【3455】 ◎ アンリ・ファィヨール (山本安次郎:訳) 『産業ならびに一般の管理 (1985/06 ダイヤモンド社) ★★★★☆ 《再読》

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経営管理においてプリミティブだが、不変に近い考え方を論じていた。10年ぶりの再読で、評価を○から◎に修正。
『産業ならびに一般の管理.jpg  アンリ・ファヨール2.jpg アンリ・ファヨール(1841-1925/84歳没)
産業ならびに一般の管理 (1985年)

 1916年にアンリ・ファヨール(またはファィヨール)が発表した本で(Fayol, H. Administration industrielle et generale)、ファヨールという人は元々は鉱山技師で、実際には学者は学者でも地質学者でしたが、鉱山会社の経営者となって、その実務経験から得た自らの考えを体系的に纏めた本書により、企業経営において「管理」という言葉を初めて使った人物とされています。

 第1部「管理教育の必要性と可能性」では、経営に不可欠な基本的機能を、①技術活動(生産、製造、加工)、②商業活動(購買、販売、交換)、③財務活動(資本の調達と運用)、④保全活動(財産と従業員の保護)、⑤会計活動(棚卸し、貸借対照表、原価、統計など)、⑥管理活動(計画、組織、命令、調整、統制)の6つに分類し、その上で、6番目の企業活動として管理活動を他の個別活動と分けて、その重要性を強調しています(第1章)。そして、管理活動は①から⑤までの活動の上に立って各企業活動を統合する全般的活動と位置づけられ、管理活動の重要性は、職長→係長→課長→製造部長→所長と上級職になると管理活動の比率が大きくなり、同様に、企業の規模が大きくなればなるほど大きくなると管理活動の比率は高くなるとし(第2章)、管理教育の必要性を説いています(第3章)。

Henri Fayol 14 Principles of Management.jpg 第2部「管理と原理の要素」では、管理の一般原理として、以下の14の項目を管理原則として挙げて、それぞれ解説しています(第1章)。
  ① 分業......組織の多様な機能を分業すること
  ② 権威......権限に基づく行為の責任を信賞必罰として明確にすること
  ③ 規律......組織としての確立された約定を外形的象徴として定めること
  ④ 命令一途(一元性)......業務の担当者が唯一の責任者以外から命令を受け取ってはいけないこと
  ⑤ 指揮統一......ひとつの組織目標に対して、ひとりの責任者とひとつの計画のみを置くこと
  ⑥ 個人的利害の一般的利害への従属......一個人や一集団の利害が、企業全体の利害に優先されることがあってはならないこと
  ⑦ 報酬公正......従業員への報酬を公正に定め、使用者と従業員双方が満足するように努めること
  ⑧ (権限の)集中......組織全体として最良の成果がもたらされるように必要な権限を配分すること
  ⑨ 階層組織......組織階層を上位権限者から下位の担当者に至る責任の配列とすること
  ⑩ 秩序......組織としての物的または社会的秩序を守ること。有形資源や人的資源の適材適所への配置に努めること
  ⑪ 公正......規律に定められていないことに対しても、人間的かつ社会的な好意と正義を前提として行動すること
  ⑫ 従業員安定......従業員の環境適応に対して、中長期的な時間的な猶予を持つこと
  ⑬ 創意力......担当者の仕事への熱意や意欲を尊重し、増大させるような対応を試みること
  ⑭ 従業員団結......団結が作り出す力を信じ、組織の好ましい調和を生み出すこと

 そして、計画、組織、命令、調整、統制の5つについてさらに詳しく解説しています(第2章)。
  ① 計画......企業理念を土台として、目標数値を設定し、外部・内部環境を分析して戦略を立案。そして、企業目標・戦略を達成するために実行計画を策定すること。
  ② 組織......企業目標・戦略を達成するための計画を実行に移すために組織体を設計、もしくは再構築して各部門の役割と責任を明確にすること。
  ③ 命令......各部門の役割と責任、そして目標数値を設定し達成に向けて指示を出しすこと。
  ④ 調整......企業全体として目標を達成できるように全体最適の観点から   部門間のコミュニケーションの促進や部門横断のチームを編成していくこと。
  ⑤ 統制......計画通りに業務遂行できているかを四半期、半期、通期のタイミング等で評価・モニタリングして計画未達の場合には計画の修正や新たな施策を検討して、手を打っていくこと。そして、再び①〜④のプロセスを繰り返していく。

 今回、個人的には約10年ぶりの再読。本書で提唱されている管理過程論は、経営管理において非常にプリミティブですが、不変に近い考え方を論じていたとも再認識しました。管理をすることの重要性や組織を動かすことの基本的な考え方を示した本として、改めて読んでみることをお薦めします(再読して評価○→◎になった(笑))。

 難点は、相変わらず入手しにくく、また、古本市場などで入手可能であっても値が張ることです。学生の場合は大学の図書館を利用するのがいいかも。一般のビジネスパーソンの場合は、例えば東京都内の区立図書館であれば、他区・市立図書館同士で貸し借りしているので、自分の地域の図書館も置いてなくとも、その仕組みを利用すれば読めます。

【1958年[風間書房『産業並に一般の管理』(都筑栄:訳)]/1972年2月[未来社(佐々木恒男:訳)]/1985年[ダイヤモンド社(山本安次郎:訳)]】

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