【3478】 ○ ロジャー・コナーズ/トム・スミス/クレイグ・ヒックマン (花塚 恵:訳) 『主体的に動く―アカウンタビリティ・マネジメント 「オズの魔法使い」に学ぶ組織づくり(新装版)』 (2023/09 ディスカヴァー・トゥエンティワン) ★★★★ (○ ヴィクター・フレミング (原作:ライマン・フランク・ボーム) 「オズの魔法使」 (39年/米) (1954/12 MGM) ★★★☆)

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〈アカウンタビリティ〉を再定義。「被害者意識から脱し、主体的に動く」こと。

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主体的に動く アカウンタビリティ・マネジメント(新装版)』['23年]Roger Connors 映画「オズの魔法使」
The Oz Principle: Getting Results through Individual and Organizational Accountability』['04年]
『主体的に動く.jpg 1994年原著刊行(原題:The Oz Principle: Getting Results through Individual and Organizational Accountability)の本。本書で言う〈アカウンタビリティ〉とは「当事者意識を持って主体的に行動する力」という意味です。著者らは、アメリカで最もポピュラーな童話『オズの魔法使い』のテーマは、「登場人物たちが被害者意識から脱し、自分の持っている能力に気づく」ことであるとし、『オズ』の物語や登場人物になぞらえながら、個人と組織がアカウンタビリティを高めていく方法を解説しています。

 3部構成の第1部(第1章~第3章)では、ビジネスの世界に蔓延する被害者意識がどのような悪循環を生むかを述べ、アカウンタビリティがないと被害者意識に陥り、アカウンタビリティこそが結果を生み出すとしています。

 第1章では、優良企業と凡庸な企業を分けるのは1本のラインだとしています。そして、被害者意識から、目標が達成できないことを状況や他人のせいにする風潮がある企業を〈ライン下〉にある凡庸な企業とし、そこには、言い訳、他人への非難、混乱などが並ぶとしています。一方〈ライン上〉には、現実認識、コミットメント、問題解決、断固たる行動などが並ぶとしています。そして、〈ライン上〉に行くには、①現実を見つめる、②当事者意識を持つ、③解決策を見いだす、④行動に移す、という4つの〈アカウンタビリティのステップ〉をのぼらねばならないとしています。

 第2章では、被害者意識の悪循環から生じる言動として、①無視する/否定する、②「自分の仕事ではない」とする、③責任の押しつけ合い、④混乱、⑤言い逃れをする、⑥様子を見る、の6つを挙げ、被害者意識の悪循環に陥っていると気づけば、そこから抜け出せるとしています。

 第3章では、アカウンタビリティとは何かを改めて考察し、それは「現状を打破し、求める成果を達成するまで、自分が問題の当事者であると考え、自分の意志で主体的に行動しようとする意識」であると定義しています。また、アカウンタビリティとは「責任の共有」(ジョイント・アカウンタビリティ)でもあるとしています。

 第2部(第4章~第7章)では、自分のアカウンタビリティを伸ばすにはどうすればよいかを、先に挙げた4つのステップに沿って説明しています。第4章では、勇気を持って「現実を見つめる」ということについて、第5章では、「当事者意識を持つ」ということについて、第6章では「解決策を見いだす」ための知恵を手に入れることについて、第7章では、すべてを「行動に移す」ことについて、それぞれ解説しています。

 第3部(第8章~第10章)では、組織全体がアカウンタビリティを身につけるにはどうすればよいかを述べています。第8章では、〈ライン上のリーダーシップ〉とはどのようなものかを、第9章では、組織全体を〈ライン上〉に導くにはどうすればよいかを述べ、第10章では、今日の企業が抱えるさまざまな問題に対し、どのように対処すればよいかを説いています。

 「成功の鍵を握るのは結果に対するアカウンタビリティ」であるというのが本書の趣旨ですが、一般的には〈アカウンタビリティ〉という言葉は、過去の出来事の「説明責任」というネガティブなイメージで使われるのに対し、本書においては、それにより未来への前向きな意志を引き出すことができるという、ポジティブな用いられ方となっている点が特徴的です。

