2019年2月 Archives

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出世・上司・部下・転職・副業・独立―切り口は多岐にわたるがインパクトはやや弱い。

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人生100年時代の「出世」のカラクリ (日経プレミアシリーズ)』['14年] 『出世する人は人事評価を気にしないリ (日経プレミアシリーズ)』['18年]

 人事コンサルタントによる本書は、人生100年時代と言われる今、日本人の働き方も、卒業→就職→引退という「3ステップ型」から、働きながらも、転職・副業・学び直し・趣味といったさまざまな選択肢を持てる「マルチステージ型」へと大きく変わろうとしているとし、会社の言う通り働くだけでは将来が危ないこの時代に、どのように自らの人材価値を高めていけばいいのか、「働き方」と「出世」のヒントを示した本であるとのことです。

 第1章「『会社人間』はキケンですか?」では、会社のビジョンやミッションに深く共感し、社内で人脈を作り、自社のビジネスやサービスに対すると知見を深めていく人たちを「企業人材」とし、一方で、自分自身の専門性を軸にして転職を繰り返し、よりレベルの高い仕事をするようになる人たちを「マーケット人材」としています(企業人材で、マーケット人材でもあるというハイブリッド型もあるとしている)。その上で、「できそうなのにできない人」と「本当にできる人」との違いは何か、「組織にいらないおじさん」はどうやって生まれるのかを考察してみます。

 第2章「会社は教えてくれない『出世』のこれから」では、管理職になることだけが「出世」ではないとしています。また、社内で顔が広く、業務を熟知した人が出世できる時代は終わりつつあり、今求められる人間関係や経験などの人的資本は、かけた時間によって得られるものではなくなっているとしています。

 第3章「『周回遅れ」人材にならないために今できること」では、デキない上司についた場合にどうしのぐかなど、上司・部下・自分との付き合い方を指南し、できる人ほどストレスとうまく付き合い、それを乗り切っているとしています。また、時代に合わせた実力を得るにはどうすればよいか、そのために必要な「論理力・説明力・決断力」という3つのスキルについて解説しています。

 第4章「転職・副業・独立......選択肢とどう向き合うか」では、転職・副業・独立といったものとそれぞれどう向き合うべきか、副業は本当に検討すべきか、資格取得は大事なのか、独立という選択肢は有効か、といったことを考察しています。

 第5章「経営者視点でさらなる高みを目指す」では、経営者は資本の論理だけでは企業を長く存続させることはできず、経営には志というものが必要であり、会社で働く人も、同じように、自らの志を自身に問うてみることが必要であるとしています。その上で、会社とは「稼ぐ場」ではなく「稼がせる仕組みの場」であって、「稼がせる」考え方を身につけることができれば、社内での出世も、独立や起業も難しくなくなるとしています(そのための学問がHRM(人材マネジメント)であるとしている)。

 著者は、前著『世する人は人事評価を気にしない』('14年/日経プレミアシリーズ)でもそうでしたが(前著の趣旨は、社内外に関わらずプロフェッショナルを目指せということだっったのではないか)、「出世」という言葉を社内での昇進のことだけではなく、起業して成功したり、転職して新たなキャリアやさらに高いポジションを得ることも含めて指すものとして用いています。

 出世・上司・部下・転職・副業・独立・資本・経営・人事評価と切り口は多岐にわたり、働く人にとっても啓発的な内容かと思いますが、人事パーソンが読んでも気づきを促される箇所はあったように思われます。ただし、全体としては、世間で多く行われているキャリア・セミナーを聴いているような感じで、インパクトはやや弱かった気がします(「人材マネジメント・人事本」というよりは「一般ビジネス書」)。

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「日本型フォロワーシップ」の類型を提唱。「日本型」研究の嚆矢となるか。

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次世代型組織へのフォロワーシップ論:リーダーシップ主義からの脱却

 本書は、戦略的人的資源管理論や組織行動論を専門とする著者が、リーダーと比べてこれまでネガティブなレッテルが貼られ続けてきたフォロワーというものに着眼しています。フォロワーが自律的貢献の主体者となり得ることを明らかにし、フォロワーおよびフォロワーシップの概念を改めて定義するとともに、日本的なフォロワーシップとはどのようなものかを探求しています。

