2014年1月 Archives

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シリーズ"らしい"ほろ苦い結末。モースと美女のやり取りが見所?(トロイのクリケットも)

Vol.10「欺かれた過去」【字幕版】 [VHS].jpg主任警部モース 10 欺かれた過去 dvd.jpg 主任警部モース 10 欺かれた過去 クリケット.png
Inspector Morse: Deceived By Flight [DVD] [Import]
モース警部シリーズ Vol.10「欺かれた過去」【字幕版】 [VHS]

主任警部モース 10 欺かれた過去.jpg モースは、大学OBのクリケット・チームの試合のためにロンドンに来ていた、学友の弁護士ドンに呼び出されて久々の再会を果たす。彼はモースに何か相談したがっているようだが、モースが訊いても話さない。その後、彼の方からモースに連絡をしてくるが、モースは書店爆破事件の捜査で手が離せない。その翌日ドンはリード線をくわえて感電死死体となって発見される。モースは休暇中のルイスを説得し、ドンが所属していた、脚の不自由な事業家ローランドが率いるOBクリケットチームに、彼を代わりの選手として潜入させる。トニーの妻ケイト(シャロン・モーン)はラジオ局のDJで、トニーの隣室のフォスター夫婦(ジオフリー・ビーヴァーズ、ジェーン・ブッカー)の夫ピーター・フォスターは何やらクリケット・チームを探っているようだった。そんな中、OBチームのクリケットの試合中に選手控室でピーターが何者かに殺されてしまう―。

 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第9話で、1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

第10話/欺かれた過去 3.jpg ドンの妻でラジオ局のDJのケイトは若くて美人で、モースは夫を亡くした彼女を慰めるうちに彼女に惚れてしまった感じですが、フォスター夫婦の妻フィリッパも美人で、モースはこちらにも接近、双方ともモースに悪からぬ印象を抱いているようで、モースがフィリッパとクリケットのOB試合を観戦しているところへケイトが現れ、女性同士がバッティングした感じ(ケイトはぷぃと去ってしまった)。更に、ピーターが殺害されたことで、モースは2人の「未亡人」の間に挟まった形になりましたが、まあ、原作においてもモースは不思議と女性にモテるキャラではあるので、これはアリかなと。

Morse & kate Donn

 モースは、フィリッパとクリケット試合を観ながら、変なユニフォーム来て不可思議なルールで行われるスポーツとこき下し、それでもクリケットが好きそうなフィリッパのために自分もこのスポーツを好きになろうかなと冗談を言いますが(これって彼女へのアプローチ?)、結局居眠りしてしまって、ルイスの折角のファインプレーも見逃した...。そこに起きたフィリッパの夫ピーターの殺害事件。

 実はピーターとフィリッパのフォスター夫婦は本物の夫婦ではなく、英国からのヘロイン密輸出の捜査に2年越しで当たっている所謂「麻薬Gメン」でした。OBクリケットチームが怪しいと、わざとモースを通して事件未解決の中での海外遠征を認めさせ、水際でヘロイン密輸輸出の現場を抑えようとしてドーバーに張り込んでいるところへ、モースも事件の真相を追って現れます。そこでモースが見たものは...(因みにドーバーは英国の都市であり、フランスでは「ドーバー海峡」を「カレー海峡」と呼ぶ)。

eceived By The Flight1.jpg 2件の殺人事件もヘロイン密輸出も解決を見ないまま船が出そうになる―その時モースに突然の閃きが訪れるという、結構ハリウッド映画的なスリルはありましたし、結末も意外でした。ヘロイン密輸出の犯人に対しては、モースも思わず「なぜだ」と問い詰めたくなるし、一方の旧友ドンの殺害事件につていても...。

主任警部モース 10 欺かれた過去 03.jpg このシリーズ"らしい"ほろ苦い結末でした。振り返ってみれば、2件の殺人事件に何か動機上の関連がありそうに思えたのがまず第一のミスリード要因だったでしょうか。モース独特の理詰めの推理は勿論ありましたが、最後は直観による解決だったような気もして、その辺りはややシリーズ"らしくない"真相への導き方だったようにも思います。むしろ、モースと美女2人の遣り取りが見所だったとも言えます。

eceived By The Flight2.jpg 警察官がクリケット・チームに潜入していきなり好プレーを連発することが可能かと言うのはありますが、ルイス巡査部長役のケヴィン・ウェイトリーは、一時プロのクリケット選手を目指していたということで、コリン・デクスターの原案がそもそもケヴィン・ウェイトリーの"クリケット愛"に捧げられたものであるとのことです。

Sharon Maughan2.jpgSharon Maughan.jpg 一方で、ネスカフェ・ゴールド・ブレンドのTVコマーシャルに出ていたシャロン・モーンが演じるケイトに、「コーヒーは嫌い。飲むと頭が痛くなる」と言わせているのは、脚本家のお遊びか。

Sharon Maughan pictured in the Nescafé Gold Blend instant coffee adverts which ran between 1987 to 1992

主任警部モース 10 欺かれた過去 vhs.jpgモース主任警部&ルイス巡査部長.jpg「主任警部モース(第10話)/欺かれた過去」●原題:INSPECTOR MORSE:DECEIVED BY FLIGHT●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/18●監督:アンソニー・シモンズ●脚本:アンソニー・ミンゲラ●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/シャロン・モーン/ノーマン・ロッドウェイ/ジオフリー・ビーヴァーズ/ジェーン・ブッカー/ダニエル・マッセィ/ブライアン・プリングル/ニッキー・ヘンソン●VHS発売:1999/08●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

"Inspector Morse: Deceived By Flight [VHS] [Import]"(輸入版VHS)

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象牙の塔を巡る権力争いと、それに纏わる復讐劇。犯人がやや唐突に姿を現した印象も。

モース警部シリーズ Vol.9「最後の敵」v1.jpgモース第9話/最後の敵 dvd.jpg モース第9話/最後の敵 dvd2.jpg
モース警部シリーズ Vol.9「最後の敵」【字幕版】[VHS]」"Inspector Morse: Last Enemy [DVD] [Import]"(2002)"Inspector Morse: Last Enemy Set [DVD] [Import]"(2005) 右下:ルイス部長刑事(Kevin Whately)/モース主任警部(John Thaw)/ラッセル検視医(Amanda Hillwood)
Inspector Morse Last Enemy.jpgAmandy Hillwood 2.jpg 運河で首と両手脚が切断された死体が見つかる。時を同じくして、オックスフォード大学時代の同級生で同大学の学寮長を務める旧友アレックス・リース(バリー・フォスター)から、ケリッジ博士(テニエル・エヴァンス)が失踪していると相談を受けたモース。死体の状況から殺害されたのは博士だと思われたが...。一方、博士課程を修了したばかりのデボラ・バーンズ(ビーティ・エドニー)は、自分が特別研究員になれなかったのはケリッジ博士が反対票を投じたからだと思い込み博士に直接尋ねると、ケリッジは反対したのは自分ではなく、学寮長のリースだと言う。リースは彼女の博士論文の指導担当で、共著で本を出し、更には2人の間に肉体関係まであったのだが―。

"Inspector Morse: Last Enemy [VHS] [Import]"

モース第9話/最後の敵 dvd 2011.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第9話で(TV用のオリジナルでコリン・デクスターは"原案"提供。但し、ベースとなっているデクスターによる原作あり(『謎まで三マイル(The Riddle of the Third Mile)』(1983)) 、1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 1つ前の「ハンベリー・ハウスの殺人」が一見、学寮長候補同士の争いに起因する事件と思わせて実は夫婦の愛憎劇だったのに対し、こちらはストレートに象牙の塔を巡る権力争いと、それに纏わる復讐劇でした(「シェルドン講師」とはそれほど名誉ある地位なのか)。

"Inspector Morse Set Three: The Last Enemy [DVD] [Import]"(2011)
(Last Bus to Woodstock /Ghost in the Machine /The Last Enemy) 

 殺されたと思ったら実は生きていたケリッジ教授も結局は殺され、モースが疑いを抱いていた学寮長のリースまで殺されてしまう―そうなると残るはなかなか姿を見せないあの人物が犯人かなと、大方の予想はつきましたが、モースが街中を歩いていて見つかるぐらいなのに、それまで見つからなかったのがやや不自然なように思いました(ケリッジ博士だって、モースらが死んでいるのではないかと調べている間にニセ番組の出演交渉とかしているし。そのニセ番組を仕組んだのも犯人だったわけか)。

モース第9話/最後の敵 0.jpg リースまで殺されてしまったのは、実力の無い彼が"漁夫の利"を得たことに対する犯人の恨みでしょうか。女子大生の研究成果を自分のものとし、肉体関係まで持っておいて研究員には推さないというのは、まあ、殺されても仕方無いという感じでしたが。

 モース自身も、犯人の犯行に、単なる復讐ではなく、正義を正すという強い信念を見出しているようで、その犯人の「最後の敵」は病いだったわけかと。それにしても恩師が犯人とは...(モースが学生時代に優秀で、オックスフォードをトップで卒業できる頭脳を持っていながら学者の道を選ばなかったことが明かされる)。犯人は既に逮捕するまでもない状態だったけれど、こうした終わり方は『カインの娘たち』のドラマ版('96年)の方にもありました。

第9話/最後の敵 5.jpg第9話)/最後の敵 10.jpg それにしてもモースは、捜査中にビールを飲む回数がどんどん多くなるなあ。しかも、独身の気安さからか、リースの秘書キャロルに声掛けして彼女の行きつけのジャマイカ料理のレストランで歓談しています。

Morse & Carol Sharp

 その一方で、「お嬢さん」「ドクター」の呼び名で一悶着あった検視医のラッセル女医まで呑みに誘っている...。捜査の一環ということもあるでしょうが、モース自身、女性主任警部モース(第9話)/最後の敵 カメオ.jpgと呑みたがっているように見えました(上司のストレンジ警視正に罵倒され、歯医者にも苛められ、その上事件の解決が困難を極めれば、自宅でオペラを聴くだけではストレスは解消されないか)。

 恒例の原作者のカメオ出演、冒頭のシーンで運河の縁で釣り糸を垂れているオジさんがコリン・デクスターではないかなと思ったけれど、その川縁を散歩していてボートから降りてきた男と鉢合わせになる人がそうだったようです(途中のシーンでは釣り人の後ろを歩いているようですが、そんなシーンあった?)。

「主任警部モース(第9話)/最後の敵」●原題:INSPECTOR MORSE:THE LAST ENEMY●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/11●監督:ジェームス・スコット●脚本:ピーター・バックマン●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/バリー・フォスター/テニエル・エヴァンス/ビーティ・エドニー/シーアン・トーマス/マイケル・アルドリッジ●VHS発売:1999/07●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

