「●張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2616】 張藝謀 「あの子を探して」
「●「ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞」受賞作」の インデックッスへ 「●コン・リー(鞏俐)出演作品」の インデックッスへ 「●侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ
コン・リーが奇麗。物語的には悲惨だが、美的には張藝謀作品の頂点にある作品。

「紅夢 [DVD]」['25年]鞏俐(コン・リー)
1920年代の中国、 19歳の女学生・頌蓮(スンリェン)(鞏俐(コン・リー))は、父親が亡くなった後実家が没落したため、陳佐千(馬精武(マー・チンウー))という富豪の第四夫人として嫁ぐことを余儀なくされた。彼の大邸宅に嫁入りした際には王室の様な待遇で、気持ちの良い足マッサージを受けた。屋敷の主人は、夜になり彼女の部屋に泊まる時門前に赤い提灯を掲げた。しかし頌蓮はすぐに全ての妾たちが同様の贅沢な待遇を受けていることに気づいた。
主人は毎日どの妾の家で夜を過ごすかを決めるとその家の前に赤い提灯を灯し、その妾は足マッサージを受け、食事を決定したり、下僕達の尊敬と服従を得ることができたのだ。やがて、友情を築いたと思っていた第二夫人・卓雲(ヅォユン)(曹翠芬(ツァオ・ツイフェン))からの裏切りや、屋敷に出入りする医者と不倫をしていた第三夫人・梅珊(メイサン)(何賽飛(ホー・ツァイフェイ))への凄惨な罰を目の当たりにし、主人の寵愛を巡る戦いの中で憔悴した頌蓮は次第に正気を失い、常軌を逸した行動に出るようになる―。
「紅いコーリャン」('87年)、「菊豆<チュイトウ>」('90年)に続く1991年公開の張芸謀(チャン・イーモウ)監督、鞏俐(コン・リー)主演作で、後にコン・リー主演の「紅いコーリャン」、そしてこれもコン・リー主演の「上海ルージュ」('95年)と共に張芸謀監督の「紅三部作」と呼ばれるようになります。第48回「ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞」受賞作品。台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督が製作総指揮を務め、香港や日本のスタッフも参加するなど、国境を越えたコラボレーションにより成った作品ですが、何故か本邦では長らくDVD化がされませんでした。2024年12月、「張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界」と題した特集上映にて、HDレストア版でリバイバル公開され、2025年にDVDがリリースされました。
貧困から抜ける為に男性社会の中に囲い込まれる女性たちの話ですが、自分の意志で自由に行動できるわけもなく、昔からの掟が絶対。とりわけ夫人らに求められるのは男子を生むこと。その女性たちの間でも妬み・嫉みがあり、唯一優しそうにしてくれていた女性が、実はいちばん腹黒だったという...。
25歳で19歳の学生を演じているコン・リーが違和感なく奇麗です。彼女が正気を失っていく様は痛々しいですが、ストーリーや時代背景は今とあまりに差がありすぎるため、個人的には、「時代に抑圧された女性を描いた映画」的視点と言うよりは、背景部分は男尊女卑の"象徴"として捉え、単に女性たちの物語として映画を観ました。確かに、封建制度下における女性に対する抑圧を可視化した作品ではありますが、例えばこの「赤い提灯」のシステムは、原作である蘇童(スー・トン)の小説『妻妾成群』には無く、張芸謀監督の創作であるようです。監督は当時のインタビューで、中国の家父長制の深刻さを訴えており、本作は中国国内で上映禁止の措置を受けています。それだけ今日的・普遍的問題を示唆しているということなのでしょう。
単に女性たちの物語として観たと書きましたが、人物の悲劇的運命の造形は多角的に行われいて、各人の諸要素が互いに呼応し合うことで、作品全体の悲劇的雰囲気が高められているように思いました。とりわけ、元名妓であった第三夫人・梅珊(メイサン)の末路は悲惨で、気晴らしに屋上でかつて馴染んだ戯曲を歌っていた、その屋上で処刑されてしまったというのは皮肉です(ほとんどホラー)。これが主人公・頌蓮(スンリェン)に与えた衝撃は大きく、スンリェンの精神崩壊の火付けとなったように思われました。悲劇を美しく視覚化する張芸謀監督の美学的設計無くしては、なかなか味わおうという気にはなれない作品かもしれません。女学生から女へと変貌していくコン・リーの美しさも堪能でき、物語的には悲惨ですが、美的には張藝謀作品の頂点にある作品かもしれません(この頃の張芸謀はスゴかった)。
「紅夢」●原題: 大红灯笼高高挂(英:RAISE THE RED LANTERN)●制作年:1991年●制作国:中国・香港●監督:張藝謀(チャン・イーモウ)●製作:邱復生(チュウ・フウション)●脚本:倪震(ニイ・ゼン)●撮影:趙非(チャオ・フェイ)●音楽:趙季平(チャオ・チーピン)●原作:蘇童(スー・トン)『妻妾成群』●時間:125分●出演:鞏俐(コン・リー)/何賽飛(ホー・ツァイフェイ)/馬精武(マー・チンウー)/曹翠芬(ツァオ・ツイフェン)/周琦(チョウ・チー)/孔琳(コン・リン)/金淑媛(チン・スウユエン)/丁惟敏(ティン・ウェイミン )/曹増銀(ツァオ・ゾンイン)/崔志剛(ツォエ・チーガン)/初暁(ツゥ・シャオ)/徐薇(シュー・ウェイ)●日本公開:1992/04●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋・新文芸坐(25-01-29)(評価:★★★★☆)
ポスター 「

