【3352】 ◎ 和田 隆 『最新パワハラ対策完全ガイド (2020/01 方丈社) ★★★★☆

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パワハラ境界線ばかり気にするのではなく、働きやすい職場、良好な人間関係づくりをめざせと。

『最新パワハラ対策完全ガイド』2020.jpg 『最新パワハラ対策完全ガイド【付録】厚生労働省パワハラガイドライン全文』['20年]

 本書は、令和2年6月から、大企業に対して、改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)が施行されるのに合わせて刊行されたもので、企業のパワハラへの対応の義務化に際して、人事や窓口担当者、管理職が留意すべき対応のポイントは何かを、わかりやすく解説しています。

 第1章では、企業におけるパワハラ対策の必要性と意義を説いています。パワハラは今や企業不祥事となっており、パワハラ防止は組織を挙げて取り組むべき課題であるとし、また、パワハラ防止対策は、健康で健全な経営につながるとしています。

 第2章では、パワハラの定義と構成要件を整理しています。パワハラの法的責任が問われるケースを判例から説明するとともに、人によってパワハラと感じる範囲にズレがあるため、現場レベルでパワハラであるかないかを議論しない方がよく、判断基準にとらわれるとかえって問題がこじれるとしています。

 第3章では、管理職のパワハラリスクとその対処法を説いています。パワハラが起きる背景には「役割期待」のズレがあるとし、管理職に対し、いくら指導に熱心でも一線を越えてはならず、部下の受信力に合わせた発信をし、「役割期待」のズレを解消するよう説いています。

 第4章では、パワハラの被害を受けないようにするにはどうすればよいかを説いています。上司からマイナスの目で見られないために報連相をこまめに行うこと、「やりにくい上司」というネガティブな見方をリフレーミングという手法で変えること、「内的キャリア」を育て、仕事の意味を明確化すること、セルフリファー力(周囲や専門家に相談する力)を高めること、などを挙げています。

 第5章では、一人ひとりの「パワハラを許さない」という意識がパワハラを防ぐとしています。パワハラは当事者と人事部だけで解決する問題ではなく、第三者もパワハラの「見える化」に協力し、日ごろから周囲の人に関心を持つこと、気になることがあれば声かけをし、悩みを聞いてあげるだけでもサポートになるし、相談窓口につなぐのも第三者の役割であるとしています。

 第6章では、パワハラの相談を受ける技術を紹介しています。ハラスメントの担当者になったら留意すべきこと、被害者面談の進め方と注意点などをまとめています。

 第7章では、パワハラ対策の実効性を高めるにはどうすればよいかを説いています。人事に求められるプロジェクトをパワハラを中心に一本化することを推奨し、予防と再発防止を重視した取り組みを行い、「小さな芽」を摘むことを心がけるよう説いています。

 人事部、上司、部下、それ以外の第三者のいずれにとっても啓発的であるととも実践的な内容です。わかりやすく書かれていて、個人的には特に、第3章で、パワハラには、相手に意識が集中してしまう「ロックオン」とでもいう前段階があり、これによってマイナスエネルギー(ストレスやネガティブ感情)が溜まり、そのマイナスエネルギーが放出されるとパワハラになるという説明は腑に落ちました。
 
 パワハラかどうかの境界線ばかり気にするのではなく、「働きやすい職場」「良好な人間関係づくり」という前向きなアプローチの方が、パワハラを生まない職場づくりの近道になることを説いた、啓発的かつ実践的な良書だと思います。

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