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かなり無理のあるトリックだけど、パトリシア・ホッジが良かったのでまあいいか。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 dvd.jpg  第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 01.jpg GHOST IN THE MACHINE.jpg
"Inspector Morse: Ghost in Machine [DVD] [Import]"(ハンベリー・ハウスの殺人)
ミシェル(Irina Brook)/レディ・ハンベリー(Patricia Hodge)
Irina Brook.gifPatricia Hodge 2.gif オックスフォード大学の学寮長候補ハンベリー卿の大邸宅から、数点の絵画が盗まれ、モースはルイスと気乗りしない窃盗事件の捜査を開始するが、窃盗事件の後に失踪していた絵の所有者ハンベリー卿が、邸の敷地内で死体となっているのを発見する。更に、邸付近でブレーキに細工されたクルマの事故に遭遇、亡くなった男は、邸で子守に雇われていたフランス人のミシェル(イリーナ・ブルック)の恋人ロジャーで、ミシェルはレディ・ハンベリー(パトリシア・ホッジ)から突然の解雇を言い渡されていた。ロジャーの所持品から脅迫文が見つかり、ハンベリー卿を何らかのネタで脅迫していたらしい―。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 04v.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第8話で、以降第28話まで、「モース主任警部シリーズ」の原作者コリン・デクスターが原案を示して脚本家が仕上げるというスタイルが続きます。この第8話は1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 学寮長の地位争いによる殺人かと思わせておいて実は愛憎劇でした。学寮長候補の夫は写実的な裸体画が好みであるばかりでなく、子守嬢をモデルにヌード写真を撮るという趣味もあったわけで、でも妻の躰には触れない―それでもって妻は庭師(わっくてイケメン、加えてハロー校出身のインテリ)と不倫し、結婚まで考えていたということか。

 パトリシア・ホッジ演じるレディ・ハンベリーは、荘厳な邸に住む貴婦人の風格がありました。それでいて愛情面で満たされていないという、そうした女性の内面も上手く表現していたように思います。

Inspector Morse: Ghost in the Machine [VHS] [Import]

 あちらの貴族って、地所内に一族の霊廟があるんだなあと(アガサ・クリスティの『パディントン発4時50分』のクラッケンソープ邸もそうだった)。死体を霊廟に置いたことで、強盗ではなく一族の誰かによる犯行だという疑いをモースに抱かせてしまったわけですが、それにしても、一旦「他殺」にみせかけて実は自殺だったという方向に導くとは、随分と凝った手を使ったものだなあ。自殺にしておいた方が名誉が守られ子どもへの教育上もその方が望ましいというのはかなり無理な理屈で、裏の裏をかいたつもりでもモースには通用しませんでした。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 03.jpg ラストで実行犯が殺人容疑で逮捕され、手錠を掛けられて連行されますが(かなり惨め)、一方のレディは娘と別れの言葉を交わす(手錠を掛けられることもない)―でも、裁判が始まったら「殺人」と「殺人教唆」は同等の扱いであり、この場合むしろ「殺人教唆」の方が罪が重いんじゃないかな。

 ロンドンのコヴェント・ガーデンで歌劇「トスカ」を観劇していたというレディのアリバイ供述に対し、モースも偶々ロンドンからの帰路、「トスカ」のプログラムを見ていたというのはやや出来過ぎですが(モースはレディのマリア・カラスに対する低評価でややむっとしていた)、プラシド・ドミンゴも出ていたのに値打ちもののプログラムを買わなかったことに疑念を持つというのは、モースならではの推理でした(ルイスには無理)。そのドミンゴは、声の不調でその夜は舞台に立たなかったことが判明したところからアリバイは崩れていきます。

GHOST IN THE MACHINE house.jpgAmandy Hillwood 1.jpg 今回からこれまでの検死医マックスに代わって女医ラッセル(アマンダ・ヒルウッド)が登場、モースが「お嬢さん」と呼ぶと「ドクター」と呼んで欲しいと、早速2人はぶつかっています。

女医ラッセル(Amanda Hillwood)

 邸(馬鹿デカくて豪勢!)の玄関に立っていつも見張りをしている制服姿の警官がいつの間にか若い巡査から中年の巡査に変わっている場面があって、あれがコリン・デクスターではないかな(違っているかもしれないけれど)。

Patricia Hodge.jpg「主任警部モース(第8話)/ハンベリー・ハウスの殺人」●原題:INSPECTOR MORSE:GHOST IN THE MACHINE●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/04●監督:●脚本:ジュリアン・ミッチェル●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/マイケル・ゴドリー/パトリシア・ホッジ/クリフォード・ローズ/バーナード・ロイド●VHS発売:1999/06●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

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時を遡る構成も巧みだが、男女の様々な位相をリアルに描いていて上手い。

ホテルローヤル 桜木 紫乃 0.jpgホテルローヤル 桜木 紫乃  直木賞帯.jpgホテルローヤル』(2013/01 集英社) 桜木 紫乃.jpg 桜木 紫乃 氏

 2013(平成25)年上半期・第149回「直木賞」受賞作。

 恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた美幸は、廃墟となったラブホテルを訪れるが―(「シャッター」)。人格者だが不能の貧乏寺住職の妻は、檀家からお布施を得るためにある行動をとっていて―(「本日開店」)。舅との同居で、夫と肌を合わせる時間がない専業主婦。新盆の日、突如浮いたお金でホテルに行くことを思い立ち―(「バブルバス」)。妻の浮気に耐える単身赴任中の高校教師が妻に黙って突然の帰省を思い立つが、道中、親に家出されたという女子生徒が付いてきて―(「せんせぇ」)他3編収録。

 釧路湿原を見下ろす高台に建つラブホテル「ホテルローヤル」に各編の主人公たちが皆関わっています(正確に言えば「せんせぇ」だけが、物語の現時点では関わりは無く、但し、数日後には関わりを持つであろうことを示唆して終わっている)。今は廃墟となったラブホテルでの投稿写真撮影から話が始まって、これまで生業としていた看板屋をやめてこれからラブホテルを建てて一山当てようようとする中年男の話で終わるという、40年間の時を遡っていく構成が巧みです。

 発表順は冒頭の話と最後の話が最初に発表され、その後間の時期の話で繋いでいったようですが(「本日開店」は単行本刊行のための書き下ろし)、最初からそうした構想はあったのだろうと思います。但し、構成の巧みさだけでなく、一つ一つの話が、男女の様々な位相を立場の異なるそれぞれの主人公の眼からリアルに描いていて、文章も落ち着いて読み易かったです。強いて言えば、全体に醒めたトーンと言えるかと思いますが、そのことは、15歳の時に父親が釧路町にラブホテルを開業し、部屋の掃除などで家業を手伝っていたという作者の経験が、こうした性愛への冷めた視点を形成したと―これはもうこの連作の定番的な解釈になっているみたいです。

 作者自身、直木賞受賞後の亀和田武氏との対談で(「週刊文春」2014年1月新年特大号)で、「私は男の人や性愛に、夢も希望もなかったんです。(中略)実家のラブホテルの部屋を掃除して、男女の事後のにおいを嗅いでしまったんで。順序が逆で、ミステリーを結末から読む感じ、最後から想像していく癖がついた」と語っており、同じような体験をすることは出来ないけれど、作者本人の口から語られると、尚一層のこと、ナルホドなあと思わされました。

ホテルローヤル 桜木 紫乃 サイン会.jpg 本書を読む前は、直木賞を受賞した作者が地元・釧路でサイン会やトークセッションを行っているのをニュース報道などで見て、何となく違和感がありましたが、読んでみると釧路町の各場所の地名が実名で出ているようだし(「ホテルローヤル」自体も作者の父親が開業したホテルの名前をそのまま使っていて、但し、作者の実家は看板屋ではなく理容室であったとのこと)、モチーフがラブホテルであっても、地元の人は何か郷土愛的な親しみやすさを感じるのかもしれません。更には、失われた建物や空間に対するノスタルジーなどもあるのではないでしょうか(実際には、この連作が纏まった頃に作者の父が当ホテルを廃業したそうで、実際のホテルローヤルが無くなって小説の「ホテルローヤル」の方が残る形となった)。

"直木賞受賞の桜木紫乃さん、故郷・釧路でサイン会"(「朝日新聞デジタル」2013年8月17日)

 ラブホテルそのものが実在している時はいかがわしいとの眼で見られたり邪魔だと思われたりしていても(ラブホテルを町のシンボルとして誇る住民はいないと思う)、無くなってみると何となく懐かしく感じられたりすることはあるのではないかと。舞台は「釧路市」ではなく、更に過疎化が進んでいると思われる「釧路町」であり、町が賑わっていればそのホテルはまだ在ったかもしれず、「地方の過疎化」というのもこの連作の背景モチーフとしてあるように思いました。
 そうした眼で見ると、作者のサイン会などにも"町興し"的なものを感じてしまうなあ(実際にサイン会やトークセッションが行われたのは「釧路町」ではなく「釧路市」なのだが。作者は、この作品での直木賞受賞後、釧路市観光大使に任命されている)。

 また、この連作のベースには、作者の父の夢の実現からその終わりまでという流れもあるように思われます。モチーフがあまりに自身の経験に近すぎるというのもあるかもしれませんが、作者自身の境遇に近い主人公を描く際も、一定の距離を置くよう細心の注意が払われていうように思われ、それだけ、この作品に対する作者の注力の度合いを感じました。作家としての実力はこの10年余りで既に実証済みで、直木賞選考委員の間では、この作品に賞をあげなければどの作品であげるのかというのもあったのではないでしょうか。他の候補作は読んでいませんが、順当な受賞だと思います。

【2015年文庫化[集英社文庫]】 

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原作シリーズ第1作のドラマ化。映像化作品は映像化作品としてそこそこ楽しめたといった感じ。

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス dvd.jpg モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 01.jpg     ウッドストック行最終バス 文庫.jpg ウッドストック行最終バス hpm.jpg
Inspector Morse: Last Bus to Woodstock [DVD] [Import]」Terrence Hardiman As Clive Palmer 「ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)」「ウッドストック行最終バス (1976年) (世界ミステリシリーズ)

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 原著.jpg 夕闇迫るオックスフォードで、なかなか来ないウッドストック行きのバスにしびれを切らして、2人の娘がヒッチハイクをすることに。その晩、ウッドストックの酒場の中庭で、2人の娘の1人シルビアが死体で見つかる。シルビアはその日、もう1人の娘とバス停でバスを待っていたのを目撃されていたのだが、バスに乗った形跡はなく、彼女は赤いクルマの何者かの誘いに乗ったようだ。また、彼女が持っていた封筒の宛先は、勤務先の秘書部長ジェニファー・コールビーになっていた。もう1人の娘は誰でどこに消えたのか、なぜ名乗り出ないのか? テレズ・バレイ警察のモース主任警部は、ルイス部長刑事とともに事件捜査に当たる―。

 原作『ウッドストック行最終バス』(原題:Last Bus to Woodstock)は、コリン・デクスターが1975年に発表した「モース主任警部」シリーズの長編第1作。英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第7話として1988年に本国で放映され、日本では2001年5月にNHK-BS2で放映されていますが、その前に、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 記念すべき原作シリーズの第1作ということもあってか、第5話の「キドリントンから消えた娘」のように原作と犯人を変えてしまうようなことはしてなかったようですが、真犯人が容疑者として浮かび上ってくるのは原作よりかなり後の方になっているのでは。原作を知っていれば、まだかまだかという感じですが、知らないと、第一発見者のジョンを皮切りに、さんざん怪しい人物が出てきて、モースがミスリードさせられた(と言うより犯人の見当がつかないまま)結構最後の方で突然新たな容疑者が浮かび上がってきたという感じではないでしょうか。でも、最終的にその人物が真犯人であると判るのが最後の最後になってというのは原作も同じだったように思います。

