕もがんばらなくちゃな」という気持ちになれます。どちらもとてもよくつくられた映画です。何度観ても飽きません」と答えていた。同氏によれば、アメリカのホワイトハウスの映画室で、もっとも数多く大統領に観られた映画は「真昼の決闘」だという話を聞いたことがあるそうな)

ユル・ブリンナー.jpg 「マイ・フェア・レディ」のヒンギス教授役で知られるレック・ハリスンは、ミュージカル「王様と私」の"王様"役を断り、代わりに初舞台を飾り、大成功を収めたのが当時新人のユル・ブリンナーであるとのこと。当然のことながら、そのまま映画でも"王様"を演じたユル・ブリンナーは、アカデミー主演男優賞を受賞しています("アンナ"役のデボラ・カーもゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞)。

 ジェームズ・ディーンはテレビ出演のために映画「銀の盃」(1955)の出演を断ったが、ポール・ニューマンがその代役をやり、ポール・ニューマンのデビュー作となったとのこと(この映画は海外ではDVD化されているが、日本では現在['12年]リリースされていない)。

East of Eden .jpg ポール・ニューマンは、「エデンの東」(1955)では逆にジェット・リンク役を(これは「シェーン」のアラン・ラッドが役を降りたために空いてしまっていたのだが)ジェームズ・ディーンにもって行かれ涙をのむが、一方、「傷だらけの栄光」(1956)はジェームズ・ディーンが主役をやるはずだったのが、'55年9月に彼が自動車事故死したため、ポール・ニューマンが代わりにやることになった―。

ロバート・レッドフォード.bmp ジョン・ガ―フィールドが「欲望という名の電車」(1951)のスタンリー・コワルスキー役を断ったために、その役が廻ってきたのが明日に向かって撃て 0 1.jpgマーロン・ブランド。そのマーロン・ブランドは、「明日に向かって撃て!」(1969)でポール・ニューマンと共演するはずだったが、当時起きたキング牧師暗殺事件に衝撃を受けてその気になれず、結局代わりに大役を射止めたのがロバート・レッドフォードであるとのこと(これとは別に、ポール・ニューマンと共同で脚本を買い取ったスティーブ・マックイーンがブッチ役で、ポール・ニューマンがサンダンス役の予定だったのが、スティーブ・マックイーンが都合により出演しなくなったため、ポール・ニューマンがブッチ役に回り、当時無名のロバート・レッドフォードがサンダンス役に抜擢されたとの話もある)。

『追憶』(1973) 13.jpg卒業 [DVD] 2L.jpg そのロバート・レッドフォード主演の三大作品「スティング」「追憶」「華麗なるギャツビー」の何れも、ウォーレン・ビーティが主演を断ってロバート・レッドフォードの所に廻されたもの。

 ロバート・レッドフォード自身も、「卒業」(1967)のベンジャミン・ブラッド役を断っていて、その役はダスティン・ホフマンに廻った―(ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンでは全然雰囲気違う感じがするけれど)。

 ロバート・レッドフォードは「バージニア・ウルフなんか恐くない」(1966)のニック役、「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)のガイ・ウッドハウス役、「ある愛の詩」(1970)のジャッカルの日 パンフ2.jpgある愛の詩 1970.jpgRosemary's Baby2.jpgオリバー・バレット役、「ジャッカルの日」(1973)のジャッカル役を降りているとのことです(「ローズマリーの赤ちゃん」はジョン・カサヴェテス、「ある愛の詩」はライアン・オニール、「ジャッカルの日」はエドワード・フォックスがそれぞれ主演することになった)。

 最終的に主役俳優が決まるまでいろいろあったんだなあと、改めて思いました。

真昼の決闘.jpg「真昼の決闘」●原題:HIGH NOON●制作年:1952年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・ジンネマン●製作:ス真昼の決闘 DVD.jpgタンリー・クレイマー/カール・フォアマン●脚本:カール・フォアマン●撮影:フロイド・クロスビー●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原案:ジョン・W・カニンガム●85分●出演:ゲイリー・クーパー/グレイス・ケリー/トーマス・ミッチェル/ケティ・フラド/ロイド・ブリッジス/ロン・チェイニー・ジュニア/イアン・マクドナルド/シエブ・ウーリー/リー・ヴァン・クリーフ/ロバート・ウィルク/ジャック・イーラム●日本公開:1952/09●配給:ユナイテッド・アーチスツ日本支社=松竹●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(83-01-10)(評価:★★★☆)
真昼の決闘 [DVD]

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脳卒中からの脳科学者の回復の記録。まさに奇跡的。その回復要因をもっと考察して欲しかった。

奇跡の脳1.JPG奇跡の脳.jpg  奇跡の脳 文庫.jpg Jill Bolte Taylor Ph.D. in TED.jpg
奇跡の脳』['09年]『奇跡の脳: 脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)』['12年] Jill Bolte Taylor Ph.D. in TED

 著者のジル・ボルト・テイラー(Jill Bolte Taylor Ph.D.)はハーバードの第一線で活躍する脳科学者でしたが、1996年12月10日の朝、目覚めとともに脳卒中に襲われ、歩くことも話すことも、読むことも書くこともできず、記憶や人生の思い出が失われていくという事態に陥ります。

 彼女を襲った病気は、脳動静脈奇形(AVM)による脳出血(脳卒中は血管が詰まる「脳梗塞」と血管が破れて出血する「脳出血」に大別される)でしたが、本書は、そうした"心の沈黙"という形のない奈落の世界に一旦は突き落とされたものの、そこから完全に立ち直ることが出来た彼女が、後から長い時間をかけて自らの陥った状況を思い出し、科学者として分析し、回復の過程をまとめたものです(原題は"My Stroke of Insight A Brain Scientist's Personal Journey")。

 脳卒中に襲われた朝の自身の心理状態などが詳しく書かれていますが、その瞬間、これで脳の機能が失われていく様を内側から研究できると思ったというのがスゴイね。「時間が流れている」という感覚も、「私の身体の境界」という感覚も、脳の中で作り出された概念に過ぎないということを、それを失うことによって悟ってしまうというのも。

