【3378】 ○ ヘンリー・ミンツバーグ (池村千秋:訳) 『これからのマネジャーが大切にすべきこと―42のストーリーで学ぶ思考と行動』 (2020/02 ダイヤモンド社) ★★★★

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「●組織論」の インデックッスへ ○経営思想家トップ50 ランクイン(ヘンリー・ミンツバーグ)

既成概念にとらわれない新たなマネジメントの視座への気づきを与えてくれる。

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これからのマネジャーが大切にすべきこと 42のストーリーで学ぶ思考と行動』['20年]

 経営思想界の泰斗が、自らのブログ記事の中からマネジャーにとって特に有意義だと思えるものを42本選んだものです。マネジャーが寝る前にベッドで読めるような内容を意図していて、01から42までのストーリーがマネジメントや組織など7つのカテゴリー(章)に分類されています。

 第1章「マネジメントの話」では、02で、ピーター・ドラッカーの「マネジャーはオーケストラの指揮者のようなものである」という見方が本当に正しいのかを批判的に考察しています。また、03では、よく言われる「正しい物事を行うのがリーダーで、物事を正しく行うのがマネジャーだ」という言い方に疑念を呈し、「リーダーシップをマネジメントから切り離して考えるのはもうやめよう」と述べています。このように、従来の経営思想家と一線を画しているのが特徴です。

 さらに第2章「組織の話」では、10で、素晴らしいと思える組織では、リーダーシップ以上に、強力なコミュニティシップの精神が浸透しており、これからはリーダーシップよりもコミュニティシップが重視されるようになるとしています。12では、ハーバード・ビジネス・スクールのジョン・コッターが提唱した企業変革モデル(8段階の変革プロセスモデル)に対し、それはCEOで始まりCEOで終わっているが、1人のリーダーがいて、あとはすべてフォロワーにすぎないという考え方はいかがなものかとしています。

 第3章「分析の話」では、18で、ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・キャプランらが、「数値で計測できないものはマネジメントできない」というのは"よく知られている格言"であるとしているのに対し、よく知られてはいるが、実際には文化やリーダーシップは数値で計測できるものではなく、この"格言"は馬鹿げた内容であると斬り捨てています。22では、マネジャーの仕事の質は、数値で評価するのではなく、頭を使って判断すべきであるとしています。

 第4章「マネジャー育成の話」の25では、ケーススタディ学習は実際の経験とは別物であることを心得るべきであるとし、27で「MBA」での授業の在り方を批判するとともに、自分たちが開発した新しい教育プログラムのポイントを挙げ、28では、その実際の進め方の特徴を紹介しています。

 第5章「分脈の話」では、後継人材の探し方や、グローバル人材であるより広い視野を持った人材であることの重要性を説き、第6章「責任の話」では、ダウンサイジングの問題点やこれからのCSRの在り方について述べています。

 そして、最終の第7章「未来の話」では、38で、誰もが発揮できる平凡な創造性こそが非凡な力を生むとし、40で、「もっと多く」より「もっとよく」を目指すべきであると、41で、ベストよりグッドを目指ざせと説いています。

 MBA教育の在り方などに対する批判を通して、既成概念にとらわれない新たなマネジメントの視座への気づきを与えてくれる本です。著者は、MBAでは、マネジメントの「アート」も「クラフト」(技)も教えられないので、「サイエンス」に頼り、分析やテクニックばかり教えているとしています。

著者の言う「アート」や「クラフト」とは何かを知るには、同著者の『エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論』(2014年/日経BP社)が参考になります。さらに言えば、マネジャー研修等を企画する側にある人事パーソンとしては、『マネジャーの実像』(2011年/日経BP社)に読み進むことで、ミンツバーグの経営思想へのより深い理解に繋がるのではないかと思います。

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