【3476】 ○ 鈴木 貴史 『人材獲得競争時代の 戦わない採用― 「リファラル採用」のすべて』 (2023/03 日本能率協会マネジメントセンター) ★★★★

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注目されている「リファラル採用」のメリット・デメリットや導入の手順を解説。

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人材獲得競争時代の 戦わない採用 「リファラル採用」のすべ』['23年]

戦わない採用 3.jpg リファラル採用とは、自社の社員から友人や知人などを紹介してもらう手法を指します。リファラル(referral)は、「推薦」や「紹介」という意味があり、人材市場が完全に売り手市場となっており、業界を問わず人手不足が叫ばれる中、注目を浴びつつある手法です。株式会社マイナビの、1年間(2020年1月~12月)に中途採用活動実績のある企業の人事担当者1,333件を対象にした「中途採用状況調査2021年版」によれば、リファラル採用を導入している企業は全体の56.1%でしたが、これはコロナ禍での調査であり、現時点ではさらなる普及が見込まれます。本書は、そうしたリファラル採用についてそのメリット・デメリットや導入の手順を解説したものです。

 第1章では、「戦わない採用」とは何かを解説しており、それを、限られた転職者(288万人)を競合と奪い合うのではなく、転職潜在層(6500万人、労働人口の95%)にアプローチする、競合と戦わない採用であるとしています。

 第2章では、リファラルとは何かを解説しており、リファラル採用こそがまさに戦わない採用だとしています。ここでは、経営陣や一般社員による「縁故採用(コネ採用)」をリファラル採用1.0、社員をリクルーター化する「社員紹介採用」をリファラル採用2.0、社員もしくは関わった者が自発的に会社を薦めたくなうような関係づくりから始まる採用をリファラル採用3.0としています。

 リファラル採用のメリットとして、①転職潜在層から人材を獲得、②定着率が高くなる、②社員エンゲージメントが高くなる、④採用コスト削減の4つを挙げ、また、リファラル採用が組織にもたらす効果として「組織市民行動」(例えば、「職場に落ちているゴミを拾う」「新入社員が困っていたらさ@ポートしてあげる」など本来の自分の役割を超えた組織行動)という概念を紹介し、リファラル採用は社員の従来の組織行動を組織市民行動にまで拡げ、会社もパフォーマンスを向上させるとしています。

 また、デメリットとしては、①人間関係と人材配置に配慮が必要なこと、②社員の認知と理解が必要なこと、③情報が可視化しにくい点、④販促・活性化するまで一定の工数が必要なことを挙げています。

 第3章では、リファラル採用3.0を導入するにはどのような準備が必要か、リファラル採用3.0における人事の役割や中長期的なゴール設計、協力社員へのインセンティブルールの設計などについて解説しています。

 第4では、社員が協力したくなるフレームワークをどう作るかを実践的に解説し、第5章 では」、リファラル採用の成功事例を8選紹介しています(そう言えば博報堂は昔からリクルーター採用をやっていた)。

 第6章では、応用編として、更にリファラル採用を促進するためのKPI分析や「一人当たり声掛け数」を増やすEVPブックなどの手法を紹介し、最終章で、従来のリクルーターの概念を超える「採用マーケター」という"新職種"を紹介しています。

 以前にもネットでリファラル採用のメリット・デメリットを調べたことがあり、メリット・デメリットの両面において縁故採用やリクルーター制などと重なる部分もあると思っていましたが、縁故採用をリファラル採用1.0、リクルーター制をリファラル採用2.0と捉えているのが分かりやすかったです。

 個人的には、リファラル採用と縁故採用との違いは、リファラル採用はあくまで企業の採用活動における母集団形成手段の一つだということであり、一方、縁故採用は求職者(被紹介者)の入社を前提(または期待)とした、経営陣や一部社員の紹介による裏口入社的な採用手法であるという側面があることだと思います。

 リファラル採用の導入が優秀で自社にマッチした人材獲得のための戦略的手法であるのに対し、縁故採用は戦略的人材獲得の手法ではないとも言えるのではないでしょうか。

《読書MEMO》
●目次
第1章  戦わない採用
第2章  新時代の当たり前―リファラル採用とは何か
第3章  リファラル採用3.0の導入―準備編
第4章  社員がおすすめしたくなるフレームワーク―実践編
第5章  リファラル採用の成功事例8選
第6章  更に促進したい方へ―応用編
最終章  採用マーケターのあなたへ

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