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 02.jpg 大学講師バーナードは大学の正教授を目指していて(その割には年齢を喰っている)、妻のマーガレットはその尻を叩いている感じでしたが、あまりに妻に言われ続けると、女子大生を誘惑して気晴らしをしたいという気になるのか(それとも単なるスケベ老人か)。夫がシルビアを轢き殺したと思い込んだマーガレットは、クルマのタイヤを破棄したりして(確かにシルビアをヒッチしたのはバーナードだったが、シルビアの事故死に殺人の疑念があることは報じられていなかったのか)懸命に証拠隠滅を図るけれども、これも夫のためと言うより、その地位を守るため。しかし、その頃には、最初の2人の娘の目撃者であるとともに、超人的記憶力を持つ推理好きお婆さんの証言で、クルマの持主は特定されていた...。

Inspector Morse:Last Bus to Woodstock [VHS].jpg 片や、シルビアが勤めていた会社の秘書部長ジェニファーは、若い女性たちを自宅に下宿させていて、大学教授に言い寄られた奥手の文学少女の悩みを聞いてあげたりもしながら、一方で自身は社長クライブ(テレンス・ハーディマン)と不倫関係にあり、社長に奥さんと別れるよう迫る様はやや強引だったなあ(もう、愛欲の権化という感じ)。原作ではジェニファーは、大学講師バーナードとその愛人の橋渡しもしていることになっています。なぜならば、その愛人というのが、やはりジェニファーのところに下宿している看護婦であり、その点は原作とこの映像化作品は同じ。犯人が誰かは知っていても、犯行動機がイマイチ記憶に無かったのは、ある種衝動的とも言える殺人だったからかもしれません。

 これも原作を読んでかなりの年月を経ているため、映像化作品は映像化作品としてそこそこ楽しめたといった感じでしょうか。このシリーズ、原作者コリン・デクスター自身が毎回登場しているそうですが、いつもどこに出ているのか不明なんだけど、今回はパブの客の一人(チェックのセーターを着ている)として出ていたのが判りました。
Inspector Morse: Last Bus to Woodstock [VHS] [Import]
    
モース第9話/最後の敵 dvd 2011.jpg「主任警部モース(第7話)/ウッドストック行最終バス」●原題:INSPECTOR MORSE:LAST BUS TO WOODSTOCK●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1988/03/22●監督:ピーター・デュフェル●脚本:マイケル・ウィッルコックス●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アンソニー・ベイト/テレンス・ハーディマン/ファビア・ドレイク/ジル・ベイカー●VHS発売:1999/05●発売元:日本クラウン●日本放映:2001/05(NHK-BS2)(評価:★★★☆)

"Inspector Morse Set Three: The Last Enemy [DVD] [Import]"(2011)
(Last Bus to Woodstock /Ghost in the Machine /The Last Enemy)

《読書MEMO》
●モース警部シリーズ(原作発表順)
 ・ウッドストック行最終バス Last Bus To Woodstock
 ・キドリントンから消えた娘 Last Seen Wearing
 ・ニコラス・クインの静かな世界 The Silent World of Nicholas Quinn
 ・死者たちの礼拝 Service of all the Dead (1979年CWA「シルバー・ダガー賞」受賞)
 ・ジェリコ街の女 The Dead of Jericho (1981年CWA「シルバー・ダガー賞」受賞)
 ・謎まで三マイル The Riddle of the Third Mile
 ・別館三号室の男 The Secret of Annexe 3
 ・オックスフォード運河の殺人 The Wench is Dead (1989年CWA「ゴールド・ダガー賞」受賞)
 ・消えた装身具 The Jewel That was Ours
 ・森を抜ける道 The Way Through the Woods(1992年CWA「ゴールド・ダガー賞」受賞)
 ・カインの娘たち The Daughters of Cain
 ・死はわが隣人 Death is Now My Neighbour
 ・悔恨の日 The Remorseful Day

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第一容疑者がどんどん入れ替わる。原作改変に拘泥せず観れば、独立した作品として楽しめた。

INSPECTOR MORSE:LAST SEEN WEARING dvd.jpgキドリントンから消えた娘 01.jpg キドリントンから消えた娘 03.jpg
Inspector Morse: Last Seen Wearing [DVD] [Import]

 2年前に失踪して以来、行方の知れなかった裕福な家庭の女子校生の娘バレリーから両親に無事を知らせる手紙が届いた。彼女は生きているのか、だとしたら今はどこでどうしているのか。だが捜査を引き継いだ テレズ・バレイ警察のモース主任警部(ジョン・ソウ)は、ルイス部長刑事(ケヴィン・ウェイトリー)に「彼女は死んでいる」との自らの直感を述べる―。

LAST SEEN WEARING.jpgキドリントンから消えた娘 文庫.png 原作『キドリントンから消えた娘』(原題:Last Seen Wearing)は、コリン・デクスターが1976年に発表した「モース主任警部」シリーズの長編第2作で、第1作『ウッドストック行最終バス』(1975)と並んで評価の高い作品。1987年から始まった英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第5話として1988年に本国で放映され、日本では2001年5月3日にNHK-BS2で放映、その後ミステリチャンネルでも放映されています(但し、それに先んじて1999年に日本語字幕付きVHSが発売されている)。
キドリントンから消えた娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
"Last Seen Wearing"
 失踪した娘バレリーは既に死んでいるとのモースの直観はあっさり外れ、その後、失踪事件の第一容疑者が次々と入れ替わるのは原作と同じです。モースがバレリーの交友関係を調べていくうちに、彼女の男友達の部屋でマリファナが見つかり、また、彼女が妊娠していたことが判ったりしますが、彼女の男関係が結構"乱脈"気味で、彼女に関わったと思われる疑わしい男が次々現れます。そうした中、女子校の副校長シェリル・ベインズが殺害されますが、こちらの事件も第一容疑者がどんどん入れ替わっていくという展開です。

 原作の重厚感も良かったように思いますが、モースの"妄想的"推理に多くのページを割いており、その点、テレビドラマ版はテンポが良くて楽しめました。原作を読んだのは随分前なので、犯人すら虚(うろ)覚えでしたが、これ、原作と犯人も結末も違えているんじゃないかな。バレリーの両親はこんな瀟洒な家に住んではおらず、彼女が通っていた学校も学費の高い私立のお嬢様学校ではなく、普通の庶民が行く学校だったのでは。殺害された副校長が女性になっているため(原作では男性)、その辺りから若干原作と雰囲気が違ってきた部分もありましたが、これはこれで楽しめました。

キドリントンから消えた娘 02.jpg バレリーは若いフランス語の補助教員ディヴィッド・エイカムとも、女子校の校長ドナルド・フィリップソンとも関係していたということなのでしょう。それを知った女性副校長(彼女は男性には関心が無い。つまりレズビアン?)は、そのことをネタに校長を脅して副校長の座を掴んだということのようです(フランス語教師はクビになって別の学校へ転職した?)。校長はバレリーの母親グレース(フランセス・トーメルティ)とも関係していて、グレースはバレリーがジョージの子供ではないことを仄めかしていますが、どうやらジョージも血の繋がりのない娘バレリーと関係していたみたいで、そのことに頭にきたグレースが校長との不倫に走り、その現場を見てしまった娘バレリーがショックを受けて家を出たというのが、2年前の彼女の失踪の原因だったようです。

 ラスト近くで、校長の妻が夫と不倫関係にあったバレリーの母親グレースと対峙し、そこで奇妙な連帯感が生まれ、そこへひょっこり現れたのが...と、かなりドロドロしたプロセスだったにも関わらず、最後は過度に後味が悪くならないように纏めた感じで、テレビ版らしい改変でしたが、個人的にはそう悪くないように思えました。

 原作を読んだ直後に観たら「え~っ」という感じだったかもしれないけれど、原作を読んでから年月を置いて映像化作品を観ると、改変に拘泥せず独立した作品として楽しめるというのはあるのかもしれません。
 エリザベス・ハーレー(Elizabeth Hurley)が女学生役で出ていますが、「幻の城/バイロンとシェリー」('88年/英)で劇場映画にデビューする前で、当時は無名だったと思われます。

エリザベス・ハーレイ(Elizabeth Hurley).jpgエリザベス・ハーレー.jpg「主任警部モース(第5話)/キドリントンから消えた娘」●原題:INSPECTOR MORSE:LAST SEEN WEARING●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1988/03/08●監督:エドワード・ベネット●脚本:トーマス・エリス●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ピーター・マッケリー/フランセス・トーメルティ/メリッサ・シモンズ/フィリップ・フレサートン/スザンヌ・ベルティシュ/グリーン・ヒューストン/ジュリア・サワルハ/エリザベス・ハーレー●VHS発売:1999/04●発売元:日本クラウン●日本放映:2001/05 (NHK-BS2)(評価:★★★★)

1-IMG_0390.JPG●本国個人サイト (Muffy Aldrich The Daily Prep

My Favorite Inspector Morse.jpg◎ Here are some favorite episodes (or characters or scenes or...):
Last Seen Wearing 第5話/キドリントンから消えた娘)- Morse's best line, "We ought to be able to arrest him for his taste", after surveying a suspect's flat. The headmaster gives a nearly-comedic dramatic performance (and in one scene in a very nice Irish Fisherman's sweater).
Last Bus to Woodstock 第7話/ウッドストック行き最終バス)- Oxford politics; pub murder; an old Volvo; and perhaps Morse's best withering glance.
Ghost in the Machine 第8話/ハンベリー・ハウスの殺人)- A supremely snobbish and delightful performance by Patricia Hodge; a discussion of appropriateness of school ties worn as belts; and Morse's commentary on the distastefulness of social envy. This might be a good "first episode" to watch.
Deceived by Flight 第10話/欺かれた過去)- Simply marvelous cricket scenes with equally marvelous cricket clothing.
Driven to Distraction第14話/死を呼ぶドライヴ)- A love of the Mark 2; creepy; Morse on the edge.
Happy Families (第22話/ハッピー・ファミリー)- Two dreadful grown sons (one of whom is played by Martin Clunes, Doc Martin) with the most enviable knitwear. And a moat.
The Day of the Devil (第27話/サタンが巣くう日)- By far the creepiest of all, complete with church pipe organs, vicars and the underground of Oxford.
Twilight of the Gods (第28話/神々の黄昏)- Sir John Gielgud using Oxford England and Oxford Mississippi in the same sentence; and the always wonderful Robert Hardy.
Death Is Now My Neighbour (第31話/死は我が隣人)- Richard Briers (Hector Naismith MacDonald from Monarch of the Glen), Roger Allam (who would later be in Endeavor), and Maggie Steed more than make up for Holley Chant's American accent. Oxford politics and the reveal of Morse's first name.

◎ And my honorable mentions are:
The Last Enemy 第9話/最後の敵)- Good Guernsey in the opening scene; impressive Master's quarters; and bespoke clues.
The Infernal Serpent 第12話/邪悪な蛇)- Terrible topic but stars the wonderful Geoffrey Palmer (Lionel from As Time Goes By).
The Sins of the Fathers 第13話/ラドフォード家の遺産)- Morse solving a crime at a brewery.