 脳卒中などによる機能障害は、最初はリハビリの効果が見られても6ヵ月ぐらいで症状が固着し、そこからはあまり目覚ましい回復は見られないというのが一般的であるのに対し、彼女の場合は年ごとに身体機能と知的活動を行う力を回復し、8年ぐらいかけて身体機能を元に戻すとともに、研究の場に完全復帰しています。

 そこには並々ではない努力はあったと思われるものの、脳の大手術を受けたこと、また障害の重さなどから言うと、やはり"奇跡的回復"と言っていいのでは(「身体の境界」の感覚が戻ったのは7年目だという)。

 彼女の場合、主にダメージを受けたのは左脳であったため、左脳が司っていた言語機能、理性や時間感覚が失われる一方で、右脳の芸術家的機能が活発化していったわけで、本書の後半は、「左脳マインド」に対する「右脳マインド」の話になっていて、プラグマティックであると同時に、ややスピリチュアルな雰囲気も。

 本書は全米で50万部売れ、彼女の「TED」(Technology Entertainment Design)でのプレゼンの様子はユーチューブで何百万回も視聴されたそうですが、それを見ると、この人、相当のプレゼンテーターというか、教祖的な雰囲気もあって、確かにアメリカ人には受けそうだなあ(但し、日本でも、NHK-BSハイビジョンで特番が組まれた。訳者・竹内薫氏の仕掛けもあったとは思うが)。

 彼女が陥った脳機能障害について、図説などを用いて丁寧に解説してあるのが親切で、一方、まさに"奇跡"であるところの回復過程についてはさらっと済ませてしまっていて、「努力」だけでこのような回復を遂げられるものではなく、何らかの特別な要因があったと思われるのですがそれにはさほど触れず、その後は「右脳マインド」の話になってしまっているのが、個人的にはやや不満。そうした"奇跡"が起きたことの「神秘」が、そのまま後半のスピリチュアリズムに受け継がれているといった感じでしょうか。

それでも、そうした「右脳マインド」の話にしても、体験者、しかも脳科学者が語っているだけに、凡百の啓蒙書などに書かれていることなどよりは、ずっと説得力はあったように思います。

【2012年文庫化[新潮文庫(『奇跡の脳: 脳科学者の脳が壊れたとき』)]】

【2298】 ○ 水野 俊哉 『明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』 (2014/04 ティー・オーエンタテインメント)

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面白かった。20年代に藤田自らが手掛けた(一旦失われた)挿絵本が多く含まれている。

i林 洋子 『藤田嗣治 本のしごと』.jpg藤田嗣治 本のしごと1.jpg 『藤田嗣治 本のしごと (集英社新書<ヴィジュアル版>)』['11年]

  画家・藤田嗣治(1886-1968/享年81)の生涯での「本の仕事」を追った本で、書籍や雑誌を対象とした表紙絵や挿絵の仕事から90冊を紹介していて、やや地味なテーマにも思えましたが、読んでみたら面白く、一気に読み進めることとなりました。

「本のしごと」というやや漠たるタイトルになっているのは、それこそ「自著」を自ら装丁したものから、表紙絵や挿絵を寄せただけのもの、或いは、どこまで画家自身が関わったのか推測する外ないようなものまであるからのようです。

藤田嗣治の「本の仕事」を紹介することが、そのままフランスと日本で活動した彼の生き方を追うかたちにもなっていますが、因みに藤田嗣治は、1913年に渡仏し1933年に日本に帰国、1949年にまた日本を離れ、その後亡くなるまで18年間パリ・モンパルナスに定住、日本国籍を捨ててフランス国籍になっています。

 藤田嗣治が最初に渡仏した頃は、何百人という日本人の芸術家の卵がパリに行っていたようですが、その中で断トツに華々しい成功を収めたのが彼でしょう。第一次世界大戦の勃発で多くの在留邦人が母国に引き上げる中、フランスに留まり続け、1919年に32歳で開いた個展で脚光を浴び、「本の仕事」もそこからスタート、本書によれば50冊を超える挿絵本をフランスで手掛けていますが、20年代のパリでの仕事が全体の3分の2を占めるとのことです(装丁第1作が「インドの詩聖」タゴールの英語著書をアンドレ・ジッドが仏訳した本だというからスゴイ)。

特に初期の「本のしごと」は、当時フランスで流行ったジャポニズムに呼応するような異文化紹介的な雰囲気のものが多く、それが帰国してからは「フランスでの日本表象」だった彼が「日本でのフランス表象」となるわけですが、日本の婦人雑誌などの表紙イラストも結構描いているんだなあ。これがお洒落で、戦後の復興期の中で活力とモダンなセンスを得つつあった都会派女性に受けたのは分かる気がします。

藤田嗣治 本のしごと 菊地寛.bmp藤田嗣治 本のしごと 回想のパリ.bmp そうした日本での「本の仕事」も多く紹介されていますが、年代とともにどんどん洗練度を増して時代をリードする一方で、時にクラッシカルな雰囲気に回帰したりして自由自在という感じで、ほんと、スゴイね(日本での「本の仕事」は神奈川近代文学館に多く集まっているとのこと)。

 彼は画家であり版画家であったわけですが、「本のしごと」は彼にとって、自らのアートを一般の人に"携帯"してもらうという、絵画などとはまた違った大切な意味を持つものであったようです。

菊池寛『日本競馬読本』(1936)/柳澤健『回想の巴里』(1947)

 本書に紹介されている図版は200点以上で、これだけ豊富にあると、文章部分がそれぞれの図版のキャプションになっているような読み方もできますが、フジタのアトリエまでも寄贈した君代夫人(1911-2009/享年98)が、最後まで自らの手元に置いていた本が多数あり、彼女が亡くなる3年前にそれらをまとめて美術館に寄贈したことで、新たに明らかになった彼の「本のしごと」が、本書の中核になっているとのこと、その意味では実に貴重な新資料であり、また「新書」のテーマとして相応しいようにも思います。