 全7章の構成で、第1章では、人事労務管理の歴史を振り返り、今日、日本をはじめとする先進国では、フォロワーたる労働者の地位が向上してきているとしています。一方で、組織においてリーダーは疲弊し、リーダーを目指す若手も減少してきているため、リーダー偏重の組織運営は限界にきており、今こそ、フォロワーに注目し、真摯なフォロワーシップ論を展開すべきであるとしています。

 第2章では、フォロワーとは誰のことなのか、フォロワーは何に従い、また、なぜ従うのかをアンケート調査などを基に考察しています。さらには、社会の見方が歴史的にどのように変化を遂げてきたにかについても検討しています。

 第3章では、フォロワーシップとは何かということを、バーナード、サイモンなどの古典的な研究を踏まえて考察し、さらに、現代のフォロワーシップ論について、役割理論アプローチと構造主義アプローチの観点から、その主要な研究を紹介しています。

 第4章では、日本におけるフォロワーシップについて、海外の研究者らの「忠臣蔵」や「葉隠」を取り上げた研究を紹介し、日本的フォロワーシップと日本人労働者特有の忠誠心について考察、その心理的メカニズムとしての"観我"と"従我"を想定した「観従二我論」という著者なりの理論を提唱しています。

 第5章では、これまでの議論を踏まえて、「受動的忠実型F」「能動的忠実型F」「統合(プロアクティブ)型F」という、わが国における三つのフォロワー・タイプのモデルを抽出し、調査の結果から、統合型のプロアクティブ性が、モチベーションおよびメンタルヘルスにポジティブな影響力を有するとしています。

 第6章では、日本人に最も多いと考えられる能動的忠実型フォロワーに注目し、その特徴ともいえる、メンタルヘルスに対する好ましくないインパクトについて考察しています。

 第7章では、これまでの議論を振り返りながら、日本人特有の心理構造や組織との関係性を検討し、労働者の人格を(例えば"組織人格""家庭人格""趣味人格"といった)多層的な自然人として捉えることを提唱、さらにそこから、フォロワーシップ・マネジメントを日本的HRMに応用すると、採用や配属、異動や人材開発などはどうなるか、また、フォロワーシップ・マネジメントがリーダーや管理者を置かないことを理想とするならば、進化型組織とはどのようなものになるかを展望しています。

 役割理論アプローチのところで紹介されている、ケリーの5つのフォロワ・ータイプ(「模範的」「孤立型」「消極的」「順応型」「実務型」)や、チャレフの4つのフォロワー・タイプ(パートナー・個人主義者・実行者・従属者)などはよく知られているものでもあります。一方で、「忠臣蔵」や「葉隠」を、海外のフォロワーシップ研究者が研究対象としていることは、本書で初めて知りました。

 著者は、学部生の時は臨床心理学が専攻であったようです。「おのずから」の我を「従う我(従我)」、「自ら」の我を「観る我(観我)」とする「観従二我論」は、哲学的な概念との印象も受けますが(実際、本書には西田幾多郎なども登場する)、読んでいくうちに、ある種の日本人論に毛戸なっているように思いました。

 本書の意義は、日本でこれまでほとんど議論されてこなかったフォロワーおよびフォロワーシップについて取り上げ、日本人の精神に適合したマネジメントを探っていることにあるかと思います。その際に、観我と従我という心理的メカニズムをもとに日本型のフォロワー・タイプの類型を提唱している点が特徴的であると言えます。

 思えば、リーダーシップ理論もこれまで"輸入モノ"ばかりだったような気がしなくもないです。今後、こうした「日本型フォロワーシップ」の研究はもっと盛んになっていいのではないかと思われ、その嚆矢であろうとする意気込みが感じられる本でした。

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リーダーがチームの安全基地(セキュア・ベース)のような存在となることを提唱。

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セキュアベース・リーダーシップ ―〈思いやり〉と〈挑戦〉で限界を超えさせる

 本書は、リーダーがチームの安全基地(セキュア・ベース)のような存在となることで、メンバーの才能、意欲、創造力、エネルギーを解き放つ、いう考え方に基づいたリーダーシップ論を提唱したものです。セキュアベース・リーダーとは単に優しいリーダーではなく、部下の安全基地となると同時に各自の力を最大限に発揮してはじめて達成できるような高い目標を与えることで、チームのパフォーマンスを上げるリーダーのことを指すとしています。

