【3467】 ○ 高崎 順子 『休暇のマネジメント―28連休を実現するための仕組みと働き方』 (2023/05 KADOKAWA) ★★★★

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バカンス大国フランスも、最初は法改正だった。「休む」ため働くフランス人。

『休暇のマネジメント』2.jpg『休暇のマネジメント 』.jpg  フランスはどう少子化を克服したか.jpg
休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』['23年] 『フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書) 』['16年]

 フランスはかつて日本と同じように「休めない国」だった―。そこからどのように、現在のバカンス王国に変容を遂げたのか? パリ郊外在住で、『フランスはどう少子化を克服したか』('16年/新潮新書)で現地の実情と生の声をレポートした著者が、今度は、日本がもっと「休める国」になるために参考になる点がフランスにあるかを探った本です。

 第1章では。フランスも元々は「休みヘタに国だ」ったのが、どのようにして今のように「休むために働く国」に変わったのか、その変遷に3つの区切りがあったとしています。それは、①「バカンスとは何か」が定義され、制度基盤ができた1936年、②制度・印綬らが充実し、大規模に定着した戦後復興期、③不況の経済対策として使われた80年代、の3つであると。

 何となくフランス人が長期のバカンスを取るのは「国民性」のせいだと思い込みがちですが、1936年に「勤続1年以上の労働者に原則連続取得で15日間」という有給休暇付与の法律が出来たのが最初だったのだなあと。そこから普及までにまた時間がかかり、その中で、戦後復興や不況対策など、それを推し進める要因があったことを知りました。それにしても「休暇」とは何かを国が(法的意味ではなく社会的意味で)定義するといのは、やはり日本と異なるなあ。

 第2章では、では実際年5週休むと言われるサラリーマンは、どのような働き方をしているのかを見ています。すると、管理職でも非管理職でも最低ラインが「週6日×5週間」となっており、さらには自営業も年に5週間休暇を取るという、バカンスが「人としての尊厳」として普及している社会があるとともに、「雇い主に取得させる義務がある」というのが特徴であるといしています。ここでは、それを実現するためのさまざまな仕組みや取り組みが紹介されています。

 第3章では、長期休暇制度を動かしている、全体の2~3割の人々(経営者・管理者)はどう考えているかを追って、休暇をマネジメントするポイントを探っています。結論的には、「しっかり休ませ、効率よく働いてもらう」というのが、フランスでは人事管理の常識となっているとのことです。

 第4章では、年休5週間が社会に与える影響を見ていきます。それによれば、バカンスの基幹産業はツーリズムであり、フランスはアメリカに次ぐ世界第2位の観光収入のある観光大国だが、観光消費の7割はフランス国内客が支えているとのことです。夏のバカンスの予算目安は「月収1ヵ月」で、大事なのは、非日常の場所で心のままに、気楽に過ごすこと。「人生の目的は幸せ、この場所の目的も幸せ。幸せになるのは今」というクラブメッド社の創業理念が、それを物語っています。

 最後に第5章で、日本社会でもこうした長期休暇の働き方・休み方は可能かを考察していますが、著者は、日本でもすでに10日から2週間程度の長期休暇制度を導入している企業はあり、決して出来ないことではなく、制度と意識を少しずつ変えて、より休みやすい社会にしていくべきだとしています。

 単にフランス在住の人が、周囲の人の働き方・休み方をリポートしているといった表層的なののでなく、歴史から洗い出して、統計的裏付けも持たせてしっかり論じられているように思いました。ただ、まだ、フランスと日本は彼大きな差があうように思いました。

 日本人は、休み明けからまた元気に「仕事」をするために休むのに対し、フランス人は「休む」ための手段として仕事をしているのであって、「休む」ことが人生の自己表現みたいにもなっているのだなあ。

 そう言えば、ジャック・ロジェ監督の「夏休み三部作」じゃないけれど、フランス映画で「夏休み」をモチーフにしたものは多いね。

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