藤田嗣治  ユキ.bmp 寄贈された本は彼がパリに永住した時期に現地や旅先で入手した本など500冊ほどですが、20年代を中心にパリで藤田自らが手掛けた挿絵本がかなり揃っていたとのこと、但し、それらの多くは、彼自身が世界恐慌の際に一旦手放したものを50年代に買い直したものが多く、彼が失われた青春を取り戻すかのように集めた若き日の労作を、君代夫人がずっと最後まで手元に置いていた気持ちは何となく分かる気がします。

ユキ・デスノス『ユキの回想』(フランス人妻・ユキの回想録/藤田の挿画(1925)を使用した特装版)

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あくまで写真主体の「写真集」。開会式の場面で何だかじ~んとくる「映画」。

'64 東京オリンピック 朝日新聞社.jpg     映画パンフレット 「東京オリンピック」.jpg 東京オリンピック vhs.jpg  
'64東京オリンピック (1964年)』/映画「東京オリンピック」(パンフレット/VHS①②)

3『'64 東京オリンピック』.png東京オリンピック3.JPG 東京オリンピックの終了後、比較的早期に出された写真集で、当時の定価で2800円ですが、相当部数印刷されたせいか、古書市場で比較的廉価で入手できます。
東京オリンピック5.JPG 東京オリンピック7.JPG カラー写真とモノクロ写真が交互に出てきて、大判で迫力がありますが、キャプションは簡潔にとどめ、あくまで写真主体であるのがいいです。
『'64 東京オリンピック』10.png東京オリンピック8.JPG それにしても懐かしいね。日本人選手も、重量挙げの三宅義信やレスリングの渡辺長武、体操の遠藤幸雄、そして女子バレーボールと多くの選手が活躍したけれども、やはり世界にはすごい選手がいるものだと思い知った大会でした。
『'64 東京オリンピック』11.jpg12『'64 東京オリンピック』.png 陸上男子100メートルのボブ・ヘイズ、マラソンのビキラ・アベベ、水泳のドン・ショランダー、体操のベラ・チャフラフシカ、柔道のアントン・へ―シング、ややマニアックなところでは、重量挙げのジャボチンスキーや女子砲丸投げのタマラ・プレスなんていう選手が印象に残っています。

東京オリンピック4.JPG 日本選手で印象深いのは、やはりマラソンの円谷幸吉選手(1万メートルでも6位に入賞していたんだなあ)で、この人の写真を見るたびにその「遺書」を思い出してしまいます。

依田郁子-Ikuko_Yoda_1964.jpg 女子80メートルハードルの依田郁子選手も、スタート前のウォーミングアップでトンボ返りをするなど印象的でしたが、この人も'83年に自殺しています(柔道重量級の金メダリストの猪熊功選手も2001年に自刃により自殺している)。人気度という点では水泳の木原光知子選手などもいました(愛称ミミ。この人も2007年に突然のように亡くなったなあ)。

依田郁子(1964)

田中聡子.jpg 巻末の競技別成績一覧を見ると、水泳の男子200メートル背泳の福島滋雄選手とか女子100メートル背泳の田中聡子選手とか、メダルまであと一歩だった選手もいて、田中聡子選手は日本新記録を出しながらも4位、福島滋雄選手は3位の選手と10分の1秒差―その悔しさは測り知れません(但し、田中聡子選手は東京五輪の前のローマ五輪で銅メダルを獲得し、日本では前畑秀子以来二人目の女子競泳メダリストとなっていた)(彼女は、2012年と2017年、マスターズ水泳の世界大会と国内大会で100m背泳ぎの世界記録をつくっている)

東京オリンピック  市川昆.png この大会の公式記録映画である市川昆(1915-2008/享年92)監督の「東京オリンピック」('65年/東宝)では、試合前の選手の悲愴感すら漂う緊張ぶりや、脱落したり敗者となった選手の表情(田中聡子選手のように惜しくもメダルに届かなかった選手のレース直後の様子なども含め)にもスポットを当てており、選手の心情を描くことを重視したドラマ性の高いものとなっていました。

千代田映画劇場 東京オリンピック.jpg この作品は当時750万人の一般観客と、学校動員による1,600万人の児童生徒の、合計で2,350万人が観たとのことで(ギネスブック日本版)、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」('01年/東宝)が '01年に観客動員数2,350万人を達成したそうですが、国民の広い層が観たという意味ではいい勝負と言うか、「東京オリンピック」の方が上かもしれません。

「東京オリンピック」('65年/東宝)封切時(千代田映画劇場)「SUISHI'S PHOTO」中塚浩氏撮影
 
市川 崑 「東京オリンピック」開会式.jpg 聖火リレーや開会式の様子をしっかりと撮っていて、観ていて約半世紀前の記憶が甦ってくるとともに、当時の日本国民の熱狂ぶりを改めて感じとることができま④古関 裕而.jpgす。古関裕而作曲の「東京オリンピックマーチ」ってやはりいい。開会式の選手入場行進などの場面を観ていてじ~んと胸にくるのは自分の年齢のせいでしょうか。映画からは、編集した映像に合わせて後から音楽や選手の靴音などの効果音を入れていることが窺えますが。

東京オリンピック』を撮影中の市川崑監督.bmp 当初、黒澤明が監督をする予定だったものが予算面で折り合わず、新藤兼人、今村昌平など何人かの有名監督が候補に挙がった中で、最後にお鉢が廻ってきたのが、スポーツはプロ野球観戦ぐらいしか興味の無かった市川昆監督でした。

市川 昆 「東京オリンピック」望遠カメラ.jpg でも、経費的な制約条件の中、超望遠カメラを多数使用し、人海戦術で各競技の様子を撮ることに予算を集中投下した市川監督の手法は"当たり"だったのではないでしょうか。興行面だけでなく、質的にも、市川昆監督自身の代表作と言えるものと思います。