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原作のポイント部分をきっちり抑えていたため楽しめた。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗ってdvd.jpgクリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って01.jpg  クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って06.jpg
DVD(輸入盤)

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って05.jpg ある日、ランピオン刑事はラロジエール警視の所属する"スタークラブ"の集会に参加する。名士達が集まる会場で、ラロジエール警視は、かつての上官で大富豪のドラリーブ大尉と感動の再会を果たす。しかし、警視が大尉の屋敷での家族との食事会に招かれた数日後、滞在先の火事により大尉が亡くなったとの悲報が警視にもたらされる。大尉は孫のような年の娘アルベルティーネと結婚したばかりで、大尉によって多くの親族が養われていた屋敷へ、その若妻の兄が、大尉の遺言によりその全財産の相続人となった妹を連れて乗り込んで来る―。

満潮に乗って クリスティー文庫.jpg フランス2で2009年から放映されている「クリスティのフレンチ・ミステリー」シリーズの、2011年放映の通算第8話で、原作は1948年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品(原題:Taken at the Flood)で、戦争が生んだ一族の心の闇をポアロが暴くもの(但し、ポワロは後半部からしか登場しない)。原作では大尉は空襲により亡くなったことになっていますが、この映像化作品では火事によって亡くなったことになっています(因みに、英国ITV(グラナダ)のデヴィッド・スーシェ版「名探偵ポアロ」ではガス爆発による事故死だった)。
    
クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って6.jpg 冒頭、科学的捜査に執心するランピオンとそれを軽んじる警視との間に確執があり、そこへ大尉の訃報が入り、警視は実の父親を失ったような思いに駆られ虚脱状態に。事件の捜査どころか刑事を辞めるとまで言い出し、話は一体どうなるのかと思いましたが(事件現場にランピオンから貰ったキノコのバスケットを抱えて悄然と立ち、親族から「あの人、大丈夫」と言われているのが可笑しい)、そこから警視の"復活"に至るまでのサイドストーリーはサイドストーリーとして楽しめ、むしろデヴィッド・スーシェ版が原作を改変してまでポワロが最初から事件に関与していたのに比べると、前半部分で警視が事件捜査に直接関与しない分、原作に近かったかも。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って04.jpg 原作と同じく死体が上がるのは3体。原作の妙味は、それらが自殺・事故・他殺とそれぞれ死亡原因が異なることが考えられる点と、AがBを殺害し、CがDを殺害したという一般的な推理を、例えばAがDを殺害したとすればどうかという具合に置き換えてみないと事件の謎は解けないという点で、細部のキャラクターの改変はあるものの、この原作のポイント部分はきっちり抑えていたと思われます。親族たちが若妻の死を願う気持ちが、個々の"妄想"を映像化することで巧く表現されていたりした点も含め、十分楽しめました。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って062.jpg 「若妻」の「兄」は、 原作でも大尉の親族を屋敷から追い出して財産の"総取り"を狙う悪い奴なのですが、この映像化作品では、登場早々に見るからにワルそう。親族の中で唯一そうした"妄想"に駆られることのなかったセリアが、婚約者を差し置いてこんな男に惹かれる気持ちが知れないですが、一見しっかり者に見える女性がジゴロ風の男が好きだったということがあってもおかしくないのかも。田舎の生活にやや飽きがきていて、更には婚約者との結婚後に待っている平凡な牧場暮らしにもあまり魅力を感じていなかった矢先だったというのもあるかもしれません。或いは、深読みすれば、婚約者の欲得やその中に潜む危険な何かを本能的に嗅ぎ取っていて、その反動だったのかも(婚約者が性的不能であることも暗示されている。加えて言えば、大尉の焼死にこのジゴロ風の男が関与していたことも暗示されていて、これらは原作には無い設定)。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って03.jpg このシリーズ、何れも細部にコメディ風のアレンジをしていますが、一方で、原作の抑えるべきところはきっちり抑えていたりもし、特にこの作品についてはそのことが言え、ロケに使われたドラリーブ大尉の屋敷なども豪勢でした。本場英国のクリスティ物テレビ映画にほぼ負けていない一作ではないかと。
Marie Denarnaud est Célie
Marie Denarnaud est Célie.jpg「クリスティのフレンチ・ミステリー(第8話)/満潮に乗って」」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/ LE FLUX ET LE REFLUX(Flux and Reflux)●制作年:2010年●制作国:フランス●本国上映:2011/4/15●監督:エリック・ウォレット●脚本:Sylvie Simon●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・コルッチ/Marie Denarnaud /Alexandre Zambeaux/Yves Pignot/Marie Denarnaud/Blandine Bellavoir/Nicky Marbot/Dominique Labourier/Luce Mouchel/Pascal Ternisien●日本放映:2011/09●放映局:AXNミステリー(評価:★★★★)

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壊れかけてはいたが壊れてはいなかった「聖歌隊」。意外とヒネリが無かった「ビジネスの...」。

DEATH IN CHORUS dvd.jpg第50話/壊れかけた聖歌隊 dvd2.jpg 第50話/壊れかけた聖歌隊 00.jpg  第49話)/ビジネスの総決算 dvd1.jpg
"Midsomer Murders" Death in Chorus(壊れかけた聖歌隊) Country Matters(ビジネスの総決算)

第50話/壊れかけた聖歌隊 01.jpg ジョイスやジョージも参加するミッドサマー・ワーシー聖歌隊が大会に向け猛練習の最中、メンバーの一人コナーが突然心臓発作で倒れ、軽症だったためにそもまま帰宅するが、自分の忘れ物を取りに来たステファンが、偶然コナーの携帯電話を見つけ届けに行くと、コナーは何者かに頭を殴られDEATH IN CHORUS 3.jpg死んでいた。キッチンのゴミ箱からは「お前の嘘つきな心臓」と書かれた紙とともに、豚の心臓が見つかる―。(第50話「壊れかけた聖歌隊」)

 指揮者ローレンスの過度な猛練習に聖歌隊の雰囲気は悪くなっていましたが、そのローレンスと、アストン聖歌隊の指揮者で、かつて経歴詐称をして大聖堂のオルガン奏者の座を手に入れたというフランシスとの間に憎悪に近いライバル心があり、聖歌隊メンバーへの嫌がらせもフランシスの仕業だったけれど、一方のローレンスも、自分の妻エレンとコナーとの不倫の証拠をもみ消して無かったことにしようとして、コナー宅に忍び込んでそこ(殺人現場)で音叉を落としてしまっていて、こうした彼らの行動が犯人推理を大いにミスリードさせてくれたなあ。

DEATH IN CHORUS house.jpg そうこうしている内に、教会の周辺でメンフクロウを観察をしていたサムという男が、墓地で遺体で発見され、実際に殺害された場所は彼が以前不動産管理を任されていたハーツメイドというジャイルズの屋敷の納屋だったようだ―。結局、ギャンブルで大損こいたコナーとレオという男とジャイルズが、ジャイルズの妻キャロラインが相続したバッハの肖像画の贋作を売って儲けようとしたところ(コナーはかつて贋作画家だった!)、本物を手にしたコナーがそれを売ってエレンと駆け落ち資金にしようとしたということからの仲間割れが原因だったのか。
Used as the Giles & Carolyn Armitage's house in 'Death in Chorus'

第50話/壊れかけた聖歌隊 04.jpg 妻キャロラインに薬を飲ませて入水自殺に見せかけ殺そうとしたジャイルズが一番のワルか。男たちの喧嘩を仲裁しようとして池にドボンしたジョーンズ巡査に続いて、キャロラインを助けようとしたバーナビーもびしょ濡れに。スティーブンという男性も最初はやや怪しかったけれど、キャロラインに対する純愛のみの男だったわけで、事件解決後暫くしたら彼女と結ばれる? エレンの方は、妻と縒りを戻すのを諦めたローレンスが家をおん出て、彼女はバーナビーからコナーが自分のために描いてくれた絵を返してもらい、コナーの想い出に生きるのでしょう。

DEATH IN CHORUS 05.jpg だんだん刑事らしくなってきたジョーンズは(次回「第51話「呼ばれた殺人者」で巡査部長に昇進する)、バーナビー宅でシャワーを浴びていた際の歌声を見込まれてコナーの代わりに聖歌隊のテノール担当になっていましたが、指揮者ローレンスはヤケクソになったのか聖歌大会の場にも現れず、前から聖歌隊の一員だった検視官ブラード博士が熱弁を振るって皆を鼓舞し、ローレンスの代わりに指揮棒を振ってミッドサマー・ワーシー聖歌隊が優勝!と、やや出来過ぎた作りですが、事件のプロセスが暗めであるだけに、"お口直し"的エンディングということでいいのではないでしょうか。

 
COUNTRY MATTERS 7.jpg 田舎町エルバートンで、大手スーパー「グッドフェア」の進出を巡り、議会と一部住民が対立していた。ある晩、村の集会で、グッドフェア側は、スーパーを誘致すれば、世帯向け物件を提供するほか、建設予定地の汚染土壌浄化を行うと住民に説明したが、賛成COUNTRY MATTERS 8.jpg派と反対派の間で小競り合いが起きて収拾がつかなくなる。その頃、集会を抜け出した子供達が製材工場で男性の刺殺体を発見、被害者の名はフランク・ホップカークと判明し、現場にあった凶器と思われる高級ナイフは、地元で料理教室を経営している女性ローズのものと判るが、警察の問いに彼女は、ホップカークが偽名で料理を習いに来ていたが、ナイフが何時なくなったのかは覚えがないと言う―。(第49話「ビジネスの総決算」)

第49話)/ビジネスの総決算 01.jpg第49話)/ビジネスの総決算 3.jpg スーパー反対派のオーランドは馬の調教師をしている妻ジニー差し置いてローズに執心、ジニーは当てつけにパブ店主を愛人にするものの、その愛人もジニーに入れ込むという、この料理教室のオバさんのモテぶりは不思議。ホップカークも彼女目当てに料理教室に通っていた? 躰を許さないというのが却って男が惹かれる要因なのでしょうか、それとも、調教師ジニーの"調教"(SM強要)に男達は付き合い切れなかったということだったのかも。

第49話)/ビジネスの総決算 4.jpg 狩猟場では「コスプレ人間罠」ごっこみたいな変てこなビジネスをやっているし(ちゃんとお客がいるわけだ)、村の女性司祭は雑貨屋店主と不倫しているし、こんな誰もが乱脈な環境だと、子供達も製材所で隠れて酒と煙草に耽るようになってしまうということなのでしょうか。死体を見つけてショックを受けるどころか、「学校に行って友達に話さなくっちゃ」と、むしろ新たな刺激を見つけて張り切っている様子です。

 見るからに怪しげな人物は犯人ではないというのがパターンになっているように思いましたが、今回は、怪しげで無い人は殆どおらず、犯人も結局その怪しげな人物の中の一人だったわけで、その分ヒネリがあまりなかった印象も受けました(「ビジネスの総決算」と言うより、それに便乗した「愛情(嫉妬)の総決算」だった)。

 犯人が誰かをぎりぎりまで引っ張らず、少し早めに犯人を明かして、犯行の経緯をじっくり犯人に話させる(同時に再現映像を流す)というのが、ここのところ見られる新たなパターンと言えるでしょうか。
 
MIDSOMER MURDERS 50.jpgMidsomer Murders Set 12.jpg「バーナビー警部(第50話)/壊れかけた聖歌隊」●原題:MIDSOMER MURDERS:DEATH IN CHOURUS●制作年:2006年●制作国:イギリス●本国上映:2006/09/03●監督:サラ・ヘリングス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:デヴィッド・ハーセント●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/パトリック・ドルーリー/ピーター・キャパルディ●日本放映:2010/05●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