 第Ⅰ部では、第1章で、セキュアベースとは安全と安心感を提供し、加えて、冒険やリスクをとることや挑戦への意欲をもたらすものであるとし、第2章で、セキュアベース・リーダーの9つの特性を挙げています。それらは、① 冷静でいる、②人として受け入れる、③可能性を見通す、④傾聴し、質問する、⑤力強いメッセージを発信する、⑥プラス面にフォーカスする、⑦リスクを取るように促す、⑧内発的動機で動かす、⑨いつでも話せることを示す、の9つであり、これらの特性は後天的に習得することができるとしたうえで、第1の特性(①冷静でいる)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。

 第Ⅱ部では、第3章で、人と人の「絆」こそがセキュアベース・リーダーシップの中心であるとして、信頼を構築するために役立つ2つの特性(②人として受け入れる、③可能性を見通す)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。第4章では、社会的感情としての「悲しみ」に注目して、悲しみを受け止め、組織に変化を起こすために役立つ2つの特性(④傾聴し、質問する、⑤力強いメッセージを発信する)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。

 第5章では、「心の目」をコントロールすることが、自分自身のコントロールには欠かせないとして、心の目で見るために役立つ2つの特性(⑥プラス面にフォーカスする、⑦リスクを取るように促す)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。第6章では、「勝利を目指す」リーダーシップ・アプローチの特性を説き、「勝利を目指す」ために役立つ2つの特性(⑧内発的動機で動かす、⑨いつでも話せることを示す)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。

 第Ⅲ部では、第7章で、自分のセキュアベースを強化するには自己認識が重要であることを説き、第8章では、自身が他者のセキュアベースになるには、9つの特性のうち、何が自分の強みかを明確にすることが必要であるとしています。第9章では、組織が人間関係と結果の両方を大切にするとき、その組織は従業員にとってのセキュアベースとなり得るとしています。最終第10章では、組織の人間性を高める取り組みは、リーダー自身が自分の人間性に注意を向け、他者に対して自分自身をオープンにすることから始まるとしています。

 本書によれば、成功したリーダーと失敗したリーダーの大きな違いは、人生にセキュアベース(安全基地)が存在したかどうかという点であり、安全基地を持つことで、不安や恐れが減少し、信じること、リスクをとることが増えていくとのことです。この意欲とエネルギーによって、人は居心地のよい領域から踏み出して、自身のまだ開拓されていない可能性を現実のものにしようと努力するし、人生においてセキュアベースの力を経験したならば、それを「モデル」として他の人のセキュアベースとなることができるとしています。

 著者の専門は組織心理学であるとのことですが、本書の趣旨を一言で言えば、帯にあるように「人は、安全基地があればより遠くまで飛んでいける」ということなのでしょう。あるいは、サブタイトルにある「〈思いやり〉と〈挑戦〉で限界を超えさせる」ということになるのかもしれません。

たいへん啓発的な内容ですが、まったく新しいリーダーシップ論と言うよりは、「PM理論」や「EQリーダーシップ」など既存のリーダーシップ論と重なる部分もあったように思います。個人的には、リーダーが部下にとっての安全基地になるためには、まず自分自身のセキュアベースを持つことが重要であるという考えに納得させられました。

《読書MEMO》
●目次
第Ⅰ部
第1章 安全とリスクのパラドックス
第2章 セキュアベース・リーダーの9つの特性
第Ⅱ部
第3章 信用構築サイクル
第4章 社会的感情としての「悲しみ」
第5章 「心の目」で見る練習
第6章 「勝利を目指す」マインドセット
第Ⅱ部
第7章 自分のセキュアベースを強化する
第8章 他者のセキュアベースになる
第9章 「安全基地」としての組織
第10章 人間の顔をした組織をつくる

●セキュアベース・リーダーの9つの特性(第2章)
① 冷静でいる
②人として受け入れる
③可能性を見通す
④傾聴し、質問する
⑤力強いメッセージを発信する
⑥プラス面にフォーカスする
⑦リスクを取るように促す
⑧内発的動機で動かす
⑨いつでも話せることを示す