 本書の原書である"The Oz Principle"は1994年にアメリカで出版され、50万部を超えるベストセラーとなっています。日本では2009年に初版が刊行され、この度改版されたということは、それだけ長く読まれて続けているということでしょう。『オズの魔法使い』をもとに説いている読みやすさもさることながら、今日の企業組織が抱える問題に照らしても内容に普遍性があることが、その最大要因ではないかと考えます。 


 因みに、『オズの魔法使い』は、竜巻で家ごと飛ばされた主人公ドロシーと飼い犬のトトが、「エメラルドシティのオズの魔法使いなら家に帰す方法を教えてくれるかも」という"良い魔女"のアドバイスに従って旅をする途中で、勇気が欲しい臆病なライオン、ハートの欲しいブリキのきこり、脳味噌の欲しいかかしと出会い、彼らの悩みもオズの魔法使いに叶えてもらうとするものです。そして、本書にあるように、実は、自分たちが望んでいたものは自分たち自身が既に持ち合わせていたということです。自分たちの望みをかなえてくれる魔法使いなどは存在せず、自分の望みを鼎られるのは自分だけというのが"教訓"です。
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オズの魔法使い.jpgオズの魔法使い2.jpg 映画化作品「オズの魔法使」('39年)が有名です(最近のソフト化作品は「魔法使い」と"い"を送ったりしている)。ヴィクター・フレミングが監督していますが、彼は同じ年に「風と共に去りぬ」も撮っています。初めて観た時は、教訓めいたものはあまり意識しなかったように思います(笑)。ただ、「風と共に去りぬ」と同じく戦後の公開で、当時これを観た日本人は、「風と共に去りぬ」同様に、こんな映画を作っていた国と戦争してしまったのかあ、これは勝てるわけがないと思ったのではないでしょうか。

オズの魔法使い3.jpg MGMは当初、主人公ドロシーの役にシャーリー・テンプルを予定していましたが、20世紀FOXが彼女を貸さなかったため、当時無名のジュディ・ガーランドが起用されました。彼女が歌った主題歌「虹の彼方に」は、2001年に全米レコード協会等の主催で投票により選定された「20世紀の名曲」(Songs of the Century)で第1位に選ばれ、さらに2004年のAFIの「アメリカ映画主題歌ベスト100」でも第1位を獲得しています。

アメリカ映画主題歌ベスト100(AFI)ベスト10(2004年)
 #    曲      映画      年     俳優・歌手
 1."虹の彼方に" 「オズの魔法使」 1939  ジュディ・ガーランド
 2."アズ・タイム・ゴーズ・バイ" 「カサブランカ 」1942  ドーリー・ウィルソン
 3."雨に唄えば" 「雨に唄えば」 1952  ジーン・ケリー
 4."ムーン・リバー"  「ティファニーで朝食を」 1961  オードリー・ヘプバーン, アンディ・ウィリアムス
 5."ホワイト・クリスマス" 「スイング・ホテル 」1942  ビング・クロスビー
 6."ミセス・ロビンソン" 「卒業」 1967  サイモン&ガーファンクル
 7."星に願いを" 「ピノキオ」 1940  クリフ・エドワーズ
 8."追憶" 「追憶」 1973  バーブラ・ストライサンド
 9."ステイン・アライヴ" 「サタデー・ナイト・フィーバー」 1977  ビージーズ
 10."The Sound of Music" 「サウンド・オブ・ミュージック 」1965  ジュリー・アンドリュース

オズの魔法使いb.jpg「オズの魔法使」●原題:THE WIZARD OF OZ●制作年:1939年●制作国:アメリカ●監督:ヴィクター・フレミング●製作:マーヴィン・ルロイ●脚本:ノエル・ラングレー/フローレンス・ライアソン/エドガー・アラン・ウルフ●撮影:ハロルド・ロッソン●音楽:ハーバート・ストサート●原作:ライマン・フランク・ボーム「オズの魔法使い」●時間:101分●出演:ジュディ・ガーランド/レイ・ボルジャー/ジャック・ヘイリー/バート・ラー/ビリー・バーク/マーガレット・ハミルトン/フランク・モーガンイ●日本公開:1954/12●配給:MGM●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター(84-06-05)(評価:★★★☆)

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