【386】 △ 磯部 潮 『人格障害かもしれない―どうして普通にできないんだろう』 (2003/04 光文社新書) ★★★

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解説自体はオーソドックスだが、実在者への当て込みには恣意的。

人格障害かもしれない.jpg  『人格障害かもしれない (光文社新書)』 〔'03年〕

 本書では、米国精神医学会の診断基準DSM-IVに沿って人格障害を10タイプに分け、それぞれの特徴や治療面でのアプローチについて述べています。
 その中でも多い「境界性人格障害」については、見捨てられることへの不安、不安定な対人関係、言動や性格に一貫性がない、衝動性、慢性的な空虚感などの特徴を挙げていますが、そうした不安定な共生依存関係が維持されている間は、他の面ではうまくいっていることが多いという指摘は興味深いものでした。
 それぞれの解説自体はオーソドックスです。

尾崎豊.bmp 人格障害には光と影の部分があるとし、影の部分として宅間守や麻原晃光などの凶悪犯がそれぞれどのタイプの人格障害に当たるかを示していますが、光の部分(創造性発揮につながったケース)として尾崎豊、太宰治、三島由紀夫を挙げています。

 例えば尾崎豊は、境界性人格障害による強度の見捨てられ不安だったと。
yukio mishima2.jpgdazai.bmp ただこの3人の最期を考えると、自分は人格障害かも知れないと思っている人は喜んでいいのかどうか。
 "光の部分"の例としてはどうかという気もするし、こうした実在者への当て込み自体がかなり主観的であると感じました。
 このことは、実際の診断において医師の主観が入ることを示しているとも思いました。

《読書MEMO》
●人格障害の種類... 
・A群...妄想性・分裂病質・分裂病型
・B群...境界性・反社会性・自己愛性・演技性
・C群...回避性・強迫性・依存性
●《境界性人格障害》の特徴=極端で不安定な共生依存関係、そうした不安定な状態にある間、その他の面はうまくいっていることが多い/20代・30代ぐらいの女性に多い母子共生関係
●《境界性人格障害》とは「精神病」と「神経症」の中間?→正常からの逸脱
●《境界性人格障害》のすべてが犯罪を犯すわけではない
●新潟女児監禁事件の《佐藤宣行》...「分裂病型・人格障害」
●池田小学校児童殺傷事件の《宅間 守》...「妄想性・人格障害」
●《麻原彰晃》...「自己愛性・人格障害」
●連続幼女誘拐殺人の宮崎 勤...「多重・人格障害」(今田勇子)
●神戸連続児童殺傷事件の《酒鬼薔薇少年》...「行為障害」、成人ならば「反社会性・人格障害」
●尾崎 豊...境界性人格障害(強度の見捨てられ不安)/●太宰 治...境界性人格障害+自己愛性人格障害/●三島由紀夫...自己愛性人格障害

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