●特性①(冷静でいる)を伸ばすためのヒント(第2章)
1.気分を変える
2.何をどのように言うか注意する
3.マインドフルネスの練習をする
●特性②(人として受け入れる)を伸ばすためのヒント(第3章)
1.自分を律する
2.社員としての役割を超えて、その人の個性を知る
3.失敗を学びに変える
4.問題とその人自身を切り離す
●特性③(可能性を見通す)を伸ばすためのヒント(第3章)
1.チームや組織の全員の可能性についてのビジョンを作成する
2.高い期待を持つ
3.自分を超える可能性を持っている人を採用する
●特性④(傾聴し、質問する)を伸ばすためのヒント(第4章)
1.積極的に話を聞く練習をする
2.自由回答式の質問をする
3.沈黙の間を使う
4.話をする環境にも気を遣う
●特性⑤(力強いメッセージを発信する)を伸ばすためのヒント(第4章)
1.言葉だけでなく、非言語のメッセージにも気を遣う
2.その一瞬を見逃さない
3.力強いメッセージをはっきりと、簡潔に、ゆっくり伝える
4.力強いメッセージを書く
5.力強いメッセージをノートに書きためておく
●特性⑥(プラス面にフォーカスする)を伸ばすためのヒント(第5章)
1.自分自身の心の目をチェックする
2.自分の脳をだます
3.前向きになるように影響を及ぼしたい人物を3人選ぶ
4.他者をビジョンに巻き込む
●特性⑦(自分のセキュアベースを強化する)を伸ばすためのヒント(第5章)
1.リスクをとるロールモデルとなる
2.失敗に公正かつ明確に対応する
3.リスクをとるチャンスを一貫して提供しているかを意識しよう
4.自分の状態に注意する
●特性⑧(内発的動機で動かす)を伸ばすためのヒント(第6章)
1.どのように部下を動機づけているかを振り返る
2.一人の人間として部下を理解する
3.「所属」と「達成」という2つの欲求を満たす
●特性⑨(いつでも話せることを示す)を伸ばすためのヒント(第6章)
1.フォロワーと過ごす時間の長さではなく、その質を大切にする
2.歩き回って指揮を執る
3.短いやりとりを行う
4.本当に近づいていいことを示す

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主要な著者(経営思想家)の代表的な著作(主張)のエッセンスを抽出。

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ハーバード・ビジネス・レビュー リーダーシップ論文ベスト10 リーダーシップの教科書

 リーダーシップは、どうすれば、習得できるか。本書は、マネジメント誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」に発表された、リーダーシップ論の権威とされる経営思想家などの論文から10選を、同誌編集部が選び抜いたものです。

John Kotter2.jpg 第1章では、「リーダーシップとマネジメントの違い」についてジョン・P・コッターが、マネジメントは複雑な状況に対処するために必要であり、リーダーシップは変化に対応するために必要なものであるとしています。第ピーター・F・ドラッカー031.jpg2章「プロフェッショナルマネジャーの行動原理」ではピーター・ドラッガーが、有能な経営者は、「何をしなければならないか」「この企業にとって正しいことは何か」を自問自答し、アクションプランをきちんと策定し、意思決定やコミュニケーションの責任をまっとうし、問題ではなくチャンスに焦点を当て、会議を生産的に進行し、「私」ではなく「我々」として発言するとしています。

ロナルド・A・ハイフェッツ2.jpg 第3章「リーダーシップの新しい使命」ではロナルド・A・ハイフェッツらが、人々を適応へとリードするはロブ・ゴーフィー/ガレス・ジョーンズ2.jpgための6原則として、リーダーは、「バルコニー」に上がり、適応への挑戦を見極め、人々の苦痛や苦悩を調整し、自身の注意力を磨き続け、仕事への責任を現場に戻し、組織の中から聞こえてくるリーダーシップの産声に耳を傾けるとしています。第4章「共感のリーダーシップ」ではロバート・ゴーフィーとガレス・ジョーンズが、部下をやる気にさせるリーダーの資質として、「みずからの弱点を認める」「直観を信じる」「タフ・エンパシーを実践する」「他人との違いを隠さない」の4つを挙げています。

ウォーレン・ベニス2.jpg 第5章「挫折がリーダーシップの糧となる」ではウォレン・G・ベニスらが、リーダーらが真のリーダーになるまでに、その人ジム・コリンズ2.jpgたちが「クルーシブル」(厳しい試練)をいかに成長の機会に変えてきたかを説いています。第6章「レベル5のリーダーシップ」ではジム・コリンズが、「まあまあ」の企業を超一流の企業に変えたリーダーたちには、有能な個人、貢献度の高いチームメンバー、有能なマネジャー、効果的なリーダーという4段階があり、さらにその上のレベル5のリーダーシップとして、スタッフを称賛し自らを語らない謙虚さと、プロフェッショナルとしての意思の強さを併せ持っているとしています。

ビル・ジョージ2.jpg 第7章「変革リーダーへの進化」ではデイビッド・ルークらが、リーダーシップを左右する行動原理の7種類の類型を示し、第8章「自分らしいリーダーシップ」ではビル・ジョージらが、最近の潮流である「オーセンティック・リーダーシップ」について論じています。