Midsomer Murders Set 12 [DVD] [Import]」(Four Funerals and a Wedding/Country Matters(ビジネスの総決算)/Death in Chorus(壊れかけた聖歌隊)/Last Year's Model) 

COUNTRY MATTERS 6.jpg第49話)/ビジネスの総決算 dvd2.jpg「バーナビー警部(第49話)/ビジネスの総決算」●原題:MIDSOMER MURDERS:COUNTRY MATTERS●制作年:2006年●制作国:イギリス●本国上映:2006/09/10●監督:リチャード・ホルトハウス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/クレア・ホルマン/ティム・ハーディ●日本放映:2010/05●放映局:AXNミステリー(評価:★★★)

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読み終えて時間が経つにつれ、トリックのために書かれた小説との印象が強まってきた。

吉田 修一 『愛に乱暴』0.jpg愛に乱暴.jpg   吉田 修一 『愛に乱暴』1.jpg 吉田 修一 『愛に乱暴』2.jpg
愛に乱暴』(2013/05 新潮社)『愛に乱暴(上) (新潮文庫)』『愛に乱暴(下) (新潮文庫)(2017/12)

 これは私の、私たちの愛のはずだった―。夫の不実を疑い、姑の視線に耐えられなくなった時、桃子は誰にも言えぬ激しい衝動に身を委ねるのだが......。夫婦とは何か、愛人とは何か、〈家〉とは何か、妻が欲した言葉とは何か。『悪人』『横道世之介』の作家がかつてない強度で描破した、狂乱の純愛。本当に騙したのは、どちらなのだろう?―。(新潮社サイトより)

 主人公の桃子は、東京近郊にある夫の実家の離れに住む結婚8年の専業主婦であり、そこそこ美人で努力家でもあり、カルチャーセンターの講師などもしていますが、夫が愛人をつくって離婚を言い出すとたちまち結婚生活に暗雲がたれ込め、義父の入院や義母との確執も加わって次第に追い詰められていきます。

 各章の中で、不倫相手の愛人の日記、夫に不倫をされている妻・桃子の日常と心象、妻・桃子の日記という順番で出てきてそれが繰り返されますが、この構成自体がある種"叙述トリック"でした(読んでいて勘違いしたという人がいたが、勘違いではなく、あくまで作者が仕組んだトリック)。

 読み進んで3分の2ぐらいまでいったところでそのことに気づかされますが、夫に浮気された側の女性心理をそこそこ丁寧に描いてはいるなあと思って読んでいたものの、そのトリックに気づいた時点で、主人公にあまり感情移入できなくなってしまったかも。

 作者はこの作品を振り返って、「だから、やはり恋愛や夫婦関係がテーマではないんでしょうね。いろんな方向から、〈桃子の居場所〉あるいは〈居場所のなさ〉を書きたかったのだと思います」とインタビューで述べていますが(新潮社サイトより)、人間のエゴを描こうとしたのかと思ってしまいました。

 しかし、作者の責任ではないけれど、帯にごちゃごちゃ書き過ぎです。なるほど、サスペンス風でもあるわけですが、実のところが分かるとやや脱力しました。帯は見ないで読んだ方が良かったかも。

 上手いとは思うのですが、「日記」にしても「地の文」にしてもわざと通俗に書かれている感じもして、読み終えて時間が経つにつれ、トリックのために書かれた小説と言うか、トリックに気づいた時点で終わってしまったような小説だったなあという気がしてきました(個人的評価を、当初の★★★☆から★★★に修正)。

【2017年文庫化[新潮文庫(上・下)]】

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面白かった。まともに見える人が犯人に違いないと思いつつつも、やはり騙されてしまう。

第47話「消えないセピア色」dvd.jpg 第47話「消えないセピア色」04.jpg  MIDSOMER MURDERS 11.jpg   第47話「消えないセピア色」バーナビー夫妻.jpg
MIDSOMER MURDERS. DOWN AMONG THE DEAD MEN  「Midsomer Murders Set 11 [DVD] [Import]」(The House in the Woods/Dead Letters/Vixen's Run/Down Among the Dead Men(消えないセピア色))

第47話「消えないセピア色」店主.jpg 役所の給与係バレットが散弾銃で殺される。バーナビーは、彼の部屋にあったオークションの切り抜きの絵の持ち主であるパブ店主ジャックに事情を聞きに行く。店主はバレットを「誰にでも好かれる男」と話すが、パブで働き、バレットの家で掃除の仕事もしていたルビーは「最低の男」だと言う。店主は、父親のものだった絵を、相続税を逃れるため売却しようとしたのを、それを知ったバレットに脅迫されていたのだった。バレットはその他にも、問題児を9人引き取って育てた地元の名士ウェーバリーを、その内の一人と密通していたというデマを流すとして脅し、石油採掘をしているというフロリアン夫妻についても脅迫ネタを探していたらしい。また、彼ら全員の家の掃除の仕事をしていたルビーも盗癖を知られて脅され、フロリアン夫妻についての情報を取るようバレットに指示されていた。バレットは夫妻が別荘を持つフェナコム湾にある魚屋のレシートを持っていたが、バーナビーが魚屋を訪ねると、店主ピーターは以前に香港で警官をしていた人物で、捜査にも協力的だった。フロリアン夫妻はよく沖の岩礁付近に出かけたが、そこには沈没船があるという噂があった―。

第47話「消えないセピア色」別荘.png第47話「消えないセピア色」03.jpg 面白かったです。今回も登場人物は皆怪しげ。見るからに怪しげな人物は犯人ではないというのがパターンになっているようで、そのことを念頭に置きつつも(つまり、まともに見える人が犯人に違いないと思って観つつつも)、やはり騙されてしまいます。と言っても、今回のケースなどは、犯行動機が最後の最後にならないと分からないから無理もないかも。海外での昔の出来事を巡る復讐劇でした。

 バーナビーも今回は、わざとではなく明らかな誤認逮捕をしてしまったわけで、一件落着したかのように思えて何となくスッキリしないところへジョーンズの言葉でやっと閃いた...(冷たい海の水で目が覚めた?)。

 考えてみれば、事件解決に幾つかの偶然が働いていて、例えば、ピーターに「ガソリンスタンドのレシートを取って来い」と言われたルビーが間違って魚屋のレシートを取って来たのもその1つであるし、ピーターの奥さんのキャロルがたまたま好意でジョイスにウサギ肉を贈ったのもそうです(ウサギ料理の中から散弾が出てきたことをバーナビーが思い出したことで、ジョイスとカーリーは残飯漁りをしなければならなくなったが、散弾は見つかり、それが決定的な犯行証拠になった)。

Down Among the Dead Men.jpg お宝探しの夫婦は夫婦で、殺人事件解決後はお宝の隠し場所を追及されてシラを切り通すも、ジョーンズが誤ってペットボトルを倒したことから井戸の存在が明らかになり...と、ジョーンズは推理ではバーナビーの足元にも及ばないものの、"本人の能力以外"のところで意図せず事件の解決に貢献しているなあ(スコットから交替して才気煥発ぶりが目立ったため、ここらでほどほどに調整している?)。

 小説や映画などから、沈没船のお宝は引き揚げた人のものになるというイメージがありますが、日本では1年間所有者が名乗り出なければ発見者のものになるものの、ヨーロッパなどでは最初から国のものと規定しているケースが殆どで、それを黙って自分のものにしてしまうと窃盗罪になるようです。所有権争いを避けるのが狙いのようですが、沈没船が近海にそれだけ数多くあり、徒に射幸心を煽らないようにするというのもあるのでは。

第47話「消えないセピア色」マッケンジー.jpg ルビーを演じたジュリア・マッケンジーは、2009年からグラナダ版「アガサ・クリスティー ミス・マープル」でミス・マープルを演じることになりますが、ここではパブの手伝いと掃除人の仕事の掛け持ちと忙しく、その上、パブの店主の内縁の妻みたいになっていて、家から鉄砲が出てきて、互いに相手が犯人ではないかと疑心暗鬼になり、"夫婦喧嘩"の末に鉄砲が暴発、自ら警察を招き入れることになって、窃盗癖も白状するという、ミス・マープルとは全く異なる役どころを演じているのが興味深かったです(でも、どことなく品のある感じ)。

Martin Barrett's house in 'Down Among the Dead Men'.jpg
「バーナビー警部(第47話)/消えないセピア色」●原題:MIDSOMER MURDERS:DOWN AMONG THE DEAD MEN●制作年:2006年●制作国:イギリス●本国上映:2006/03/12●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ダグラス・ワトキンソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/ジュリア・マッケンジー●日本放映:2010/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★★)
Martin Barrett's house in 'Down Among the Dead Men'

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巡査ジョーンズが「刑事」に。双子兄弟の一人二役に続いて、キャラ立ちしている親子の二人四役。

MIDSOMER MURDERS 11.jpg  MIDSOMER MURDERS 44真相の眠る屋敷.jpg 真相の眠る屋敷.jpg   第45話/カーニバルの傷痕 dvd.jpg
Midsomer Murders Set 11 [DVD] [Import]」(The House in the Woods(真相の眠る屋敷)/Dead Letters(カーニバルの傷痕)/Vixen's Run/Down Among the Dead Men)

バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷 03.jpg ニュートンの森にひっそりと佇むウィンヤード屋敷は、近頃幽霊が出ると噂になり、地元の子供たちの肝試しスポットとなっていた。ある日、物件探しでこの屋敷に惹かれた夫婦が、屋敷から車に戻ったところで何者かに絞殺されてしまう―。(第44話「真相の眠る屋敷」)

 屋敷を売り出しているチャーリーには実は双子のジャックという兄弟がいて、昔起こした事件(警官殺し)で服役中とのこと。しかし、実際には、ジャックがチャーリーの罪を被って服役していたんだなあ。そのジャックは屋敷に思い入れがあって、脱獄までして屋敷を見に来る―。

バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷 04.jpg う~ん、双子の兄弟で自分が知能も人格も全ていいところばかり取ってしまって、弟には悪いところばかりいったからと言って、そのことに後ろめたさを感じて弟の罪を被るかなあというのはありますが、実際ジャックは子供にも好かれるいい人という感じで、自分を愛してくれた女性とも会えて、まあ最後は犯人に殺されなくて良かったという感じでしょうか。
 兄弟を同じ俳優が演じていますが、きっちり演じ分けていたし、両者がもみ合う場面などは巧く撮っていました(但し、ジャックを簡単に脱獄させてしまう刑務所や、チャーリーに易々と屋敷に入り込まれる警察というのは如何なものか)。

バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷 01.jpg チャーリーも充分に怪しいのですが、それまでに怪しい人物が目一杯出てくるので、初登場の時は相対的にまともに見えてしまうという、いつもながらの巧みなミスリードのさせ方でした。ある程度まで混迷を深めた段階で、少年がチャーリーをジャックだと思って「ジャック」と呼びかけて反応が無かったという、視聴者から見れば分かり易い謎解きの手立て示したのは親切か。

バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷 02.jpg 本作から第9シーズン。バーナビーは、スコット巡査部長の病欠で、代わりに巡査ジョーンズ(ジェイソン・ヒューズ)を警官の制服からスーツに着替えさせて巡査部長代理として共に捜査に当たらせますが(「キミ、やってみるか?」って感じだったね)、もしかしてこの人、スコットより優秀? 一方のスコットは、結局、前シーズンを最後に、このシリーズに復帰することは無かったようです(やや気の毒)。


