【3319】 ○ 山本 寛 『連鎖退職 (2019/06 日経プレミアシリーズ) ★★★☆

「●採用・人材確保」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3476】 鈴木 貴史 『人材獲得競争時代の 戦わない採用
「●日経プレミアシリーズ」の インデックッスへ

「簡単に辞めないほうがトク」と思わせる風土作りの重要性とその施策を説く。

連鎖退職 (日経プレミアシリーズ).jpg              なぜ、御社は若手が辞めるのか.jpg
連鎖退職 (日経プレミアシリーズ) 』['19年]『なぜ、御社は若手が辞めるのか (日経プレミアシリーズ) 』['18年]

 前著『なぜ、御社は若手が辞めるのか』(2018年/日経プレミアシリーズ)で、社員が定着するためにはどのようなマネジメントが求められるのかを探った著者が、今度は、ある一人の退職を皮切りに次々と社員が辞めてしまう「連鎖退職」を取り上げ、その起きる原因と、予防策や起きた際の対処法を探ったものです。

 まえがきで、同じ組織、同じ部署で、1人の退職が2人、3人の退職につながり歯止めが利かない「連鎖退職」は、その原因が掴めず、うまく対策を講じられないでいるうちに、組織にとって致命的な人数の退職者が出てしまい、最悪、経営が危うくなるといった事態にも追い込まれるとしています。

 そのうえで、連鎖退職はどんな組織や職場で起こりやすいのか、きっかけになる出来事とは何か、連鎖退職によって職場や組織、さらには同僚、本人自身に至るまでどのような影響を受けるのかについて、企業の人事部門、連鎖退職をした社員、連鎖退職状況の中でも辞めずにとどまった社員、転職者と会社を結びつけるプロである人材紹介会社の法人営業などに聞き取りを行い、多面的な観点から、連鎖退職の実態を探ったとしています。

 第1章「連鎖退職はこうして起こる」では、連鎖退職が起こるきっかけ、連鎖退職とは何か、連鎖退職のパターン、連鎖退職が起こりやすい組織・職種、連鎖退職が生む組織への悪影響など、連鎖退職にまつわる諸問題について、総論的・概括的に解説しています。ここでは、連鎖退職は「同調行動」のひとつのパターンであるとして、中小企業やベンチャーで起こりやすい「ドミノ倒し型」と、大企業で起こりやすい「蟻の一穴型」の2つパターンを解説しています。前者は、1人かけることで残ったメンバーに負荷がかかり、さらなる退職を誘発させるのに対し、後者は、1人の退職をきっかけに潜在化していた職場の不満が顕在化し、次々に退職者が出る状況を指しています。

 第2章「どんな人が「危ない」のか?」では、実際に連鎖退職などをした人やその周囲の人への聞き取りをもとに、連鎖退職の実態に迫っており、第3章「そのとき上司・同僚は」では、連鎖退職が起きた職場の管理職と同僚への聞き取りをもとに、彼ら彼女らの思いや動向を紹介しています。 

 第4章「予防のために、会社と管理職にできること」では、連鎖退職を起こさないためには、組織全体として「簡単に辞めないほうがトク」と思わせるような風土作りが必要であるとし、組織や管理職にできる、いわば平時の対策として、以下10項目を挙げています。
 1.採用前の詳細な説明・情報提供
 2.採用基準自体の変更
 3.定期的な配置転換
 4.報酬(給与・賞与)の分配に関する方針(成果主義等)
 5.残業・長時間労働削減等
 6.(社員に対する)評価の仕方や方針
 7.福利厚生(ワークライフ・バランスへの配慮等)
 8.キャリア形成支援のための施策・方針(メンター制度・提案制度等)
 9.ハイパフォーマー、ハイタレント人材の定着
 10.業務の改善

 また、学習機会の提供や日ごろからのキャリアのすり合わせができる関係の構築などが挙げられています。さらに、各部署でできること、人事部門と部署の管理職が連携して行わなければならないことなどを挙げ、ヨコだけでなく、タテ、ナナメのコミュニケーションの強化をはかるべきであるとして、そのための施策も挙げています。

 第5章「一人の退職を「蟻の一穴」にしないために」、第6章「被害を最小限にするには」では、実際に退職者が出た後の、さらには連鎖退職が起きた際の、組織のトップや管理職向けの連鎖退職対策をまとめています。 

 前著同様、調査データや退職者および周囲の関係者の生の声をもとに課題を抽出・整理しているため、シズル感があって分かりやすく、説得力もあります。一方で、分析がオーソドックスである分、分析結果にさほど目新しさはなかったようにも思いました。

 基本的には、リテンション・マネジメントを説いている点で、前著の続編という感じだったでしょうか。全体を通して、「簡単にやめない方がトク」と思わせる組織づくりというのが1つポイントになるかと思いましたが、そのための施策は、どれもまさに組織風土改革に連なるのであり、どれか1つやってみるのもいいですが(わかっていても出来ていないことも多い)、複合的に機能させていく必要もあるのだろうと思いました。そうした意味で本書は、実務書であると同時に啓発書であったかもしれません。

《読書MEMO》
●目次
まえがき 連鎖退職がやってきた
第1章 連鎖退職はこうして起こる
第2章 どんな人が「危ない」のか?
第3章 そのとき上司・同僚は
第4章 予防のために、会社と管理職にできること
第5章 一人の退職を「蟻の一穴」にしないために
第6章 被害を最小限にするには
おわりに 連鎖退職をプラスの連鎖に変えていくには

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2024年1月17日 01:00.

【3318】 ◎ 林 浩二 『基本と実務がぜんぶ身につく 人事労務管理入門塾』 (2019/05 労務行政) ★★★★★ was the previous entry in this blog.

【3320】 ◎ 水町 勇一郎 『労働法入門 新版』 (2019/06 岩波新書) ★★★★☆ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1