ダニエル・ゴールマン2.jpg 第9章「完全なるリーダーはいらない」ではマサチューセッツ工科大学の教授陣が、独自の調査から「分散型リーダーシップ」という新たなモデルを提唱するとともに、その分散型リーダーシップは、「状況認識」「人間関係の構築」「ビジョンの策定」「創意工夫」の4つの能力から成るとしています。第10章「心の知能指数『EQ』トレーニング法」ではダニエル・コールマンが、自身が提唱した「EQ」を構成する、自己認識、自己統制、モチベーション、共感、ソーシャルスキルの4つの因子について解説しています。

 以上のように、本書一冊が丸ごとリーダーシップ育成のための指南書となっいますが、その中に論じる人の数だけリーダーシップ論があり、それらを無理やり繋げて読む必要もないと思います。むしろ、"リーダーシップ論の潮流を読む"という感じで読めばいいのではないでしょうか。

 また、本書を読むだけでも啓発される要素はあるか思いますが、同時に、主要な著者(経営思想家)の代表的な著作(主張)のエッセンスを抽出したものにもなっているため、関心を持った論者がいれば、その著作(日本でもベストセラーやロングセラーになっているものも少なからずある)に触れてみるのもいいのではないか思います。

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ただ試験に受かるためでなく、自らの人事的な知識・センスを磨く上でもお薦め。

『ビジネス・キャリア検定試験過去問題集』.JPGビジネス・キャリア®検定試験 過去問題集.jpg
人事・人材開発 2・3級 (ビジネス・キャリア®検定試験 過去問題集(解説付き))

 「ビジネス・キャリア検定試験」は、事務系職種のビジネス・パーソンを対象に平成6年(1994年)にスタートした、中央職業能力開発協会(JAVADA)が実施する公的資格試験で、事務系職業の労働者に求められる能力の高度化に対処するために、段階的・計画的に自らの職業能力の習得を支援し、キャリアアップのための職業能力の客観的な証明を行うことを目的としています。

 分かりやすく言えば、同じくJAVADAが実施する「技能検定」のホワイトカラー版といったところでしょうか。検定分野は「人事・人材開発・労務管理」「企業法務・総務」など8分野に区分され、その中に「人事・人材開発」「労務管理」「企業法務」「総務」など18部門(2級)があり、2級と3級の試験がそれぞれ年2回実施されています。

ビジネス・キャリア®検定試験 過去問2.JPG 本書は「人事・人材開発」部門の2級(部長補佐・課長級か)・3級(課長補佐・係長級か)の過去問題集です。一部、労働法関連の問題も含まれていますが、当然のことながら、労働法分野も「人事」の出題範囲内です。こうした過去問題集の刊行は本書が初めてですが、近年、「人事・人材開発」部門の出題傾向として、2級・3級とも新規問題よりも過去問題をそのまま乃至は一部改変して出題するケースの方が出題数に占めるウェイトとして高くなっていますので、Amazon.comのレヴューに「3度以上読めば、40問のうち3問は、読まない人より上乗せできると思います」とありましたが、あながち大袈裟とは言えないと思います。

 JAVADAはこれまでの過去問をウェブサイトで公表し、新たに実施された試験もこれまでと同じように試験後それほど日を置かずに公表していますが、正解の解答のみで解説が無かったので、今一つ、過去問を検証する動機づけが弱かったように思います。この過去問集を読むと(一度自分で解いてみるのが理想だが)、どうしてそのような答えになるのか納得することが出来、作問者の意図を嗅ぎ取るセンスのようなものが身につくのではないかと思います。

『ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 』.JPG そのうえで、(本書にすべての過去問が出ているわけではないので)その他の過去問をウェブサイトでチェックすれば、試験対策効果としては大きいと思います。もちろん、2級・3級についてはそれぞれ公式テキストがあるので、学習効果全体を向上させるためにはテキストの読み込みも欠かせないと思いますが、ほとんどの公的資格試験に当て嵌まることですが、より確実に合格ライン(当検定の場合は6割以上の正答率)を確保しようとするならば、過去問をやらない手はないと思われます。

 このように、活用すればしただけ試験で有利になるかと思いますが、ただ試験に合格するためというだけでなく、自らの人事的な知識・センスをチェックし、それをより一層磨きたいと思っている人にもお薦めです。

ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 人事・人材開発2・3級

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AIを巡って今起きていることを知るにはいい。将来の予測は難しい?