市川 崑 「東京オリンピック」バレーボール.jpg 最終的には制作費3.5億円と、やっぱり予算オーバーになったみたいですが、興行収入はそれを大きく上回る12億円超。予算オーバーは、監督自身が当初2時間半程度に纏めるつもりでいたのが、協会側から3時間程度に、という要請があったことも関係しているのでは。

 '04年(平成16)年にオリンピック開催40周年を記念して発売されたDVDでは、市川昆監督自身が再編集したディレクターズカットが劇場公開版と併せ収録されていますが、こちらは劇場公開版より22分短い148分となっています(VHS版は劇場公開版と同じ170分)。

市川 崑 「東京オリンピック」ハードル.jpg 内容的には当時、記録性に乏しいとの批判もあり(オリンピック担当大臣だった河野一郎が「作り直せ」とイチャモンをつけたのは有名)、「記録が芸術か」という議論にまで発展したようですが、ドキュメンタリーというのは必ずフィクションの要素が入るものではないかなあ(この作品については「脚本」に市川崑、和田夏十の他に、白坂依志夫や谷川俊太郎が名を連ねており、映画のエンリーフェンシュタール.jpgディングロールには安岡章太郎などの名も見られる)。因みに、1936年のベルリンオリンピックの記録映画「オリンピア」('38年)(日本では「民族の祭典」および「美の祭典」として公開)を監督したレニ・リーフェンシュタール(1902-2003)も厳密な意味でのドキュメンタリー作品であることにはこだわらず、創作的・芸術的要素をふんだんに作品の織り込んでいて、市川崑監督の「東京オリンピック」はこのレニ・リーフェンシュタールの作品の影響を強く受けているとも言われています。

市川崑 オリンピック.jpg ディレクターズカット版では、そうした批評を受けてか、劇場版で休憩時間を経ての後半の冒頭に出てくる、独立して間もないアフリカのチャドから来た選手のエピソードなどが割愛されているようです。この選手、映画の中では母国の何百とある方言のうちの1つを話す、とされていますが、市川昆監督自身が後のインタヴューで、実はフランス語がペラペラの"近代青年"であったことを明かしており、さすがにここは"作り過ぎた"との意識が監督自身にもあったのでしょうか(この人の弱点は、和田夏十の脚本をすんなり受け容れすぎてしまうことにあったのではないか)。

ドイツは合同チームとして参加 東京オリンピック.jpg 当時、東西に分かれていたドイツは合同チームとして参加し(但し、団体種目では表向き東西統一ドイツという名称であっても、実際には東ドイツもしくは西ドイツどちらかのチームだった)、「ドイツ」が金メダルをとると国歌の代わりにベートーヴェンの第九交響曲「歓喜の歌」が流されるなどしました。オリンピックはこの頃が一番「平和の祭典」に近かったのかもしれません。ただ、オリンピックに政治を持ち込まないと言っても、これもまた政治の影響であることには違いなく、その辺りが難しいところかもしれません。

ブラックパワー・サリュート.jpg オリンピックを巡る様々なエピソードで個人的に印相深いものの1つに、東京オリンピックの4年後に行われた1968年メキシコシティオリンピックで、男子200mの表彰台での「ブラックパワー・サリュート」があり、あれなども「政治」的行為かもしれませんが、彼らにはそうした行為をするに至る切実な思いがあったわけで、非常に複雑な問題だと思います。表彰台で拳を掲げた米国の金メダリストのトミー・スミス(中央)と銅メダリストのジョン・カーロス(右)に賛同して、銀メダリストのオーストラリアのピーター・ノーマンも彼らと同じく、前年に彼らが設立したOPHR(人権を求めるオリンピック・プロジェクト)のバッジを咄嗟に着け、彼らの行為に賛同の意を表しました。スミスとカーロスが帰国後バッシングに会い、カーロスなどは100ヤード世界タイ記録を出しながら二度とオリンピック代表に選ばれなかったのと同様、ノーマンもメキシコ五輪以降も国内トップ級アスリートであったあったにも関わらず二度と五輪代表に選ばれることノーマン葬儀.jpgはありませんでした(米国が黒人問題を抱えるのと同様、オーストラリアはアボリジニ問題を抱えていた)。ノーマンをは2006年に死去し、葬儀ではスミスとカーロスが棺側付添い人を務スミスとカーロスの像.jpgめています。また、2005年、カリフォルニア州立大学サンノゼ校は、卒業生であるスミスとカーロスの抗議行動を賞賛し、20フィートの銅像を建立していますが、この像にはノーマンの姿はありません。これには経緯があり、当初は今あるようにスミスとカーロスだけを像にする予定だったのが、本人たちがノーマンを加えないならば像は立てないでくれと反対、ところがノーマン本人の方から像に自分を加えないで欲しいとの申し出があったとのこと。ノーマン曰く、「誰でも僕の代わりにそこに立ち、記念写真を撮ることができるじゃないか」ということだったようですが、「その場所には誰でも立つことが出来る」という象徴的な意味に繋がるこのノーマンの意向には偉いなあと思わされます。

東京オリンピック 市川昆.bmp東京オリンピックdvd.jpg13『'64 東京オリンピック』.png「東京オリンピック」●制作年:1965 年●監督:市川昆●製作:東京オリンピック映画協会●脚本:市川崑/和田夏十/白坂依志夫/谷川俊太郎●撮影:林田重男/宮川一夫/中村謹司/田中正●音楽:黛敏郎●ナレーター:三國一朗●時間:170分●公開:1965/03●配給:東宝(評価:★★★★)東京オリンピック [DVD]
1964 東京オリンピックポスター デザイン:亀倉雄策
1964 東京オリンピック 亀倉雄策.jpg

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「英語」の本と言うより、暇な時に読む「映画教養書」といった感じか。

使ってみたい映画の英語―.JPG使ってみたい映画の英語.jpg使ってみたい映画の英語 男の名セリフを味わう

 「風と共に去りぬ」「カサブランカ」から「ラスト サムライ」「スクール・オブ・ロック」まで、年代別に44本の映画の中のセリフを取り上げ、そのセリフの背景となるあらすじを大体2ページぐらいで紹介して、あとは、その作品についての一口メモと英語のセリフについての一口メモが1ページずつあるといった構成になっています。