カーニバルの傷痕 3.jpg ミッドサマー・バートンで年一度開催されるオークアップル祭。お祭り気分の中、マリオン・スレードの水死体が発見される。彼女は精神安定剤のダイラシンを多量に服用しており自殺かと思われたが、肩には押さえつけられたような痕があったバーナビーとジョンは捜査を開始、聞き込みを続けるうちに、マリオンに8年前に食中毒で死亡した娘がいたことを知らされる。その後ベラのかつての同級生マークが、自分の犬を祭りのドッグショーに出すと言っていたが現れず、森で首を切られて死んでいるのが見つかる。彼もマリオンと同様にダイラシンを飲まされて殺されたのだった―(第45話「カーニバルの傷痕」)

第45話/カーニバルの傷痕11.jpg第45話/カーニバルの傷痕12.jpg 今回も怪しげな人物が目一杯出てきますが、極めつけは「第1話/謎のアナベラ」に出てきた覗き趣味の"塩沢とき"風オバサンと葬儀屋の息子の親子が、村の祭りの仕切り屋と図書館員の役でまた出てきている点―といっても、2人は第1話で犯人によって殺害されているため、それはあり得ないと思って観ていましたが、どう見ても同じ役者が演じている! 結局、このアリスター親子というのは、第1話のレインバード親子の姉と義兄だったわけかあ(スゴイ役者の使い回し方! それだけあの親子のキャラが視聴者受けしたということか)。

 バーナビーがどこかでお会いしましたね、とか、ずっとこの村に住んでいるのですかとか色々訊いて、やっと9年前に妹親子が殺害されたことを聴き出し得心しますが、意外と自分が手掛けた事件のことを覚えていないのかな(9年前ならまあ無理もないか)。こっちのオバサンも覗き趣味だし、息子には溺愛していた甥と同じ格好をさせているし、それがまた葬儀屋の恰好なので、怪しさ全開なのですが、まあ今回も被害者になることはあっても犯人ではないんだろうなあと。

第45話/カーニバルの傷痕2.jpg第45話/カーニバルの傷痕 医師2.jpg お祭り男の旦那はプロのコメディアンを目指していて実入りのある仕事はしておらず、その旦那にあなたコメディアンにはなれない、なぜならば「あなたの人生そのものがコメディなのよ」と言い放つ妻。その妻も医師と浮気していて、この医師(医者なのにヘビースモーカー)も好色...といった具合に、犯人を除く残りの人たちの方が問題ありではないかと思わせるような村の人々でした。

 ジョーンズ巡査の優秀さが結構目立ちました。バーナビーが相手に質問したいことを先回りして聴いていくため、バーナビーもやや感心している様子。「巡査」(階級名)がスーツで仕事しているのを「刑事」と俗称で呼ぶのは日本だけなのかなあ。"DITECTIV"は日本語で「探偵」とか「刑事」とか訳されることが多いですが、本来は階級名の一部でもあるようです(「巡査」が私服刑事になるのに特に試験とはないわけか)。

 因みに、イギリスでは、警視以下の役職階層は次の通り。
  警視    DSI DITECTIV Superintendent     
  警部    DCI DITECTIV Chief Inspector
  警部補   DI DITECTIV Inspector  
  巡査部長  DS DITECTIV Sergeant
  巡査    DC DITECTIV Constable
 バーナビーは「警部」(DCI DITECTIV Chief Inspector、番組のオープニングでは「DCI」の表記)で、かつての部下トロイは「巡査部長」(DS DITECTIV Sergeant、同「Sgt. 」の表記)から「警部補」(DI DITECTIV Inspector)に昇進して番組を去り、今度の部下ジョーンズは、一番下の「巡査」(DC DITECTIV Constable、同「DC」の表記)ということになるようです(トロイの初登場時より年喰っているように見えなくもないが)。

3真相の眠る屋敷 .jpg真相の眠る屋敷 5.jpg「バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷」●原題:MIDSOMER MURDERS:THE HOUSE IN THE WOODS●制作年:2005年●制作国:イギリス●本国上映:2005/10/09●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:バリー・シンナー●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ジョージ・ベイカー●日本放映:2010/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

MIDSOMER MURDERS:DEAD LETTERS 2.jpg「バーナビー警部(第45話)/カーニバルの傷痕」●原題:MIDSOMER MURDERS:DEAD LETTERS●制作年:2006年●制作国:イギリス●本国上映:2006/02/26●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ピーター・ハモンド●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/エリザベス・スプリッグス/リチャード・キャント●日本放映:2010/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

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M&Aを素材とした分かり易い逆転劇。元々「劇画」を小説にしたような物語なのでこれで良しか。

ロスジェネの逆襲.jpg 『ロスジェネの逆襲』(2012/06 ダイヤモンド社)

 2004年、銀行の系列子会社で業績は鳴かず飛ばずの東京セントラル証券に、IT企業の雄「電脳雑伎集団」の平山社長から、ライバルの「東京スパイラル」を買収したいとの相談があった。アドバイザーの座に就けば、巨額の手数料が転がり込んでくるチャンスだったが、そこに親会社である東京中央銀行から理不尽な横槍が入る。責任を問われて窮地に陥った半沢直樹は、部下の森山雅弘とともに、驚くべき秘策に出る―。

 テレビドラマでお馴染みになった半沢直樹が主人公の物語の『オレたちバブル入行組』('04年/文藝春秋)、『オレたち花のバブル組』('08年/文藝春秋)に続くシリーズ第3作で、「週刊ダイヤモンド」2010年8月7日号から2011年10月1日号にかけて連載されたもの。
 今回は、半沢は東京中央銀行から東京セントラル証券に企画部長として出向中の身であり、出向元の東京中央銀行に対抗する形で「東京スパイラル」の買収防衛に関与します。

 既に「フォックス」という会社が「東京スパイラル」のホワイトナイトを名乗り出ていましたが、これら全てが「東京スパイラル」買収のために東京中央銀行が練った偽装スキームだった―半沢はそれを見破っただけでなく、「東京スパイラル」の瀬名社長を通じて「フォックス」に逆買収をかける、所謂「倍返し」に出るという、分かり易い逆転劇で、カタルシス効果は大です。

 部下の森山が「東京スパイラル」の瀬名社長と幼馴染だったとか、「フォックス」の海外子会社に「東京スパイラル」が新たなビジネスモデルを展開する上での非常にプラスになるノウハウが隠されていたとか、かなりご都合主義的なところはありますが、元々「劇画」を小説にしたような物語なので、これでいいのではないかと思います。

 ここにきて、ますますエンタテイメントのツボを押さえている感じで、分かり易くて、話の展開に無駄がありません。但し、M&Aにおける比較的常識的な規制等が、あたかも新たに露呈した事実のように描かれているのは、やや違和感もありました。

ロスジェネの逆襲s.jpg 特定のモデルは無いように思いましたが、IT企業「電脳雑伎集団」の粉飾決算を半沢が見破るに至って、そう言えば、カバーに六本木ヒルズが描かれていたなあと。

 『オレたちバブル入行組』、『オレたち花のバブル組』と続けて読み、ドラマも観てややお腹一杯という感じで、この作品もドラマ化が決定してからでも読めばいいと思っていましたが、シリーズ4作目『銀翼のイカロス』の連載が「週刊ダイヤモンド」で始まっていることもあって、じゃあ読んじゃおうかという流れでした。

 『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』はほぼリフレイン構造になっていたのに対し、本作はM&Aという新たなモチーフであったために、これはこれで思った以上に楽しめました。
 
 ドラマで前2作を僅か10話に纏め、蓋を開けれてみれば予想外の高視聴率で、TBSは勿体ないことをしたと思っているのでは。今度この作品がドラマ化される時は、もっと小出しにして長くやるのではないかなあ。

【2015年文庫化[文春文庫]】

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「●「吉川英治文学賞」受賞作」の インデックッスへ 「●日本のTVドラマ (90年代~)」の インデックッスへ(「オリンピックの身代金」)

まずエンタメ小説として面白かった。当時における"大義"に思いを馳せることができる作品でもある。
オリンピックの身代金 文庫.jpg
オリンピックの身代金 単行本.bmpオリンピックの身代金 上.jpg オリンピックの身代金 下.jpg 
オリンピックの身代金』『オリンピックの身代金(上) (角川文庫)』『オリンピックの身代金(下) (角川文庫)』『オリンピックの身代金 上 (角川文庫)』[Kindle版] 『オリンピックの身代金 下 (角川文庫)』[Kindle版]

 2009(平成21)年・第43回「吉川英治文学賞」受賞作。

 東京オリンピック開催間近の昭和39(1964)年8月下旬、オリンピック警備本部幕僚長・須賀の自宅敷地内で、1週間後には中野の警察学校で相次いで火災があったが、共に警察による箝口令のため新聞報道はされなかった。妻の第二子出産を控え、松戸の団地に引っ越したばかりの捜査一課刑事・落合昌夫が属する五係メンバーは、前年の連続爆破事件の犯人が差出人名に用いた「草加次郎」名で、"東京オリンピックは不要"との爆破の予告状が届いていたことを明かされる。
 同年7月中旬、東大大学院生の島崎国男は、出稼ぎで五輪関連工事に携わっていた異父兄・初男の訃報に接し、秋田に住む母と義母の代理で荼毘に立ち会って遺骨を故郷へ持ち帰る。帰郷した彼は、昔と変わらず貧しい故郷の様に衝撃を受け、兄が生前働いていた飯場でこの夏働くことを決意する。大学院でマルクス経済学を学ぶ国男にはプロレタリアの実態を知るためのものだったが、慣れない肉体労働に加え、別の飯場を仕切るヤクザ者に目を付けられ、イカサマ賭博で負け借金を負ってしまう。そして労務者たちが疲労から逃れるために服用するヒロポンに、彼らの生活を実体験しようと自身も手を出す。兄の直接の死因がヒロポンの過剰摂取だったことを知った国男は、五輪景気に沸く東京の裏側にある労務者の実態や貧困に喘ぐ地方の現況からみて、今の日本にオリンピックを開催する資格はなく、開催を阻止しなければならないとの思いを強くし、発破業者の火薬庫からダイナマイトを盗んで爆破を実行していく。秋田帰郷の際に出会った同郷の村田留吉というスリと再会した国男は、自身の考えを彼に話し、オリンピックを人質に一緒に国から金を取らないかと持ちかける。国から身代金を取るという発想に共鳴した村田は、国男と行動を共にするうち、彼を実の息子のように感じ始めていく―。

 面白かったです。丁度読もうとしていた頃に、テレビ朝日開局55周年記念として単発ドラマ化されたものが放映されるのを知り(2020年の東京オリンピック開催決定前からドラマ化は決まっていた?)、慌てて読みましたが、ほぼ無理なく一気に読めるテンポのいい展開でした。そして、原作を読んだ後にドラマを観ました。