『AI失業」前夜』.JPG「AI失業」前夜.jpg
「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること (PHPビジネス新書)』['18年]

「月刊 人事マネジメント」2018年5月号
月刊 人事マネジメント  2018年5号.JPG 人事マネジメント系の雑誌でも、「AI人材の育て方」といった特集が組まれたりする昨今ですが、本書は、「AIが引き起こす労働環境の大変化はすでに始まっている。特にホワイトカラーは今後5年で残酷な変化に襲われることになる」と言います。前半部分で、現在の労働市場にAI(人工知能)が起こしている諸問題の構造を解明し、後半部分では、この後、どのようなことが我々の社会に起きるのかを論じています。後半部分は、著者の前著『仕事消滅―AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』('17年/講談社+α新書)で現在から2045年の未来までカバーしたテーマの改訂版で、今回は20年先ではなく、5年から10年先の未来に絞って予測したものであるとのことです。

 AIの普及による「仕事の消滅」の問題についても最近ビジネス誌などでもよく特集されるようになってきましたが、こちらの方はいずれも数ページばかりで、内容も"八卦見"みたいな印象で今一つのものが多かったのが、こうしてまとめて1冊の本として読むと、おおまかなトレンドが掴めて(掴めた気分になって?)、その点では良かったです。

 今、AIを巡って起きていることを知るにはいい本だと思います。ただし、将来何が起きるかはいろいろ予測できるにしても、それらがどのような順番でどの程度起きるのかということを厳密に予測するのは難しいようで、結局、ビジネス誌の記事をまとめ読みしたような印象になってしまったのも否めません。

 本書によれば、日本が開発したスーパーコンピュータ「京」は、開発時は世界最速で、また、世界初の「人間の脳の情報処理速度を超える」コンピュータでしたが、今は世界で10番目までランクが落ちているそうです。ただし、逆に言えば、「人間の脳を超える」コンピュータはまだ世界に10台しかないわけで、何にそれが使われているかと言うと、弁護士や行政書士の仕事を代替するにはマーケットが小さすぎて意味がなく、投資効率の大きい市場にそれは投入されていて、その市場とは、セルフドライビングカー(自動運転車)市場とフィンテックだそうです(次に進行しているのが医療のようだ)。

 それでも、いつか今のスーパーコンピュータと同性能のものが10万円程度で買えるようになれば、多くの分野でAIは活用され、遅かれ早かれ、人類の仕事の量は半分以下になるとのことです。ただし、本書の後半の方に出てきますが、人間の「手」の機能をAI化するのはかなり難しいということと、人間の脳を完全にシュミレートするようなニューロコンピュータの開発が5年後には見込まれるものの、実際それが、人間と同等の仕事を100%こなす汎用コンピュータとなるのは2035年以降だと言われているそうです。

 急速にコンピュータによる自動化が進んでいる様々な産業分野を紹介しつつ、一方で、このようにまだまだの部分もあって、読む側としては安心したり焦ったり、また安心したりですが、やはり今の若い人は、そうしたAI社会を見据えて自分のキャリアを構築した方がいいようです。その点についても著者は助言をしていて、ジャンル的には、①AIを使った事業開発、 ②コミュニケーション力を生かした仕事 、③メカトロ系の頭と身体を同時に使う仕事の3つが有望であるとのことです。

 著者は、仕事が消滅してもAI失業を起こさない策として、仕事が減ってGDPが減少すると予想される170兆円分と同じ額を、国がベーシックインカムとして国民に提供することを提案していて、そのためにAIと人間を「同一労働、同一賃金」にすること、つまり、AIが労働者の賃金を奪った分だけ、国は企業から徴収し、それを国民に提供するベーシックインカムの財源に充てるとよいとしています。本書で最も"提案的"な部分ですが、どれくらい実現可能性があるのか、個人的にはやや疑問でした。

 全体としてはやはり、トレンドウォッチング的な本だったでしょう。AIを巡って今起きていることを概観するにはいいですが、将来の予測となると(ざっくり言って大規模な"ワーク・シフト"が起きるのは間違いないが)時期や分野など細かい点はかなり不確定要素が多いように思いました。まあ、未来を知るには今何が起きているかを知らなければならないわけですが、それでも未来予測って難しい。むしろ、何が起きても大丈夫なように備えよ、という啓発書的な本であったように思います。

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