 きれいに纏まっているので、語学雑誌か何かの連載かと思ったりもしましたが、書き下ろしみたい。

 あらすじの説明に各2ページも割いているわけで、どちらかと言うと、「英語」の本と言うより「映画」の本であり、サブタイトルに「男の名セリフを味わう」とあるように、取り上げられているのはすべて男性登場人物のセリフです(サブタイトルの方が内容に即している)。

 あとがきにも、編集者から「団塊の世代を中心に、中高年男性が読んで楽しめるような、カッコいい男たちの名セリフ集を作れないか」との話があって本書を執筆したとあり、「同世代の男性に向けて書いた」(著者は1953年生まれ)ともあります。

 従って、映画の内容を思い出しながら、再度その作品を見る際は幾つかのセリフにこだわって観る楽しみにするといった読み方になるのでしょうか。

 著者自身が、そのセリフが語られた背景を丁寧に解説しているわけで、「使ってみたい」と言っても、そう使うような場面が日常であるようにも思えない印象を受けました。

 作品に関する一口メモには、俳優に関するエピソードや映画が作られた際の裏話なども織り込まれていてそれなりに楽しめましたが、メジャーな作品ばかり取り上げているため、映画ファンからすれば"一般常識"の範疇内の話も多く、一方、「英語」の方を期待した読者には、物足りないものとなっているのではないかと思いました。

 「使ってみたい」は編集者がつけたタイトルなんだろなあ、きっと。
 暇な時にさっと目を通す「映画」の本(映画教養書)といった感じでしょうか。

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核心の部分をもう少し具体的に書いて欲しかった気もするが、面白かったことは面白かった。

『中国の地下経済』富坂聰(文春新書).jpg  010富坂 聰 2012.jpg  薄煕来2.jpg
中国の地下経済 (文春新書)』 富坂 聰 氏(テレビ朝日・2012年3月10日)/薄煕来・重慶市党委員会書記
「ブログ報知」(2010年2月9日)
富坂 聰 20.jpg 著者は「週刊文春」記者時代から中国をずっとテーマとして追っているジャーナリストで、これまで多くのインサイドレポートを著していますが、本書はとりわけ著者が得意とする「地下経済」に的を絞って書かれている点が良かったです。

 「地下経済」というと、麻薬や人身売買が関係するダーティーなイメージを抱きがちですが、本書によれば、中国においては、まっとうに見えるビジネスも実は地下経済とすべて繋がっており、また、中国で暮らしている者であれば、地下経済とまったく関係なく生きている者などいないとのことです。

 中国の私企業、商店、飲食店などは、その設立や設備投資に際しては殆どの場合、銀行が安全な国有企業にしか融資しないため、「地下銀行」を利用するとのことで、これは無尽講のような個人経営の金融機関なのですが、そうした地下銀行が中国では発達しているため、個人でも事業を起こすことができるとのこと。

 国家による人民元の持ち出しや外貨規制等がある中で海外との入送金などが可能なのも、こうした地下銀行がその役割を担っているためで(こうした地下銀行は東南アジアの他の国にもあるけれどね)、中国人が銀座でブランド品を買い漁ることができるのも、この地下マネーのお陰であるようです。
 
 一方、役人には「灰色収入」と呼ばれる賄賂に近い浦収入があり、1万以上あるという地方自治体の出先事務所が、そうした賄賂や官官接待を取り仕切っているとのことで、ある事務所では高級茅台酒を一時に777本も買っていたとのこと(その茅台酒がニセ酒だったことから事件化し、その事実が明るみになった)。

黄鶴楼 タバコ.jpg また、「中華」という1箱58元(754円)の高級タバコを大量に買い込んでいた事務所もあったとのことですが、更にその上をいく「黄鶴楼」という1箱300元(3900円)もする超高級タバコがあって、これらも役人に渡す賄賂として利用され、「回収煙酒」という看板を掲げている商店があって、そこにこうした酒・タバコ持ち込めば、定価の一定率で買い取ってくれるという―つまり、非合法(且つ何ら危険を伴わない)裏マーケットがあるということで、要するに、この場合「高級タバコ」は(パチンコの景品のように循環して)疑似通貨の役割を果たしているわけです。

 こうした裏マーケットを支えているのも「地下経済」であれば、上海万博にパビリオンを出展する企業に融資しているのも、リーマンショック後の金融危機に対して約54兆円の景気対策を打ち出した国家財政を裏支えしているのも地下経済であるということであり、その規模は少なく見積もっても中国のGDPの半分(200兆円)になり(となると、中国のGDPが日本を上回ったのはつい先だってではなく、既に日本の1.5倍の規模であったことになる)、更にもっと大きな数字になるという試算もあるようです。

 こうなると、表経済と裏経済は別々にあるのではなく、中国経済そのものを地下経済が支えているということになり、但し、これらは税金がかからない世界で金の流れであって、中国政府はこれらに課税しようと「灰色収入」を定義し、「地下経済」を表の世界に引っ張り出そうとしているようですが、必ずしも上手くいってはいないようです。

 「地下経済」は、貧富の格差を生む原因となっていますが(実際に、党幹部を除いて最も潤っているのは、ベンチャー起業家ではなくて「央企」と呼ばれるガリバー型国有企業の社員らしい)、一方で貧しい庶民の雇用を支えている面もあり、著者自身、そうした施策の実効性に疑問を呈しています。

薄煕来.jpg 国家による地下経済"表化"施策の象徴とも言えるのが、本書の最後にある、当局によるマフィア掃討作戦であり、重慶市における「掃黒(打黒)」キャンペーンで有名になったのが薄煕来・重慶市党委員会書記ですが、大多数の国民から熱狂的な支持を集める一方で、その強引なやり口には綻びも見られるという―。