オリンピックの身代金 ドラマ 4.jpg 原作では、東大大学院生の島崎国男、捜査一課刑事の落合昌夫、オリンピック警備本部幕僚長の息子でテレビ局勤務の須賀忠の3人が東大で学部の同級生ということになっていますが、テレビ版では、落合昌夫(竹野内豊)ではなく、(原作には全く登場しない)その妹の落合有美(黒木メイサ)が島崎(松山ケンイチ)、須賀(速水もこみち)と同級ということになっていて、しかも有美は国男に恋心を抱いてどこまでも彼に付いていこうとする設定になっているため、国男が村田(笹野高史)と一緒に爆破計画を練っている傍にちょこんと居るのが違和感ありました。男だけで逃亡するのと、恋人連れで逃亡するのでは、随分と物語の性質が変わってくるのでは...とやや気を揉みましたが、その外の部分は思った以上に原作に忠実に作られていて、ドラマの方も楽しめました。

オリンピックの身代金 ドラマ 1.jpg 原作では、国男がオリンピックの開催阻止を決意する前の時期と、決意して行動に移していく時期とをフラッシュバック手法で交互に見せ、しかも前半部は決意する前の普通の大学院生だった時期の方に比重を置いて書かれているため、この大人しそうな青年が本当に爆破犯に変貌していくのだろうかという関心からも読み進めることができましたが、ドラマにそこまで求めるのは無理だったか。

オリンピックの身代金 ドラマ 2.jpg また、原作では、特に冒頭の方で、昭和39年という時代を感じさせるアイテムやグッズ、社会背景に関する話などがマニアックなくらい出てきてシズル感を高めていましたが、ドラマではその辺りが端折られていたのがやや残念でした(時代を感じさせるのはクルマと看板だけ。それだけでも結構苦労したため、他のところまで手が回らなかった?)。

 更に、市川崑監督の東京オリンピックの記録フィルムが一部使われていますが、そこから伝わる当時の民衆の熱っぽい雰囲気と、テレビ用にエキストラをかき集めて急ごしらえで作った"群衆"との間の落差は、これはもう如何ともし難いものでした(CGによる国立競技場を埋め尽くす7万人の観衆と出演者たちの合成はまずまずだったと思うが、細かい場面ごとの"群衆"シーンがイマイチ)。

 ドラマに対していろいろケチをつけましたが、後半部分の山場である、国男たちと警察とのチェイスの面白さは、ドラマでもそこそこ再現されていたように思われ、原作を読んだ後ドラマ化作品を観てがっくりさせられることが多い中ではよく出来ている方かと思いました。

オリンピック 東京 決定 2013.jpg 2020年の東京オリンピックは、"大義なき五輪"と言われ、その分、開催立候補前は開催に対して"何となく反対"という雰囲気が優勢だったのが、開催決定後は、"何となく期待する"みたいな風に変わってきているような印象も受けますが、では、1964年の東京オリンピックの(ヤクザさえ抗争活動を休止するような)"大義"とは何であったのか、多かれ少なかれ、そうした当時における"大義"に思いを馳せることができる作品でもあるかと思います。

 まあ、それはともかく、原作はまず、エンタテインメント小説として面白かったことが第一。この物語における国男の発想があまりに短絡的ではないかという見方は至極当然に成り立つと思われますが、エンタメ小説としては許容の範囲内ではないかと思われました。

オリンピックの身代金 ドラマ 0.jpgオリンピックの身代金 ドラマ 3.jpg「オリンピックの身代金~テレビ朝日開局55周年記念」●監督:藤田明二●脚本:東本陽七/七橋斗志夫●原作:奥田英朗「オリンピックの身代金」●出演:竹野内豊/松山ケンイチ/黒木メイサ/天海祐希/沢村一樹/速水もこみち/斎藤工/吹石一恵/笹野高史/國村隼/岸部一徳●放映:2013/11/30~12/01(全2回)●放送局:テレビ朝日
     
建設中の首都高速道路(赤坂見附付近)1964年
建設中の首都高 s39 .jpg

【2011年文庫化[角川文庫(上・下)]/2014年再文庫化[講談社文庫(上・下)]】

《読書MEMO》
●2014年再文庫化[講談社文庫(上・下)]
オリンピックの身代金(上) (講談社文庫) .jpgオリンピックの身代金(下) (講談社文庫) .jpg

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「●「柴田錬三郎賞」受賞作」の インデックッスへ

さらっと読めてくすっと笑える様々な「夫婦の位相」。ややもの足りない?

奥田 英朗 『家日和』単行本.jpg家日和』 奥田 英朗 『家日和』 文庫.jpg奥田 英朗 『家日和』2.jpg家日和 (集英社文庫)

 2007(平成19)年度・第20回「柴田錬三郎賞」受賞作。

 初めてのインターネットオークションで落札者から「非常に良い」の評価を受けた喜びから、家にある不用品を次々出品し始め、ついには夫の私物を許可なく出品し始めてしまう主婦を描く「サニーデイ」、会社が倒産しどうしようかと迷う間もなく妻が前の職場に復帰し、専業主夫となった夫の奮闘振りを描く「ここが青山」、妻との別居が決まり、がらんどうと化した部屋を心おきなく自分の趣味に合わせて模様替えする「家においでよ」、内職斡旋会社の担当者が、冴えない中年男から柑橘系の香水を付けた若者に代わり、淫夢を見るようになった主婦を描く「グレープフルーツ・モンスター」、夫が勝手に転職を決める度に、将来への危機感からか仕事の質が格段に上がるイラストレーターを描く「夫とカーテン」、ロハスにハマった妻やその仲間を揶揄するユーモア小説を書いてしまったことを後悔する作家を描く「妻と玄米御飯」の6編を収録。

 この作者の作品はユーモア小説からシリアスなサスペンスまで幅広いですが、これはどちらかと言うとユーモア系に近いといった感じでしょうか。『空中ブランコ』のようなキツい感じのユーモアではなく、その分、オチは弱いけれど、向田邦子の家庭小説の男性版のような印象も受けました。大笑いさせられるというより、くすっと笑える感じでした。

 個人的には、「ここが青山」の何となく自分には「主夫」が向いているのかなと主人公が最後に感じるのが面白かったし、「夫とカーテン」も、妻のイラストの質が夫の仕事の危機的状況と比例して高まり、危機が去ると落ちてしまったというのが面白かったです。「サニーデイ」に象徴されるように、何かをきっかけに日常に変化が生じて、最初はその変化の渦にどんどんハマっていくものの、どこかで踏みとどまるという"マトモな"主人公が多かったかな。そんな中、作品のトーンとしては、「グレープフルーツ・モンスター」がやや他の作品と違った、ドロっと雰囲気だったかな。この淫夢を見る主人公も、現実に不倫するとかはしないわけですが。

 全体としては、さらっと読めた様々な「夫婦の位相」という感じで、上手いなあと思わせる一方で、向田邦子ほどドロっとしたものもなく、ややもの足りなさも感じられました。

<font color=gray>【2010年文庫化[集英社文庫]】

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ニューヨークという大都会を舞台にしたダスティン・ホフマン主演'69年作品2作。

ジョンとメリー [VHS].jpgジョンとメリー [DVD].jpg 真夜中のカーボーイ dvd.jpg 卒業 [DVD] L.jpg
ジョンとメリー [DVD]」「真夜中のカーボーイ [DVD]」「卒業 [DVD]

ジョンとメリー 1.jpg マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。

 ピーター・イエーツ(1929-2011/享年81)監督の「ジョンとメリー」('69年)は、行きずりの一夜を共にした男女の翌朝からの1日を描いたもので、男女の出会いを描いた何とはない話であり、しかも基本的に密室劇なのですが、2人のそれぞれの回想と現在の気持ちを表す独白を挟みながらストーリーが巧みに展開していき、2人の関係はどうなるのだろうかと引き込まれて観てしまう作品でした。ピーター・イエーツは英国人で、映画監督になる前にプロのレーシング・ドライバーだったこともあり、この作品が監督第3作ですが、第1作が犯罪サスペンス映画「大列車強盗団」('67年/英)で、この作品でのアクション・シーンの手腕が買われ、ハリウッドで第2作、スティーブ・マックイーン主演のアクション映画「ブリット」('67年/米)を撮っていますが、今度はがらっと変って男女の出会いを描いた作品に。

ジョンとメリー 4.jpg 脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。

ジョンとメリー 2.jpg 最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時に大方の日本人の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは。アメリカ人だったら普通は最初に名乗るけれど、アメリカ人が見たらどう感じるのだろうか)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。

真夜中のカーボーイ1.jpg そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの卒業 ダスティン・ホフマン .jpg主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。

卒業 ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス.jpg 映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー卒業(1967).jpgファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ卒業 1967 2.jpg賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。

真夜中のカーボーイQ.jpg 3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ真夜中のカーボーイs.jpgリー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも。

ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg 「ジョンとメリー」に出てくる"Singles Bar"(独身者専門バー)を舞台としたものでは、リチャード・ブルックス(1912-1992/享年72)監督・脚本、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッドバーを探して」('77年)があり、こちらはジュディス・ロスナーが1975年に発表したベストセラー小説の映画化作品です。
ミスター・グッドバーを探して [VHS]

ミスター・グッドバーを探して1.jpg ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。

恋におちて 1984.jpg 何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」('84年)

ユー・ガット・メール 01.jpg 「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
「ユー・ガット・メール」('98年)

めぐり逢えたら 映画 1.jpg トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年)にヒントを得ている作品ですが(「めぐり逢い」そのものが同じくレオ・マッケリー監督、アイリーン・ダン、シャルル・ボワイエ主演の「邂逅」('39年)のリメイク作品)、エンパイア・ステート・ビルの展望台で再開を約するのは「めぐり逢い」と同じ。但し、「めぐり逢い」ではケーリー・グラント演じるテリーの事故のため2人の再会は果たせませんでしたが、「めぐり逢えたら」の2人は無事に再開出来るという、こちらもオリジナルをハッピーエンドに改変しています。
「めぐり逢えたら」('93年)

 最近のものになればなるほど、男女双方または何れかに家族や恋人がいたりして話がややこしくなったりもしていますが、それでもハッピーエンド系の方が主流かな。興業的に安定性が高いというのもあるのでしょう。「恋におちて」は、古典的ストーリーをデ・ニーロ、ストリープの演技力で引っぱっている感じですが、2人とも出演時点ですでに大物俳優であるだけに、逆にストーリーの凡庸さが目立ち、やや退屈?(もっと若い時に演じて欲しかった)。但し、「恋におちて」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の何れも役者の演技はしっかりしていて、ストーリーに多分に偶然の要素がありながらも、ディテールの演出や表現においてのリアリティはありました。しかしながら、物語の構成としては"定番の踏襲"と言うか、「ジョンとメリー」を観て感じた時のような新鮮味は感じられませんでした。

 こうして見ると、ニューヨークという街は、「真夜中のカーボーイ」や「ミスター・グッドバーを探して」に出てくる人間の孤独を浮き彫りにするような暗部は内包してはいるものの、映画における男女の出会いや再会の舞台として昔も今もサマになる街でもあるとも言えるのかもしれません(ダスティン・ホフマンは同じ年に全く異なるキャラクターで、ニューヨークを舞台に孤独な男性の「明・暗」両面を演じてみせたわけだ。これぞ名優の証!)。

ジョンとメリー [VHS]
JOHN AND MARY 1969.jpgジョンとメリーdvd3.jpg「ジョンとメリー」●原題:JOHN AND MARY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:ベン・カディッシュ●脚本:ジョン・モーティマー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:クインシー・ジョーンズ●原作:マーヴィン・ジョーンズ「ジョンとメリー」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/ミア・ファロー/マイケル・トーラン/サニー・グリフィン/スタンリー・ベック/三鷹オスカー.jpgタイン・デイリー/アリックス・エリアス●日本ジョンとメリーe.jpg公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

