【918】 ○ クリフォード・ストール (池 央耿:訳) 『カッコウはコンピュータに卵を産む (上・下)』 (1991/09 草思社) ★★★★ (△ ジョン・バダム 「ウォー・ゲーム」 (83年/米) (1983/12 MGM/UA) ★★★)

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ノンフィクションをスパイ小説タッチで書く手腕に感心。当時より、今の方が身近な問題に。

カッコウはコンピュータに卵を産む 上.bmp カッコウはコンピュータに卵を産む 下.bmp   WarGames.jpg "Wargames" [1983]
カッコウはコンピュータに卵を産む〈上〉』 『カッコウはコンピュータに卵を産む〈下〉

 天文学研究の傍ら、研究所のシステム管理の責を負うことになった主人公が、システムの使用料金合計が僅かに合わないことの原因の究明に当たるうちに、コンピュータにハッカーが侵入していることが判明、このハッカー、研究所のコンピュータを足場に、国防総省のネットワークを経由して各地軍事施設やCIAのコンピュータに侵入していて、どうやらドイツが発信元らしいことは判ったが、当局はまだ調査に動かない。その間にもハッカーは、米国の軍事施設やドイツ駐留米軍基地に侵入するなど世界を自在に駆け巡ってスパイ活動していて、そこで主人公は、ハッカーの正確な居場所を突き止めるために一計を案じる―と、まるで手に汗握るスパイ小説のような話ですが、本書は実際にあった国際ハッカー事件の記録であり、そのハッカー相手に奮闘した天文学者が'89年に自ら書き下ろしたものです(原題:The Cuckoo's Egg: Tracking a Spy Through the Maze of Computer Espionage)。

ウォー・ゲーム.jpg かつて、80年代前半に、「ウォー・ゲーム」('83年)という映画がありました。

映画 「ウォー・ゲーム

 パソコン少年が偶然繋がった正体不明の相手とネット上で米ソ核戦争ゲームをするのですが、実はその相手は、北米防空司令部が核攻撃を自動化したコンピュータであり、相手は仮想のソ連の攻撃を演出しているのに、少年の攻撃は、実際の作戦命令として実行されようとしていたというもの。
 ハラハラさせられる一方で展開に少しご都合主義な点もあり、映画としての出来はイマイチ、そのバックグラウンドも当時はやや荒唐無稽に思えたのですが、後にその背景モチーフは予見的なものだったとして再評価され、映画全体の評価も併せて上昇するに至りました。
 本書などは、まさに「ウォー・ゲーム」再評価の原動力の1つになったかも(セキュリティ・システムは20年前と今では全然違うだろうが、それでも、国の関係機関が運用するサイトがハッカー攻撃に遭ったりしているではないか)。

 実際にあった"電子スパイ事件"という、読者を惹きつけるソース(元ネタ)ではあるにしても、どうして小説家でもない若者がノンフィクションをこう小説のようなタッチで書けるのか、上下2巻約600ページを飽きさせずに読ませる手腕には関心させられます(翻訳もこなれている。本書は草思社の代表的ベストセラーの1つとなった)。

 ハッカーに狙われるほどのものではないにしても、フィッシングなどのネット被害は珍しいものではなくなっており、自分自身、クレジット・カードを持ち歩いてもいないのに、盗まれたのと同じような状況になっていることをカード会社から知らされた経験があり(要するに勝手に使われている)、金融機関やプロバイダから個人情報が流出することもある昨今、個人の情報リテラシーの問題だけでは片付けられない気がします。
 オークションなどのネット商取引で、色々なサイトを行き来している人は、そのサイトの作成者自身に悪意が無くとも被害に遭うことがあり、ご用心、ご用心というところでしょうか(何だか、本の出来に感心している場合ではなくなってくる)。

「ウォー・ゲーム」.jpgウォー・ゲーム ちらし.bmp「ウォー・ゲーム」●原題:WAR GAMES●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・バダム●製作総指揮:レオナード・ゴールドバーグ●製作:ハロルド・シュナイダー●脚本:ウォルター・F・パークス/ローレンス・ ラスカー●音楽:アーサー・B・ルービンスタイン ●時間:114分●出演:マシュー・ブロデリック/ダブニー・コールマン/ジョン・ウッド●日本公開:1983/12●配給:MGM/UA●最初に観た場所:テアトル新宿 (84-09-16) (評価:★★★)●併映:「大逆転」(ジョン・ランディス)

"Wargames" [1983]

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