 結局、「首相候補」とまで言われた薄煕来は、本書刊行後の今年('12年)4月に失脚しますが(政治局員から除名され、妻には英国人殺害容疑がかけられた)、本書によれば、そのキャンペーン自体が薄自身の発想ではなく、中央の大老が支持したものだったのこと―薄煕来の前任者もトカゲの尻尾切りのように切られており、簿煕来も同じ道を辿ったことを考え合わせると、納得性は高いように思いました。

 中国は今、財政的な意味においてだけでなく、コピー商品やマネーロンダリングに対する諸外国からの批判もあって「地下経済」の"表化"に熱心ですが、中国が本気で地下経済を排除すれば中国経済のパイそのものは縮小し、地下経済でしか生きていけない人の生存域を狭めることになるという、著者の指摘するこのジレンマに、今後この国はどうなっていくのだろうかという思いを強く抱きました。

 表層的なことはかなり具体的に書かれていますが、核心の部分をもう少し具体的に書いて欲しかった気もして、しかしながら、簡単に核心に触れられないからこそ「地下経済」なのだろうなあ(面白かったことは面白かった)。

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番組制作の"メタ・ドキュメント"。取材者と取材される側という枠を超え、師弟関係のようになっていくのが興味深い。

脳梗塞からの脳梗塞からの 多田富雄.jpg
脳梗塞からの"再生"―免疫学者・多田富雄の闘い』NHKスペシャル「脳梗塞からの"再生"〜免疫学者・多田富雄の闘い〜」より(2005.12.4)

 世界的な免疫学者・多田富雄(1934-2010.4.21)は、'01年に旅先の金沢で脳梗塞に見舞われ、数日間死線を彷徨った後に生還したものの、後遺症によって発語機能が奪われるとともに右半身不随になり、突然に不自由な生活を強いられるようになりますが、その闘病の記録は、'05年にNHKスペシャル「脳梗塞からの"再生"〜免疫学者・多田富雄の闘い〜」として放映され、自分自身この番組を見て、トーキングエイド(音声機能付パソコン)でしか意思疎通できない多田氏のリハビリ並びに闘病生活の凄まじさに驚かされた記憶があります。

リハビリに励む多田富雄氏.jpg 本書は、そのドキュメンタリー番組を担当した女性ディレクターが("Nスぺ"のテーマって局内公募で決まるんだなあ)、番組並びに多田氏が自ら綴った闘病手記「鈍重な巨人」を補足するかたちで書いた取材記であり、'05年に約半年に渡って行われた番組制作のための取材を軸に構成された"メタ・ドキュメント"となっています。

寡黙なる巨人.jpg 多田氏自身の闘病手記は『寡黙なる巨人』('07年/集英社)として刊行され、'08年度の「小林秀雄賞」を受賞しており、個人的にも読んで感銘を受けましたが、その多田氏を取材する側から書かれた本書は、また違った角度から多田氏の闘病ぶりやその人柄を伝えるものであり、更に、番組制作の背景にこんなこともあったのかなどとこれまで知らなかった出来事がいろいろ書かれていて、そうした点からも関心と感動を持って読み進めることができました。

 当初、取材する側から見て多田氏が「演技」しているように見えたということで、これはドキュメンタリーを撮る側からすると望ましいことではないと思われたものの、取材を進めるうちに、それらの一見カメラサービス的な行動も含め、すべて自分の生きざまをそのまま曝け出そうとする多田氏の思いの表れであったことに著者の考えが行きついたとのことで、そうした転機を経て、著者の多田氏への取材は奥深いものとなっていきます。

 取材の過程での著者の質問等に対する対応も丁寧で、ただ丁寧であるだけでなく、多田氏の方から著者に、より突っ込んだ主観的な疑問をぶつけてくることを求めているような感じで、そこには、単なる取材される側と取材者やインタビュアーという枠を超えて、師弟のような関係が生まれているようにも感じられました(この点でも著者は、取材者は客観的な観察者であるべきという考えを途中から改め、どんどん自分の率直な疑問を多田氏にぶつけていくことになる)。

 脳梗塞の後遺症に加えて前立腺がんをも発症した多田氏は、取材期間中に睾丸の摘出手術を受け、さらにガンの転移が懸念されるなど絶望的な状況に陥るものの、それでも「歩き続けて果てに熄(や)む」との信念のもとリハビリを続けますが、それは、リハビリが多田氏にとって人間の尊厳を回復する営みであったためです。

 そうした強い信念を多田氏が持ち続けることが出来た背後には、医師である式江夫人の支えがあったことが本書から窺え、但し、そこには一般にイメージされがちな悲愴感は無く、ユーモアに満ちた会話が遣り取りされていて、多田氏は病を得る以前は"超"亭主関白であったあったとのことですが、半身不随となってから、対等な暖かい夫婦の関係が新たに形成されたことも窺えました。

 それにしても、半身不随となり、話すことも書くこともままならい状態になってからの方が創作意欲が増したというのはスゴイことで、実際、先に挙げた『寡黙なる巨人』をはじめ何冊もの著書を上梓していて、そればかりでなく、介護問題などに対する社会的発言を積極的に行い、且つ、研究生活においては引き続き後進の指導に当たるという―このエネルギーはどこからくるのか。

 本書は、「知の巨人」と言われた多田氏の"素"の部分をふんだんに見せながらも、そのことによって更に多田富雄という人間の大きさを伝えるものになっているようにも感じました。

小林秀雄賞を受賞し、記者会見する多田富雄.bmp 本書の原稿にも多田氏は目を通し、「NEK的スタイルにとらわれるな」と著者にアドバイスし、亡くなる前月に訪れた際には「ヤメル トモダチノ キロクデ イインデス」とトーキングエイに打ち込んだということであり、また、亡くなる10日前にも東大でトーキングエイドを使って講演し、この時にはすでに肺に癌性胸水が溜まって息をするのも辛かったはずであるにも関わらず、講演会が終了した後の打ち上げにも顔を出してスタッフを労ったということです。

