【3433】 ○ ジム・クリフトン/ジム・ハーター (古屋博子:訳) 『職場のウェルビーイングを高める―1億人のデータが導く「しなやかなチーム」の共通項』 (2022/07 日本経済新聞出版) ★★★★

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ウェルビーイングを高める5要素。内、キャリア・ウェルビーイングが最重要であると。

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職場のウェルビーイングを高める 1億人のデータが導く「しなやかなチーム」の共通項』['22年]/『ザ・マネジャー 人の力を最大化する組織をつくる ボスからコーチへ』['22年]

 本書は、次にくるグローバル危機はメンタル・パンデミックかもしれないとの危機感のもと、「ウェルビーイング(充実度)」という切り口から、しなやかで永続する組織やチームの共通項を、長年にわたるギャラップの調査を基に導き出したものです。

 第1章では、「想像しうる最高の生活」とは何かを考察し、ギャラップの調査から、エンゲージできる「よい仕事」に就くことが、生き生きした暮らしを送る、まさしくその基盤になることが判明したとしています。そして、ウェルビーイングに欠かせない5つの要素を挙げています。、

 第2章では、第1章で述べた5つのウェルビーイングについて、それぞれ解説しています。その5つとは、①キャリア・ウェルビーイング(日々していることが好き)、②人間関係ウェルビーイング(人生を豊かにする友がいる)、③経済的ウェルビーイング(上手にお金を管理する)、④身体的ウェルビーイング(やり遂げるエネルギーがある)、⑤コミュニティ・ウェルビーイング(住んでいるところが好き)になりますが、この中でキャリア・ウェルビーイングが最も重要であり、他の4つの基盤となるとしています。

 第3章では、生き生きした組織文化を生み出そうとするに際して、社内外にありがちな4つのリスクを挙げています。それは、①従業員のメンタルヘルス、②明確さと目的の欠如、③指針やプログラム、特典への過度の依存、④スキルの浅いマネジャーの4つであるとして、それらへの対処法を述べています。さらに、ウェルビーイングとレジリエンスの高い文化は、危機の時も優れたパフォーマンスを上げるとしてレジリエンスの重要性を説くとともに、危機においてフォロワーが必要としているのは、希望、安心感、信頼、思いやりであるとしています。

 第4章では、キャリアのエンゲージメントからウェルビーイングは始まるとし、ウェルビーイングの実践法を身につけるための今すぐ使えるシンプルな洞察方法として、自らの①期待値、②強み、③能力開発、④意見、⑤ミッションや目的の5つのエンゲージメント項目を見つめ直すことを説いています。また、マネジャーはこのエンゲージメント項目に沿って、従業員が何を必要としているかを考えた上で彼らに接し、彼らにとって仕事を意味あるものにする役割を担うとして、その具体的方法を示しています。

 第5章では、ウェルビーイングを高めるにはどうすればよいかを考察し、従業員の強みを特定できれば、それを活かして職場のウェルビーイングを高めることができ、それは直ちにレジリエンスとメンタルヘルスの向上にもつながるとしています。

 巻末に付録として、①5つのウェルビーイング要素に関する強みの洞察とアクション項目、②マネジャー・リソース・ガイド――ウェルビーイングの5つの要素、③テクニカルレポート――ギャラップのウェルビーイング5つの要素の研究と開発、④従業員エンゲージメントと組織的成果の関係、といったメソッド集や調査の概要が付されています。

 このようにギャラップの調査がベースになっているということもあり、何か突飛なことが書かれているわけではないですが、ウェルビーイングというやや一般には漠然とした概念をわかりやすく整理・要素分解し、キャリア・ウェルビーイングこそが最も重要であると結論づけている点が、主張が明確だったように思います。

 同著者の前著『ザ・マネジャー―人の力を最大化する組織をつくる ボスからコーチへ』(2022年/日本経済新聞出版)では、社員の熱意とやる気を高めるためにマネジャーは何をすべきかということを説いていましたが、本書も、部下コミュケーションやリーダーシップについて述べた本として読めます。前著同様に、テーマごとにポイントが整理されていて、意識の面、実践の面から改めて振り返ってみるのにいい本であると思います。

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