富豪に嫁いだ姉を頼り、蘇州にやってきた少年・忠良(チョンリァン)。そこでは当主の愛娘・如意(ルーイー)を始め、皆が阿片
に酔いしれていた。退廃した空気の中、最愛の姉に弄ばれ絶望した忠良は屋敷を飛びだす。時は過ぎ、1920年代の魔都・上海。心に傷を負って女性を愛せなくなった忠良(張国栄(レスリー・チャン))は、人妻を誘惑して金品を巻き上げる上海マフィア配下のジゴロとなっていた。そんな彼に、マフィアのボスが故郷の女富豪を誘惑する様に命令を下す。彼女こそ、美しく成長した如意(鞏俐(コン・リー))だった。様々な思惑を交差させながら、二人はいつしか本気で愛し合うようになるが―。
1996年公開作で、陳凱歌(チェン・カイコー)監督のもと、「
というわけでカタルシス効果は弱いですが、デカダンスな雰囲気を醸す映像はスタイリッシュでもあります。室内シーンが多いせいか、クリストファー・ドイルっぽくはなかったかもしれませんが、この映像美を味わうだけでも価値はあるように思いました。

当時30歳のコン・リーが奇麗。忠良が行くナイトクラブの垢抜けない少女(アヘン中毒者?)は周迅(ジョウ・シュン)だったのかあ。婁燁(ロウ・イエ)監督の 「
「花の影」●原題:風月(英:TEMPTRESS MOON)●制作年:1996年●制作国:香港・中国●監督:陳凱歌(チェン・カイコー)●製作:湯君年(タン・チュンニェン)/徐楓(シュー・フォン)●脚本:舒琪(シュウ・チー)●撮影: クリストファー・ドイル(杜可風)●音楽: 趙季平(チャオ・チーピン)●原案: 陳凱歌/王安憶(ワン・アンイー)●時間:128分●出演:張國榮(レスリー・チャン)/鞏俐(コン・リー)/林健華(リン・チェンホア)/何賽飛(ホー・サイ
フェイ)/呉大維(デヴィッド・ウー)/謝添(シェ・ティェン)/周野芒(ジョウ・イェマン)/周潔(ジョウ・ジェ)/葛香亭(コー・シャンホン)/周迅(ジョウ・シュン)●日本公開:1996/12●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★☆)●最初に観た場所[4K版]:池袋・新文芸坐(24-02-26)