 こんな人、これからはそう簡単に現れないだろうなあ。

小林秀雄賞を受賞し、記者会見する多田富雄氏(2008/08/28)【共同通信】

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オーソッドックスな認知症の入門書であり、分かり易い。

知っておきたい認知症の基本.jpg 『知っておきたい認知症の基本 (集英社新書 386I)』 親の「ぼけ」に気づいたら 文春新書.jpg 『親の「ぼけ」に気づいたら (文春新書)

 認知症臨床医の斎藤正彦氏の『親の「ぼけ」に気づいたら』(2005年/文春新書)を読んで、認知症患者本人とその介護にあたる家族の生き方の問題まで突っ込んで書かれていたので、入門書でありながらもちょっと感動してしまったのですが、こちらは、1996年以来「物忘れ外来」で多くの患者を診察してきた川畑信也医師が書いたオーソッドックスな認知症の入門書であり、個人的にはこちらの方を先に読みました。

 厚労省が「痴呆性疾患」改め「認知症」という"新語"の使用を決めたのが2004年頃で、本書の刊行が2007年ですから、この頃には「認知症」という言葉がある程度一般に定着してきていたのではないでしょうか。

 但し、著者の言うように、「認知症」と「アルツハイマー病」の違いがまだよく理解されていなかったりもして、本書では、その辺りの解説から入って(要するに、「アルツハイマー病」という病気(原因)によって「認知症」という状態(結果)が引き起こされるという関係)、認知症とはどういった状態を指し、その中核症状や周辺症状はどういったものかを説明しています。

 更に、認知症を引き起こす代表的な病気として、アルツハイマー病と脳血管性認知症についてそれぞれ1章を割いて解説するとともに、治療可能な認知症を見逃さないようにするには、どういった点に注意すればよいかが書かれています。

 また、認知症は、上手な介護と適切な対応によってその進行を遅らせることができるとし、薬物療法や、事例からみた介護の在り方についても書かれています。

当時、認知症について書かれた本は数多く出されたように思いますが、その中でも分かり易い方でした。

 とりわけ、アルツハイマー病の早期兆候として、①物忘れ(記憶障害)、②日時の概念の混乱、③怒りっぽくなる(易怒性)、④自発性の低下、意欲の減退、の4つを挙げているのが分かりよかったです。

一方、脳血管性認知症については、脳血管障害に由来する神経症状に認知症がみられると脳血管性認知症と診断されるが、これは誤りであり、脳血管障害を発症する前に、認知症がすでに存在していた可能性があるとし、更に、アルツハイマー病でみられる認知症状が脳血管障害によって悪化するという傾向があるとしています。

 かつてが「痴呆性疾患」と言えば脳血管障害がメインの原因であり、それが90年代にアルツハイマー病と脳血管障害が拮抗するようになり、著者の「物忘れ外来」での過去10年間の受診者の診断内訳は、アルツハイマー病が52.9%で、脳血管性認知症は5.4%となっています。

 著者は、脳血管性認知症はかなり曖昧であり、実際にそのように診断されているよりも遥かに数は少ないのではないかとしていますが、近年の世間一般の統計は、著者の「物忘れ外来」での診断分布にどんどん近くなっていて、アルツハイマー病が「認知症」の原因としては圧倒的に多くなっているようです。

 アルツハイマー病の患者が急に増えたわけではなく、これまで見過ごされていたことが窺えて興味深かったです。

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入門書として優れ、患者とそれを見守る家族に対する著者の暖かい眼差しも感じられる本。

『親の「ぼけ」に気づいたら』.JPG親の「ぼけ」に気づいたら 文春新書.jpg 『親の「ぼけ」に気づいたら (文春新書)

 親が「痴呆性疾患」に罹ったらどうすればよいかということを、臨床医である著者の経験から幾つかの事例を複合させて構成した一人の患者のモデルケースと、その介護にあたった家族の架空の物語を軸に分かり易く解説して、その間、「ぼけ」とはどのようなものかを解説するとともに、その他の様々な症例とそれに対する家族の対応などもケーススタディとして織り込んでいます(本書刊行の前年に厚労省は「認知症」という"新語"の使用を決めているが、本書ではまだ一般の読者に馴染みがないことから「痴呆」という言葉を用いている)。

 メインとなっているモデルケースは、75歳の会社経営者で、家族は、妻と2人の息子に1人の娘―話は、本人が好きだったゴルフをやらなくなったことから始まり、実はそれはスコアを正確に記録することができなくなったためなのですが、当初は、家族それぞれに主人公の病状や介護の在り方について意見が違ったりもし、また、初期の段階で一番たいへんなのは、本人を医者に診せることだったりするのだなあと。

 このモデルケースの場合、ゆっくり進行するアルツハイマー症で、その初期から終末までの10年間を全14話にわたって追っていますが、間に挟まれているケーススタディ(全17エピソード)には、脳血管性疾患など様々な症例が取り上げられていて、ただ症例として取り上げるだけではなく、メインストーリーと同じく、厳しい現実に直面した家族の苦労と具体的な対処、家族の介護に対する考え方、ひいては家族並びに本人の人生観にまで踏み込んで書かれていて、それらもまた一つ一つが物語となっており、介護入門書としても読み物としても奥深いものとなっています。

 痴呆性疾患の種類や様態について詳しく解説されているほか(「早期の診断」の重要性を感じた)、介護制度の現状や介護施設の選び方、成年後見人制度等の情報も網羅されています。

 患者とそれを見守る家族に対する著者の暖かい眼差しが感じられる本でもあり、最後に、病気が進行して栄養摂取障害となった際に経管栄養(胃瘻など)を行うかどうかという問題について、メインとなっているモデルケースは家族の意向を汲んでそれを行っていますが、著者自身の考えとしてはやるべきではないとしていて、ここまでの著者の語り口からみて説得力がありました。

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「世界でもっとも美しい大地」というサブタイトルは誇張ではないと思った。

パタゴニアを行く 地図.bmpパタゴニアを行く―世界でもっとも美しい大地.jpg      PATAGONIA―野村哲也写真集.bmp
カラー版 パタゴニアを行く―世界でもっとも美しい大地 (中公新書)』['11年]『PATAGONIA―野村哲也写真集』['10年]

