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論理的でありながら実務的。入手しやすく、読んで損しない。
『年俸制の実際』〔'97年〕
年俸制は、大企業の管理職層を中心に'90年代中盤から2000年にかけて一気に導入が進みましたが、年俸制にテーマを絞った実務者向けの書籍は意外に少ないのではないかと思います。
それでも導入ブームの際に経済団体などから何冊か概論的なもの出版され、またその後も事例集などが出ましたが、値が張るものが多いのが難点です。それに対してより一般向けのものは、コンサルタントが独自の応用例をいきなり開示する技術論的なものであったりします。
本書は、年俸制とは何かということから説き起こしつつ、制度の設計・導入や運用の実務(役割評価や目標管理、達成度評価など)のポイントがわかりやすくまとめられているのではないかと思います。
導入のためにどういった環境整備が必要か(等級制度、評価制度、社内体制の整備など)に章を割くとともに、「将来展望」の章において、年俸制を体系的に分類し、分類にそった形で先行企業の事例を紹介するなど、理論的でありながら実務的であるのが本書の特徴でしょうか。
著者は、日本IBMの人事管理部長(執筆時)ですが、日経連(現・日本経団連)の職務分析センター(現・人事賃金センター)の「年俸制研究部会」の座長を務めていたこともある人です。ですから、著者は外資系企業の人事部長ですが、この本の提案部分において示されているのは「日本型年俸制」です。
'97年の出版ですが、新書版で購入できる「年俸制」に的を絞った本は、本書以外にはほとんど無い状態で、その点本書は実務者が概念整理や導入検討をする際には手にしやすい本であり、また読んでおいて損は無い本だと思います。