日中欧の諜報員が暗躍する魔都・上海。真珠湾攻撃7日前の1941年12月1日、人気女優ユー・ジン(鞏俐(コン・リー))は新作舞台「サタデー・フィクション」に主演するため上海を訪れる。かつてフランスの諜報員ヒューバート(パスカル・グレゴリー)に孤児院から救われた過去を持つ彼女は、女優であると同時に諜報員という裏の顔をもっていた。ユー・ジンの到着から2日後、日本の暗号通信の専門家である海軍少佐・古谷三郎(オダギリジョー)が、暗号更新のため上海にやって来る。古谷の亡き妻によく似たユー・ジンは、古谷から太平洋戦争開戦の奇襲情報を得るためフランス諜報員が仕掛けた「マジックミラー計画」に身を投じていく―。
中国の婁燁(ロウ・イエ)監督が、太平洋戦争直前の上海で繰り広げられる愛と謀略の行方をモノクロ映像で描いたスパイ映画。主人公ユー・ジンを鞏俐(コン・リー)、日本海軍少佐・古谷をオダギリジョーが演じ、中島歩、台湾の俳優・趙又廷(マーク・チャオ)、ドイツの俳優トム・ブラシア、フランスの俳優パスカル・グレゴリーらが共演。2019年の中国映画ですが、中国本国では2021年10月に、日本では2023年11月にそれぞれ公開されています。
婁燁(ロウ・イエ)監督が前半で見せようとしていたのは、手に汗握るスパイ戦ではなく、鞏俐(コン・リー)演じるスパイとしての使命を負ったユー・ジンが(そのことさえ最初観ているうちは判らないのだが)、かつての恋人だった舞台演出家やフランス諜報員、日本の海軍少佐らと接触することで、ユー・ジンとそれら登場人物との間に生まれる情感を描くことに重きが置かれているように思いました。
コン・リーは、たまたま陳凱歌(チェン・カイコー)監督の「
この映画の良かった点は、この時代を描いた中国映画では珍しく、日本の軍人が悪や残虐性の権化として描かれていないということです。中島歩(「
演じる海軍少佐・
古谷にも寄り添っているし(オダギリジョーは凖主演だが、役柄のせいかやや線が細い感じで、脇の中島歩の方が目立っていた)、一方で、中国人の舞台演出家は同胞に裏切られたりもし(中国人の中にも卑怯な人間がいたということ)、対等な視点で描かれているように思いました(観劇マナーも、中国人の方が日本兵以上に酷いものとして描かれている)。
「サタデー・フィクション」●原題:蘭心大劇院(英:SATURDAY FICTION)●制作年:2019年●制作国:中国●監督:婁燁(ロウ・イエ)●脚本:馬英力(マー・インリー)●製作:マー・インリー/チャン・ジーホン/ロウ・イエ/ドン・ペイウェン/ウー・イー●撮影:曾剑(ツォン・ジエン)●原作:虹影『上海の死』/横光利一『上海』●時間:126分●出演:鞏俐(コン・リー)/趙又廷(マーク・チャオ)/オダギリジョー/中
島歩/パスカル・グレゴリー/トム・ブラシア/黄湘麗(ホァン・シャンリー)/王傳君(ワン・チュアンジュン)/張頌文(チャン・ソンウェン)●日本公開:2023/11●配給:アップリンク●最初に観た場所:シネ・リーブル池袋(シアター2)(20-11-14)(評価:★★★★)●同日上映:「私がやりました」(フランソワ・オゾン)


コン・リー(鞏俐)/チャン・イーモウ(張藝謀)

プロパガンダ的と言うよりも人間そのものをしっかり描いている感じで、度重なる悲劇に屈せず前向きに生きようとする主人公が、「風と共に去りぬ」のスカーレットみたいであり(たまたまこれも"赤系統"の名前だが)、赤を主体とした強烈な色彩美が印象的。ダイナミックなカメラワークも含め、この監督が将来、「




「紅いコーリャン」では、それまでの中国現代映画にはないくらい大胆に"性"を描いていますが、「菊豆<チュイトウ>」('90年)はそれ以上であり、更には、現代に近い時代を扱った作品ではタブーとされてきた"不倫"を描いています(第43回カンヌ国際映画祭「ルイス・ブニュエル賞」受賞)。
これも「紅いコーリャン」と同じように金で買われて旧家の染物屋に嫁入りした菊豆(チュイトウ)(鞏俐(コン・リー)が主人公で、彼女は夫のDV(性的サディズム)に苛まれた末に、同居の使用人の若い男を引き込んでその男と結ばれ、病に倒れ身体の自由がきかなくなった夫に代わって次第に家庭内での実権を握っていきますが、男との間に生まれた子供が実の子でないことを知った父親(菊豆の夫は実は不能だった)は子供を邪険にする―。
子供がダミアンみたいな悪魔っ子で、かなり怖いです。当初辛くあたっていた父親がやがて愛情をかけるようになったにも関わらず、誤って染料の壺に落っこちて今まさに溺死しようとしている父を見て、この子は助けようともせず不気味な笑みを浮かべています(殆どホラー・ムービーの世界)。