 パタゴニアというのは、南米大陸のチリとアルゼンチンの両国の南緯40度以南を指すそうです(緯度で区切られていたのか)。

 本書は、パタゴニアに魅せられた新進気鋭の写真家が、'97年にかの地に移住し、その自然の美とそこに暮らす人々を取材したもので、パタゴニアを北西、北東、南西、南東、極南の5つの地域に分けて紹介した写文集です(文中、章ごとに、今どの辺りにいるか緯度で示しているため分かり易い)。

パタゴニアを行く1.jpg 既に著者は'10年に、『PATAGONIA―野村哲也写真集』(風媒社)という大判の写真集を発表しており、こちらの新書の方は、写文集とはいえ写真はそう数はないかと思ったら、相当数の写真が掲載されていて、写真集としても十分堪能出来て、これで千円以下というのは相当お得ではないかと思いました。

 写真はどれも美しく、本書表紙にもなっている、冬にだけ現れる湖に「チリ富士」と呼ばれるその姿を映すオソルノ山、そのオソルノ山をプエルト・パラスの町から眺めた遠景、城塞のようなセロ・カスティーヨ山、海に落ち込むサンラファエル氷河のグレイシャーブルーの輝き、夕陽を背景にテールアップするバルデス半島のクジラ、朝日で深紅に染まるパイネ山のセントラル塔、写真集の表紙にもなっている、湖に鏡のようにその姿を映す尖鋒フィッツロイ―いずれもため息が出そうなものばかりです。

 こうした写真がそう簡単に撮れるものではなく、シャッターチャンスを求めての苦心譚もあれば、地元の人々との交流も描かかれていて(文章も上手だなあ)、更には、地誌、歴史(人類史含む)に関する解説も織り込まれています。

 また、近年、「南米のスイス」と言われ、マチュピチュと並ぶ南米の観光地として注目を浴びていることから、観光ルートなども紹介されていて、氷河のトレッキングツアーなどが組まれているんだなあと(著者もそうしたツアーを利用したりもしている)。

 最後は、グレイト・ジャーニーと呼ばれる人類の旅の最終地点フェゴ島で、先住モンゴロイド系民族の最後の末裔である姉妹と会うところで旅を締め括っていて、地理的にも雄大ですが、時空的にも壮大な旅となているように思いました。

 サブタイトルの「世界でもっとも美しい大地」は著者が心底そう思っていることが窺え、個人的にもこれらの写真を見ていて、けっして大袈裟な表現ではないと思いました。

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改めて驚かされるような話は無かったが、行政の原発事故対応批判は予言的。

地下経済―この国を動かしている本当のカネの流れ.jpg   地下経済―この国を動かしている本当のカネの流れ2.jpg
地下経済―この国を動かしている本当のカネの流れ (プレイブックス・インテリジェンス)

 地下経済が表経済と独立して存在するものではなく、両者は表裏一体となっていて、むしろ、経済活動とはそもそも裏や地下的なものなのだという、著者らしいスタンスで書かれていました。

 最初の方で、電力会社が原発トラブルを隠蔽する一方で、原発事業推進のために巨大な広告費を使ってイメージアップ宣伝をしていると言っており、こうした指摘は当時から珍しくはありませんでしたが、東電を例に、「企業というのは、背負った公共性の度合いが大きければ大きいだけ、腐った体質になっていく」と言い切っているのは分かり易いなあ。

 その他にも、大手コンビニなどの「フランチャイズ」のネズミ講的実態や、新卒者を500人から600人と大量採用して、その3分の2を研修終了後にクビにしてしまう技術系人材派遣会社(あったなあ)を挙げて企業活動の無法地帯化を指摘し、更には、商工ローンのヤクザでもやらないような苛酷な取り立てなどを挙げつつ、こうした問題は倫理問題ではなく経済問題であって、実態経済とはえげつないものであるとしています。

 著者が最もえげつないとしているのが銀行で、自らの「地挙げ」経験をもとに、バブル期に金融機関は湯水のように金を貸し出し、バブルが崩壊と共に有無を言わさぬ資金回収が始まったことなど挙げ、不動産ビジネスにおいては地上経済と地下経済は表裏一体であり、優良企業と言われる企業であっても、儲けるための行動はヤクザの振る舞いと大きくは違わないとしています。

 著者によれば、日本の経済は、政・官・財の「アイアン・トライアングル」構造に深く依存し、そうした構造は表社会か'ら見るよりも、(ヤクザの組長の息子だった)著者がよく知るところの裏社会の構図を表社会に当て嵌めてみた方が、よりよく分かるということでしょう。

 話は小泉元首相の北朝鮮訪問の背景にあるアメリカの指図があったということから、アメリカ主導のグローバリズムの浸透とその破綻の予兆にまで拡がる一方で、そうした話のベースにも、個人的体験から得た裏社会の構図がベースにあるため、やや恣意的と言うか、若干"呑み屋"談義になっている印象もあり、話が拡散し過ぎたということもありますが、読み終えてみれば、改めて驚かされるような話は無かったなあと。

 ただ一つ―'99年の東海村JOC臨界事故の際に、行政が「半径10キロ圏以内の住民は、安全が確認されるまで家の中にいてください」とし、要するに「外へ出るな」と言ったのは、「ただちに逃げろ」と言えば大混乱になり、パニックが顕在化すると原子力行政が厳しく追及されることになるためであって、でも、著者の後輩の広島で原爆医療をやっている医師から「宮崎さん、逃げたほうがいいよ。風向きによっては東京だってヤバいかも」と言われたとのこと。

 著者自身もホームページで逃げろと訴えたそうですが、今回の福島第一原発事故における政府の対応にもまったく当て嵌ることであり、「あらかじめ最悪の事態のときのシミュレーションが行われていないから、実際に危機に直面したときには、うろたえることしかできない」のが役人というものであるとの指摘は、顧みて思えば的確且つ予言的な批判ではありました(そうしたことも含め、経済学というより社会批評的な本か)。

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