【3427】 ○ ジム・クリフトン/ジム・ハーター (古屋博子:訳) 『ザ・マネジャー―人の力を最大化する組織をつくる ボスからコーチへ』 (2022/06 日本経済新聞出版) ★★★★

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ギャラップ調査に基づくマネジャー論。優れたマネジャーは「優れたコーチ」であると。

『ザ・マネジャー』.jpg『ザ・マネジャー』2022.jpg 『ザ・マネジャー』原著.jpg  さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 最新版.jpg
ザ・マネジャー 人の力を最大化する組織をつくる ボスからコーチへ』['22年]『It's the Manager: Moving From Boss to Coach』['19年]ジム・クリフトン/ギャラップ 『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 最新版 ストレングス・ファインダー2.0

 本書は、ベストセラーシリーズ『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』の著者ジム・クリフトンらが、数十年にわたるギャラップの調査をもとに、「人の力を最大化する組織」をつくるための問題解決の糸口となる突破口を、50項目以上(全52章)にわたり解説したものです。それぞれをテーマごとに5つの部に分けて取り上げ、従業員エンゲージメントを高めるための方法や、従業員の「才能」を開花させる方法、そのためにマネジャーがとるべき会話やアクションなどを詳説しています。

 第Ⅰ部「戦略を立てる」(第1章~第5章)では、職場で求められているものが「給料」→「目的」、「満足度」→「成長」、「ボス」→「コーチ」、「年次評価」→「継続的な会話」と変化してきているとした上で、リーダーに欠かせない特性について述べています。

 第Ⅱ部「組織文化をつくる」(第6章~第8章)では、なぜ組織文化が重要であるのか、また、それを変革するには何が必要かを述べています。

 第Ⅲ部「採用のためのブランドを確立する」(第9章~第19章)では、新世代の労働力を惹きつけ、スター社員を採用するにはどうすればよいか説くとともに、新入社員のキャリアを方向づける「オンボーディング(入社後施策)」プログラムや、能力開発への近道となる「強みに基づく会話」、成功するために必要な「7つの期待値―コンピテンシー2.0」を紹介しています。また、「サクセッションプラン(後継者育成計画)」を科学的に行うための4つのステップや、成功する退職とはどのようなものかについても述べています。

 第Ⅳ部「ボスからコーチへ」(第20章~第31章)では、コーチングを成功させるための「3つの条件」と「5つの会話」を紹介するとともに、給与や昇進の正しい在り方、レーティング(評価)における「バイアスの罠」とその補正方法、従業員の定着を高めるキャリアアップの3要素、チームを成功に導く12の要素などを列挙しています。また、なぜ従業員は仕事に対して「エンゲージしていない」のか考察し、「能力開発を重視する組織文化」をつくるのに必要な4つの要素や、優れたマネジャーが持つ5つの特性を挙げ、どのようにしてマネジャーを育てるかを論じています。

 第Ⅴ部「これからの働き方」(第32章~第52章)では、ダイバーシティ&インクルージョンの3要件や働く女性が直面する3つの課題について述べるとともに、年配社員の活かし方、福利厚生、フレックスタイム、イノベーション、アジャイル、ギグワーカー、AIテクノロジーなどについて論じ、最後に、ビジネスの成果には「人間の本質」が果たす役割が大きく、マネジャーこそが成功のカギであるとして、本書を締めくくっています。

 巻末に100ページ以上に及ぶ調査資料が付されているように、ギャラップの調査がベースになっているということもあり、何か突飛なことが書かれているわけではないですが、幅広く、かつオーソドックスな内容であるように思いました。

 それでいて、時代の変化に沿った内容にもなっていて、その中で特に強調されていたのは、「ボスからコーチへ」ということ、つまり、優れたマネジャーとは「優れたコーチ」であるということではなかったかと思います。

 テーマごとにポイントが整理されていて、社員の熱意とやる気を高めるためにマネジャーは何をすべきかということを、意識の面、実践の面から改めて振り返ってみるのにいい本であると思います。

《読書MEMO》
●オンボーディングのための5つの質問(第13章)
1「皆が信じているものは何か」
2「私の強みは何か」
3「私の役割は何か」
4「私のパートナーは誰か」
5「ここでの自分の未来はどうなるか」
●7つの期待値―コンピテンシー2.0(第17章)
・人間関係を築く
・人を育てる
・変化を導く
・人に意欲を吹き込む
・批判的に考える
・明確なコミュニケーションをとる
・アカウンタビリティを生み出す
●サクセッションプランを科学的に行うための4つのステップ(第18章)
1 客観的なパフォーマンス評価から始める
2 カギとなる成功体験を分析する
3 生来の傾向を活かす
4 個別にリーダーシップ開発を設計する
●退職を成功させる(第19章)
 1 授業員は「自分の話を聞いてもらえた」と感じている
 2 従業員は自分の貢献に誇りを感じて退職する
 3 退職者をブランド大使にする
●コーチングの3つの条件(第20章)
1 期待値を設定する
2 継続的なコーチングを行う
3 アカウンタビリティを生み出す
●パフォーマンスを向上させる5つの会話(第21章)
1 職務の明確化と人間関係の構築
2 クイックコネクト
3 チェックイン
4 育成型コーチング
5 進捗レビュー
●従業員の定着率を高めるキャリアアップの3要素(第25章)
1 変化をもたらす機会
2 成功
3 希望するキャリアとの適合性
●「能力開発を重視する組織文化」をつくるのに必要な4点(第29章)
1 CEOや取締役会が取り組みを開始している
2 マネジャーに新しいマネジメント方法を教えている
3 全社的なコミュニケーションが行われている
4 マネジャーにアカンタビリティを持たせている
●優れたマネジャーが持つ5つの特性(第30章)
1 モチベーション(チームにやる気をもたらす)
2 ワークスタイル(目標を設定し、リソースを配置する)
3 イニシエーション(周囲に影響を与えて、逆境や抵抗を乗り越える)
4 コラボレーション(深い絆で結ばれた信頼できるチームをつくる)
5 思考プロセス(戦略や意思決定のために分析的アプローチ)
●ダイバーシティ&インクルージョンの3要件(第33章)
 ・「私に敬意を払って」
 ・「私の強みを大事にして」
 ・「リーダーは正しいことをする」
●働く女性が直面する3つの課題(第37章)
 ・職場での不当な扱い
 ・賃金格差
 ・ワークライフの柔軟性

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