「紅いコーリャン」●原題:紅高梁(HONG GAO LIANG) /RED SORGHUM●制作年:1987年●制作国:中国●監督:張藝謀(チャン・イーモウ)●製作:呉天明(ウー・ティエンミン)●脚本:陳剣雨(チェン・チェンユイ)/朱偉(チュー・ウェイ)/莫言(モー・イェン)●撮影:顧長衛(クー・チャンウェイ)●音楽:趙季平(ヂャオ・チーピン)●原作:莫言(モー・イェン)「紅高梁」「高梁酒」●時間:91分●出演:鞏俐(コン・リー)/姜文(チアン・ウェン)/滕汝駿(トン・ ルーチュン)/劉継(リウ・チー)/錢明(チェン・ミン)/計春華(チー・チュンホア)●公開:1989/01●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(89-02-18)(評価:★★★★☆)
旧・渋谷ユーロスペース/シアターN渋谷 1982(昭和57)年渋谷駅南


「菊豆<チュイトウ>」●原題:菊豆 JUDOU●制作年:1990年●制作国:中国・日本●監督:張藝謀(チャン・イーモウ)●製作:徳間康快●脚本:劉恒(リュウ・ホン)●撮影:顧長衛(クー・チャンウェイ)●音楽:郭峰(クオ・フォン)●原作:劉恒(リュウ・ホン)「羲、伏羲」 ●時間:94分●出演:鞏俐(コン・リー)/李保田(リー・パオティエン)/李





《読書MEMO》


中国の著名な映画監督チェン・カイコー(陳凱歌、1952年生まれ)が、60年代半ばから70年代初頭の「文化大革命」の嵐の中で過ごした自らの少年時代から青年時代にかけてを記したもので、「文革」というイデオロギー至上主義、毛沢東崇拝が、人々の人間性をいかに踏みにじったか、その凄まじさが、少年だった著者の目を通して具体的に伝わってくる内容です。
著者の父親も映画人でしたが、国民党入党歴があったために共産党に拘禁され、一方、当時の共産党員幹部、知識人の子弟の多くがそうしたように、著者自身も「紅衛兵」となり、「毛沢東の良い子」になろうとします(そうしないと身が危険だから)。

その前月にシネヴィヴァン六本木で観た台湾映画「童年往時 時の流れ」('85年/台湾)は、中国で生まれ、一家とともに台湾へ移住した"アハ"少年の青春を描いたホウ・シャオシェン(
劇を描いたもので、台湾の3監督によるオムニバス映画の内の1小品。他の2本も台湾の庶民の日常を描いて、お金こそかかっていませんが、何れもハイレベルの出来でした。


一方、チェン・カイコー(陳凱歌)監督の名が日本でも広く知られるようになったのは、もっと後の、
(●2023年10月12日、シネマート新宿にて4K修復版を鑑賞(劇場で観るのは初)。張國榮(レスリー・チャン)と鞏俐(コン・リー)が一人の男を巡って恋敵となるという、ある意味"空前絶後"的映画だったと改めて思った。)
中国は今月('09年10月1日)建国60周年を迎え、しかし今も、共産党の内部では熾烈な権力抗争が続いて(このことは、清水美和氏の『「中国問題」の内幕』('08年/ちくま新書)に詳しい)、一方で、ここのところの世界的な経済危機にも関わらず、高い経済成長率を維持していますが(GDPは間もなく日本を抜いて世界第2位となる)、今や経済界のリーダーとなっている人達の中にも文革や下放を経験した人は多くいるでしょう。記念式典パレードで一際目立っていたのが毛沢東と鄧小平の肖像画で、「改革解放30年」というキャッチコピーは鄧小平への称賛ともとれます(因みに、このパレードの演出を担当したのもチャン・イーモウ)。
「童年往時/時の流れ」●原題:童年往来事 THE TIME TO LIVE AND THE TIME TO DIE●制作年:1985年●制作国:台湾●監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)●製作:徐国良(シュ・クオリヤン)●脚本:侯孝賢(ホウ・シャオシェン






CONCUBI●制作年:1993年●制作国:香港●監督:陳凱歌(チェン・カイコー)●製作:徐淋/徐杰/陳凱歌/孫慧婢●脚本:李碧華/盧葦●撮影:顧長衛●音楽:趙季平(ヂャオ・ジーピン)●原作:李碧華(リー・ビーファー)●時間:172分●出演:張國榮(レスリー・チャン)/張豊毅(チャン・フォンイー)/鞏俐(コン・リー)/呂齊(リゥ・ツァイ)/葛優(グォ・ヨウ)/黄斐(ファン・フェイ)/童弟(トン・ディー)/英達(イン・ダー)●日本公開:1994/02●配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画(評価:★★★★☆)●最初に観た場所(再見)[4K版]:シネマート新宿(23-10-12)


鞏俐(コン・リー)in「さらば、わが愛 覇王別姫」(1993年・