Dustin Hoffman and Mia Farrow/Photo from John and Mary (1969)

「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113真夜中のカーボーイ2.jpg真夜中のカーボーイ 映画dvd.jpg分●出演:ジョン・ヴォイト/ダスティン・ホフマン/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マクギヴァー/ブレンダ・ヴァッカロ/バーナード・ヒューズ/ルース・ホワイト/ジェニファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
真夜中のカーボーイ [DVD]

「卒業」●原題:THE GRADUATE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ローレンス・ター卒業 1967 pster.jpgマン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン卒業 1967 1.jpg/デイヴ・グルーシン●原作:チャールズ・ウェッブ「卒業」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/マーレイ・ハミルトン/ウィリアム・ダリチャr-ド・ドレイファス 卒業.jpgニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)
卒業 [DVD]

映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」監督リチャード・ブルックス 出演ダイアン・キートン

FALLING IN LOVE 1984.jpg恋におちて 1984 dvd.jpg「恋におちて」●原題:FALLING IN LOVE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ウール・グロスバード●製作:マーヴィン・ワース●脚本:マイケル・クリストファー●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)
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YOU'VE GOT MAIL.jpgユー・ガット・メール dvd.jpg「ユー・ガット・メール」●原題:YOU'VE GOT MAIL●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ノーラ・エフロン/ローレン・シュラー・ドナー●脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン●撮影:ジョン・リンドリー●音楽:ジョージ・フェントン●原作:ミクロス・ラズロ●時間:119分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー/ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ヘザー・バーンズ/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ/ハリー・ハーシュ●日本公開:1999/02●配給:ワーナー・ブラザース映画配給(評価:★★★)ユー・ガット・メール [DVD]

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

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ソース工場の経営を巡る一族の確執。後味は良くないけれど、そこそこに巧いエピソード。

SAUCE FOR THE GOOSE dvd.jpgSECOND SIGHT dvd2.jpg  SAUCE FOR THE GOOSE 00.jpg SAUCE FOR THE GOOSE 02.jpg   
"Midsomer Murders" Sauce for the Goose (斜陽の喧騒)「Midsomer Murders Set 10 [DVD] [Import]」(Second Sight/Hidden Depths/Sauce for the Goose/Midsomer Rhapsody)

SAUCE FOR THE GOOSE 03.jpg 1851年創業のソース工場プラマー社のピリ辛ソースは、英国内外で愛され、売れ続けていたが、いつしか経営難に陥り、フィールドウェイ社から買収話がもちかけられていた。今年の年次総会でプラマー社の一族が集まった時、工場見学に来ていた男が殺される―。

SAUCE FOR THE GOOSE 01.jpg 被害者の死体が全裸で高熱消毒のベルトコンベアから出てきたというのが凄いね。検視官ブラード博士が、今回の死体は"見もの"だと言ってるぐらいですから、確かに充分にユニーク且つグロテスク。バーナビーらの調べで、斜陽の喧騒.jpg殺害された男はフィールドウェイの社員デクスター・ロックウッドで、消毒される前にフォークリフトでソース瓶の壁に挟まれて圧死していたことが判り、彼は買収会社の社員であるだけでなく、祖父がプラマー社の創業メンバーの一人でありながら、解雇され自殺したという過去経緯もありました。

SAUCE FOR THE GOOSE 4.jpg プラマー社の経営権は、母親と3人の兄弟・妹にあるものの、長男レイフは社長でありながらも会社経営よりバードウォッチングに執心しており、実質的にはその妻ヘレンが経営を仕切っていて、残るアンセルム、キャロラインの弟妹は遊び人みたいな感じで、工場を売却することで金を得たいと考えていますが、大株主の母親と長男がそれを拒んでいるという状況です。

 バーナビーは長男の妻ヘレンに事情聴取しようとして逆にレストランを指定され、そこでいい雰囲気で話していると、スコットもキャロラインを伴って同じレストランへやってきて"Wデート"みたいな感じになりますが、スコットの方はキャロラインから事件に関する事実を聞き出そうとして、彼女から"実利主義者"呼ばわりされて決裂(キャロラインは「実利主義の家族から自由になろうとする女の話」を小説に書こうとしていて、その話をスコットに聴いて欲しかったみたい)、一方のバーナビーは"いい雰囲気"でヘレンと別れ、外で待っていたスコットに、「偏見を持ってはいけませんよ」と負け惜しみ的に言われ、やや憮然とするのが可笑しいです。

斜陽の喧騒5.jpg 一族の中でも最も意外な線が犯人だったというのはこのシリーズらしいですが、夫が妻を庇って全ての罪を被ろうとしていたのに、妻の方は夫が所有し大事にしている森を売って(そっか、自分の森だったのか)経営を立て直そうとしていて、その齟齬が哀しいなあ。こうなると、純粋な人ではあるが、社長なのにあまりにも経営から逃げ続けてきた夫も問題ありでしょう。

 バナービーが事件の進捗を家族に話すのはいつものことですが、容疑者の一人と食事したことを妻ジョイスに話す際に、相手は美人だったとかそんなことまで話しちゃったのかなあ。最後は、自分が捜査に偏見を持っていないことをスコットの前で実証してみせたけれど、ジョイスはずっと不機嫌だったなあ。

 最後、母親が認知症になってしまうのも哀しいけれど、会社を売りたがっていたはずのアンセルムらが、働くことを覚えなきゃなんてことを言い出したということは、プラマー社の存続を示唆しているのでしょうか(その場合、森を売るんだろうなあ)。どちらにしても、バーナビーが、昔の好きだった味とは違ってしまったプラマー社のピリ辛ソースはもう要らないと言っているは、事件の後味の悪さと重なっているように思いました。確かに後味は良くないけれど、そこそこに巧いエピソードではあると言えるかも。

斜陽の喧騒 3.jpg「バーナビー警部(第42話)/斜陽の喧騒」●原題:MIDSOMER MURDERS:SAUCE FOR THE GOOSE●制作年:2005年●制作国:イギリス●本国上映:2005/04/03●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ジェームズ・フリート/ジェラルディン・アレクサンダー●日本放映:2010/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)
80 High St, Amersham, Bucks, UK - Midsomer Murders, Sauce For The Goose

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「千里眼」(超能力)を肯定的に捉えているのが興味深い。後味も悪くない。

SECOND SIGHT dvd1.jpgSECOND SIGHT dvd2.jpg  千里眼の系譜 01.jpg
"Midsomer Murders" Second Sight (千里眼の系譜)「Midsomer Murders Set 10 [DVD] [Import]」(Second Sight/Hidden Depths/Sauce for the Goose/Midsomer Rhapsody)

 ある日、ミッドサマー・ミアのパブを追い出された若い男ジョン・ランサムは男達と争っている中、死亡した。パブの店主ジミー・カーヴィは、「ジョンが暴れ出し、押さえつけたところ死亡した」と説明するが、彼の頭には火傷のような跡がいくつも残っていた―。

Second Sight 3.jpg 息子ジョンが亡くなっても、科学者一家ランサム家の父親グレゴリーはあまり悲しんでいないところから、バーナビーが一家の家系に疑問を抱き始めるのは比較的分かり易い展開でした。科学者一家と対立する「千里眼」一家カーヴィ家(千里眼って遺伝するのか)のジミーの奥さんエマは、赤ん坊の千里眼に怯えている感じで、その赤ちゃんと奥さんを牧師が無理矢理赤ちゃんに洗礼を受けさせるために連れ去ります。

千里眼の系譜 03.jpg 超能力ブームみたいなものがずっと続いている村というのも変わっているいるけれど、村人の中で超能力者を自認するのは胡散臭そうな人ばかり。そうした風潮を改め、村人を教化するという牧師の意気込みは一見真っ当なように見えましたが、な~んだ、自分の布教成績を上げて栄転を果たしたい(これ以上の僻地(?)へ飛ばされたくない)ということだったのかあ。そもそも、エマへの接し方が最初から怪しかった...(赤ん坊が洗礼を受ければ千里眼の呪縛から解き放たれると強引に説得したわけか)。

千里眼の系譜 02.jpg 村の超能力ブームの背景には、マル(カーヴィ家の父親)が昔、ブレーキがかかってない状態で坂の上に停められた無人トラックが暴走して小学校に突っ込むのを予知して、大勢の生徒達を救ったという出来事があったためでした。そのマルは、今は世捨て人のような生活を送っています。

 実は亡くなったジョンはマルの息子で、実際に予知能力があり(隔世遺伝ではなかったわけか)、牧師の異動を予知して「アンタは左遷されるよ」と本人に告げてしまったということだったのかと。マルが言うように、超能力は持っていても矢鱈と使うもんじゃないね。科学者一家の息子マックスなどは、異父弟ジョンの超能力を研究していたというより、それを使って競馬で儲けようとしていたみたいで、まさに論外です。

 ずっと千里眼とは縁を切ったような生活を送っていたマルが、最後にジミーや似非超能力者たちの目の前で、裏返しにされたトランプを次々当てるなどして超能力の実力を見せつける場面は圧巻で(マル自身の哲学には反するのかもしれないけれど、本人も意外とジミーとの親子対決を楽しんでいるみたい?)、それまでジミーの中途半端な千里眼しか見ていなくて超能力に懐疑的だったバーナビーも、マルこそは"本物"の千里眼であることを認めざるを得ないことになります。犯人と赤ちゃんの居所まで当ててしまって、バーナビーも後はそこへ駆けつけるばかりという、ちょっといつもとは違った展開でした。

The cottage used as  Mal Kirby's house in 'Second Sight'.jpg マルが、事件解決後、旅立つカーリーを心配そうに見送るバーナビー夫妻に対して「彼女は大丈夫」と言ったかと思うといつの間にか消えてしまったのはカッコ良過ぎ。でも、マルが大丈夫といったからにはカーリー大丈夫なのでしょう。前エピソード(「第39話/闇に下る鉄槌」)の、子供が犯人で、しかも、頭の弱い叔父を実行犯として操っていた...といった話などと比べて、後味は悪くありませんでした(と言うか、こっちの方が断然いい)。

The cottage used as Mal Kirby's house in 'Second Sight'.

 大方の推理ドラマで超能力者が出てくるとそれは大概ニセモノなのに対し、このエピソードでは「千里眼」(超能力)の存在を肯定的に捉えているのが興味深いです(脚本のトニー・エッチェルズはこのシリーズ初起用)。結局、マルはどこまで見えていたのか、予知に不確実性は伴うのか(マルの自身が教会の入り口で最期を迎えるという予知は一応外れたことになる)といったことを後で考えてみると、案外と面白いエピソードだったように思います。

Emma & Jimmy Kirby's house in 'Second Sight'.jpg「バーナビー警部(第40話)/千里眼の系譜」●原題:MIDSOMER MURDERS:SECOND SIGHT●制作年:2005年●制作国:イギリス●本国上映:2005/01/23●監督:リチャード・ホルトハウス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:トニー・エッチェルズ●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/オーウェン・ティール●日本放映:2010/03●放映局:AXNミステリー(評価:★★★★)

Emma & Jimmy Kirby's house in 'Second Sight'.

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