【3479】 ○ ロン・カルッチ (弘瀬友稀:訳) 『誠実な組織―信頼と推進力で満ちた場のつくり方』 (2023/10 ディスカヴァー・トゥエンティワン) ★★★★

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組織の「誠実さ」を構成する3つの条件と4つの行動。「誠実さ」という戦略。

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誠実な組織 信頼と推進力で満ちた場のつくり方』['23年] 『To Be Honest: Lead With the Power of Truth, Justice and Purpose』['21年]Ron A. Carucci

 組織行動学の専門家である著者による本書(原題:To Be Honest: Lead With the Power of Truth, Justice and Purpose)では、15年の研究と3200件以上のインタビューから導き出された結論として、これからの組織にとって「誠実さ」こそが大切であるとしています。そして、組織にとって誠実さがなぜ大切なのか、誠実さは組織にどのような影響を与え、誠実さをビジネスの中で実践いくにはどうしたらよいのかを説いています。

 まず、組織の誠実さを構成する3つの条件として、①目的(よりよい善を為す)、②公正(正しく公平な行いをする)、③ 真実(相手を尊重しつつ、妥協せず率直に真実を伝える)の3つを挙げ、この3つが同時に働くことで誠実さは生まれ、3つのうちのどれか1つ欠けても誠実さは成り立たないとしています。

 さらに、組織に誠実さをもたらすために必要な4つの行動として、①アイデンティティにおける誠実さ(言葉と行動を一致させる)、②アカウンタビリティにおける公正(尊厳を第一に考える)、③ガバナンスにおける透明性(誠実な対話を通じて、信頼できる意思決定を行う)、④グループ間の一体感(全員をひとつの大きな物語へ導く)を挙げています。

 第1章では、誠実さとは人間の生まれつきの機能であり、人間は誠実でいることを好み、相手にも誠実さを求めるとしています。また、希望があると、組織の雰囲気は明るくなるが、その逆の場合、職場の空気は重くなり、希望は、情熱、忍耐力、信念の3つの要素が交わることで生まれるとしています。以下、第1部から第4部にかけて、組織に誠実さをもたらす4つの行動について解説しています。

 第1部では、アイデンティティにおける誠実さについて述べています。まず第2章で、言葉と行動を一致させることを説き、どれほど巧みに書かれたミッション、ビジョン、バリューであっても、言葉を掲げるだけではだめで、組織が言葉通りに行動できるかどうかが重要であるとしています。さらに第3章では、個のパーパスと組織のパーパスが結びついていることの重要性を説いています。

 第2部では、アカウンタビリティにおける公正について述べています。第4章では、アカウンタビリティ(評価)について、人々は自分が公平に評価されていないと感じると、自己保身のために自分の業績を過大に表現することがあるとし、第5章では、失敗を学びの機会として受け入れる文化がある場所では、従業員は自分の業績を正直に報告し、他者に対しても公平に接するとしています。

 第3部では、ガバナンスにおける透明性について述べています。第6章では、透明性のあるガバナンスとは、ただ意思決定のプロセスを可視化することではなく、明確さ、機敏さ、思いやりの3つが伴ってこそ、信頼ある意思決定が生まれるとしています。第7章では、活気ある声に満ちた文化を育てるにはどうすればよいか、反対意見や厳しいフィードバック、型破りなアイデアを受け入れるにはどうすればよいかを説いています、

 第4部では、グループ間の一体感について述べています。第8章では、異なる部署の相手との関係性を強化し、シームレスな組織をつくるにはどうすればよいか、第9章では、"部族意識"を排し、受け入れがたい違いを持つ相手とより深いつながりを築くにはどうすればよいか解説しています。

 著者は、誠実さは組織の能力であって、能力を伸ばすためには鍛えなければならず、誠実さとは筋肉のようなものであり、定期的に鍛えていく必要があるとしています。「誠実さ」というものを戦略として打ち出している点が目を引きます。組織のあるべき姿への方向性なども、企業事例を挙げて説明されており、日米の企業文化の違い等はありますが、共通点も多く参考になるかと思います。

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